エロ姉ぇすと~り~ ② 「Shall We Dance?」 「Yes! Yes! Yeeeeees!」 エロ姉ぇルート
「三五、お願い。エロ姉ぇのことを好きにならないで」
湖宵の言葉に胸がドキン! と跳ねた。
「な、何言ってんのさ、オレがエロ姉ぇのことを……? そんなのあるワケ……ねえ?」
「ボクさ、エロ姉ぇに嫉妬してるよ。本音を言うと 「ボクの三五を取らないで!」 ってワガママな気持ちがあるのは否定出来ない。でもねっ!」
湖宵がオレの手を両手で力一杯握る。
その瞳は真剣そのもので、怖いくらいに美しかった。
「ボクは三五に幸せになって欲しい! 誰よりも一番に! 不幸になんか絶対なって欲しくないの! 心からそう願ってるんだよっ!」
「う、うん。湖宵の気持ち、凄く嬉しいよ。本当にありがとう」
湖宵の言葉は間違い無くオレの為を思ってのことだ。疑うなんてあり得ない。
「じゃあ、エロ姉ぇのことを好きにならないでくれるよね?」
「え、え~と、こ、湖宵が心配してるようなことは起こらないと思う……よ?」
「歯切れ悪過ぎィィ! 知ってんでしょぉ!? エロ姉ぇのあのウワサをさぁ!」
もちろん良いウワサではない。てゆ~かハッキリ言って悪いウワサだ。
エロ姉ぇは男グセがクッッソ悪く、気に入った男子を手当たり次第にラブホに連れ込み、むしゃぶり尽くして飽きたらポイ。
次から次に獲物を求めて毎夜毎晩、街を彷徨い歩いているのだとか……。
いや、妖怪か。
悪意を感じるにも程があるウワサだが、実のところ根も葉もあるのだ。
「エロ姉ぇがオトコとラブホに入るところを目撃した」 という証言はガチで上がっているらしい。
複数名に及ぶ証言者達がこぞってエロ姉ぇに突撃したところ 「ウワサは本当よ~ン♪ お相手の数? 忘れたわン、1000人くらいかしらン?」 とのこと。
いや、1000て。凄まじいな、オイ。
ラブホ代で新車が買えるじゃね~か。週7で通っとるんかいな。
「そんなオンナを好きになっても幸せになれるワケないって! この際、彩戸さんにエッチなカッコさせてエッチなダンスさせときゃ良いじゃん! それで満足しときなよ!」
「いやいやいやいや! 大切なお姉さんにそんなコトさせらんないよ! オレは常識人なんだぜ!?」
「常識語るんなら明言しろやァァ! 「オレはエロ姉ぇのことなんか天地神明に誓って好きになりません」 って断言シロォォ!!」
湖宵に胸ぐらを掴まれる!
ヤベぇ! 耳の穴から手ぇ突っ込まれて奥歯ガタガタ言わせられてしまう!
タ~ラ~ラ~♪ ララララ♪ ラララララ~ン♪ (メロウなメロディ)
「こぉんな時間まで居残りしてる悪いコちゃんは誰かしら~ン? お姉さんと遊びましょぉ~ン?」
「チィィッ! 現れよったか、妖怪め! 三五、気付かれないウチに行くよっ!」
「う、うん!」
助かった……のかな?
湖宵の忠告を深~く胸に刻んだオレだったが、エロ姉ぇのドキドキダンスの誘惑を振り切ることは出来なかった。
だってさぁ! オレが見に行かなくても向こうから魅惑のバディをフリフリやって来て 「見て見てぇン♡」 っつって直に誘惑してくるんだぜ!?
そんなもん条件反射で 「見る見る!」 って言っちゃうよ! 思春期男子の悲しき習性だもの!
折しも季節は夏。
「ン~♡ お日様がきもちぃわン♪ トロピカ~ルな気分で♪ 舞うわよぉ~ン♪」
太陽に愛されしエロ姉ぇ (SUMMER GALL ver.) のダンススタイルはなんと水着!
ハイビスカスの髪留めに紫ビキニにパレオ! 極めつけは健康的に焼けた小麦色の肌!
Esupecial Beauty!
※学校の敷地内
こいつを見逃しちゃっちゃぁ男が廃るぜ。
それにさぁ、もう一つ引くに引けねぇ理由があるんだよ。
「エロ姉ぇサイコ~ッキィィ♡ ウッ ・ キッ ・ キィ! ウッ ・ キッ ・ キィ! ウッ ・ キッ ・ キッ ・ キッ ・ キッ ・ キッ ・ キイイイィィィァ!!」
シャンシャン! シャンシャン! シャンシャンシャン! (シンバルをブッ叩いている音)
オレの他にもエロ姉ぇの熱烈なファンが現れたのだ。
クラスメイトの童貞チンパンジーさん。あだ名は PANSY 。
「お猿ちゃん、もっと盛り上げるのよン♪ 腕パンパンになるまで叩きまくっちゃいなさ~いン♪」
「ウキキ~ィ♡ ウキ~ッ! ウキ~ッ!」
シャンシャンシャンシャン!
彼の欲望に忠実な姿勢はエロ姉ぇの関心をいたく買っている。
クゥゥッ! ライバル感じるぜ! こいつぁ負けちゃいられねぇ!
悪いっ、湖宵っ! リミッターを外させてもらう!
「エロ姉ぇ! ZERO距離でガン見させてくれ! 貴女のハジケる肉体をぉぉ!」
「アッハ♡ 望むところよぉぉ~ン♡ でも腕とか足がぶつかっちゃうかも。痛いわよン?」
「無問題! 華麗なステップで避けて魅せるさ! 共に舞い踊ろうよ、エロ姉ぇ!」
何を隠そう、このオレも独学でダンスを学んでいるのさ。
つ~か、エロ姉ぇのダンスを見た後は大興奮のあまり、身体が勝手に動き出してしまう。メチャクチャに踊り狂ったり、筋トレしまくったり。力尽きて眠ってしまうまで。
折角だから、ってことでダンス動画とかDVDとか観てるウチに自然と振り付けを覚えちゃって、いつの間にかそれっぽく踊れるようになっていたのだ!
「嬉しいわン、三五きゅぅん♡ し ・ か ・ も♡」
プチプチ、ヌギヌギ、ペタペタ。
エロ姉ぇがオレのシャツを脱がせてボディタッチしてくる。
※学校の敷地内
「すっ、凄いわン♡ いつの間にこんなに逞しい身体付きになったのぉぉン♡ アガ ⬆️ ⬆️ るわン♡ カラダが踊りたがってるのぉぉン♡」
全く同感だぜ! オレも制服のズボンを脱いで水着姿になり、心赴くままにDancing!
※学校の敷地内
時にエロ姉ぇと手と手を取り合い足並みが合わさるも、二人の身体が触れ合うことはない。踊り子さんに触れるのはマナー違反だからね。
もどかしいが、それが逆にイイ!
オレはエロ姉ぇの艶かしい美肌を網膜に焼き付けるべく気炎万丈!
エロ姉ぇはオレの熱視線を浴びれば浴びるほど、内に秘めた魅力を開花させていくようだ。
上気した肌が汗で輝き、甘い色香が漂う。
身体のキレは増に増し、胸はまろび、腰はうねり、尻は躍る!
ウオオ! 見るぜ! 見まくるぜ!
「た、高波……凄いっキィ! あんなに食い入るようにエロ姉ぇのカラダをガン見出来るなんて……ああっ! 今、ほとんど胸の谷間に顔突っ込んでねぇかっキィ!? 見られてるエロ姉ぇも更にエロく……!? ア、ア~ッ!」
ブブブブ~ッ!
PANSY が鼻血を吹き出した。
「負けたっキィィ! 高波、いや、高波先生! 貴殿こそエロ兄ぃと呼ばれるに相応しい漢っキィィ~ッ!」
ズダダダダ~ッ!
万感の思いがこもった表情で明日へと走り出すPANSY さん。
勝ってしまった。称号まで与えられてしまった。
「三五きゅぅぅんっ♡ ウチ、ウチ今、サイコ~に楽しんでるわンっ♡ 顔のニコニコ筋が元に戻らないのン♡」
「オレもさっ! こんな楽しいこと他に無いっ!」
ごめんよ、湖宵。
オレはエロ姉ぇとの DANCE TIME にドハマリしてしまって抜け出せそうにない。
あと、オレってばこんなコトばっかりしているから、周りの女子達からの評価が地の底まで堕ちちゃって批判がハンパない。
一緒に居て肩身の狭い思いをさせちゃってるよね。
重ねて本当にごめんよ、湖宵。
「高波のエッチ!」 「変態!」 「ドスケベ!」 「色魔!」 「淫魔!」 「色欲の権化!」 「性器の擬人化!」 「ウンコ」 「超越絶倫男!」 「卑猥の錬金術師!」 「色情狂猿王!」
「五 月 蝿 え え ぇぇ~っ!! 三五の悪口言うなお前らぁぁっ! 繊月家の権力を以て全員退学させんぞコ゛ル゛ア゛ァァ! 金持ちナメんなよッッ!」
「「「「「イ、イヤ~ッ! せ、繊月くぅぅんっ! 嫌いにならないでぇぇ~っ!」」」」」
学園の王子様にガチギレされて、絶望の淵に叩き落とされるクラスの女子達。
「お止しよ、湖宵。良いんだよ、オレは全然気にしてないからさ」
「いやいやいやいや! 気にしなよ! 人間性を否定されてるまであるよ!? 1ミリも良くないんだけど!?」
「フッ、QOBP(均整のとれた肉体美の完成度合い) が低い女子になんて、何を言われようがどうでも良いね!」
「SDGs みたいに言わないでくれる!? 三五もクラスメイトを変な物差しで測るのヤメナ!?」
女子からは蛇蝎の如く嫌われ、男子からはある意味尊敬される。
とんだ学園生活になっちまって、湖宵のことを大いに振り回してしまった。
本当に本当にごめん。ごめんだけど……それでもオレの青い情熱の迸りは止められねぇ!
夏休みにも何やかんやでエロ姉ぇと連絡を取り合ってストリートダンス (観客置き去りスタイル) に繰り出し、秋には体育祭やら文化祭やらで大暴れ。寒い冬にも逆にアツいパッションでダンスしまくり、冷たい風なんか吹き飛ばしてやった。もちろん夏服で。
わちゃわちゃワチャワチャしていたら、月日なんて飛矢の様に過ぎ去ってゆく。
早いものでエロ姉ぇと初めて出逢ってから一年もの時間が経っていた。
そして、オレは、この高波 三五は……ッ!
湖宵からあれほどに忠告を受けておきながら!
エロ姉ぇのことを好きになってしまっていた!
ガチでグウの音も出ないくらいガッツリ恋に堕ちてしまっていたぁぁぁ……!