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第5話 繊月 こよいとデート [黎明篇]

 こよいがQ極TSして女の子になって、早3日目。


 今日は午前中にこよいの部屋で宿題をしてその後に美味しい昼食を頂いた。


 この後の予定は昨日の約束通り近所の公園までお出かけだ。


 「ちょっと着替えてきますね。待ってて下さいね、三五さんっ」


 午前中のこよいはブラウスシャツにジーンズという格好でお勉強していたが、何と今日のお出かけ用の衣装を別に予め用意していたという。


 すごい気合いの入りようだ。


 オレはソファーに座り、食後のお茶を飲みながらこよいを待つ。


 ソワソワしてなんとも落ち着かない。

 あ~、一体どんなカワイイお洋服を着てくるんだろう。


 最初に敢えて飾り気の無い格好をしていたのはギャップによる相乗効果を狙ったな~、こよい~?

 も~、そんな事をしなくてもこよいは誰よりもカワイイのにさぁ!


 あ~今日一日平静を保っていられる自信がない!

 こよいの小悪魔さんめっ!


 ……と、その時バタン! と勢い良く部屋のドアが開かれた。


「三五さぁ~ん! お待たせしましたぁ。 どう? どうですかこの格好? 似合ってます?」


 こよいが身に纏うのは、可愛らしい純白のサマーワンピース。


 定番中の定番にして王道中の王道。

 正に 「THE ・ 夏のお嬢様」 といった風情。


 「うわぁぁぁっ! すっっっごく可愛いよそのワンピース! とってもよく似合ってる!」


 「えっへっへっへっへ~♪ わたしね~これず~っと着たくって、小さな頃からずっとず~っと憧れてたの~♪ です~♪」


 レース生地でスカートがフレアに広がる真っ白なワンピースはとても清楚で美しい。

 正に乙女の為の衣装。


 憧れのワンピースが似合っていると褒められたこよいはクネクネと身を捩り恥じらいながらも、とてもとても嬉しそうに顔を綻ばせる。


 だけどおかしいな? こよいってばずっと指で髪の毛を弄んだり、頭をオレの方に寄せたりと何やら様子がおかしいぞ?


 ……はっ! 髪型もバッチリセットされている!


 キメキメの髪型も褒められたかったんだ! 

 カ~ワイィィ~ッ♪

 おねだり上手だなあ、こよいってばもう!


 どれどれ? 後ろの髪が編み込まれてハーフアップになっているね。


 その中央にはワンピとお揃いの真っ白なレースリボンが結ばれているね。

 愛らしいことこの上無し!


 毛先もクルンと巻かれていてお上品な感じがしてイイネ。


 「おリボン可愛いねっ、こよい~! お嬢様ヘア似合っているよ! こよいの為のヘアスタイルだね!」


 「えっへっへっへぇぇ~♡ ありがとぅぅ~♡ ございますぅぅ~♡」


 でれでれ~っと表情を緩ませてクネクネ身悶え、クルクルその場で回るこよい。


 お嬢様らしくない姿かもしれないが、そのギャップがイイ!


 美少女お嬢様 ・ こよいがオレの褒め言葉に大喜びしてくれて照れっ照れになるその表情、ズッキュウゥゥンと胸にくるウゥゥゥゥゥ!


 あ~っ、こよいサイコォォォゥゥゥゥ! 叫び出したいぃぃ~ッ! 

 想いが爆発しそうだァ!


 「早く早くっ♪ 早くお出かけしましょう?」


 おおっとそうだった。危うく本日のメインイベントを忘れるところだった。

 ウキウキと弾む様に歩くこよいに促されて玄関へ。


 「はい、お嬢ちゃま。今日は日射しが強いからコレ差していってね」

 「ありがとう~♪ 彩戸(さいど)さぁ~ん♪」


 玄関先でこよいが彩戸さんから受け取ったものは、真っ白な日傘。


 そして今日のこよいが履くのは同じく真っ白なあみあみレースアップサンダル。


 こ、このコーデは……!


 「うふふふん♪ これぞこよい御用達 ・ 激盛りしろナツコーデですっ♪」


 「ホント激盛り好きだねこよい~! でも可愛さも激盛りだよこよい~!」


 「うっふっふっふぅ~♪ あっはははぁ~ン♪ さぁ~いきマショウ~♪」


 クルクルと日傘を回しながらウキウキ歩くこよいと、そんなこよいの可愛さにアテられてフワフワと空を飛んでいるかの様に足元が覚束無いオレ。


 完璧に舞い上がってしまっているオレ達だ。


 そんな調子で公園への道のりをフワフワ歩いていたオレ達は、同年代くらいの少女とすれ違った。

 少女はこよいを一目見るなりパチッと目を見開いて立ち尽くし、ポーッと見惚れてしまう。


 無理もない。こんな道っ端でアイドルハダシの超絶美少女様とすれ違ったらそうもなるだろう。


 ……って楽しげに刻まれていたこよいのステップも、ピタッと急停止してしまっている?


 「さ、ささ三五さんっ。今の女の子、わ、わたしの事ジーッと見ていませんでしたか!?」


 うーん……当然と言えば当然の事だよなぁ……だって、ねぇ?


 「派手だもん、こよい」


 「派手えぇっ!? この格好、目立っちゃってるんですかぁっ!?」


 それぞれのアイテム自体はそれほど目立たないかもしれないけれど、真っ白しろで統一されたお嬢様コーディネートはやっぱり人目を引く。


 それより何より、身に付けるこよい自身が純白がめちゃくちゃ似合う最強清楚 ・ マキシマム美少女なんだから目立つに決まってるよな。


 「ど、どうしよ。わたしの事知ってる人に出会っちゃったら……ま、まだ身内以外の人に自分が女の子だって告白するのは勇気が足りないぃ……」


 上機嫌から一転オロオロしだすこよいの姿を見て、オレの浮き足立っていた気持ちが一瞬で地上に引き戻された。

 オレがこよいを支えねば。


 「大丈夫だよ、こよい。例えクラスメイトでも今のこよいを見て、元男の子の湖宵だとは気付かないよ。それはオレが保証する」


 幼馴染みのオレですら、今のこよいを初めて見た時は誰だか分からなかったくらいだから。

 

 「そ、そうですか? 良かったぁ~。うぅぅ~っ、で、でも、この女の子の格好を色々な人にジーッと見られるのは何かこう、モジモジします……」


 「無理そうなら今日は帰る? それとも地味な服に着替えてくるとか。うーん、でもなぁ。この調子じゃ、夏休みどこにも遊びに行けないかも……」


 色々なお店を見て回ったり、前売り券を買った映画を観に行ったりも出来ないかも。

 だってその為には人がごった返す街まで出向かないといけないし。

 一大イベントである夏祭りの人手なんてそりゃ~もうわんさか一杯だろうし、そんな大人数から注目されたら楽しむどころじゃ無いんじゃぁ……。


 「い、イヤッ! そんなのイヤッ! わ、わたし、いっぱい三五さんと楽しいことしたいし、カワイイ服だっていっぱい着たいっ!」


 顔を青ざめてさせていたこよいがハッとして叫ぶ。


 「が、頑張りますっ! 絶対絶対人目に慣れてみせますぅぅ~っ……で、でもちょーっと不安……」


 「む、無理しちゃダメだよ? ダメそうならちゃんと言ってね?」


 大丈夫かなあ。こよいってば、先程までの軽やかな足取りが嘘の様にガチガチに固まってしまっている。


 オレの影に隠れながらチョコチョコ歩いているこよいを心配におもっていた、その時。


 不意打ち気味に、こよいの右手がオレの左手にちょん、ちょん、と軽く触れた。


 「こ、ここ、こよいっ?」


 こよいのひんやりした細い指の感触がオレの心臓を容赦なく叩き、全身の体温を過熱させる。


 「ひゃあぁぁっ、ご、ごめんなさいぃぃっ,な、何でもないんですうぅっ」


 こよいの方も顔を真っ赤にしてわたわたと慌てている。


 恐らくは不安からくる無意識の行動だったんだろうな。

 そしてその意図はやっぱり……オレと手を繋ぎたかった……?


 そ、それはちょーっとレベルが高いぞ!? 


 さりげなくこちらから手を握ろうと思っても、こよいは両手で日傘をぎゅぅぅっと握りしめて離そうとしないので無理だ。

 かといって 「手を繋ごう」 なんて言って声を掛けるのはもっと無理。


 いや、そもそも異性と手を繋ぐのは言い訳のしようも無いほど明確な愛情表現だ。


 恋か友情か。

 こよいとの距離を測りかねている今のオレに、彼女と手を繋ぐことは、出来ない。


 「「……………………」」


 若干気まずい沈黙の中てくてく歩き、目的の公園の入り口に着いた。


 公園と一言で言い表していたけれども、オレとこよいが小さい頃から遊んでいたこの公園は日本中の他の公園と比較してもかーなり上位に位置する程、大きくて立派な広域公園だ。


 たくさんの木々や花々などの自然が豊かで、アスレチック広場や子供向けの大型遊具が豊富に設置。

 ドッグランやBBQセットの貸し出しといったサービスも充実していて、行楽に持ってこいの名スポットなのだ。


 木々のアーチが織り成す陰が落ちる遊歩道を、こよいと二人で歩く。

 

 爽やかな風が運ぶ深い緑の匂いに鼻をくすぐられながら慣れ親しんだ風景の中を歩いていると、乱れていた気持ちが自然と静まっていくのが分かる。


 しゃわしゃわしゃわ じーわじーわじわ みーんみんみん。


 どうやらオレはこの蝉時雨すら今まで耳に入らないくらい気を張っていたみたいだ。


 ちらりとこよいの方を向けば、こよいはニコッと自然な笑顔で微笑んでくれる。


 やはりオレ達は気心の知れた幼馴染み。

 気まずい空気なんて長持ちするハズが無い。


 特にこの公園は、小さな頃からのオレ達の憩いの場所なんだから。


 それからはゆったりと散歩を楽しんだ。


 相変わらずこよいは周囲の視線を集めてたじたじになっていたが、徐々に慣れてきたようだ。


 彼ら ・ 彼女らは女性としてのこよいの魅力に見惚れているだけで悪い意味での好奇心は無い。


 その事に気付いたこよいは日傘でカワイイお顔を隠さずに歩いてくれるようになった。


 「あーっ! このお姉ちゃんスッゴクきれー!」


 「おひめさまだァーッ!」


 「しろーい! ものスゴくしろい! あはは!」


 夏休みの公園はそれはもうたくさんのお子さんが来園しており、絵に描いたようなお嬢様ルックのこよいは懐かれた挙げ句、絡まれまくってしまったのだが……。

 

 「あははは……。お姉ちゃん、白好きなのよ~」


 何とこよい、苦笑いしつつもお子さん連中を軽~くあしらってみせた。

 無理はしていない様で、一安心。


 これで今日一日、こよいと公園で楽しく遊べそうだ。

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