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第67話 繊月 こよいと寄り添いラブラブデート [羅武覇篇] 山

 お、お弁当……だと……!?


 う、うおおおぉぉ……!!

 『好きな女の子がデートで手作りのお弁当を作ってきてくれる』 ……!


 これはもう奇跡! この世に現存する唯一の奇跡!

 女神は実在した! こよいだった!


 喜びという感情が洪水の様に沸き出てくる。


 普段なら人前では自制するのだが、ここはカップルしか生息していない魔境。

 思う存分に発散させてもらおう。


 「歓ッッッッッ………………」

 

 膝を曲げて脇を絞め、拳をぎゅっと握る。そして渾身の力を込める。


 「喜イイイィィィィ~ッ!!!!」


 全身のバネをバイーンと弾いて大ジャンプ! 

 喜び大爆発だァ~ッ!


 「ありがとうこよいっ! オレってヤツは幸せ者だよっ! こよいにお弁当作ってもらえるなんてっ!」


 「えへへっ♡ えへへぇっ♡ 心を込めて作ったのよっ♡ 喜んでもらえてわたしもちょ~スーパーハッピィ~ッ♡」


 こよいもピョンピョンジャンプで喜びアピール。


 「ハイハイハイ! お二人さん! そういうことなら良い場所がございますよっ♪」


 「「うわぁっ! また出た!」」


 ピエロ姉さんだ! いつの間に近付いた!?


 「私の事なんていいから♪ 早く早く♪ 付いてきて♪」


 「どうする? こよい? ベンチで食べるよりは良いかもよ?」

 「う、うん。オススメのジェットコースターも当たりだったし、そうしちゃう?」


 多分オレ達ラブラブカップルはラブパでは優遇措置が受けられる。

 なので素直にピエロ姉さんの後を付いていっちゃうのだ。


 ピエロ姉さんが入っていったのはレストラン。


 何故かレストランのド真ん中には、人工芝が敷かれたステージがあった。

 ピエロ姉さんはステージにレジャーシートを敷いたり、パラソルを突き刺したりしてパパパッと手際良く装飾を施していく。


 「はい♪ こちらにどうぞ♪」


 満面の笑みでお辞儀をして、大袈裟にオレ達を誘導するピエロ姉さん。

 ここで食事をしろと申すか。お昼時の混んでるレストランの中央で。


 「じゃあお弁当頂くね、こよい」

 「うんっ♡ 召し上がれ♡」


 まあオレ達はノータイムでレジャーシートに座らせてもらうけどね。

 だってこよいのお弁当が一刻も早く食べたいし! 周りのことなんてどうでもいいね!


 「さっすがぁ! 私の見込んだ通り!」


 ピエロ姉さんは放っておいて、こよいがお弁当を広げてくれるのをワクワクしながら待つ。


 「うわぁ! 凄い! 美味しそうだぁ~っ!」


 三角に握られたおにぎりが一杯。

 厚切りのだし巻き玉子。

 冷めても美味しいジューシー唐揚げ。

 アスパラのベーコン巻き。

 玉ねぎ&キュウリのポテトサラダ。

 椎茸の甘辛煮。

 プラス、彩りにお花や色々な模様に飾り切りされたお野菜などなど。


 間違いない。奇をてらわずにドストレートにオレの胃袋を仕留めにかかってる!

 このお弁当壮観だな~。いや~美味しそう!


 「こよい、ありがとう。こんなに上手に作れるまで頑張ってくれたんだね」


 「うふふ♡ 頑張ってなんかないよ♡ だって好きな人の為にお料理するのって、嬉しくて楽しくて仕方ないもん♡」


 努力を苦にしない天才肌のこよい。それでも頑張ってくれたのは間違いない。

 心して頂戴しよう。


 「いただきます」


 手を合わせて一礼。


 まずは王道を往くおにぎりから頂こうか。無造作に一つ選んでパクリ。


 「んっ! 酸っぱい! これは梅干し! あれ? でも酸っぱすぎないね。それどころか甘みも感じる?」


 「それはハチミツ梅のおにぎりよ♪ 食べやすくて体に良いの♪」


 「なるほどね~。食欲増進だぜ~」


 お次は唐揚げをパクリ。


 「ん~。しっとり柔らか~」


 「水っぽくないでしょ? コツがあるのよ♪」


 それじゃあそれじゃあこのだし巻き玉子は?


 「それにはエビちゃんのすり身が入ってるの♪」


 それじゃあこの椎茸は?


 「それはわたしが好きだから入れたの♪」


 何ということだ。

 どのおかずも一口食べただけで非常に手間暇かけて作られているのが伝わってくる。


 量もボリュームたっぷりの大満足。

 オレの為にここまでしてくれて感激 ・ 感動を禁じ得ない。


 「デザートもあるのよ~♪ レアチーズケーキで~す♪」


 カップの中に入ったレアチーズケーキはほんのりレモンの香りがして、スッキリした美味しさ。


 「全部美味しかった~! ごちそうさまでした!」


 「お粗末さまでした~♪ 三五、キレイに全部食べてくれたね♪ 嬉しい♪」


 オレはこよいの手を両手でぎゅっと握った。


 「今まで食べたものの中で一番美味しかったよ。ありがとう。本当にありがとう、こよい。オレはこよいが彼女で幸せだよ」


 「さ、さんごぉ……。わ、わたしも三五に食べてもらえて、笑顔になってもらえて、本当の本当に嬉しいっ……嬉しいよぉっ」


 瞳をウルっとさせるこよいの頭を優しく撫で撫で。

 感謝の気持ちを込めてたっぷり可愛がる。


 「ほっこり♪」

 「「「「ほっこり~♪」」」」 


 ピエロ姉さんと周りのお客さん達が生暖かい目でオレ達を見守る。

 いちいちほっこりって口で言わなくても良いよ。


 

 こよいと肩を寄せあってまったり食休みする。

 ああ、幸せだなあ。

 全てが満たされた心地で一杯だ。


 でもまだまだお昼過ぎ。

 今度はオレがこよいを目一杯楽しませてあげよう!


 「てなわけでピエロ姉さん。何かオススメは?」


 もう素直にピエロ姉さんに聞いちゃおう。常にそこら辺に居るし。


 「フフフ。もうすぐイベントステージで開催されるフェアリーショーがオススメですよ~♪」


 「フェアリー? ああ、園内を歩いている着ぐるみのことか」


 ラブパにも普通の遊園地と同じ様にマスコットキャラの着ぐるみが居る。

 その着ぐるみがショーをするのかあ。

 

 でもピエロ姉さんがワザワザおススメするってことは、単なる子供向けのショーじゃなさそうだ。


 「もう三五、着ぐるみなんて呼んじゃダメだよ。フェアリーちゃん達はカップル達の恋を応援してくれる、心優しい妖精さんなんだから」


 「おっとそうだったね。気を付けるよ、こよい」


 「私がご案内しましょ~♪ 付いてきてね~♪」


 ピエロ姉さんが一輪車をホッピングさせながら案内してくれる。

 すげ~上機嫌だなあ。


 恋の妖精が繰り広げるショー。

 一体どんなものが見られるのかな?

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