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第64話 繊月 こよいと寄り添いラブラブデート [羅武覇篇] 風 

 オレの手を引きトットコ歩くこよいにつられて、自然と早歩きになる。

 そのお陰であっという間に駅まで着いた。


 あれ? 今気付いたけど、こよいが繋いでない方の手に荷物を持っているぞ。パンパンに膨らんだそのトートバックはちょっと重そうだ。


 「気が利かなくてゴメンね、こよい。荷物はオレが持つよ」


 「ううん、いいの! これはね、後のお楽しみだから! ありがとう、三五♡」


 トートの中身はサプライズアイテムらしい。こよいが用意してくれたせっかくのお楽しみを、今知ってしまう訳にはいかないね。


 「うふふ♡ わたしのカレシは優しいな~♡」


 笑顔ニッコニコなこよい。ご機嫌を直してくれたみたいで何よりだ。


 ……………………。

 

 しばらく電車に揺られて、やがてラブパの最寄り駅へ到着した。


 朝早い時間帯の静かな商店街を抜け、並木道に入ってしばらく歩く。すると周囲の雰囲気がだんだん楽しげなものになっていく。


 ラブパが見えてきたぞ!


 ラブパはいかにも地元の遊園地という感じの造りで、一見するとおかしな所は何もない。


 しかし……。


 「うわあ。カップルしか居ないわね」


 開園三十分前の入り口前広場はカップルがひしめき合っていた。何でも他の地方のカップル達もワザワザ足を運んでいるらしい。

 もし男友達とノリで遊びに来てしまったら、この光景を見ただけでUターン必至だ。


 だけどオレとこよいは歴としたカップル!

 堂々と、そして仲睦まじくチケットブースに並んで入場チケットを購入する。


 「遊園地なんて久し振りだな~。楽しみだね」


 「うん♪ 今日は一杯楽しもうね♪」


 入場ゲート前でワクワク待機。こよいとおしゃべりしていたら時間が経つのはあっという間だ。


 『お待たせしました~。咲耶おたのしみパーク、只今開園で~す!』


 「キャー♡」


 あっ! 

 アナウンスと同時にこよいが走り出した! 

 急いで追いかけないと! って、こよい足速っ!


 「三五~♪ こっちよ♪ 早く早く~♪」


 手をブンブン振ってオレを呼ぶこよい。

 おてんばちゃんなこよいも可愛いな。


 「待ってよ、こよい~!」


 こよいの元へと駆け出した、その時!


 建物と建物の隙間から一陣の強風がこよいの立っているストリート目掛けて吹き付けてきた!


 ビュウウゥゥッ!


 「んきゃあぁぁぁ!」


 「うおおおおおっ!」



 ぺ ろ お お お お お お ん♡



 こよいのミニスカートがスロー再生の様にゆっっくりと、波打ちながらめくれていく! 

 純白のショーツがバッチリ丸見えだぁ!


 いや、スカートがめくれてそれをこよいが手で隠すまでの時間は、恐らく一秒にも満たない。時間の流れが澱んだみたいにゆっくりに感じられたのは、一重にオレが極限を越えて集中していたからだ。


 それほどオレにとっては鮮烈な光景だった。


 「凄い……! こよいのパンツ……凄いっ!」


 初めてシッカリと見たこよいのショーツは、オレの貧相な想像を越えていた。イメージと違うエッチな下着だったとか、そういう訳じゃないんだ。


 何て言ったらいいのか……マンガとかで見た事がある一枚の布でペロンと出来ている感じじゃなくて、とにかく凄いんだ。


 大人っぽ過ぎず、かと言って子供っぽいかと言えばそれも違う。

 年相応な……乙女っぽい?


 「いくらなんでもジロジロ見すぎぃ~っ! 三五のバカぁ~っ!」


 網膜に灼きつけんばかりにガン見しまくっていたら、こよいが怒った! そりゃそうだ。


 こよいがオレの胸の中にピョ~ンと飛び込んできて、ネコパンチでぽふぽふ叩いてくる。


 「恥ずかしかったんだからねぇっ……!」


 涙目で顔を真っ赤にしてオレを上目遣いで見上げるこよいっ……! レアな表情だ!


 そもそもこんな風にガチで100%恥ずかしがるこよいは珍しい。

 いつもはオレがこよいにドキドキしていると嬉しがるからなあ。小っちゃくなっちゃって可愛い!


 「くぅぅ~……可愛いっ! ああ~! 可愛すぎるよこよい~っ!」


 お姫様なパンツとSSRな照れ顔こよいのコンビネーション! オレは見事にやられてしまった。


 オレは手で顔を覆い見悶えてしまう。ブルブルと震えも止まらなくなった。


 「何でそんなに激萌え状態になってんの!? 三五!?」


 だってこよいが愛くるしいから……ってハッ! 


 も、もしかして今のこよいの恥ずかしいシーンを、他の男に見られてしまったのでは……!?

 サーッと顔から血の気が引き、慌てて周囲を見回してみた。すると……。


 「私のパンツ見たでしょ! エッチ!」

 パチーン!

 「ありがとうございます!」


 「ゴ、ゴ、ゴメン! 見えちゃった!」

 「い、いいのよ!? ツ、ツキアッテルンダシ!?」


 「あ~♡ 赤くなってる♡ かわい~♡」

 「あ、赤くなんてなってねえし! し、下着が見えたくらいで!」


 マジか! ここの男性客スゲぇ! アイドル級に可愛いこよいのことを、誰一人として見ていない! 

 自分のパートナーに夢中だ! 


 そうだよなあ。好きになった女の子がやっぱり一番可愛いもんな。オレも他の女性客のスカートがめくれてたのに気付かなかったしな。


 てか女の子のスカートめくれすぎじゃね?

 ……まさか、建物の配置でワザと風の通り道を作ったんじゃあ……?


 い、いや~まさかね~。

 でも念の為、この場からすぐに立ち去ろう。


 今度はオレがこよいの手を引いて歩き出す。

 建物から離れればホッと一安心だ。


 キコキコキコキコ……。


 ん? 何だろうこの音は?


 振り返ってみると、ピエロメイクをしたお姉さんが一輪車に乗ってこちらに向かって来ていた。


 「いらっしゃいませぇ~♪ あらぁ~♪ 初々しいカップルさんですねぇ~♪」


 うわあ。絡んできた。

 ネットの書き込みで見たぞ。ラブパのキャストは異様に客に絡んでくるって。

 

 特に初来園のカップル達へのイジり方は相当執拗だとか。

 それをラブパのリピーター達は “洗礼” と呼んでいるらしい。


 よ~し。

 ラブパの洗礼とやら、受けて立ってやるぜ!

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