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第65話 繊月 こよいと寄り添いラブラブデート [羅武覇篇] 林

 「お二人はラブパは初めて? あらあら♪ それはそれは~♪」


 ニヤリと笑うキャストのお姉さん。ピエロメイクだから凄い不気味だ。


 キコキコキコキコ。


 更に一輪車でオレ達の周りを回り始めたぞ。

 うわぁ~ウゼェ~。


 「くふふ♪ それならサービスしちゃおっかな♪ じゃじゃん♪ 今ならチュロスチャレンジ (ポッキーゲームのチュロス版) が無料で~す♪ 挑戦してみませんか~♪」


 ピエロ姉さんがどこからか沢山のチュロスを取り出した。そしてポイポイと宙に放り投げ、ジャグリングを御披露。器用だな~。


 そして無茶ぶりが過ぎるな。一見さんにいきなりチュロスチャレンジを勧めてくるとは。


 フッ、だがオレとこよいはそこらのカップルとは一味違うぜ。


 「無料だって。やってみようか、こよい」


 「うん♪ やりたい♪」


 「おっ? おっ? は、はいどうぞ♪」


 ピエロ姉さんからチュロスを一つ受け取り、端っこを口にくわえる。


 「あ~ん♡ ぱくっ♡」


 こよいが反対をくわえて、ゲームスタート。


 サクサクサクサクッ。


 「おっ? おっ? おっ? おっ?」


 ちゅっ♡


 「おっほおぉぉぉぉ~っ!」


 二人で一つのチュロスを一気に食べ進み、唇と唇が触れる。


 「美味しかったね~こよい」


 「ん~♡ 甘~いね♡ 三五♡」


 

 「ハア……ハア……ハア……こ、この子達しゅごいぃぃ……」


 ピエロ姉さんが海老反りになってんぞ。一輪車に乗りながら。よくズリ落ちないな。

 まあこの人は放っておいて、と。


 「さあて、何から乗ろうか? こよい」


 「やっぱり定番のジェットコースターかなぁ?」


 ジェットコースターかあ……。確かに早めの混んでない時間に、人気のジェットコースターに乗っておきたいよね。普通の遊園地だったらね。


 オレは右斜め上に顔を上げ、設置されているコースターレールを見る。


 少し待っていると、ハートマークのオブジェで装飾されたデコレーションコースターが走ってきた。


 カタタン……カタタタン……。


 何アレ……遅っせえ……。

 全然楽しくなさそう……。


 百歩譲って装飾過多なデザインは許すとしよう。

 でもコースターの速度が遅いし、コースも緩急が無いってゆ~かメリハリが利いてないんだよなあ。


 HPで動画も観たけどアレでキャ~キャ~言う理由がわからん。絶対ヤラセだろ。


 「でもアレつまんなさそうだよ? だって絶叫マシンじゃないし、アレ」


 「う、う~ん、まあねぇ」


 実物を見て、こよいも概ね同意してくれる。

 

 「大丈夫よ! 安心してっ♪ アナタ達が乗ったら絶対ドキドキ出来るから♪」


 「「ええ~? 本当~?」」


 「ホントよ! 私、カップルに絶対嘘吐かない! 当園の目玉アトラクションだから! 楽しめなかったらお金返すし! 乗らなきゃソンソン♪」


 「じゃあそれに加えて、缶ジュース一個無料にしてくれるとかでも?」

 「もう一回チュロスチャレンジしたいな♡」


 「OK OK! その条件でOK! 絶対面白いから♪」


 そこまで断言されては乗らざるを得ないな。

 ただしつまんなかったら絶対約束守ってもらうからな~。忘れんなよ~。


 荷物をコインロッカーに預けて、すぐにジェットコースター乗り場に向かった。

 驚いた事に本当に人気があるみたいで開園直後なのに10分近く待たされた。


 「はい、お次のお客様どうぞ~♪」


 オレとこよいはハートデココースターの最前列に座る。

 ラブパのアトラクションは全てカップルシート。端から中心に向かって若干傾斜がかかって、ただ座っているだけでも自然と二人がくっつき合う設計になっている。


 「は~い、彼女さんの事抱っこしてあげてくださいね♪ バー下ろします♪」


 うわあ、バーも小さいな。狭くて窮屈だ。

 あっ! ベルトがじ~わじわと絞まってきたぞ。

 必然的にオレ達はぎゅっと密着して抱き合う格好になった。


 「んふ~♡ 三五にくっついちゃう~♡ これは不可抗力だ~♡」


 これ幸いとばかりに、力一杯抱き着いてくるこよい。


 こ、この密着度はヤバい! 何がヤバいってこよいの大きな胸の膨らみが押し当てられて、ぷに~ってなってるのがヤバい!


 本当にこの柔らかい感触にはいつまでたっても慣れない! 魔力がある!


 心臓がバクバクいって頭がグラグラ煮え立つ。


 「あ~♡ 三五ドキドキしてるぅ~♡ んふ♡ んふふ♡ この音たまんない♡」


 こよいはオレが興奮しているという事実に興奮しているみたいで、嬉しそうにオレの胸にスリスリと頬ずりをしてくる。


 タッタン!


 「うわっ!」

 「きゃっ!」


 な、何だ!? 揺れた!? 

 コースターが発車したのか!?

 静かすぎて全然気付かなかった。


 カタカタ……カタカタ……。( ↑ ↑ ↑ )


 登ってる! 登ってる!


 カタタン。カタタン。


 「うわっ! 高い!」

 「きゃぁ~! 高ぁい!」


 ドキドキ状態で下の様子がまるでわからない! まるで雲の上に居るかの様だ。そんなワケないのに!


 カタタ……カタンッ。( ← ← ← )


 「カーブはっ! カーブだけはぁぁ~!」

 「堪忍してぇ~っ!」


 カタタタン……シャーッ。( ↓ ↓ ↓ )


 「落ちてるぅ~っ!」

 「滑り落ちてるぅ~っ!」


 怖ぇぇ~っ! 何でだ!? 何でだ!? 

 大したことないハズなのに~っ!


 「三五ぉぉっ! 怖あぁいっ!」


 むっぎゅうぅ~っ!


 更に力一杯抱き締められ、視界中にプルプル震えるこよいの可愛いお顔がっ!

 ドキドキと胸が高鳴り、もうこよいしか見えない!


 な ・ の ・ だ ・ が!

 その状態のままでコースターが上下左右に揺れながら移動するの、マジで恐ろしすぎるうぅーっ!


 うわあぁぁ~っ!


 …………………………。


 「お疲れ様でしたあ~♪ お気を付けてお降り下さ~い♪」


 「「ハア~ッ! ハア~ッ! ハア~ッ!」」


 オレとこよいはもう疲労困憊だ。


 だがしかし、このコースターの謎が解けた。

 ズバリ、吊り橋効果の逆転現象だ。


 恐怖のドキドキが恋のドキドキにすり変わるのが吊り橋効果。

 つまりこのコースターに乗ると、恋のドキドキがいつの間にか恐怖のドキドキにすり変わるのだ!


 オレとこよいのようにお互いの事しか見えないくらいにラブラブなカップルが乗ると、恐怖のドン底まで叩き落とされてしまう……。


 くっそ~! 負けたよ、ピエロ姉さん!


 悔しいけどここのジェットコースターは最っ高に面白かった! 


 おいしい思いもできたしね!

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