裏11話 繊月 湖宵 VS エロ姉ぇ④ ~ 最後に絶対愛が勝つんだから! ~ 高一 三学期
「ボクの真の姿を目に焼き付けたか! そしてボクと一緒に居た三五の幸せそうなカワイイお顔を思い出せぇ! 二人は誰にも引き裂けないエターナル☆カップルなのだぁぁ!」
「ええ、見たわン。三五きゅんに発情するアナタの顔もねン」
嫌な言い方すんじゃね~よ。
だがしかし、衝撃のカミングアウトにもエロ姉ぇは動じないな。そういう所は先輩っぽい。
エロ姉ぇの様子を見て逆に湖宵の方が焦ってきたみたいだ。
「た、確かに高校卒業まで女の子に戻れないけど……だけど色々事情があるの! ボクだって最初から女の子に産まれたかったし、三五にエッチなことだってしてあげたいよ! 当たり前だろぉ!」
切羽詰まった湖宵がオレにむぎゅうぅぅ~っと抱き着いてくる!
「三五はボクだけの……わたしだけのものなんだから……!」
「こ、湖宵?」
潤んだ瞳の湖宵が顔を近付けてきて……。
「んっ……♡」
唇をオレの唇に重ねてきた!
突然のサプライズキス!
「んきゃぁ~っ♡」「すごいっ♡ すごいぃ♡」「うあぁぁ~! 見ちゃったぁ!」「じぃ~っ」
熱狂する女子!
「うおっ!?」「うおお……」「うおおお……おお……」
困惑する男子!
「こ、このキスはっ……! かなりやり慣れてるわねン! 湖宵ちゅわン!」
初めて目の色が変わるエロ姉ぇ!
大騒ぎになっているが、その喧騒も次第にオレの耳には入らなくなる。
オレにとって嬉しすぎるサプライズだからだ。
クリスマス以来のキス! あぁ、嬉しい!
特別な日にしかしちゃダメなんだろうな~と残念に思っていた所に、湖宵からキスをしてもらえたとあっちゃあ、周りに人が居ようが居まいが関係無い! 心行くまで堪能しなきゃ!
「んっ♡ んん~っ♡ んむむむ~っ!?」
キスだキスだぁ!
久し振りにキスにありつけたオレは、湖宵の唇に吸い付きまくる。
「ん♡ んむむぅ♡ くぅん♡ くぅぅん♡」
呼吸が出来ないくらいに激しくキスをしてやると、湖宵が鼻を鳴らし始める。この鳴き声がま~たカワイイんだよなぁ♡ クックックッ♡
「ンぁぁぁ~ンッ♡ 三五きゅんのキス、ドS過ぎりゅうぅ~ン♡ ウ、ウ、ウチにもっ♡ ウチにもキスしてぇぇ~ン♡」
外野が五月蝿ぇ。しかしドSか。久々のキスに興奮してちょっと暴走しちゃった。
お詫びに湖宵の頭を撫で撫で。
「湖宵、キスしてくれてありがとう。嬉しかったよ」
「そそそ、そんな三五ぉぉ~♡ み、皆が見てる前でぇぇ~っ♡」
テレテレしてる湖宵可愛い! ぎゅ~っと抱き締めちゃう!
「可愛いよ湖宵! 愛してるぅ~っ!」
「あっあ~っ♡ 三五ぉ♡ ボクも……わたしもぉ~♡」
「「「「キャ~ッ♡」」」」
「な、生BLよぉぉ~っ♡」「しゅごぃぃ♡」「エロい~っ♡」「どさくさ紛れに言うわ! 私にもチューして♡ 三五さまぁ~っ♡」
オレのセリフで女子達の狂乱が最高潮を迎える! エロ姉ぇ程じゃないにせよ、口から何かを飛ばしながら拳をブン回している。
「キ、キスってあんななの……!?」「や、やだぁ……」「き、きゃ~っ」「ぼ、僕恥ずかしくて見ていられない……!」
逆に男子達は愛情たっぷりのキスを直視出来ないらしい。男同士のキスだし尚更か。
でも今のオレに周りなど関係無い。
そのまま放置して数分間たっぷりと湖宵とイチャイチャする。
「ふぅ~♡ 良かったぁ~♡ 久々に気持ちスッキリだぜ!」
なんて晴れやかな気分。
エロ姉ぇの言う通り、オレは欲求不満だったみたいだ。
流石はエロの権化。言葉に含蓄が有るな。
「ふぁぁ~♡ さんごしゅきぃ♡ んふぅん♡ さんごしゅき♡さんごしゅき♡さんごしゅき♡さんごしゅき♡………………」
湖宵は虚ろな瞳でうわ言を繰り返している。全身の骨が溶けたみたいに力が抜けて、オレが身体を抱っこしていてあげないと床にベチャッと倒れてしまいそうだ。
幸せそうにトリップしているが、こんな状態ではもう湖宵はエロ姉ぇに立ち向かえないだろう。
しかし! オレは湖宵に勇気を与えてもらった! エロ姉ぇと対決するための勇気を! 後はオレに任せてゆっくり陶酔しててね♪ 湖宵♪
決着を着けるべくエロ姉ぇの方を向く。
うわぁ。ヨダレをマーライオンみたく、だくだく垂れ流していやがる。それがシャツの胸元に盛大にかかっている。ちったぁ何とかせんかい。
「ンはぁぁ~♡ ンはぁぁン♡ さ、三五きゅんのドSキス最高ォン♡ それにアフターケアのハグや撫で撫でもイイわン♡ ウチにも味わわせてぇぇン♡」
なんて欲望に正直な女だ。でもエロ姉ぇをここまで昂らせられるとは、オレのマジキスは相当スゴかったようだな。
女子達の口元もおつゆで汚れているし、男子達は赤面しつつ内股になっている。
まあそんなことは置いておいて。
「エロ姉ぇ! 確かにオレは欲求不満だった! 好きな女の子……こよいが男の子の姿になってるんだからな! 当然っちゃあ当然だ!」
その部分はどうしても否定出来ない。だってオレはこよいに一生ものの恋をしているんだから。触れ合いたいと思い、恋焦がれるのは至極当たり前。
それが顔に出てたからエロ姉ぇが寄って来たんだろう。
「だがな。それでもオレが求めているのは、こよいだけなんだ! 姿が男の子でもそれは覆らん! 湖宵じゃなきゃダメなんだよぉっ!」
「ウチじゃ……どうしてもウチじゃダメなのン?」
「ダメだね。アンタは整った顔をしているし、男好きするスタイルもしているさ。だがオレの欲求不満を晴らせるのは、湖宵だけなんだ!」 (最低決めゼリフ)
「ンひぃぃぃン♡ そ、そんなにスッキリしたお顔で言われたら、グウの音も出ないわぁぁンッ! く、悔しいぃ~ンン♡ ンほおぉォ~ン♡♡」
ガクッと膝をつくエロ姉ぇ。
だが何故悶える必要があるのだ?
「さ、最後に、最後に一つだけ聞かせてぇンッ! ドSSSな三五きゅんがオンナ日照りのまま、卒業まで我慢できるのぉン!? せ、せめて一晩だけでもウチと浮気してくれなィン!? 性○処理代実質0円 (ホ別) よン!?」
「くどいぞ! 湖宵は一生を共にするパートナーなんだ。そう思えばたかが二年の我慢なんて何てことはない。その後の人生でたっぷり可愛がってあげればお釣りがくるからな」
それに高校生活は幼馴染みの男友達、湖宵との最後の思い出になるんだ。
昔からの友情もオレは大事にしたい。
どちらの気持ちもオレの真実だ。
「くぅぅンッ。触れ合えない期間も三五きゅんにとっては前戯にすぎないのねン。一生かけて一人のオンナを支配したい……そして自分も束縛されたい。それがアナタの “愛” なのねン。……負けたわぁン」
嫌な解釈の仕方をするんじゃね~よ。やはりこの女とはわかり合えない。
ゆっくりと立ち上がり、フラフラと教室から出て行こうとするエロ姉ぇ。
教室の扉に手をかけ、エロ姉ぇは最後にオレに振り返った。
「今日の所は引き下がるけど、三五きゅんがムラムラしてたらウチは何度だって誘惑するからねン。あわよくば良いオトコと懇ろになりたい……それがウチのポリシーだから!」
言いたい放題のエロ姉ぇ。最後にフッ、と自嘲気味に笑みを浮かべた後、もう一言残して彼女は去っていった。
「湖宵ちゅわンのキス顔、エロかったわン。きっと彼……ううン、彼女は三五きゅんの前でだけ、甘えんぼで誘い受けなドMメス猫ちゃんになるのねン。……アナタ達、お似合いよン。悔しいけどねン」
も~ちっとマシな捨てゼリフを吐いてから消えてくれませんかねぇ……。
「高波君。私達、誤解してたみたい。ごめんね」「高波君はエロいけど安全なんだね!」「湖宵様を取られちゃうのは残念だけど……あそこまでの覚悟を見せられちゃあ、ね」
「高波……サン。アンタ凄ぇよ……」「好きな女が男になっても愛せるなんて……」「女の子になった繊月のあの幸せそうな顔を見たら、祝わざるを得ないぜ」「悔しいけどな」
お? お? エロ姉ぇが去ると、遠巻きにしていたギャラリー達がオレ達の周りに集まってきた。
オレ達を暖かく迎えてくれて、祝福の言葉さえかけてくれる。
「ふにゃぁ~♡ 三五ぉ~♡」
蕩けた湖宵のサラサラな髪を優しく撫でる。色々と苦戦を強いられたが、学校という場所が湖宵にとって居心地の悪い場所にならずに済んだようだ。
エロ姉ぇを愛の力で退けられたのが功を奏した。
雨降って地固まる。
この日から、オレと湖宵は学校の名物カップルとなったのだった。




