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第31話 彩戸 メイ  あなざ~エンディング?

 こよいのお家に帰り着いてからも、オレは事件と彩戸(さいど)さんの事が気になって仕方なかった。なのでオレはお屋敷の玄関ホールのテーブルでこよいとお茶をしながら彩戸さんの帰りを待っていた。


 「ただいマンゴーすむ~じぃ~♪」


 めっちゃお気楽な感じで彩戸さんが警察署から帰ってきた。


 「お、お帰り、彩戸さん。あ、あの……」


 何て言ったら良いんだろう? こよいも居るし、不安そうな顔は出来ない。アイツ等どうなった~? 死んだ~? なんて明るく聞くのも間違ってるよなあ。


 「どうしたの、三五ちゃん? 珍しく神妙な顔しちゃって」


 「あのね、彩戸さん! 三五ったら今回の件で彩戸さんに迷惑掛けて無いかって気にしてるの! 迷惑なんて掛かって無いよね? ね?」


 あっ、こよい! こよいが不安そうな顔で彩戸さんにすがり付き、上目遣いで尋ねた。


 「まぁ秘密の場所ってのが分かりにくかったのは迷惑だったけど。私めっちゃ探したんだからね!」


 そっちかよ!? いや、彩戸さんを葉っぱまみれにしてしまったのは悪かったけれども。


 「あとアンタ達、周りが見えなくなるくらいイチャイチャしちゃメ~よ。迷惑ってかウザいから」


 「「歯に衣着せぬ物言い!?」」


 うう……箴言が耳に痛い。っていやいや! それもあるけどオレが本当に気にしているのはそっちでもなくて……。


 「お小言はそんだけ。三五ちゃんは他に気にする事は無いわ」


 「ええ~? オレって一回警察の人に話をしなくていいの?」


 「い~の。大男はただの捻挫。小男はもう目が見えるようになったし、気にする事はもうないのよ? よしよし」


 オレの頭を優しく撫でる彩戸さん。しかし次の瞬間、普段ぽややんとしたその瞳がギラリと鈍く輝いた。


 「てか、例えあんなクズ共が死んだって気にしなくて良いわ、マジで。心の無駄遣いよ」


 「こ、怖っ! さ、彩戸さん怖いっ!」

 「おねぇちゃん、そんな怖いこと言わないでっ!」


 マイペースお姉さんの彩戸さんが静かにブチギレてる! 普段の優しい姿とギャップがあり過ぎて恐ろし過ぎるっ!


 「だってアイツ、等めっちゃ悪いヤツ等なんだもの! 余罪ポロポロよっ! 余罪ポロポロッ! ちょっと聞いてよ……」


 な、なるほど。あの彩戸さんがここまで怒るからには、相当やらかしてたんだな。


 え? 何々? 暴行 ・ 恐喝の常習? 犯行を重ねる度にアルコールや違法薬物の摂取量が増加? 今回初めて計画を立てて女の子を襲おうとした?


 うわあ、今回痛い目に遭って逆に良かったじゃん。

 エスカレートする犯行を止めてやったオレって天使じゃん。そう思ってしまうレベルのドクズだな。


 「だからあんなヤツ等、繊月(せんげつ)家の権力(ちから)で追放の刑よ。もうアイツ等は二度と二人の前に姿を現さないから♪ 忘れちゃってOKよん♪」


 「やったぁ! 繊月家サイコー! 信じてたぁ♪」

 「そんなぁ! 繊月家に限って! 信じてたのに!」


 繊月家はほんわかな家だと思ってたのに! ううう。いやいや、悪だけは絶対に許さないお家なんだよねっ! うんうん。もう一度信じよう! というか、こよいが守れるならそれが一番! オールOK!


 

 「ホ~ント、私の大事なお嬢ちゃまがあんなヤツ等に酷いことされなくて良かった」


 「さ、さいどさ……お、おねぇちゃん……」


 彩戸さんがこよいをぎゅっと抱き締めると、こよいは安心のあまりにほわ~んとしたあどけない表情になる。呼び方まで子供の頃の 「おねぇちゃん」 に戻ってしまうほどの癒されっぷりだ。


 「三五ちゃんもね。お嬢ちゃまを守ってくれて、ありがとう」


 「わわっ、さ、彩戸さんっ?」

 「あ~っ!」


 オ、オレまで彩戸さんに抱き締められた!? 

 ちょっと待って!? オレにはこよいという、心に決めた人が!


 「それに三五ちゃんも無事でいてくれて、ありがとう。とっても嬉しいわ」


 「お、お姉ちゃん……」


 彩戸さんの慈愛溢れる言葉に心が暖められる。オレもすっかり子供の頃の……彩戸さんに甘えてた頃の気持ちに戻ってしまっている。

 この抱擁には逆らえない。


 本当にオレは昔から彩戸さんには敵わない。いや、女性の慈しみの前にはどんな男も敵わないって言うべきなんだろう。


 「あら~♪ 三五ちゃんにお姉ちゃんって呼んでもらうの久し振り♪ あ~カワイイ♪」


 「ちょっと! おねぇちゃん! 三五はわたしのっ! 返してっ!」


 彩戸さんに抱き締められるオレにこよいがぴょ~んと飛び付いてくる! こ、こよいっ! 彩戸さんに抱っこされてる状態でドキドキさせられたら体裁が悪いんだけど!?


 「ちょっとくらい貸してよ。お嬢ちゃまが女の子になってなかったら、三五ちゃんは私と結婚してたんだし」


 「「えっ!? ええええ~~っっ!!」」


 美少女サンドイッチ状態である事も頭から吹っ飛ぶくらいの爆弾発言! あまりにも平然とした顔で何言い出してんの!? 結婚!? オレと彩戸さんが!?


 「な、な、何でっ!? おねぇちゃんも三五の事がす、好きなのっ!?」


 「弟として好きよ。でもカワイイ弟に泣いて土下座までされちゃ~ねぇ。そりゃ~結婚ぐらいしてあげるわよ」


 何かネタバレみたいに違う未来の事を滔々と語られてるんだけど!? この人怖い! で、でも、彩戸さんに当たり前の様な顔でそう言われると妙な説得力が……!


 ええ~? オレも彩戸さんの事をお姉さんの様に思っているのに? ええ~?

 こよいが女の子じゃなかったらオレ、彩戸さんの気を引くために泣いて土下座すんの? 

 う、うわ~……オレ、やりそ~。多分、子供扱いしかしてもらえないのを悩んだ末にそんな事になるんだろうな。アホだなオレ~。


 「そんで私はお洋服とか腕時計とかセクシィ~なコロンとか買ってあげて、自分好みに三五ちゃんを魔改造すんの」

 

 しかもヒモになってる!?

 大人の財力で好き放題!?


 「うう~、こ、こうなったら最後の手段っ!」


 こよいはそう言うなり床に膝をつき、両手をつき、額を……って、こよいっ!?


 「うぇぇぇん! お願いしますぅぅ! 三五を取らないで下さいぃ~! この通りですぅ~!」


 あっあ~っ! こ、こよいが彩戸さんに泣いて土下座してるっ! 似た者カップル過ぎる!


 「た、立ってよこよい! 大丈夫だよ! オレはこよい一筋だから!」


 「うえ~ん、三五ぉ~っ」


 あまりの事にビックリしたけれど、オレもしゃがんでこよいを抱っこして落ち着かせてあげる。大丈夫だよ! 仮定の話だし! こよいは女の子なんだし!


 「も~、二人ともお洋服が汚れるでしょ? 早く立ちなさい」


 何たるマイペース! 誰のせいでこうなってると思ってるんだ。


 「大丈夫よ。私はお嬢ちゃまも三五ちゃんも、同じくらい大好きだから。幸せになれるように応援してあげる♪」

 

 うわ~、場を引っ掻き回したのは彩戸さんなのにオレってばめっちゃ心強くなってる~。やっぱり敵わね~。

 

 「良かったぁ。おねぇちゃん相手じゃ絶対勝てないもん~」


 「だ、大丈夫だよ! 彩戸さんは美人だし! 素敵だし! 大好きだけど! あくまでお姉さんとしてそう思ってるだけだから!」


 「三五ぉぉ~!? ちょっとホントに浮気したらヤだからねぇ~!?」


 「しないって! オレを信じてっ!?」


 オレ達が大騒ぎしているのをクスクス笑って見ている彩戸さん。気がついたら事件のことなど、誰の頭からも忘れ去られていた。


 「アハハ♪ アンタ達ってホントカワユイ♪」


 包容力があってマイペースな、オレとこよいのお姉さん。それが彩戸さん。


 彩戸さんが見守っていてくれるから、オレ達は毎日幸せに過ごせるんだ。

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