裏9話 繊月 湖宵 VS エロ姉ぇ② ~ 三五きゅんはクラクラ♡フェロモン♡マシンなのン! ~ 高一 三学期
「いい加減にしろぉぉぉ~っっ!」
教室中に響き渡る湖宵の怒声。
湖宵がこんな風に怒りを露にするのは珍しい。
もしかしたら生まれて初めてかも知れない。
「まだ居たのン? モブキャラきゅん」
「うるさいっ! 三五には将来を誓い合った恋人が居るんだっ! 噂されてる様なふしだらな男性じゃないっ! お前が近付いて良い人じゃないんだっ!」
「そうなの?」「なら何であんなにエロいの?」「繊月君怖い……」「うん。いつもの繊月君じゃないよね……」
オレには心に決めた人が居るという初公開された情報と、鬼気迫る湖宵の剣幕で、女子生徒達の間に戦慄が走った。怯えている子も居る。
だけど肝心のエロ姉ぇは眉一つ動かさず不敵な表情を崩さない。
やっぱりこの女は手強い……!
「湖宵……」
「大丈夫。三五、ここでケリを着けるから。全部ボクに任せて。」
湖宵の瞳に決意の光が宿る! 戦うつもりなんだ、エロ姉ぇと!
恥ずかしいがオレは逃げ出す事しか考えられず、立ち向かおうだなんて思い付きもしなかった。
オレもエロいエロいと言われてきたが、エロ姉ぇのエロさは次元が違う。人間のエロさじゃない。多分サキュバスだと思われる。もしくはQ極TSしたインキュバスだろうか。
そんなモンスターと真正面から戦うなんて……。オレを守る為に……。湖宵ってばカッコ良すぎる。きゅぅんと胸が高鳴る。
素敵ですぅ♡ 湖宵さまぁ♡ (精神TS)
「アナタ三五きゅんの何なのン? いつも側でチョロチョロしてるけどン?」
「ボクは三五の幼馴染みの繊月 湖宵だ! 三五の事なら何だって知ってる! 恋人を心から愛してるってことも!」
「心から……ね。はン。そんなの嘘ねン」
「なっ!?」
湖宵の言葉を鼻で笑って否定するエロ姉ぇ。
何故だ? 何故そんなにも確信を持って言える?
湖宵は怒りよりも困惑が先に立っているようだ。もちろんオレも。
「ぜ~んぜん信用出来ないわン。ホント~に三五きゅんにそんな人居るのン? ま、もし居たとしても三五きゅんには相応しく無いわねン」
「な、何を根拠にそんなことが言えるっ!? 三五の何を知ってるって言うんだっ!」
「三五の事なら何だって知ってる? ウフン。アナタこそ知らないのねン。ウチが何回ソデにされても三五きゅんを誘い続けたワケを。そこに答えがあるのよン」
嫌だぁ。そんなの知りたくない。でも聞かなきゃいけないんだろうなぁ。
「三五きゅんの女性遍歴なんて興味ないわン。例え噂通りに何十人の女をヤリ捨ててようと、アナタの言う通りたった一人の女にお熱だろうが関係ないわン。だってその女達は誰一人、三五きゅんを満足させられなかったんだからねン」
それは違う! オレは夏休みに女の子のこよいと結ばれて、最高に満足してる! 最後の一線は越えられなくても、甘美な思い出をたくさん作れて非常~に幸福だ!
それに男の子の湖宵とも、毎日楽しく仲良く恋愛している。
エロ姉ぇの言葉は見当違いだ!
へし折られていた反骨心がここに来て復活!
湖宵と一緒にビシッと反論して追い払おう!
そう思って口を開いた瞬間。
「そう! 三五きゅんは欲求不満なのよン! それも相当なレベルのねン!」
えっ……!? オレが欲求不満……!?
よりにもよってエロ姉ぇにそう言われてしまうと、驚きで二の句が継げなくなってしまう。
「三学期に入ってからは特に顕著よン。いっつもムラムラ♡ しててイヤらし~いフェロモンをプンプンさせちゃって。その証拠にいつまで経っても、三五きゅんがエッチだって噂が消えずに流れ続けてるでしょン? オンナは鼻が利くのよン♪」
そ、そんな……っ!
エロ姉ぇの言葉を否定したくてすがる様に女生徒達に視線をやると、彼女達はうんうんうんと力強く頷いていた! 何度も何度も!
「あ……あぁっ……っ」
「さ、三五ぉ! 大丈夫!?」
フラつくオレを湖宵が支えてくれる。でももう、オレはダメかもしれない。
「皆、酷いよっ! 三五をイジメるなっ!」
「だって高波エロいんだもん……」「だよねぇ」「右に同じ」「目に毒よね」「身の危険を感じるくらいだったものね」
「まぁ、男の子のアナタにはわからないわよン。三五きゅんの匂い立つエロさはねン♡ はっきり言って女性向けのエロ同人誌の擬人化、と言っても過言では無いレヴェルよォン♡♡」
ズガガガガガアアァァァン!!!
エロ姉ぇのその発言は、未曾有の衝撃となってオレの頭蓋骨を貫いた。
足から力が抜けて、オレはその場にペタンと座り込んでしまった。
「三五ぉぉ! しっかりぃぃ!」
湖宵がオレの肩をユサユサ揺すってくる。
だけどもう無理だよ……。もう二度と立ち上がれる気がしないよ……。
だって……だって……この世のエロスを凝縮したみたいな存在に言われたんだよ!? オ、オ、オレはエ、エロ本の擬人化だって……!
そこまで断言されたら絶望するしかないよぉっ! 泣きそうだよ! 実際人目がなかったら、わあぁって声を上げて泣いてるよ!
心が磨耗して小さな女の子レベルの強度になっているのがわかる。
ううぅぅ~っ。違うんですぅ。三五は、そんな子じゃないんですぅ……。(精神TS)
こんなにも打ちのめされているオレに、更なる追い討ちをかけようとエロ姉が前に出てきた。
「男を求め狂い咲く女と……」
エロ姉ぇが左手の人差し指と親指で、水の雫の様な輪っかを作る。
「女を求め猛り狂う男が会する……」
反対の右手の中指をピンと立てる。
「この出会い、運命でしょォン♡」
左手の指の輪っかに右手の中指を入れる。
何度も何度も抜き差し。
ヒイィ~ッ!
目を血走らせたエロ姉ぇが近づいてくるぅ!
イヤアァ! 来ないでぇ! (精神TS)
「三五は……ボクが守るんだっ!」
「繊月きゅん。アナタはその名の通り “欠けている” 男の子なのよン。女の子への情欲という欠片が……ねン。そんなアナタとは一生わかり合えないわン。そこを退きなさいン」
湖宵がオレを守る為にエロ姉ぇの前に立ってくれている。
その身はワナワナと震えていた。
「ボクは……ボクは……ッ!」
「……!? 湖宵、待って!」
あまりにも打ちひしがれていたオレは、湖宵が叫び出すのを咄嗟に止める事が出来なかった。
「ボクは女だあぁぁ~~っっ!」
「「「「えっ!?」」」」
湖宵の爆弾発言。
それは平和で穏やかな湖宵の高校生活を粉々に破壊する、文字通りのメガトン級爆弾だった。




