第53話 繊月 こよいと寄り添いラブラブデート [学園篇] 天の巻
彩戸さんお手製のベーグルサンドは絶品だ。
繊月家の大きくて立派なオーブンで焼いたベーグルはふっくらモチモチ。その美味しさは人気店にも引けを取らない。
手作りベーグルに美味しい具材をサンドすると、千差万別の味わいと食感が楽しめる。
う~ん、Good Bagel!
彩戸さんは今日からでもパン屋さんとしてやっていけるね。
オレの好きなサンドはやっぱりベーコンと生野菜の組み合わせかな。
「ベーコン肉厚で美味~い! レタスもシャキシャキ! んっ? レモンソースがかかってる。爽やかな後味で、これは手が止まらないね」
こよいの好きなサンドはサーモンとクリームチーズの組み合わせ。あれ? こよいが食べてるサンドのクリームチーズ、色が鮮やかなライトグリーンだ。何味だろう?
「ん~♪ アボカドクリームチーズ、とっても濃厚でんま~♪ サーモンと一緒に食べるとしょっぱトロトロモチモチでんまんま~♪」
「アボカドかぁ~! こよいってばオシャレ~! 流石ご令嬢!」
「んふ♡ 三五も一口どうぞ♡ はいあ~ん♡」
他にもツナサンドや卵サンドといった種類があって、中でも一番ビックリした組み合わせのサンドは生ハムとパイナップル!
意外なことに生ハムの塩気とパインの甘さがケンカしないんだよね。
むしろモチモチベーグルに包まれることで、三位一体 ・ 渾然となった味わいとなりベストマッチする。
ナイスチームワーク!
デザートは彩戸さんの大好きなブルーベリーをふんだんに使ったベーグル。
生地にもブルーベリーが練り込まれていて、ベーグル自体が葡萄色になっている。そこにこれまた自家製のブルーベリージャムをた~っぷり。
「甘酸っぱくてイイネ! 彩戸さんのお料理を一口食べたら夏バテだなんて言ってられないね! いくらでも食べられるよ!」
「んま~♪ アイス乗っけても美味しいよ♪」
二人でパクパクとベーグルを平らげ、冷た~いアイスティーを飲んでホッと一息。
「「ごちそうさま~♪ お腹いっぱ~い♪」」
あ~幸せな気分だぁ~♪ 午後のお出かけの前に、食休み食休みっと♪
「え? 学校の図書室で二人でお勉強ですって?」
ゆっくり食休みした後に彩戸さんに出かけることを伝えたら、何故か渋い顔をされる。向上心の高さとかを褒めて欲しいんですけど?
「アンタ達、学校でイチャイチャしないでよ~? 保健体育 (意味浅) のお勉強とか言ってぇ~」
「し、しないよそんな事!」
流石に公共の場では自重するって! いや、信用できないのはわかるけども!
「お嬢ちゃま、ちょっとこっちおいで」
「えっ? えっ? 何々?」
こよいが彩戸さんにどこかへ連れられて行き、少し時間がたった後に戻ってきた。
「うぅ~……こんな地味な格好ヤぁだぁ~。デートなのにぃ~」
こよいのプリーツスカートの丈が膝が隠れるくらいに長くなっている。
髪型もシュシュが外され、黒いヘアゴムで一つ結びにさせられている。。
おまけに黒ブチのダテ眼鏡を装着!
「これなら目立たないし声も掛けられたりしないでしょ」
「うぅ~……」
いやいや。こよいは嫌がっているけれども、これはなかなかどうして……。
「可愛らしいよ、こよい!」
「えぇ~? こんな地味な格好なのにぃ~?」
オシャレ度は下がったが、その分清楚さがハネ上がっている!
汚れを知らない無垢な乙女……でもその実はオレの恋人で、キスの味も既に覚えている。
そう思ったらこう、何かグッとくるね!
「文学美少女って感じでキャワイイよ、こよい! ご本を読むだけじゃお勉強出来ないことをジックリ教えてあげたい~!」
「ンキャ~ァ♡ 教えてぇ♡ 教えて三五ぉ♡」
「アンタ達、外でもその調子でイチャついたらお仕置きだかんね」
お仕置きか……それだけは絶対ご免なので、キッチリ自重を心掛けよう。
大丈夫かなぁ~みたいな表情の彩戸さんに見送られながら、二人で登校する。
通学路をこよいと並んで歩くのはいつものことだけど、今日は何とも言えないくすぐったさを感じる。
「な、何か新鮮だね」
「うん♡ 幸せだね♡」
好きな女の子と手を繋いで一緒に登校するのって、甘酸っぱいんだなぁ。ブルーベリージャムとどっちが甘酸っぱいかな? ヤベ、思考がバグってきた。
その後、特に何ごともなく学校に到着。
いつもみたいにこよいが通行人にチラチラ見られたりすることもなかった。
良いことなんだけど……う~ん。パッと見の第一印象でこよいを判断して、内に秘めた可愛さをスルーしてしまうとは修行が足りないな!
別に良いんだけどね、それで!
図書室に行ってみると、案の定……というか予想以上に人が居なかった。
オレとこよいの他には貸出しカウンターで暇そうにスマホをいじっている図書委員が居るくらい。
つまり他の利用者0人。
あれ~?
ファミレスやファーストフードではウチの生徒が勉強している姿を良く見かけるんだけどなあ。
何で誰も居ないんだろう?
外で無料で勉強できる施設というのは実は意外に少ない。せっかくの機会なんだから利用すれば良いのに。もったいない。
まあいいや。誰も利用していないなら辞書や問題集をオレ達で二人占めできる。
本棚からたくさん持ってきて、奥にあるテーブルにどっかりと積む。これで準備完了!
「さあ、勉強しようか! こよい!」
「うふん♡ そうね♡ 三五♡」
……………………。あの~、こよいちゃん? 隣に座ってくれるのは嬉しいんですが、何でそんなに身体をピッタリくっつけるんですか?
あっ、こよいの細腕がオレの腕に絡み付いてきた!
あっ、オレの肩にこよいの頭が乗せられ、体重がかけられてきた!
うわあぁぁ~っ! すっごく嬉しいィィ~ッ!
ンンンンッッッッガッッ!
ここは学校の図書室ゥゥゥ!
こよいってば、最近輪をかけて甘えん坊になってない!?
流石に公共の場では自重してくれると思ったんだけど……。
確かに他の利用者は居ない。
それに本棚が死角になり、今居るテーブルは図書委員の居る貸出しカウンターからは見られない。
だからといって、それがわかったとたん大胆になりすぎだよ、こよい。
「ね~ぇ? 三五ぉ♡」
糖度の高い、蜜の様なこよいの声。
聞いているだけで骨まで溶けてしまいそうだ。
「な、何?」
「スカートめくり遊び、し ・ ま・ しょ♡」
何………………だと………………!?




