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第27話 繊月 こよい ファーストキス

 「良い子にするから……何でも言う事聞くから……だから欲しいのぉぉっ、三五ぉぉぉっ!」


 狂おしい程に情熱的な瞳。はだけた浴衣から覗く汗ばんだ美肌。脳髄を焼き切ってしまいそうな程に甘く香る色香。

 

 こよいの女性としての妖艶な魅力の全てがオレに預けられ、その上で言葉でも熱烈に求められる。


 「こよい……っ!」


 ゴクン、と気付かない内に生唾を飲み込んでいた。心臓が破れそうな程にバクバク鳴って、今までの人生の中で間違いなく一番興奮している。


 こよいの肌の熱さで、いやオレの身体の内側から噴き出す熱くドロドロとしたマグマの様な熱情で火傷してしまいそうだ。


 オレの男としての本能は女性としてのこよいを欲している。


 間違いなくその事は伝わっているハズなのに、こよいはオレに抱き着く力を弛めようとしない。


 それどころか、こよいの熱視線は筆舌に尽くしがたい程の情感を孕んでいく。


 「もう幼馴染みのままでいるのは嫌なの! 言って、言って! 想いが今にも口から出ちゃいそうなの! だから言ってよぉっ! さんごぉぉっ!」


 こよいの切実な懇願にハッとさせられる。

 張りつめた欲望でオーバーヒートしていた脳の温度が若干下がった。


 男のオレと女の子のこよいが求めているものには、少しだけ違いがあるようだ。


 そしてオレってヤツはもう一つ大きな勘違いをしていた。


 告白する為に必要なものは、特別な言葉やシチュエーションじゃない。甘い空気でも、良い雰囲気でも、二人だけの世界でもない。


 オレはそんなものばかり躍起になって探していて、肝心なものを……一番大切なこよいの気持ちを考えることを疎かにしてしまっていた。


 こよいはきっと、小さな頃からオレの事を男として好きだった。女の子にQ極TSしようと決意した理由にもそれが大きく関係しているハズだ。


 それが自惚れでないのは、こよいの態度や向けられる笑顔でわかっている。同じ様にオレの気持ちもちゃんとこよいに伝わっている。


 オレとこよいは両想い。

 言葉にするまでもなく明白だ。


 しかしそれでも、こよいは苦しい想いをしたのではないだろうか? 


 だって長い長い間、ずっとずっと、恋焦がれる気持ちを心の奥底に秘めてきたのだから。


 その懊悩はオレの感じていたそれの比ではないだろう。


 オレがしなければならなかったのは、こよいを一刻も早く楽にしてあげる事。

 それ以外にはなかった。


 こよいの瞳を同じくらいの激情が滾る瞳で見つめ返し、顔を近づけてその距離を縮めていく。

 同時にオレの身体に絡み付く細腕にも負けない力で、彼女の背中に回した腕にぎゅっと力を込める。


 「あっ……」


 そしてオレは、こよいの瑞々しい唇に、自らの唇を重ねた。


 「んん~っ♡」


 驚いてピーンと背筋を伸ばしてしまうこよいを、更に強く抱き締める。


 何度も何度も唇を重ね、夢中で吸い付き、甘噛みをする。


 こよいの唇のぷるんとした感触を自分の唇で味わい尽くす。


 「んんんんんんんんん~~っっっ♡♡」


 こよいを離さない、逃がさない。

 オレだけのオンナにする。


 言葉よりも雄弁に、オレの気持ちをこよいに伝える。その為の狂おしいキスとハグ。


 最初はぷるぷると震え、オレにされるがままだったこよい。

 しかし驚きが過ぎ去った後は感極まったのか、ポロポロと熱い涙を溢し始めた。


 二人の頬を濡らしていく涙に構っている余裕はない。何故ならこよいがオレの頭をガッと掴み、人が変わった様にオレの唇に吸い付き始めたから。


 「ちゅうぅぅぅ~~っ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅうぅ~っ♡」


 オレはこよいからのキスに堪らない気持ちになり、夢中でキスを返していく。

 こよいもキスをすればするほど心臓の音がバクンバクンと大きくなり、オレの頭を掻き抱く手に更に強い力を込めてくる。

 オレもこよいを絶対に離してしまわないようにもっと強く、狂おしくハグをする腕に力を入れる。


 唇を重ねては離し、離してはまた重ねる。はむはむと甘噛みし合い、時にはワザとちゅっちゅっと音を立ててキスをし合う。


 何度も、何度も。気の赴くまま、気のすむまで。


 オレ達はそうやって愛情を交わしあった。 

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