裏14話 思い出の体育祭② 三五くん障害物競争で大活躍 (意味深) 事件 高二 一学期
湖宵と全く言葉を交わせないまま、午前中最後の競技となった。
障害物競争。
今度こそ。そう、今度こそ湖宵に良い所を見せてきゅん♡ とさせてみせる! そして湖宵と仲直りして楽しくお弁当を食べるのだぁ!
良し! 心して臨むぞ!
障害物競争の障害は四つ。
まずはハードル走。
これはこの前部活でもやったし余裕!
次に麻袋ジャンプ。
麻袋に両足を突っ込んだ状態で指定された距離をピョンピョン飛び跳ねながら進まないといけない。これは体力が要りそうだ。
その次はネット潜り。
これはまあ名前の通り、地面に設置されているネットを潜り抜けるだけだ。特に問題は無いだろう。
最後は三台並ぶ平均台。
五人の走者が居るのに、三台しか無い所が肝だ。平均台を奪えなければ一位争いに食い込むことすら出来ない。かといって焦りすぎればバランスを崩して台から落っこちてしまう。もちろんそうなっては失格だ。
障害物をクリアしたら何も無い直線のコースを三十メートルくらい走る。そこがゴールだ。
よ~し! このレース、オレにかなり有利だぞ!
最初のハードルで差をつけられるし、多少もたついても三位以内をキープすれば平均台を奪える。
そうすれば最後の直線は陸上部の独壇場よ! これはもらったぜ!
そしていよいよオレの出番がやって来た。
「位置について~、よ~いスタート!」
パァン!
ピストル音と同時にダッシュ!
勢いを維持しつつ、華麗にハードルをジャンプ! ジャンプ! ジャァ~ンプ!
一番でクリアー!
チラ、とウチのクラスの席の方を見てみると、湖宵がオレに熱視線を送ってくれていた。フフフフ。レースが終わったら、仲直りだゾ♪ 湖宵♪
お次は麻袋だぁ!
滑り込む様に両足を突っ込んで飛び跳ねまくる!
「うおぉぉっ! フンガァ! フンガ! フンガ! フンガァァ~ッ!」
どうも。ゴリラです。
こんなモンはなぁ、コツとかじゃなく体力がモノをいうんだよぉ!
ゴリ押し戦法だぁ! ゴリラだけにぃ!
多少もたついたが、まだまだオレの優位は揺るがない。
三つ目の障害 ・ ネットをヘッドスライディングの要領で潜るぅ!
こんなの余裕で……あ、あれ? せ、狭い! 全然進めない! 何でだよぉ! 去年も障害物競争に出たけど、その時のネットは簡単に潜れたぞ……って、そ、そうか!
去年と今のオレの身体付きは全然違う! 身長も伸びたし筋肉も付いた。
この前久し振りに会った友達に、お前ガッチリしすぎ! ほとんど別人じゃん! と言われるくらいに。
このネットを潜るには、オレの身体は成長しすぎたようだ。ひ、日々のトレーニングがここに来て仇となるとは!
ネ、ネットに絡め捕られるぅ! うう! 苦しい! 何かギシギシいってる!
ネットにバインバイン跳ね返されながらも、辛うじて脱出に成功。
でもオレの順位は現在最下位だ。ここからの巻き返しは絶望的だろう。
だが!
オレは最後まで諦めずに全力で走り抜く!
そのひたむきさに湖宵も必ずや心打たれるハズ!
「ダメだったよ……ハハ……」 (影のある笑み)
「ううん、三五は頑張ったよ」スッ (手を握る)
これで仲直りだ!
「三五さんっ! 諦めないで!」「三五しゃま♡ な、なんて健気なお姿……♡」「尊ひ……♡」「うっうっう……」「感動の涙で前が見えにゃい……」
ホラね。オレの姿がシンパのお姉様方から大好評。これなら湖宵も……って、あれ? 平均台の手前でオレ以外の走者四人が立ち留まっているぞ?
一体どうして……。
ハッ! あ、あれは!
「ウッフゥゥン♡ あら~ン♡ どうしたのぉン? オトコノコ達ぃン♡ 上って来ないのぉン?」
「失礼しちゃいマスわン♡ こんなに良いオンナが待ってマスのにン♡」
左右の平均台に立つ女生徒二人。
片方は学校で一番エロい女、エロ姉ぇ!
そしてもう片方はそのエロ姉ぇの実の妹……通称エロちぃ。
エロ姉ぇの妹だからこんなあだ名を付けられて可哀想……などとは思ってはいけない。何故ならエロちぃの性格はエロ姉ぇのコピーそのものだからだ。容姿もほぼ瓜二つと言って良いくらい似ている。未成熟なエロ姉ぇって感じ。
二人はウェーブがかった髪をポニーテールにし、体操服の裾を胸の下で結んでヘソ出しルックにしている。下は陸上選手が履く様な競技用のブルマだ。ウチの体操着はスパッツなのに、一体どこで調達したんだか。
「来たわねン、三五きゅん。紹介するわァン♪ ウチの可愛い妹の、ちぃちゃんよン♪」
「ンフゥン♡ お目にかかれて光栄デスわン♡ エロ兄ぃ様♡」
「妙なあだ名で呼ぶな! オレはお前らの仲間じゃないぞ!」
「三五きゅん知らないのォン? ウチ達姉妹と三五きゅんを合わせて、 “エロい三連星” って呼ばれているのをン♪」
何だそれは!? 不名誉過ぎる! いつオレがコイツらと連なった!? 呼んでいるヤツ出てこい! こうなったら全員ブチのめして……。
「よ、よ、よし! 俺が一番に渡ってやる!」
しまった。煩悶している間に他の走者に先を越されてしまった。
彼は決意を込めた表情で中央の平均台に足をかけて上り、一歩一歩進んでいく。
「あァァ~……♡ っはァぁ~ン……♡」
右の平均台ではエロ姉ぇが円を描くように腰を振っている。ワザとバストを揺らしながら。
「ウッ♡ ウッ♡ ウッ♡ ウッフン♡」
左の平均台ではエロちぃがダンサブルに尻を振っている。
ムクムクッ!
「アーッ!」
彼はエロ姉ぇ達に近づくにつれて徐々に前屈みになり、バランスを崩して哀れにも平均台から落ちた。失格である。
バカじゃねぇのか。ケーブルテレビのバラエティ番組じゃねぇんだからさあ……。
体育祭だぞ、オイ。
まあいい。オレにはこんな色仕掛けなど通用しないからな。
オレは中央の平均台に悠々と上り、ゆっくりと歩を進める。
「ウフフン♡」
エロ姉ぇがすちゃっとレザー製のシバき棒を取り出した。なるほどな。ソイツでオレを叩いて落とそうってか。面白い。ならばオレはドンと腰を落として、耐え抜いてみせる。
「はァい♡ 三五きゅん、受け取ってぇン♡」
何だと? エロ姉ぇがシバき棒をオレに投げ渡してきたぞ?
「さぁ……三五きゅぅぅン♡」
エロ姉ぇは中央の平均台に飛び移り、オレに背を向け四つん這いになった。
左手と右手で左右の平均台をガッチリ掴み、左足と右足も左右の平均台にシッカリかける。
「ここを通りたければウチを叩き落としてイキなさァい♡」
確かにエロ姉ぇが邪魔で通れん。横を無理矢理抜けようとしたらエロちぃに防がれる。ここはエロ姉ぇをシバき倒して通るしかあるまい。
左手の手の平をしばき棒で叩く。
バシンバシン!
中はウレタンか。これなら思いっ切り殴れるな! ふくらはぎでもブッ叩いてやればすぐ落ちるだろ!
「行くぞエロ姉ぇっ!」
「来てぇン♡ 三五きゅぅぅン♡」
「オラァァ!」
バッシィィィィン!
「OooHhhhhh!」
流石エロ姉ぇ、やるな! オレの一撃を弾力があり、ブルマに守られている尻で受け止めるとは! もう一度、いや、何度でも打ち込んでやる!
「オラァ! オラァ! オルァァァァ!」
バシィ! バシィン! バシバシバシィン!
「Yes! Yeeeees♡ Come'on♡ Join us♡」
否、全く効いてない! エロ姉ぇのヤツ、オレにケツをしばかれても余裕の表情だ!
腹立つ! このパブリックエネミーが!
「Come'o~n♡ Hey,Come'on♡ Darling♡ 」
エロ姉ぇめ、ケツをグラインドさせて挑発してきやがる。
よ~し、乗った! 絶対に堕としてやる!
「オラ喰らえ! 喰らえぇぇ! オラァ! コイツが欲しいんだろ!? 雌豚がァ!」
バシン! バシン! バシン! バッシィィン!
「Aaahhh♡ Ohhh♡ Yeahhh♡♡ Hey♡ Come'on♡ Come'ooooooon♡ 」
シーハーシーハーシハシハシハ! (高速呼吸音)
くうぅ! コイツ、小刻みに尻を動かしやがるから衝撃が分散される! もっと速く、鋭く! 重く、痛烈な打撃でないとコイツは堕ちない。
「うおぉぉっ! 堕ちろ! 堕ちろっ! 逝けっ! 逝けぇぇ!」
バッチィィン! バチバチバチィィン!
「Aaaaaaaahhaaaaa♡ お、堕ちるぅぅぅン♡」
オレが言うのもなんだが、教員は何故この乱痴気騒ぎを止めに来ないんだろう? いくらなんでも生徒の自主性を重んじ過ぎだろう。
そしてその生徒達は、一体どんな様子で見ているんだろう?
「エロ神サイコ~ッ♡」「アンタを信仰して本当良かった!」「もっとアグレッシブに! もっとパッションに溢れたシバきを見せてくれ!」「オレも参加したいっ!」「キィ~♡ ウッキッキィ~♡」
男子は欲望に素直になってきたなあ。オレの影響じゃないよね?
「やっぱ高波君ってさぁ……」「うん、鑑賞用だよね」「見てるだけでも妊娠させられそう」「でもそれ故に魅惑的ぃ♡ 禁断の果実ぅぅ♡」
女子はドン引きしている。この冷えっ冷えの空気、いつも通りって感じ (笑) 何だか逆に落ち着くわ (笑)
それにしても湖宵の姿が見当たらないな? 観客席の方かな?
「アハハw 三五ちゃん面白すぎw アハハハw」
「メイ、笑ってないで三五さんを応援して!」
「三五さま良いシバきっぷり! その調子!」
「三五さまが普通 (?) の女をシバいてる姿ってマジで最高よね♡」
「わかる♡ 暗い快感よね♡」
「三五さまはQ極TS女子しか愛せないんだから♡」
「みゃははははは♪ お、お腹痛いみゃあ♪」
「にゃははは♪ きょ、今日来て良かったにゃ! 今世紀で一番オモロイにゃ♪」
「ぷくくく……わ、笑っちゃ可哀想……にゃ♪」
身内の女性陣からは大ウケだ! でも湖宵の姿はどこにも見えない。どこに行ったんだろう?
まあ居ないなら居ないで良いか。こんなの見せたい訳でもないし。今の内にエロ姉ぇを堕としてしまおう。
バシィン! バシィィン!
「ほォォン♡ 良いわン♡ 三五きゅんの情熱、感じるわン♡ キクゥゥン♡」
エロ姉ぇはオレの与える刺激に慣れてきた様だ。その証拠にメリケン語じゃなくなってる。
加えて打撃によりブルマがケツに食い込んでいく関係上、布の厚みが増していくから威力が減衰しているんだよな。
ここは奥の手を出すしかない! 行くぞ!
まずはブルマに守られていない箇所に往復ビンタの要領で左右二連撃を見舞う!
バチバチィィン!
「ンヒィィィン♡」
反射的にエロ姉ぇの背筋がピンと伸び、尻が天高く上昇! その時オレのシバき棒は既に空に在り! 上昇してくる尻を叩きのめす為、神速で振り抜かれる!
これが! これこそが!
高波新陰流…………奥義!
「†断罪の逆十字† ~ッ!」
ズババババッッッチィィィィィン!
「ヒギィィィッ、ヒギィィィィィィィィィン♡ アオオオォォォォォォン♡」
ビクンッ。ビクビクンッ。ドサッ。
絶叫 & 絶倒。全身を何度も震わせた後、エロ姉ぇはバランスを崩して平均台から堕ち、マットの上にどどうと倒れた。
幸せそうな顔をしている。安らかに眠れ。
「「「うっ♡」」」
どどう。
他の三人の走者達もついでに地面にブッ倒れた。
コイツらはエロ姉ぇの乱れっぷりをかぶりつきで拝んでいたからな。前屈みになって倒れやがった。
これで残る障害は後一つ。
「ひっ、ひぅぅっ!」
平均台の上でプルプル震えながら怯える新入生、エロちぃちゃんだけだ。
クックックッ。春までは中学生だったってだけの事はあって、初々しい反応じゃねぇかよ。あ~ん?
手に持っていたシバき棒をポイッと捨てる。
怯える兎ちゃん相手にこんな物は必要無い。
「ひぅぅぅ……あ……あ……♡」
エロちぃに近付いて、その耳元に顔を寄せる。
「ふぅ~っ」
「ひゃぁぁぁぁン♡」
息を吹き掛けてやると、エロちぃはゾクゾクッと身震いし崩れ落ちそうになる。
そうはさせじとオレはエロちぃをガッと抱える。もう片方の耳にもふぅ~っ。
「ひゃぁぁン♡ おにぃさまァァン♡」
ガクガクガクガク~ンッ♡
腰砕け & 骨抜きになったエロちぃを、そっとマットに寝かせてやる。
これで平均台はクリアーだ!
最後の直線を一気に駆け抜け、ゴール!
「オレが一番だぁ~っ!」
パチパチパチパチパチパチ!
おお! 皆が祝福してくれている。
「アンタが一番だぜ!」「そうさ! 高波が一番!」「高波君が一番……」
「「「アンタが一番エロいよ! エロ兄ぃ!」」」
こうしてオレは学校で一番エロい男 “エロ兄ぃ” の称号を得たのだった。
ハッハッハッハ。チクショウ。何故こんな事に。 (自己欺瞞)
兎にも角にもこれにて障害物競争は終了。
オレ達走者はゲートをくぐって退場していく。
そこで待っていたのは……。
「三五。何やってるのさ……」
今までに見たことの無い表情をしている、湖宵。
「ボク以外の女の子にあんな事して……ッ!」
本当にグウの音も出ない。
でも湖宵のお尻をしばいたりする事の方がオレには有り得ないんだが……。
いや、言い訳無用。湖宵の怒りを真正面から受け止める。
それが今のオレがしなければいけない事だ。
「三五の……バカァァァ~ッ!」




