第68話 繊月 こよいと寄り添いラブラブデート [羅武覇篇] 陰
ピエロ姉さんの先導に従い園内をテクテク歩く。
その際にマスコットキャラをチラホラ見かけた。
彼等は動物がモチーフのキャラクターで背中にキレイな羽根がついているのが特徴だ。
だからフェアリーと呼ばれている。
フェアリーはカップル達に園内の案内をしてあげたり写真を撮ってあげたりと、まめまめしく働いている。確かにこれは恋を応援する妖精の姿だ。
着ぐるみ呼ばわりなんて悪いことをしてしまった。
こよいに怒られるワケだ。
「着きましたよ~♪ お好きなお席にどうぞ♪」
イベントステージに到着した。
なるべく前の方の見やすい座席を選んで座る。
本当にカップル達に人気があるらしく、最前列は既に埋まっていた。
フェアリーステージ。
どんな内容なのか想像がつかないな。
こよいと二人でワクワクしながら待っていると、ステージに魔女の格好をしたお姉さんが現れた。
『只今より、大人気♪ フェアリアル☆ラブリーステージの開幕で~す♪』
♪ ~ ♪ ~ ♪ ~ ♪ ~ ♪
ポップで可愛らしい曲が流れると同時に、舞台袖からたくさんのフェアリー達がわらわらとステージに上がってきた。
「わぁ~可愛いっ♪」
こよいもニッコリの可愛らしさ。
大きなクマフェアリーや、イヌフェアリー、ウリボウフェアリーなんてのも居て個性的だ。
『今日もた~くさんのカップルさんにお集まり頂いてますね~♪』
『そうですね~、魔女さん。それに今日は初めてラブパにご来場された、と~っても初々しいラブラブカップルさんが居るんですよ~♪』
魔女姉さんの相方はまさかのピエロ姉さん!
アンタいつの間にステージに上がった!?
『え~? どこどこ?』
『ホラ、前から3番目の列の……』
『あ~♪ ホントだ♪ なんて可愛らしいカップルさんなのかしら♪』
壇上ではオレ達の話で盛り上がってる。
う~ん、嫌な予感。
『キレイな三日月バレッタがお似合いの素敵なお嬢さん♪ 良ければステージに上がってきてもらえませんか? 是非ステージにご協力下さい♪』
「えっえ~っ? どうしよう、三五ぉ?」
予感的中だ。でもお気に入りのバレッタを似合ってると褒められて、こよいも満更ではないご様子。
「こよいが良いなら行ってきたら? オレはここで見てるから」
「う、うん♪ 行ってくるね♪」
こよいがステージに向かって歩いていくと、フェアリー達がお出迎えしてくれる。
フェアリー達は我先にとこよいをエスコートしたがり、押し合い圧し合いして団子状態だ。
まるで子供向けアニメの様な光景だなあ。
「あははは♪ そんなに押さないで♪ えっ? ここに座れば良いの?」
ステージ中央にデーンとある、玉座の様に立派な椅子に座らされるこよい。
フェアリー達はその周りをお花で飾ったりこよいを団扇であおいだりと、精一杯のおもてなしをしてくれる。
「あら~♪ わたしってばお姫様みたい♪」
ご満悦のこよい。
オレもこよいがお姫様扱いされて気分が良い。
『と~っても可愛らしいお嬢さんですねえ♪ カレシさんってば幸せ者ね~♪ お名前は何て言うんですか~?』
『えへへ♪ こよいです♪』
『こよいさんっ♪ お名前も可愛らしい♪』
おや? ステージで魔女姉さんとこよいが話している横で、フェアリー達が何やらコソコソやっているぞ? 手に花束やらプレゼントやらを持ち寄って、これから始まるショーの準備かな?
「「「「こ、こよいさんっ!」」」」
『へ?』
な、なんだかフェアリー達の声が見た目と違って野太いぞ?
「めっちゃ可愛いっすね!」
「オレ、オレ、一目惚れしちまいました!」
「どこ住みっすか!?」
「ラウィッターやってます!?」
「この後オレらと遊び行きません!?」
んな……!? フェアリー……いや、クソ着ぐるみ共が一斉にこよいに言い寄ってやがる!?
開いた口が塞がらないというか、予想外すぎて頭が一瞬真っ白になってしまったオレだった。
『イ゛イ゛ィィヤ゛ア゛ァァ~ッッ!!!』
はっ! こよいの悲鳴!
客席で呑気に呆けている場合じゃないぜ!
急いでオレもステージに上がらないと!
『おおっと! 彼らは “非モテフェアリー” ! 恋人が居ないからって、ご来園のカップルをナンパしたりちょっかいをかけたりする不良フェアリーだ~!』
魔女姉さんが説明している間にステージにたどり着いた。
しかし何じゃそりゃあ!? そんなのネットにも雑誌にも載ってなかったぞ!?
『おおっ! カノジョのピンチにカレシが駆けつけたぞお♪ さあカレシさん♪ 彼らに一言バシッと言ってやって下さい♪』
ピエロ姉さんからマイクを渡される。
すぅ~っと息を吸って、オレは怒声を放った。
『オイコラバカヤロウ!! 着ぐるみバカヤロウ!! 恋人のオレの前でこよいを口説くなんざ許せねえ!! こよいの愛する男はこのオレ、高波 三五だけだ!! わかったかバカヤロウ!!』
『キャーッ♡ 三五素敵~っ♡』
「「「おお~っ! 言うねえ~!」」」
こよいと観衆がワーッと歓声を上げる。
非モテフェアリーはオレの一喝と場の空気に怯むも、その場から立ち去る様子がない。
「何だよぉ! 少しくらい良い目見ても良いじゃんかよ!」
「マジでアイドルより可愛い娘を独り占めとか、許されざるよ!」
「そーだそーだ!」
「美少女独禁法違反だ!」
口で言ってもわからねえようだな……!
ならば力尽くでこよいの視界からフェードアウトさせてくれる!
『三五さん、これを使ってぇ! “フェアリーシバき棒” よ!』
魔女姉さんからクッションのついた竹刀みたいなモンを渡される。
成る程な。これなら怪我をさせることはない。
更にピエロ姉さんがオレに寄って来て耳打ちをする。
「非モテフェアリーのスーツには水がたっぷり入ったバッグがあちこちに入ってるの♪ 衝撃を吸収してくれるし、動き辛いし、殴り放題ですよ♪」
良いこと聞いたぜ~! 本気でやってやる!
「こよいから離れろゴラァ!」
バシーン!
「アア~ッ!」
「離れろ離れろ離れろぉ!」
バシバシバシィーン!
「ア~ッ!」
「アッア~ッ!」
『頑張れ三五さぁ~ん♪ 悪の非モテフェアリーをやっつけろ~♪』
『ROCK'n Roll Time!』
ジャガジャガジャァ~ン♪
ドゥン♪ ドゥン♪ ドゥン♪
ステージのBGMがハードなロックに変わった! 燃えるぜ!
「頑張れ~!」 「負けるな~!」
「こよいちゃんを助けてあげて!」
オーディエンスの皆さんも応援してくれる!
ありがとう!
『きゃあ~っ♡ 三五♡ カッコイイ♡ こんなキモい着ぐるみなんか、やっつけちゃえ♡』
何よりもこよいの熱いエール! 無限の力が湧いてくるぜ!
「行くぜぇ! † 高波新陰流【風浪】 † !!」
全身の力を使ってフルスイング!
バシンバシーン!
「ギャッ!」 「アオーッ!」
パンダ、オオカミの大物フェアリー2体をステージの上に転がしてやった!
ウォーターバッグが入っている着ぐるみは相当重いらしく、一度倒れてしまっては起き上がるのは見るからに困難そうだ。
「まだ……だ……!」
「ここで起きればワンチャン……!」
起き上がろうとする非モテフェアリー達。
その根性は認めよう。だがしかし。
『ワンチャンなんかあるワケないでしょ!? キモい! わたしは三五だけのものなの!』
ステージのスピーカーから大音量で流れる拒絶の言葉。
起き上がろうとした2体は力を失いそのまま沈んでしまう。立っているヤツも何体か膝をついたぞ。
そんな中、異常な運動能力を見せるフェアリーが2体居た。
そのシカとウリボウのフェアリーにオレは組み着かれてしまった! くそっ、油断した!
「ねえ! お姉さんとデートして! お金ならあるから!」
「本当よ! 非モテフェアリーのバイトはあり得ないほど稼げるの!」
中身女かよ!?
道理でこよいの拒絶にショックを受けないワケだ。
ならばオレもこの二人にハッキリと言ってやらねばならない。
「離せっ! オレはこよいのものだっ! そんなこと言ってるからモテねぇんだよ!」
「「はぐぅぅっ!」」
オレにしがみついていた2体はズルズルと倒れこんだ。
「はぁぁっ!」
バシン!
「アギャ~ッ!」
「てやぁっ!」
バッシーン!
「ヒギィ~ッ!」
その後もオレはシバき棒でバシバシと非モテフェアリー達を叩きのめした。
「こいつで、トドメッ!」
バシバシィーン!
「オギャァ~ッ!」
『やりましたぁ♪ 我らが三五さんが悪いフェアリー達をぜ~んぶ退治してくれましたぁ♪ 皆様拍手拍手~♪』
パチパチパチパチパチ!
「良いぞ~!」
「よく頑張った!」
「男らしかったわよ!」
「やったね!」
おお……この気持ち……これは……。
「三五~♡ 助けてくれて本当にありがとう♡ ぎゅ~っ♡」
勝利したオレにこよいからのご褒美ハグ!
こ、これは物凄い射幸感だぁ~っ!
人気の秘密がわかったぞ。
それはズバリ自分が主役のヒーローショー。
う~ん、めっちゃいい気分!
「オレのこよいへの愛は……誰にも負けない!」
「んきゃ~っ♡ 三五大好き~♡」
「「「良いぞ~! ワーワー!」」」
調子に乗って決め台詞まで吐くオレに観客の皆さんはいつまでも暖かい拍手を送ってくれた。




