第35話 繊月 こよい 焼きそば焼くよ☆
「あ、私焼きそば食べたい」
マイペースな彩戸さんが突然何か言い出した。お昼にはまだ少し早いんじゃないかなあ。それにオレ達、今プールに浸かったばかりなんですけど。
「バーベキューコンロを持ってきてお外で焼きましょ。手伝って、二人共!」
「「はあい」」
素直に言うことを聞くオレとこよい。オレ達に反抗期はない。彩戸さんの言う事を聞いてたらちゃんと良いことあるしね。今回もきっと凄く美味しい焼きそばが食べられるに違いない。
こよいと二人がかりで物置からバーベキューコンロと使い捨てのアルミプレート、木炭などを持ち出してくる。
実はオレ、こよい、彩戸さんの三人は繊月家のお庭をお借りして、よくバーベキューをするのだ。これらはその為の専用の道具だったりする。
「二人共ありがと~。い~っぱい美味しいもの食べさせてあげるからね~」
彩戸さんはキッチンからたくさんの食材と調理道具などを持ってきてくれた。
「それじゃ火を起こすわね~」
彩戸さんは当たり前の様にそう言うけれど……。
「炭火で火起こし出来るのってカッコ良いなあ」
「そう? じゃあ教えてあげるから一緒にやりましょ? こっちおいで、三五ちゃん」
おお、ラッキー! 前から興味あったんだよね!
オレはコンロの前に立つ彩戸さんの隣に移動する。手元を良く見て覚えよう。
ふむふむ、まず固形の着火材を下に敷いて……。
「そう、それで、ちょい小さめの炭を重ねて積んでいくの。こ~やって空気の通り道も忘れずに作ってあげてね」
お次は着火用ライターで着火材に火を点ける。
火が立っている時はそのままで、火が静まってきたらウチワで扇ぐ、と。
「炭が白くなったらザクザクっと崩して、その上に大きな炭を並べてあげるの」
お~っ! 炭全体に火が点いた!
「教えてくれてありがとう、彩戸さん!」
「んふふ♪ どういたしまして♪」
「んむむむむぅ~……」
はっ! ま、またこよいに焼きもちを妬かせてしまった!? 火起こしに集中して、彩戸さんに身を寄せ過ぎたか!?
「む~! わたしなんて、三五に美味しい焼きそば焼いてあげちゃうんだからっ! そんでい~っぱい褒めてもらうんだからっ!」
こよい、成長してる!
「うわ~っ嬉しいよ! 彼女の手料理が食べられるなんて!」
「うっふっふ~♡ 楽しみにしててね~♡」
一瞬で機嫌が治ったこよいはいそいそとエプロンを身に付けた。
こよいのその姿を見た瞬間、オレはビシイッ! と固まってしまう!
そ、そ、その格好は……っ! ビキニの水着の上からエプロンを着けると、エプロン以外の部分が何も着ていない様に見える!
ひ、一言で言えばこ、こよいがっ! お外で裸エプロンしているみたいに見えるぅ~っ!
うわぁぁ~っ! これヤバい~っ!
「も、もうっ! 三五ぉっ! わ、わたしそんな変態さんじゃないよぉっ!」
「くふっw 三五ちゃんエッチw マニアックw」
ぎゃああぁぁ~っ! 何を考えていたか、完全に看破されてしまっているぅ~っ!
「わたしがエッチになっちゃうのは三五の前だけだからね? 覚えておいてね? ね?」
「う、うん! も、勿論だよ! ごめんねこよい!」
「もう……。ほら~、よく見て? ちゃんと水着を着ているでしょう?」
こよいがくるっと振り返って、背中を見せてくれる。
た、確かに背中にはブラのストラップの結び目があるし、水着に包まれた可愛らしいお尻が見えているね……。
「ソ、ソウダネ。コヨイノイウトオリダヨ」
「でしょ~?」
こ、こよいのお尻可愛すぎる……! ちょっと控えめなサイズのお尻は、小さくて未成熟で……! 見ていると心臓が炭火で炙られているみたいにジリジリと熱くなる。
「よ~し、焼きそば焼くよ~」
こよいが張り切ってグリルの前に立ち、調理を開始する。
その後ろ姿に、というか可愛らしいお尻にオレは目が釘付けになり……。
「ニヤニヤ♪ 三五ちゃんがそんなにエッチなのって珍しいね♪」
ああ~っ! この人の存在を忘れていたぁ~っ!
「うう~っ。あ、呆れた? 軽蔑した?」
「ん~ん。三五ちゃんがエッチになるのはだ~い好きなお嬢ちゃまの前だけだもんね~♪」
「う、うん。オレも自分でビックリしてて……。水着のこよいが魅力的すぎて……」
「ま、でもちゃ~んと節度は守りましょ~ね♪ 女の子は大切に♪」
「は、はい。肝に命じます。こよいの事を大切にします……」
自分の事を良く知っているお姉さんにこんなことを注意されるの恥ずかしすぎる……!
自重しなくちゃあダメだ、高波 三五っ!
「んっふっふっふ~♡ とぉりゃ~♡ こよいスペシャルゥ~♡」
そして、多分オレと彩戸さんの会話が聞こえていたんだろうな……。
こよいったら、超ハイテンションで焼きそば焼いてるよ。




