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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【IF話】 もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら
231/255

あなざ~彩戸すと~り~ あんどもあ  禁断の……ルート

※もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら。

※もしも日本が未曾有の災難に見舞われたら。

※もしも高波 三五 F(ファン)C(クラブ) メンバーが N(ナチュラル)B(ボーン) 女子だったら。

※もしも三五の好みが年上の素敵なお姉さんだったら。


そんなもしもの世界線のお話です。

 何でも寄生虫が諸悪の権化なのだとか。



 高度経済成長期における自然環境の激的な変化のせいでソレ(・・)が人類の生活圏に蔓延(はびこ)ることになった……というのが定説みたいだ。


 その寄生虫が人間に、とりわけ妊婦さんに寄生して悪さをすると大変な事態に陥ってしまう。



 男児が極端に産まれ難くなってしまうのだ。



 戦後の復興 ➡️(からの) 開発 ➡️(からの) 発展 ➡️(を経て) 磐石の平和を手に入れた。と、思いきやベビーブームで産まれてきた赤ちゃんの性別がクッッソ偏っていた。


 これには我々のお祖父さん ・ お祖母さん世代もビックリ。


 せっかくの好景気に沸き立つ間もなく、未曾有の国難の原因究明 ・ 解決に向けて国民一丸となって頑張った。


 その結果、件の寄生虫 (以下、TS虫) の仕業だと特定してからは親の仇、もとい子の仇とばかりに獅子奮迅して駆除! 駆除! 駆除!


 更にはその他のありとあらゆる環境問題に徹底的に向き合い、オレらのお父さん ・ お母さん世代には他国から日本は世界で最も衛生的な国 ・ 美しい国だと絶賛されるまでに劇的改善されたのだった。


 お陰でTS虫はもう居なくなった。


 が、ヤツが日本国民に残した爪痕はとてつもなく大きかった。


 何せ新生児の男女比……一番酷いピーク時には、まさかの 1 : 10 !


 ヤベぇぇ! ハンパなくエゲツい! 日本終わっちゃ~ ⬆️ ⬆️ う!


 そんなワケでオレら世代の男児に懸けられた期待はハチャメチャに重い。


 毎日毎日、社会全体から 「恋愛しまくれ」 「子を成しまくれ」 と有形無形のプレッシャーをかけられるもんだから正直、肩が凝っちまうよ。


 まあでも、オレなんかはまだマシな方だよ。


 本当に大変な思いをしたのは湖宵の方さ。



 「ボク、ボク、女の子と恋愛なんかしたくないっ! だって、だって、ボクが一番大好きなのはっ……三五なんだからぁぁ~っ! う、う、うわぁぁぁ~んっっ!」



 ある日、限界の限界まで抑圧された湖宵のストレスが大爆発した。


 それによって湖宵の秘めていた想いと、女の子の心を持ちながら男の子の身体で産まれてしまったという事実まで、白日の下に晒されてしまったのだった。


 「どうして!? どうしてボクは女の子に産まれてこれなかったんだよぉっ!!」


 湖宵の家はいわゆる地元の名士ってヤツだから……。

 富裕層は衛生観念がガバガバだった時代でも防疫 ・ 感染対策をシッカリしていたから、TS虫の影響がそこまででもなかったんだよね。

 必然的に良いとこのお坊っちゃんが未婚でいるなんて絶対に許されない! なんて風潮が強まるワケで……。


 「う゛あ゛あ゛あ゛っ! こうなったら米軍基地から兵器パクってきてやる! こんな国、BAKUHAしてやるぅぅ!」


 ヤベぇ! (憎悪)に呑まれてる!


 こんな時代にトランスジェンダーとして生を受けるだなんて地獄じゃないか。その苦痛、オレの貧弱な想像力なんかじゃ計り知れない。


 居ても立ってもいられずに湖宵を力一杯抱き締めた。


 「大丈夫だよ、湖宵! オレも湖宵のこと、大好きだから!」


 「う゛う゛う゛う゛、ホント? き、嫌いにならない?」


 「なるワケないよ! 湖宵はオレとず~っと一緒に居れば良いんだよ。そしたら誰も文句なんか言わないからね」


 何故かって? オレの周りにはお嫁さん候補の女の子がい~っぱい居るからね! (赤面) 一緒に居れば誰が誰のお嫁さん候補かなんてわかんね~だろ。



 しっかし改めて男女比 1 : 10 という数字の恐ろしさを思い知ったぜ。今では多少マシになったとはいえ。


 だってだってオレってば極々普通の少年なんだぜ?

 なのにいつの間にやら自動的に好みのタイプの女の子 (年上のお姉さん) に囲まれてて 「この中からお嫁さんを選んでね~」 みたいなカンジになってた!


 つ~かなんで完璧に女子の好みを把握されてんの!? 一言も口にしてないのに! 恥ずかしいんだが!



 「さ~んごちゃんっ♪ わ ・ た ・ し ・ が♪ おねえちゃんよっ♪ ムフフフ♪」



 一番最初にオレの前に現れた女の子 ・ メイお姉さん。


 オレ達の親同士が仲良いから、この出逢いは必然だよね。

 何も作為的なモノは無い。セーフです。



 「は、はじめましてっ♪ さんごちゃんのおねえさんになりにアメリカからやってきましたっ♪」



 メイお姉さんの従姉妹のアンお姉さん。


 ハイここからもうおかしい。当時はスルーしてたけど、この発言はヤバい。


 初めてメイお姉さんと出逢ってからほとんど間を空けずに、アンお姉さんは海外赴任している親元から離れて彩戸(さいど)家に居候するようになったのだ。


 それってマジで只事じゃなくねぇ!? 当時のアンお姉さんだってまだまだ小っちゃかった頃なのに……既に将来を見越してオレの側に送られてくるだなんて!

 

 親達の判断が早過ぎる! 大胆不敵過ぎる! そして……的確過ぎる!


 

 「三五ちゃん、クッキー作ったわよ。おいで~♪」


 「三五さん、お姉さんのおヒザにどうぞ~♪」



 クールでお世話大好きなメイお姉さんとフンワリホワホワ甘~い雰囲気なアンお姉さん。


 双子みたいにそっくりな美貌を持ちながら、全く異なる魅力を振り撒く二人のお姉さんにオレはもうメロメロ。


 小さい頃は 「一緒に寝てくんなきゃヤダ!」 とか 「Wで左右からぎゅ~っと抱っこしてくんなきゃヤダ!」 とか 「一人じゃシャンプー出来ないから一緒にお風呂入って!」 とかめっっちゃ甘えまくったなぁ。


 お陰でメイ ・ アンお姉さん’sには一生頭が上がらんよ。



 時は流れて小学校に上がった頃、だったかなぁ?


 「お姉ちゃんは三五ちゃんの嫁リーダーに!」


 「お姉さんは三五さん F(ファン)C(クラブ) 会長に!」


 「「就任しま~す♪」」


 突然、二人によくわからん肩書きを名乗られたんだけど。(逆らえない)


 てかFCて。我、一般人ぞ? いくらこんなご時世だからってオレのFCなんかに入りたがるヤツおりゅ~?


 と、思ってたんだけど、どうやら普通に希望者が殺到したらしい。皆、結婚チャンスを逃すまいと必死なんだ。こ、怖い。何ちゅ~世の中だい。


 そんでもってメイ ・ アンお姉さん’sが希望者の中からオレの好みの女の子だけを選抜してFCにバンバン加入させていたのだっ! オレの知らないウチにっ!


 怖ぁぁい! オレの自由意思は!?


 「アンタじゃ寄ってくる女の善し悪しなんてわかんないでしょ」


 「そうですよ。上を目指す女性にとって男性との結婚はマストですもの。あの手この手で狙ってきますよ」


 クッ……! 確かに男と結婚したり赤ちゃんを産んだりした女性にはご祝儀として色々な特典がもらえる……中にはソレ目当てで男に近付いてくる悪い女もいるらしい。

 

 もちろんオレに悪女を見極める眼なんてあろうハズもなく……ご、ごめんなさい! もう生意気言いません! 全部お任せしますぅぅ!


 うう、悔しい、が、メイ ・ アンお姉さん’sは基本的にオレのことをめっっちゃ尊重してくれている。


 その証拠に集められたオレFCのメンバーはみ~んなオレの好みド真ん中で超 ・ 超 ・ 超ステキなお姉さんばっかりだ。


 

 「三五さま、また背が伸びた? そろそろ追い抜かされちゃうかもしれませんね」


 夢藤(むとう) 紫夜(しや) お姉さん。


 スタイリスト志望なだけあって、ヘアスタイルやファッションがいつもクールにキマってるキレイ系お姉さん。


 背が高くスレンダーで一見、高嶺の花みたいに近付き難い印象だけど、実は面倒見が良くて優しい性格なのだ。


 「こんなコーデはいかが? え? 自分には大人っぽ過ぎる? フフッ、オシャレは冒険ですよ」


 「三五さまの髪、とっても良い触り心地♪ いつまでもこうしていたい……フフッ♪」


 こんな風によくオレの服を選んでくれたり、髪型をイジってくれたりするんだ。



 「三五さま~♪ 今日も会いに来ちゃった♪」


 箕谷(みのたに) みり お姉さん。


 家業のお花屋さんを手伝っている看板娘さん。

 腰まで届く明るい色合いのロ~ングヘアとパステルカラーのエプロンドレスがトレードマークのカワイイ系お姉さん。


 「お花のお世話をさせてもらいまぁす♪」


 なんとオレの部屋にお家から持ってきたお花を飾ってくれた上に、毎日通ってお世話までしてくれちゃっているのだ。

 お手間を取らせて申し訳ない……が、自分の部屋が華やぐのか嬉しくてついつい甘えてしまっている。


 彩り豊かな季節の花々もさることながら、癒し系お姉さんが小っちゃなお手々でお花のお世話をしている姿が眼福なんだよなぁ。


 眼福、といえば。みりお姉さんって小柄な身体に不釣り合いなくらいバストがポヨンと大きくって、ついつい視線が……って、不埒な! ダメダメ! 自重しろし! オレ!


 「あ、あのあの、わ、私のお胸、そんなに気になります? じゃ、じゃあ、ちょっとお触り……あわわわ、は、鼻血がぁ~!」


 チラ見してたのバレてる! エッチなの苦手なんだから無理しないで! あと出来たら甘やかさないで叱って!


 

 「お兄ちゃん、お勉強見て欲しいの? 後でご褒美に頭ナデナデしてくれたら良いよっ♪」


 安孫子(あびこ) マリ お姉さん……ではなくマリたん。(そう呼ばないと泣き出してダダっ子になっちゃう)


 もちろん年上。涼しげなアーモンドアイが特徴的なキレイ系お姉さん。

 成績優秀、品行方正な才女。オレと湖宵はテスト前になるとマリたんに先生になってもらい、大変お世話になっている。



 「あ~、ズル~いの! カナミんの頭もモフモフして~♪」


 此花(このはな) 佳波(かなみ) お姉さん……ではなくカナミん。(そう呼ばないと以下略)


 もちろん年上。トイプードルちゃんみたいなモフモフヘアが特徴的なカワイイ系お姉さん。

 天才肌の芸術少女。絵がめっちゃ上手い。


 二人とも学校では一目置かれる存在でとっても頼りになる……のに、何~故かオレをお兄ちゃんと呼んで甘えてくるんだよ!

 

 ストレスがそうさせるんですかねぇ……。

 オトナなルックスの二人に無防備スキンシップされると、おかしな気持ちになっちまうんですけど?


 「はぁ~、机に向かってばっかだと肩凝っちゃうの。お兄ちゃぁん、モミモミして欲しいなぁ~♪ チラッ☆ チラッ☆」


 マリたんはまだ良いよ。

 ギャップがあって可愛いね、って言える範囲内だから。ドキドキはさせられるけど。


 「カナミんはお兄ちゃんの赤ちゃんでちゅ☆ バブバブ~☆」


 カナミんはヤベ~! 甘やかしてたら幼児退行(エスカレート)して赤ちゃんになっちまった!


 「ふえぇぇ~ん……バブゥ! バブバブ! バブゥゥゥ! パパぁ~!」


 パパじゃね~! と、言いたいところだが、どうやらマジでグズっているらしいので全力であやす!

 よしよ~し、泣かないでね、良い子だからね~。


 「あぅあぅ、あぅぅ~、あ~い☆ キャッ☆ キャッ☆」


 う~ん、この無垢な笑顔のリアルさ、演技ではないな。

 心の底から赤ちゃん返りしておるわ。


 こんな状態でムチムチのフトモモとか押し付けてくるんだから堪らんよな。欲望に負けて何度かモチモチしてしまったが、オレは悪くない……と思う。(目をそらす)


 困ったちゃんなマリカナコンビだけど、トコトンまで甘えきった後はちょっと凄い。


 学業をバリバリこなし、並行してオレFCオフィシャルグッズをジャンジャン制作。


 その際に使用された原画 (言わずもがなオレの肖像画 ・ カナミん画) がコンクールに入賞!


 オレFCグッズに囲まれてモチベMAXになったマリたんはなんと志望大学に首席で合格!


 二人とも(すげ)ぇ! これが一流のメンタルコントロールか! 計り知れない可能性だぜ! これからも甘やかしまくろっと!



 そしてオレFCメンバー最後の一人。



 「右手に見えますのが、かの有名な清水の舞台でお馴染みの音羽山清水寺でございま~す」


 戸塚 イコ お姉さん。


 高校の修学旅行の時に出逢ったバスガイドさん。

 メイク & スタイルWバッチリでタイトスカートのスーツ姿が超似合っているオトナのレディ。


 明るい笑顔でイキイキとガイドしてくれるイコお姉さんにオレは一発で懐いた。


 「ここのお抹茶のお菓子がね、と~っても美味しいんですよっ♪」


 「お足元にお気を付けくださいね。さあ、お手をどうぞ♪」


 イコお姉さんが観光中ず~っとオレ達の班に同行 (良いのか?) してくれたお陰で、とっても楽しい旅行になった。


 中でも忘れられない一番の思い出。


 秋の京都、紅葉舞い散るとあるお寺さんの境内で……。



 「三五さんっ! 私、私、貴方のことが好きですっ! 愛してますっ! 私を貴方のお嫁さん候補にしてくださいっ!」



 愛の告白。

 ま、まさかここまで好かれていたとは……。


 ……ハッ! 面食らってる場合じゃないぜ。

 ここはイコお姉さんの本気に全力で応えなければ。


 「イコお姉さん、オレ……」


 意を決して口を開いた、次の瞬間。


 「良いでしょう! この私、嫁リーダーたるお姉ちゃんが貴女を認めます!」


 「今日から貴女も三五さんFCのメンバーですよ♪」


 メイ ・ アンお姉さん’sに勝手にお返事されたんだけどォォ!


 「フフッ、新たな恋のライバル登場ね」


 「もう、紫夜ったら。三五さんが選んだ (選んでない) (ひと)ですもの。仲良くしましょ」


 「お兄ちゃんの妹の座は渡しませんけどね!」


 「赤ちゃんの座もでちゅ!」


 オレFCメンバーにも秒で受け入れられてるゥゥ!


 ちなみに何故、彼女達が修学旅行に同伴しているかというと防犯の為だァァ!

 このご時世、男が一人、あるいは少人数で歩いていると悪い女の人に絡まれたりするのだァァ!


 「あぁぁっ! ありがとうございますっ! 正妻さまっ! 会長さまっ! FCメンの皆さまっ! 私、きっと良いお嫁さんになってみせますっ!」


 イコお姉さんは溢れる涙を拭いもせず、天を仰いでこう続けた。

 「神さま、この出逢いに感謝致します」 と。

 そこまで言われてしまってはオレが今更口を挟むことなど不可能だ。オレ自身のことなのに。


 

 かくして彼女達はオレのお嫁さん候補になったのだった。

 たった一人のオレに八人も! 良いのかよ~!? ハンパなく悪いことしてる気分! すっげ~ソワソワする!


 オマケにお嫁さん候補の皆は対外的にはガッツリ恋人だと認知されている!

 皆と一緒に歩いてると近所のオバちゃんから 「アラアラ、お盛んネ♪」 とかイチイチ言われたりすんだぜ!? ケツの座りが悪いってレベルじゃね~ぞ!


 だがしかし。


 その程度の心のモヤモヤ模様など、まだまだ序の口に過ぎないのだと。

 後にオレはトコトン思い知らされるのであった……。

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