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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
運命の日 こよいの憂い 三五の誓い
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第80話 繊月 湖宵  9月 1日  新しい日々、新しい魔法

 新しい一日が始まる。


 目覚まし時計が鳴るよりも早く起きて、あくびをしながらランニングウェアに着替える。

 今やすっかり早朝ランニングが習慣になった。


 外でたっぷりかいた汗を家に帰ってシャワーで流す。すると新学期を迎えるに相応しい爽やかな心持ちになれた。


 クリーニングに出しておいた制服に身を包み、リビングに下りて朝食をモリモリ食べる。

 一日の活力がグンと湧いてきた! 


 さあ、登校の時間だ。


 「父さん母さん、行ってきまーす!」


 「新学期も頑張りなさいよ!」

 「しっかりな!」


 通学路を軽快な足取りで歩んでいく。

 今日もいい天気だ。まだまだ暑いけどね。



 あっという間に繊月(せんげつ)家に到着。


 見慣れた姿が大きな門を背に佇んでいた。


 オレと同じ制服を着た細身の美少年。

 たった一月その姿を見ていなかっただけなのに、胸に懐かしさがこみ上げてきた。


 「やあ、おはよう湖宵!」


 「う!? う、うん。お、おはよう ↑ 三五ぉ ↑」


 ん? どうしたんだろうか? 笑顔で挨拶しただけなのに、湖宵ときたら顔を赤らめてしどろもどろになっている。


 「どうしたの? おかしな湖宵だね」


 「ううぅ!? はあぁぁぁ~……!」


 湖宵のサラサラな髪を撫で撫でしてあげる。

 女の子(こよい)の時よりも髪の長さが短くなっているのは、Q極TS時に縮んだのか散髪したのか。

 どちらにせよ、指をくすぐられる心地よさに変わりはない。


 「気持ち良さそうにしちゃって。ん~♪ 可愛いね、湖宵」


 「ちょっ! ちょおぉぉ!」


 湖宵のおでこにオレのおでこをくっ付けてグリグリする。


 当然ながら湖宵の背は女の子(こよい)の時より高くなっている。

 オレよりも頭半分ほど小さいが、高一男子の平均身長は優に上回っている。

 なのでおでこグリグリが非常にしやすい。

 新発見だ。


 「ちょま、待ってよおぉぉ~っ! ボク今、男の子なんだよ!? 三五、何でイケメンムーヴ続行してんの!? おかしくない!?」


 「おかしくない。男は好きなコの前ではイケメンになるのサ。ましてや可愛いお嫁さんの前ではなおさら、ネ」


 「ホモなの!? 三五、ホモなのぉ!?」


 「知れたことよ。オレはホモさ。湖宵を愛する為なら何と呼ばれても構わないとも」


 「んぁぁ~っ! 嬉しいけど! 嬉しいけどぉっ!」


 大袈裟に頭を抱えて身悶える湖宵。

 どうやら男の子の姿になったらオレの態度が変わると思っていたみたいだな。

 でも何故リアクション芸人の様に身悶える必要がある?


 「湖宵、オレは結婚って言葉を何の覚悟もなく口にしたりはしないよ。湖宵が男に変わろうが変わらず愛し続けるし、例えば湖宵のご両親が将来呆けたとしても、笑顔で下の世話が出来る!」


 そう、それが結婚するにあたって必要な覚悟だ。


 「さ、三五の覚悟凄すぎりゅぅぅ~っ! 男の子の時にイチャイチャしてもらえると思ってなかったから、ちょ~ビックリだよぉ~っ! うわあぁ~っ!」


 「おはようのキスもしてあげられるよ? 湖宵」


 「うっ!? ううぅぅ!?」


 形の良い湖宵の唇に、ゆっくりと唇を寄せる。


 手は湖宵の背後の壁に当てる。壁ドンだ。しかも相手の実家の。実家べドンだ。


 「ダッ、ダメ! そ、そういうのは女の子(こよい)の時だけにしてっ!」


 パッと離れる。

 残念だけど、湖宵がそう言うのなら仕方が無い。


 

 「うふふ♪ うふふふ♪」


 ん? 陰からこちらを見ている人が居る。

 あれは、繊月家の有能お手伝いさんの彩戸(さいど) メイお姉さんだ。

 何だか凄くイヤらしいニヤニヤ笑いをしているんだが?


 「メイ姉さん! ちょっと! 何で今、止めてくれなかったの!? 女の子(こよい)の時にはめっちゃインターセプトしてきたのに!」


 「お姉ちゃんねぇ♪ お坊っちゃまと三五ちゃんが、男の子同士で仲良くしてる所を見るの、ちょ~大好きなのぉ♪」


 「あっち行ってよ! もう!」


 湖宵に追い払われて、ウフフ笑いで退散していくメイお姉さん。


 「あ、あのっ! ごめんね三五! でも三五には女の子を好きなままでいて欲しいから! もし三五が男の子の方が好きになったら泣くに泣けないよ!」


 そりゃあそうだ。

 湖宵とスキンシップしているウチにオレが男色に目覚めてしまったら、女の子の姿に戻れなくなっちゃうよな。


 「だからラブラブとかイチャイチャとかは全部女の子(こよい)になったボクにしてね? ね?」


 「わかったよ、湖宵。じゃあ卒業までは友達のままで」


 「うん! 友達のままで!」


 「それじゃ手を繋いで学校に行こうか、湖宵」


 「全っ然何っっっにもわかってないよおぉ~っ! 三五おぉぉ! “わかったよ” って一体何がわかったんだよぉっ!」


 湖宵はその場で地団駄を踏む。


 「今の世の中では男同士が手を繋いで歩いていようが、何ら不思議ではないのだよ! Q極TS手術という技術は友情という概念すら変えてしまったのさ!」


 「なっ、何だってえぇ~っ!」


 言っておくがこれはマジだ。


 心の形に従って自分の性別が選べるこの時代。

 人々は以前よりも同性愛に寛容になったのだ。


 「だからホラ、手を出して。遅刻しちゃうよ」


 「うっ、ううぅ~……」


 おずおずと差し出される手をぎゅっと握る。


 女の子(こよい)の手のぷにすべな感触とは違うけれども、これはこれでイイ!


 「うぅ~! こ~ゆ~のは卒業までお預けだって思ってたから不意打ちだよぉ! ね、ねえ、あのさあ! 例えばさあ! キ、キスとか! ほっぺにするのはアリかなあ!? 友達同士でもさあ!」


 「アリさ! そんなの全然アリに決まってる!」


 「うっひゃあぁ! マぁジでえぇ~っ!?」


 ピョインピョイ~ンとその場でジャンプをする湖宵。相変わらずハイテンションだなあ。


 

 幼馴染みの男友達が美少女にQ極TSし、恋人になり、昨日結婚して夫婦になった。


 それが今日は天才Dr.グレースのかけた魔法が解けて、湖宵は幼馴染みの男友達に逆戻り。


 だけど何もかもが夏休み前に戻ってしまった訳じゃない。


 だってオレは湖宵に新しい魔法をかけてあげられるから。


 「湖宵っ! 大好きだよっ!」


 「も、も、もぅ♡ ボ、ボクだって三五のこと、だぁい好きに決まってんじゃあぁ~ん♡」


 オレ達二人が楽しくて幸せに満ちた唯一無二の高校生活を送れる……そんな魔法をね。


 繋いだ手を力一杯握って、通学路をダッシュ!


 真夏の太陽みたいな笑顔で、オレ達はどこまでもどこまでも走っていくんだ。

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