あなざ~彩戸すと~り~ わんすもあ 禁断の……ルート
運命のその日。
オレはリビングのソファーに腰掛けながら、TVモニターを食い入るように見つめていた。
『え~、かつてない国難に立ち向かう為、国民の皆々様の新たなる生活様式を確立する為、民法732条及び刑法184条を改定致します』
国会中継。
恐らくほぼ全ての日本国民が首相の御言葉を一言一句足りとも聞き逃すまいと、耳をそばだてていることだろう。
何故なら日本の歴史が動く瞬間がッ! 今、正に訪れようとしているからだッ!
『え~、本日只今の時刻をもちまして、日本は一夫多妻制となることを、ここに宣言致します!』
『ウワァァァァ~ッ!』
「ウワァァァァ~ッ!」
とか言ってる間に動いた! 歴史が動いたぁ~っ!
思わずTVと一緒に叫んじまったぜ。
実際問題、ず~っと前から一夫多妻制にしろしろって言われ続けてきた。とは言えど、いざ本当に実現するとなると、やはり衝撃を受けざるを得ない。叫んでやむ無し。
もちろん反対意見もある。
何なら今でも 「家系図とか先祖代々の墓とかど~すんだよ」 みたいな突き上げが各種メディア上で散見している。
だがなぁ! 日本はもう本当にヤバいんだ! 悠長なことは言っていられんのだ!
男女比がクッッソ偏るということは次世代の人口がクッッソ減るということなのだから!
国も結婚を半ば義務付けるような政策を打ち出したり、出産した家庭への支援を手厚く行ったりといった、いわゆるアメとムチをフル稼働させながら人口減少に歯止めを利かせんと奮起しまくっている。
もう一夫一妻では社会が回らんのだよ!
ちなみにオレの親は一夫一妻だけど 「珍しいね~」 「気楽で羨ましいわ~」 みたいなイヤミを死ぬ程言われまくって辟易したらしい。
今の世の中では一人の男性が複数の女性と暮らす、なんてのは極々当たり前。
その際、従来の法に照らし合わせると、正妻以外は全員愛人という不名誉な扱いになってしまう。
日本の将来を担う子供達の母は皆、国母である。と言っても決して言い過ぎではない。
その権利をすべからく保証する為に、一夫多妻制とは制定されるべくして制定されたのであった。
「はぁ~あ、日本はこれからどうなっちまうんだろう……」
ソファーに全体重を預けて深~く溜め息を吐く。
いや、三五くんさぁ、他人事みたいに言ってっけど思いっっきり当事者だからね? 現実逃避すんなし。 (自問自答)
っつ~かさぁぁ! ドサクサ紛れに色々法律変わり過ぎなんだよクソッタレがぁぁ!
特にデカいのが成人年齢の引き下げ!
男女共に義務教育を終えたら即成人!
男子は成人と同時に結婚 & 子作りしてね! じゃないと違法だよ! (意訳) だってよ! ハァァ~!?
オレはこの春に高校三年生になる。
つまり今すぐにでも結婚しなければならない!
あ~あ! やってらんね~! オレってばもう大人だから、お酒でも飲んで気を紛らわそっかな! ……って、当然なるじゃん?
ハイお酒は二十歳になってからで~す! ちなみに選挙権は十八歳から~!
チキショ~がぁぁ! 義務だけはキッチリ果たさせようとしてくんのに権利はお預けかよ! 大人って汚ぇよ! 嫌だぁぁ! 大人になんかなりたくねぇぇ! (もうなってる)
『え~、つきましてはですね、国としては男性一人につき十人の女性を娶っていただきたく……』
ちょっと待て! TVが聞き捨てならねぇ寝言をほざいてやがる!
男一人に嫁十人!? 男女比が一時期 1 : 10 まで落ち込んだから!?
日本国憲法くん!? 考え方が単純過ぎんか!? 結婚っちゅ~のは人間同士でするんだぞ!?
バッタ~ン!
突然、リビングのドアが勢いよく開かれた。
「三 ・ 五 ・ ちゃ~んっ♡ 婚姻届持ってきてあげたわよっ♡ 早くサインしなさいっ♡」
「三五しゃぁぁんっ♡ ハンコもっ♡ ハンコもお願いしまっすぅぅぅ~♡」
メ、メイ ・ アンお姉さん’s ! (feat. 婚姻届)
テンション高くズズイと突き出される書類。
受け取らないなどという選択肢はオレには存在せず……まるで熱に浮かされたようにドキドキフワフワした心持ちでサラサラ署名 ➡️ ポン、ポン、と捺印。
ああぁっ、これでっ、これでっ!
「お姉ちゃんは三五ちゃん、いいえっ、三五ちゃまのお嫁さんよぉ~っ♡ キャ~ッ♡ やったぁぁ♡」
「お姉さんもぉぉ♡ ずぅぅ~っと夢だった三五さんのお嫁さんに♡ なれちゃいましたぁぁ~っ♡ キィィヤァァッホォォウ♡」
お姉さん’s ピョンピョン飛び跳ね大歓喜!
普段のオトナな雰囲気からは考えられないハシャぎっぷりだ!
もちろんオレだって大歓喜さ! だが大いなる喜びと共に 「二人もお嫁さんをもらってしまった」 というハンパない “やっちまった感” も同時に押し寄せてくる!
行き場を失った歓喜がオレの胸の中でグルグルしてモヤモヤする! モダモダと悶えてしまうぅぅ!
んおあぁぁぁぁ~ッ!
「ねえねえ、三五ちゃま♡ ココにもハンコちょうだい♡ ん~っ♡」
「ああ~っ! お姉さんにもお姉さんにもぉっ♡ んん~っ♡」
「ええ~っ!?」
グググ~ッと唇を寄せてくるお姉さん’s がオレの両腕にスッポリと収まった。
夢みたいなシチュエーション……だが、現実的な問題が一つ。
コレ、どっちに先にキスすれば良い!?
順番を着けてしまうのは、まるでお嫁さんに序列を定めてしまうようで凄ぇ嫌なんだが!?
「早くぅ♡ んっんっん~っ♡」
絶対に自分が一番だと疑わずにストレートに誘惑してくるメイお姉さん。
「お姉さんは二番目でも良いんですからね♡ んんんん~♡」
とか言いつつもワンチャンに賭けまくってるのがモロバレなアンお姉さん。
どっちもちょ~カワイイよぉ~っ! 選べねぇよぉ~っ! う゛う゛う゛う゛~っ!
……………………………………………………。
チュッ♡ チュッ♡
「ン ・ フ ・ フ ・ フ~♡ 誓いのキッスしてもらっちゃった♡ 誰よりも先に♡」
「いえいえこのわ ・ た ・ し♡ が先に決まってる……かもよぉ~♡」
う゛う゛~! 恋の鞘当てみたいなのヤメテ!
目を閉じてもらってて良かった……けど、あ゛あ゛っ! 選んじゃったよ!
別に一番最初にキスしたお嫁さんが正妻で以降、一生他のお嫁さんより偉い! ってワケじゃないと思うんだが (ないよね?) それでもオレは選んでしまった! 心苦しいぃ!
これが一夫多妻制の恐ろしさ、その片鱗か!
誓いのキスは罪の味がした。
脳が溶ける程に甘くて、心が痛む程に熱くて、ちょっぴりホロ苦くて……極上だった! 例えるなら禁断の果実! 正直、もっと味わいたい!
オレのクソ堕落ヤロォォ! 人として終わってる! でも、でも……! あああ狂いそう! てかもう狂うぅぅ!
アッアッア~ッ!!
「三五ぉぉ~っ! 婚姻届っ! 持ってきたよっ! サインしてっ!」
「あ……うん。湖宵がして欲しいって言うならするけれども……」
絶対受理してもらえないよ。戸籍上は男同士なんだから。
それどころか役所の人間がブチギレてビリビリに破いちゃうかも。
悲しいなぁ。提出するアテのない婚姻届を思うと只ひたすらに、悲しい。
さっきまであんなに荒れ狂っていた感情の波が一瞬でス~ンと落ち着いてしまった。
「何だよもぉぉぉ~! 憎いぃぃ! この國の総てが憎いぃぃ! もうKOKUDOをBAKUHAするしかないぃぃ!」
「あっあ~! 湖宵! ホラッ、ちゃんと署名したよっ! ハンコも押したよっ! これで湖宵はオレのお嫁さんだからねっ!」
「ウ゛ウ゛ゥゥ~ン゛! ウ゛ウ゛ウ゛ゥゥ~ン゛!」
闇のオーラをまとう湖宵をムギュ~ッと抱き締めてムチュ~ッとキスをする。
正気に戻って! 愛の力で!
「んんん~っ♡ ああっ、三五っ♡ 三五ぉぉ♡ 嬉しいよっ♡ 誓いのキッスしてくれたんだね♡ 誰よりも一番に♡ これでボクが正妻だね♡♡」
浄化されたのは良かったけど、湖宵も当然のように正妻の座を狙っていた!
「お嬢ちゃま♂️ったらな~に言ってんだか。一番で正妻なのはお姉ちゃんなのにね~」
「止めなさいよ、可哀想でしょ? 一番で正妻なのがお姉さんだなんて知ったら~」
お姉さん’s が後ろでヒソヒソ言ってる!
ヤメテよ~! プレッシャーで胃が痛ぇよ~!
ドタドタドタドタ!
ハッ! 複数の足音!
こ、これってもしかしなくても……。
「三五さまっ! 貴方の紫夜ですっ! 婚姻届を持って参りましたっ!」
「三五さまぁぁ♪ みりとっ! このみりと、け、け、結婚してくださぁぁいっ♪」
「マリたんもお兄ちゃんのお嫁さんになる~♪」
「カナミんも♡ 赤ちゃん妻になりまちゅ♡」
「イコですっ! 京都から遥々、お嫁に参りましたっ! 愛しの貴方の元へっ!」
オレ FC メンバー全員集合!
イコお姉さんなんてバスガイドさんの格好してるぞ。仕事が終わったその足でやって来たんだ。
な、なんて熱意だ!
いや、イコお姉さんに限ったことじゃない。
皆がみ~んな大事そうに婚姻届を持参し、期待に胸を躍らせながらオレに熱視線を送ってくる。
そのあまりの熱量を受け止めきれずに、思わず腰が引けてしまった。
嫌ではない! 嫌だなんてことはあり得ない!
むしろ嬉しい。ちょ~嬉しい。
三五FCだ~なんて言ってくれてるけど、お姉さん達こそがオレの為だけに結成されたオレ専用のアイドルグループなんだから。
紫夜お姉さんはクール & ピース担当。
カッコ良さNo.1 !
いつもクールファッションでオレの目を楽しませてくれるんだ。
もうね、何着ても美神。水着姿もカッコ良かった!
声もちょいハスキーめなウィスパーヴォイスでクール!
それでいてその美しい唇から紡がれる言の葉は思いやりに満ちているんだな~、これが。
スタイリストとして活躍中の紫夜お姉さんに優し~く髪をカットしてもらえるのがオレぁ大好きなんだよなぁ。
みりお姉さんはキュート & マターナル担当。
小柄なのとお店の制服のエプロンドレスがアリス的な愛らしさを醸し出しているのかなぁ。でもフワフワキュートなのは見た目だけ。中身はオトナで芯の通ったシッカリ者。
実家のお花屋さんでバリバリ働く素敵なお姉さんなのだ。
車で配達なんかもこなしちゃったりして、サラッと高校生との違いを見せ付けられちゃうんだよな~。
あとなんと言っても母性的。ついつい甘えて色々頼っちゃうんだ。
割りとワガママ言っても全部ニコニコ笑顔で聞いてもらえるんだよね。……お嫁にもらったら絶対自重出来ない。フワフワバディをムギュ~ッと……ああっ! ヤバい! オレのエロ猿! 思春期!
マリカナコンビはキュート & ギャップ担当。
普段はキチンとしてるんだよ、あの二人は。
普通の格好で学校通って、普通に友達とも仲良くしてて、成績優秀。
オレの前でだけだよ、ニパァ~って笑って全力で甘え倒してくるのは。
ロリロリで甘々な部屋着なんか着ちゃってさ。ちょ~密なスキンシップをおねだりしてくるのだ。
マリたんは頭ナデナデや手繋ぎが大好き。
カナミんはオレのおヒザに座ってまったりするのが大好き。
二人共メッッチャ無防備。オトナのカラダなのに!
マリたんは無垢な笑顔で 「お兄ちゃ~ん♪」 とか言いながら見えちゃイケないトコロをチラッチラさせてるし、カナミんなんてオレにおヒザ抱っこされながらヘ~キでお昼寝しちゃうんだぜ! お触りし放題かよ! いや、しないけど! 少ししか!
イコお姉さんはキュート & クール & セクシー複合型 ・ バランスタイプの魅力の持ち主だ。
てゆ~かオレ個人が勝手にアダルティーな印象を彼女に持っているだけかも。本来は元気で明るい人なのに。
小さな頃からの夢だった 「バスガイドさんになる!」 という夢を叶えたイコお姉さんは超カッコ良い。尊敬に値する。
そしてそのスーツ姿は最高にセクシーだ。 (思春期) タイトスカートから覗くタイツに包まれた美脚が堪らない! (思春期)
修学旅行の時とか非日常感 + お祭り気分も相まってハイテンションで懐きまくり & 絡みまくっちゃったもんなぁ。
その過程でスーツフェチがバレちゃって、オレに会いに来てくれる時には決まってスーツとヒールパンプスでビシッとキメてくれるんだ。最高なんだ。
皆違って皆イイ。
個性豊かで色とりどりの魅力を放つ、オレのことが大好きなお姉さん達。
オレだってお姉さん達のことが大好きさ! ハッキリ言ってガチで恋しているさ!
紫夜お姉さんとのキスはどんな味がするだろう?
みりお姉さんには恋人以上のアレやコレやをお願いしたいっ!
マリカナコンビは可愛がってスキンシップしまくって、最後にはパク~ッて食べちゃいたい!
イコお姉さんはスーツをはだけさせたいっ!
思春期爆発! これぞ男の子の夢よな!
アンナ夢、コンナ夢、全部ぜ~んぶ! 今、マジで現実になろうとしている……!
お姉さん達がオレのお嫁さんになりたいって言ってくれてるんだから!
誇張ヌキでこの世で一番の宝物がオレの掌中にある。
だからこそ、だからこそ!
オレは問い掛けずにはいられない!
「皆、最後にもう一度確認させて! 本当にオレのお嫁さんになんかなって良いの!? ハーレム婚だよっ!?」