エロ姉ぇすと~り~ ③ 恋は病に似ている。具体的な症例を挙げるとするなら 「水虫」 に似ている エロ姉ぇルート
「う゛う゛う゛う゛……う゛ぐぅあ゛あ゛あ゛……!」
自室のベッドでのたうち回り、悶え狂うオレ。
原因は恋によるものだ。
恋をした相手が今ごろ他の男とラブラブチュッチュしまくっているかもしれない、いや、恐らくしまくっているであろうから。
想像するだけで胸が張り裂けそうだ……!
「辛え゛ぇぇ! キチぃよ゛お゛ぉ! エロ姉ぇ! エロ姉ぇ~! ン゛ア゛ア゛ァァ!」
ジタンバタン。ゴロゴロゴロゴロ。
苦しみのあまり七転八倒するオレ。
だがしかし、こうなるのは前々からわかっていた。わかりきっていた。一年前から自明の理だった。
我ながらバカだと思う。アホだとも思う。
エロ姉ぇは 「絶対の自信を誇る肉体美を満天下に知らしめなければならない」 という使命感に燃える炎の女だ。
彼女がこれと決めた男性とシッポリ一夜を共にし、愛されまくることで輝く美貌をパワーアップさせようと図るのはある意味自然な流れだと言えなくもない。
花から花へと渡り飛ぶ夜の蝶。
罪な女性だ、エロ姉ぇは。
いや、極上の美を独り占めしたいと願うオレの恋が罪なのか?
それでも……! それでもやっぱりエロ姉ぇが誰かのオンナになっていると思うと……!
「ぎあ゛あ゛ぁぁ~! う゛っぎゃあ゛ぁぁ!」
ジタバタジタバタ。
本日は休日だったのだが、朝陽が昇って夕陽が沈むまでの間……かれこれ十時間以上? この調子で悶えている。
親は何も言わないのかって?
ウチの両親は懸賞で温泉旅行のペアチケットが当たったので、ただいま絶賛羽伸ばし中なのだ。
母さんに 「アンタも来なさいよ」 って誘われたけども、とてもそんな心境にはなれなかったので留守番させてもらった。
なので一人きりの家で思う存分悶え苦しめるのだ。 (白目)
あああ、辛い。
『エロ姉ぇのことを好きにならないで』
湖宵はオレが苦しむってわかっていたからこそ、あんなに真摯に忠告してくれていたんだな。確か一生のお願いとまで言ってくれていたっけ。
それなのに。このオレ、高波 三五は繊月 湖宵の……生涯唯一無二の大親友 ・ 魂の片割れとも言うべき存在の気持ちに応えることが出来なかった。
その事実こそが、もう答えだろう。
オレはあの時にはもう既にエロ姉ぇのことが好きだったんだ。
もし当時、湖宵の言う通りにしていたとしたら? ……していたとしても結局、加速していく想いを止められはしなかっただろう。
恋ってのはしたくてするもんじゃない。
恋ってのは落ちるもんなんだから。
恋は病とはよく言ったもんだ。
そう、恋は病気に似ている。
具体的にどんな病気かって?
そりゃ 「水虫」 だよ! 「水虫」 !
だってさぁ、この間、ウチの父さんが水虫になったんだけどさぁ、その時の一連の大騒ぎとオレの現状にケッコ~共通点があるんだよね。
共通点その一、なりたくてなったワケじゃない。
父さんは綺麗好きでスパ通いが趣味なんだけど、スパの足拭きマットから水虫菌をもらってきちゃったのだ。皮肉!
共通点その二、症状。
慢性的なかゆみと不快感に襲われる。
あと、なんか時折ちょ~スゴイかゆみの波がくるらしく 「ン゛オ゛ア゛ァァ!」 ってよく悶えてた。
寝付きも良くなかったらしい。オレと一緒!
共通点その三、自覚するまでの流れ。
父さんは異常を感じていたものの、それが水虫だとは気付いていなかった。
ある日、 「足の裏がグジュグジュにただれた!」 「ナゾの皮膚病にかかった!」 とかってギャ~ギャ~言い出してオレ達を心配させたのだ。
そんでいざ皮膚科に行ってみたら先生に 「こりゃ水虫ですな」 ってアッサリ言われて帰ってきて、ドヨ~ンと落ち込んでんの。
「まさか水虫になるなんて……あんなに清潔にしてたのに。このオレが……水虫オヤジ? 不潔なオヤジ? ウソだろ……?」
あんまりにも悲壮感を漂わせるもんだから、母さんと一緒になって大爆笑しちまった。
でも今は笑えねぇ。その辛さがありありと想像出来るもの。
ああでも二個、重大な違いがあったわ。
一つ目の違い、薬の有無。
父さんの場合は超強力な殺菌水虫薬でキレイサッパリ完治した。
だが! 恋には薬なんか効かねぇよ! つ~かそもそも存在しねぇ!
二つ目の違い、オレは 「水虫になんかなるワケね~べwww」 とか余裕ブッこいて、ワザワザ自分から水虫菌に寄ってって、フツ~に水虫になった大マヌケ野郎だってこと!
挙げ句の果てに水虫菌に気に入られて向こうからもすり寄ってくるもんだから症状は悪化するばかり!
こんなん一生治るワケね~よ!
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ごめんね、エロ姉ぇ。水虫菌呼ばわりなんかしたりして。
本当は好きだよ。大好きだよ。
もちろん最初は磨き抜かれた珠玉のナイスバディや、大胆不敵かつセクシーに躍動するダンスだけがお目当てだったさ。
だけど今、胸の痛みと共に思い出されるのはワイワイ騒ぎの後、ふとした瞬間に浮かべるエロ姉ぇの柔らかい微笑みや、ちょっとした雑談の内容だ。
エロ姉ぇの本名は豊四季 カレンさん。
誕生日は夏真っ盛り ・ 日本が一番アツくなる日。
好きな食べ物はバターサンド。生クリームたっぷりココアと一緒に食べるのが大好きなんだって。
カロリーが気になるから、クタクタになるまで身体を動かした後にご褒美としていただくとのこと。
意外にも成績は悪くない。てゆ~かワリと良い。
何でも好き放題する時間を確保する為に、授業中にガ~ッと集中して勉強するらしい。
趣味はダンス以外だとお料理とショッピング。
これまた意外、と思いきや実はそうでもない。
お料理は理想的な身体作りをする為の栄養管理。
ショッピングではダンス映えする衣装やアクセを発掘。
ちゃんと実益を兼ねているのだ。
他にも好きなTV番組やアーティスト、YouTuber、etc.
ハタから見ると他愛も無い情報を宝物の様に集めてる。
それだけが今のオレを癒してくれるから。
不思議だな。これが人を好きになるってことなのか。
こんなにも恋しい女性は今いずこ?
……ラブホかな?
「ぐあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
心が激烈にかゆい!
ジダンジダダン!
この水虫がよォォ!
ピ~ンポ~ン♪
玄関のチャイムが鳴った。
窓の外を見てみると、とっくに日が暮れている。
誰だよ、こんな時間に訪ねてくるヤツは。
無視してやろうかともチラッと思ったが、少しは気が紛れるかもしれない。
重い腰を上げてダラダラ部屋から出ていき、ノタノタ階段を下りていく。
ガチャッ。
「はい、どちら様~…………!?」
玄関のドアを開けるとそこには……。
「来ちゃったン♡」
エロ姉ぇが。
オレの想い人が立っていた。
ガ ッ チ ャ ン !
運命の分岐点。
重いレバーが引かれて、進路が切り替わった。
その音がハッキリ聞こえた。
ああ、これはもうダメだ。定まってしまった。オレの気持ちも、未来のあれやこれやも、何もかも。
「エロ姉ぇっ!」
ギュウウゥゥッ!
「キャッ♡」
迷いの無い一歩を踏み出し、エロ姉ぇを力一杯抱き締める。
ずっとこうしたかった。けれど、こんなもんじゃまだまだ満たされない。
熱いキスを何度も交わしたい。
彼女の全てを見たい。触れたい。触れられたい。
その為には時間がいくらあっても足りない。
「エロ姉ぇ、今夜は帰さない」
「ンフフゥン♡ ウチもそのつもり♡ いっぱい愛して……三五きゅん♡」
ブチブチブチィ!
切れたァァ! 理性とか! 多分、脳の血管とかも! 頭の中がジュワ~ッ! ってなってるもん!
「エロ姉ぇぇ~っ!」
ガバァッ!
「キャン♡」
エロ姉ぇをお姫さま抱っこしながら階段を駆け上がる!
ズダダダダダダダ~ッ!
「ウオッ! ウオッ! ウオオォォォ~ッッ!」
「すっごいエロパワーねぇぇン♡ 野獣チャンに襲われちゃうぅ~ン♡」
エロ姉ぇの言う通り、オレは一匹の野獣と化した。
魅せ付けられ過ぎて夢にまで見たエロ姉ぇの眩い美身を一晩中求め続けた。
詳細を語ることは残念ながら出来ないが (抹消されちゃうからね) 素晴らしい……とにかく素晴らしくサイコ~な一夜だった。
オレはエロ姉ぇの身体の素晴らしさを言葉で、態度で、視線で、全身全霊で大絶賛した。
それでも尚、称え足りることはない。
彼女の美しさはまるで満天の星空の様だ。
例え一夜限りのことだったとしても、星空を独り占めに出来たこのオレは世界一幸運な男だと言えよう。
願わくば、エロ姉ぇを他の誰にも触れさせたくない。
以前までのオレだったら、エロ姉ぇから匂う他の男の影にモヤモヤしてウジウジとイジケていただろう。
だがっ! 一皮ムケてオトナのオトコになった今は違うっ!
オレの心は決まった。
他に男が居ようが居まいが関係無い! オレにはエロ姉ぇしか居ない。
ならばっ! 導き出される答えはただ一つっ!
毎日エロ姉ぇにアタックしてっ! 毎晩お相手に選んでもらうだけだぁぁ~っ!