裏1話 高波 三五=エロいという風説① 高一 二学期
※裏話ではTSヒロインこよいちゃんが男の子の姿に戻っています。
ここからは湖宵と過ごした高校生活の中で起きた事件や、楽しかった行事についてのお話をしよう。
早速だが新学期に入って早々に、オレこと高波 三五さんは重大な悩みを抱える羽目になった。
その悩みとは……。
「高波君、夏休みデビューしてる! エロい!」
「本当だ! 超エロくなってる! ヤバい!」
「見るからに色気ムンムンしてる……夏休みに何してたのよ。イヤらしい……」
「高波、夏休みに別々の女の子とデートしてた! 私見たもん!」
「私も見た! しかも一人や二人じゃないのよ! どの娘もアイドルみたいに超絶可愛かった!」
「最低!」 「女の敵!」
「変態!」 「ドスケベプリンス!」
「目を合わせちゃダメよ。妊娠させられちゃう!」
「美少女を取っ替え引っ替え出来るのなら、相当凄いんだろうなぁ。ゴクリッ」
女子達による風評被害の嵐イイィィ~!!!
しかもウチだけじゃなくて、他のクラスの女子も混じってんの!
オレがお前等に何したよ! 何もしてねーだろ!
セクハラはおろかエロい目で見た事すらないのに、何~でエロいエロいエロいエロい言われなきゃイカンのだアアアァァ!
バーカ! 女子バァーカ! クッソガアアァ!
始業式が終わったら、オレと湖宵は速攻で帰宅。
オレは一旦家で私服に着替えると、すぐさま家を飛び出して湖宵の家に遊びに行った。
今のオレを癒せるのは湖宵だけだから。
湖宵にソファーに座ってもらい、オレはその膝に顔面からダイブする。
そして膝枕に顔をモフモフグリグリ埋めながら、オレは不平不満をブチまけるのだった。
「何だよ! あの女子共は! イキナリ人をエッチ呼ばわりしてさぁ! あいつ等に変態呼ばわりされる筋合いは無いぞ!」
「三五、落ち着いて~。良い子良い子~」
はぁ~。湖宵に頭を撫で撫でしてもらうの、落ち着くわ~。
「あのさ、三五。女子が三五をエッチって言うのは、変態って意味じゃないと思うんだよ」
「え~? じゃあ他にどんな意味があんの?」
湖宵のフトモモに埋めていた顔をグリンと180度回転させて、思案気な湖宵の顔を見つめる。ご意見を聞かせてもらおう。
「三五はさぁ、夏休み前より、その……い、色っぽくなったからさ。皆、セクシーって意味で言ってるんだと思うよ」
「はぁ~~?」
湖宵がモジモジしながら言うその言葉に、全っ然納得出来ない。
せ~くすぃ~? このオレがぁ~?
「本当だってばさ! 三五、朝にランニングとかしてるんでしょ!? 最近みるみる男の人の身体って感じになってボク、ドキドキしてるんですけど!?」
力説されてしまった。うう~ん。自分ではよくわからんが、男の色気が身に付いたってこと?
今は男の子の身体だけれど、湖宵の心は女の子のまま。その湖宵が言うんだからそうなんだろう。
何といっても、こよいとの恋愛経験がオレを変えたんだから。
「でもさあ。オレが沢山の女の子と付き合ってるって噂はどこから出たワケ? オレ、夏休みはずっとこよいと一緒だったんですけど?」
「ごめんなさい……それ、犯人ボクです……」
申し訳なさそうに、湖宵がスマホを見せてくる。
映っているのはワンピースを着ているこよい。
清純なイメージで可愛い。
湖宵がスマホをスワイプしていくと、次々と画像が切り替わっていく。
キュロットスカートのカジュアルこよいに、お淑やかな浴衣こよい。ミニポニーテールのアクティブこよいに、ファンタジックなゴスロリこよい。
夏休みの思い出が甦るなあ。どの衣装のこよいもとっても可愛い。
こうして見ると着る衣装によってこよいの印象がガラッと変わるなぁ…………ってああ~っ!
「そうか! 皆、色々な格好をしたこよいを別人だと勘違いしているんだ!」
「うん。ボク、女の子になれて嬉しかったから色々なお洋服が着たくて……。そのせいで三五が酷い事言われちゃった。ゴメンね……」
湖宵がシュンとしてしまう。
何も悪くないのに……。
「あのさ三五。ボク、皆に話して誤解を解くよ。夏休みに三五と一緒に居たのは、全部Q極TSしたボクだって……」
「それはダメだよ、湖宵」
Q極TS女子は周りに受け入れられにくく、腫れ物に触る様な扱いを受ける傾向にあると、アンお姉さんから聞いている。
残り二年半以上もある湖宵の高校生活を居心地の悪いものにしてしまう訳にはいかない。
「でもそれじゃあ三五が……」
「オレはもう、こよい以外の女の子に何を言われても気にしないよ。それにさ、悪い男だと思われていれば他の女の子が寄って来ないから湖宵も安心でしょ?」
肩を落とす湖宵の頭を撫でながら、優しく諭す。
「ありがとう、三五。三五がもしも辛くないのなら、甘えても良いかな……?」
良かった。湖宵の表情が柔らかくなった。
「勿論さ! 代わりに湖宵はオレをたっぷり慰めてよね!」
「わっ、わわわぁっ!」
湖宵のフトモモにモフモフスリスリ。
ああ~、落ち着くなあ。
「も、もう。甘えんぼだなぁ、三五は♡ 大人っぽくなった三五に、こ~んな風に甘えられたらドキドキ♡キュンキュンするよぉ~♡」
湖宵が顔を赤らめて大興奮している。
オレの方は対照的に夢見心地。
嫌なことなんてすっかり忘れてしまった。
しっかし男の子の湖宵の膝枕、すっごく落ち着くなぁ~。
女の子のこよいの膝枕は、ぷにすべ柔肌と甘~い匂いがオレの理性をジワジワ殺しに掛かって、全然落ち着かないんだよね。
男の子の姿の湖宵相手なら、過剰にドキドキしたりはしない。膝の感触もしなやかで弾力が有り、高さもちょうど良い。
「はぁ~。良い。癖になるなあ、コレ」
「癖になっちゃダァァァメェェェェ!」
突然大声を上げた湖宵が横に高速スライド移動!
「はぶぅっ!」
湖宵の膝に乗っけていたオレの顔面が、ソファーにボフンと落下!
「ちょっと三五! ボクはいずれ女の子に戻るんだからね!? 男の身体に耽溺しないでくれる!?」
「オレは今、傷心中なのに! フトモモをモフモフさせろ! 頭を撫で撫でして慰めろ!」
ギャーギャー言い合っていると、部屋のドアがガチャッと開いた。
「お茶持ってきたわよ~。って、あら? 二人共、何騒いでんの?」
ちょうど良い。
メイお姉さんにも説得してもらおう。
「聞いてよ! 湖宵が膝枕してくれないんだよ!」
「あらぁ♪ ダメよぉ♪ お坊っちゃま♪ お坊っちゃまは三五ちゃんのお嫁さんでしょ♪ 人目を憚らずにイチャイチャしまくらないと♪」
「だからメイ姉さん、ボクが女の子だった時と、言ってること違くない!?」
賑やかに、楽しく時が過ぎていく。
湖宵やメイお姉さんがいつも一緒に居てくれるし、アンお姉さんとも最近良く遊ぶようになった。
学校の女子達に悪く言われるくらい、何てことはないさ。
気持ちを切り替えて、学業やスポーツに専念する日々を送る……そんなオレを悩ませる事態がまたも発生してしまうのだった……。




