あなざ~彩戸すと~り~ ・ アン視点 ⑫ 私って実は貴方の好みド真ん中だったんですか!? アンルート
※アン視点です。
正気に戻った私は重大な事実に気付いてしまいました。
夜、お風呂に入ろうとした時のことです。
無いんですよ、パジャマが。
私の好きな可愛いの。
サラサラだったり、ツヤツヤだったり、フワフワだったり、フカフカだったり、キラキラだったり、カラフルだったりするのが。
そんなのが一着も無~いの!
あるのはジャージ。 (色は紺と黒)
「嘘でしょお!? ま、まさか……!?」
ハッとしてクローゼットを開けてみて、もう一度ビックリ。
無いんですよ、お洋服が。
可愛いのってゆ~か、普段着すら。
お洋服を買いに行くお洋服すらございまっせん!
あるのはジャージ。 (白ライン二本入り)
何故ジャージしか持ってないかというと動き易いから = 襲い易いから。最悪~!
「メ、メイ~ッ! お洋服貸してぇ~! あとパジャマもぉ~!」
…………………………。
「アンタさぁ、服すら無いってことはケア用品なんかも持ってないワケ?」
「そ、そう言われれば、そんなのしばらく買った覚えがないっ!」
化粧水や乳液、ハンドクリームやヘアオイル、ボディスクラブやネイルをピカピカにするなんか細長いアレ……その他にもたくさん!
シャンプーやトリートメントなんかはメイやメイママのを勝手にパクって使ってましたが、それだって自分の髪質にマッチしたのを吟味したいです!
「今までどうしてたワケ? 何も使ってないにしてはアンタ、お肌プルプルよね。冬とかでもさ」
「さ、三五さんと一緒だとドーパミンが分泌されて、自動でお肌がシットリ保湿されてたってゆ~か……」
「キ ッ ッ シ ョ 。 ほとんど妖怪の類じゃないの」
ハ、ハイ、仰る通りで。
オマケに色欲妖怪 ・ アンの唯一のオシャレ……だと思って身に着けていたものが、三五さんFCグッズという救いようの無さ……。
「イヤァァァ~!」
女の子は星の数くらいある 「カワイイ」 から自分だけのキラキラを探して、集めて、飾って……そうやって光輝くの!
わ、私はカワイイ女の子になる為のガンバリをず~っと放棄していた分際で恋愛に現をぬかしていた!?
挙げ句の果てには妖怪と化して毎日毎日、意中の男性に襲いかかっていたァァ!
何~でコレで嫌われてないの、私!? シャバの空気を吸えてるの!?
嫁ガードさまが身体を張って止めてくださっていたから!? メイとお顔か瓜二つだから!? 従姉妹だから!?
それじゃあ全部メイ……さまと湖宵さまのお陰だったのね!?
「メイさま~っ! 真人間になれるように導いてくださ~いっ!」
「手始めにお店の場所まで導けって? ま、しゃ~ない。アンタがキチンとしないと三五ちゃんが恥かくからね」
善は急げと申します。
次の日の放課後にメイに色々と案内をしてもらえるようにお願いしました。
街へと繰り出して、カワイイもの探しの小旅行に出発♪
まずはセオリー通りにセレクトショップでもシバきますか。
う~ん、お馴染みのブランドでも数年もご無沙汰してますと、流行りがまるまるっと変わっちゃってますねぇ~。
ここはジ~ックリチェックして決戦に備えた必殺コーデを♪ ……選びたいトコロですが、それはまたの機会にですかね。一応受験生でもありますし、私。
オシャレ着やコスメなんかは後回し。
まずは普段着や靴や日用品などなどをGETするのがMUSTです。
コレらは植物にとっての水。無いとカピカピ乙女になってしまいますから。
そんなワケでLet's Go ~♪
…………………………。
必要最低限のアイテムを取り揃えた……とは言っても、パンパンのエコバッグがいっぱいぱいで両手がふさがっちゃいました。
重~い! け ・ れ ・ ど、この重さが堪らないんですよねぇ~♪
「アンタ、買い過ぎ~。私にまで荷物持ちさせるとかイイ度胸してるわね」
「エヘヘ♪ ゴメンね♪ メイにも貸したげるから許して♪」
「えぇ~、私に似合うかなぁ、弟ちゃん達に変に思われないかしら」
「大丈夫大丈夫~♪ 私がピッタリなの選んであげるから~♪」
楽しいお買い物を済ませた私はご満悦でございます。
これでやっと三五さんの前に出ても恥ずかしくない格好になれますからね。
そんなこんなで満を持して迎える週末。
早速、皆で遊ぶ折りに下ろし立てのお洋服を着て参ります♪
久方振りのシフォンワンピ。
風に遊ばれてヒラヒラはためくスカート生地がくすぐったい。
乙女気分でルンルンルンです♪
「アンタはもうシンデレラじゃないけどね」
メイの辛辣なツッコミなど意にも介しまっせ~ん♪ ウフフ♪ 小鳥さん、こんにちは♪
皆で集まる時には広~い繊月邸の広~い湖宵さんのお部屋をお借りすることが多いです。が、本日改めてお屋敷を目の当たりにしてビックリ!
なぁ~んて素敵なお家なの!
綺麗なお花が咲き乱れる庭園に、華やかでありながらも白を基調に凛とした佇まいの洋館。これこそ正に ELEGANT !
テンプレ恋愛小説の舞台みた~い♪ プリンセス気分に浸っちゃいますぅ~♪
「アンタ今更何言ってんのよ」
「アンさんは三五のことしか眼中になかったもんね! 獲物を狙う肉食獣みたいにさぁ!」
プリプリ怒る湖宵さん。
でもね、心底嫌われてる~、ってワケでもないんですよ。
湖宵さんは私が買ってきたお土産を喜んで受け取ってくれたんです。普通なら突っ返しますよね。なんてお優しい♪
女の子同士でワイワイヤイヤイ盛り上がっていると……。
「アンさん、ちょっとそこのソファーに座って」
アラ、三五さんからの突然のご要望。
モチロン0.1秒で従います。
ズシャァァ~!
なんと! 三五さんたら私のおヒザめがけてヘッスラ!
「イエ~イ♪ アンさんのヒザまくらサイコ~♪」
アラマア! 三五さんたら私のおヒザにお顔埋めてグリグリ & ほっぺスリスリ♡
フリフリスカートにも興味津々のご様子で、生地をサワサワしてみたり、レースのヒダヒダに指をねじ込んでみたりとやりたい放題でございます!
ウヒャアァァ♡ ドキドキ♡キュンキュン♡夢心地ですっ♡
でも我々以外の女子にこんなことしちゃダメですよ。
欲望に身を委ね過ぎるとポリス沙汰になりますからね。 (説得力全一)
「「アンちゃん (さん) ばっかり構ってズル~い!」」
嫁ガードからの当然の抗議。
私としても彼女達に引け目があるので、今日の所は大人しく引っ込んでいようと思ったのですが。
三五さんは素の自分を取り戻した私が物珍しいらしく、まるで仔犬ちゃんみたいにジャレついてくださるんです♡
「髪も服も気合い入りまくり~! コレで普段着とか嘘でしょ!?」
「ナチュラルにフラワーの香りがする! もしやアンさんってフェアリー!?」
「スキンケア? ネイルケア? オイルマッサージ? やっぱやってんじゃ~ん! 特別なコト~! え? 別にフツ~? ただの日課? 意識高~い!」
「ねえねえ、帰国子女ってことは英語ペラペラなんでしょ? 何か英語でお喋りしてみて!」
可 愛 い か 。
アッレ~!? 私はホントに目立たず飾らずありのままに、むしろ嫁ガードの陰で大人し~くしてたんですけケド!? 何故か逆に興味持たれちゃってます!?
私みたいなタイプは周りに居なかった?
柔らかい物腰にグッとくる?
乙女な仕草にトキメく?
「つ~か、今夜電話して良い? アンさん、いやさ、アンおねえさん! 話したいことありまくりだよ~!」
え゛え゛え゛……おめかしもしていない身も心もスッピンな私が……三五さんの……好みのタイプだった?
ア、アハ、アハハハハ…………………………ん゛ん゛ん゛ん゛あ゛あ゛あ゛~っ!
よ、欲望で我を失わなければぁぁ~っ!
きっと、いや、絶対! 第一印象チリバツで初対面の時から仲良くなれてたぁ~っ! 憧れのお姉さんポジになれてたぁぁ~っ!!
「はいカッチ~ン。三五ちゃん、アンタ今夜は私の部屋に泊まりなさい。一晩中可愛がってお姉ちゃん漬けにしてあげるわ」
ホラホラ! 証拠にあのメイが秒で焼きもち妬いちゃってるじゃないですかっ!
何だったの私の二年間はぁぁ~っ! 悔やんでも悔やみきれませぇぇん!
「ダ、ダメだよ、だってそんなの浮気……」
「バカ言いなさい! アンタはねえ! 私! アンちゃん! 湖宵ちゃん! 三人のオンナをトコトン食べ比べて (下ネタ) No.1伴侶を選抜しなければならないの! これは運命義務よ!」
ガチで火が点いてますね、メイ。
姉としてオンナとして。Wのプライドに障るとあっちゃあ当然ですよね。
それでも流石はメイです。
彼女の偉いところは感情に支配されないところ。
その気になれば三五さんを独り占めすることだって出来るのに、至上のお嫁さんを選ぶという使命を決して忘れません。
お陰様で私達は代わりばんこで三五さんとデート出来るんですから、メイには足を向けて寝られませんよ! ありがた~い!
「ああ……今夜、三五はメイねえさんと……病むぅぅぅ! クッソ~! 早く順番回ってこないかなぁ!」
とはいえ湖宵さんの気持ちもわかるんですよね~。
ああ、今夜のメイはハチャメチャに燃えるんだろうなぁ……。 (しみじみ)
想像するだけでお腹の奥がズ~ンてなりますもん。
しかもメイの部屋でってことは、一つ屋根の下の私の部屋の隣でってことですもん。それは病むぅぅぅ!
う~わ、今夜私、どんな気持ちになるんだろう!?
はあぁぁぁんっ。
でもその胸の痛みと切なさを味わうことで、ようやく嫁ガードと同じラインに立てる。つまり、私も嫁ガードの一員になれる♡
そうだ! まんじりと順番を待つだけでは芸がありません。
湖宵さんと二人、私の部屋でお泊まり会するってのはどうでしょう?
二人でやるせなさを共有しつつ、旦那さまと奥さまのお世話を焼くんですよ。お妾さんごっこです。ちょっと楽しそ~♪
「さ、三五さん、今夜は心行くまでお楽しみくださいませっ」
「オイイイィィィ!?!?」
何故だか死ぬ程度肝を抜かれてる三五さん。
はは~ん、嫉妬に狂った私が何か企んでるとお疑いなんですね?
大丈夫! 私は常識を取り戻しましたから! ちゃ~んと良い子で順番を待てますよ♪
「そんな常識があるかァァ~! なんかこの人冷めてねえ!? 嫌だああァァァ!」
ピョ~ン! ガバムギュウゥゥ~!
「キャ~ッ!? さ、三五しゃあぁ~ん!?」
アレアレアレ~!?!?
三五さんにちょ~力一杯ハグされてましゅぅぅ!?
と、突然どうしたんですかっ? ご機嫌ナナメになっちゃったんですかっ?
「オレに飽きちゃったの!? 嫌だよ! N . Yなんかに帰らないでよ! ずっと側に居てよ!」
「ふえぇ!? ど、どういうことですかっ!?」
三五さんはウルウル上目遣いになりながらも曰くを話してくれました。
何でも以前、私がN . Yに帰る夢を見ちゃったんですって。
その夢はとってもリアルで、三五さんに興味を失くした私の冷たい視線とお別れの言葉がトラウマになっちゃったって。
ん ・ も~!
私の三五さん愛が冷めたりするワケないじゃないですか~! お側を離れるとかワケわかりませんから~!
それなのにそ~んな不安そうなお顔で 「アンおねえさん」 なんて呼んじゃって、ぎゅ~って♡ ぎゅ~ってしがみついちゃって♡
「キャワワァァ~ンッ♡ キクゥゥ~ンッ♡」
ジュワッ! ジュワワワワ~ッ!
あ゛~ダメ! いけません! ドーパミンがァァ! めっっちゃハジけてるぅぅ! 脳がカラッと揚げ上がっちゃうぅ!
「赤ちゃん作りましょっ♡ 今すぐに♡ 赤ちゃんがデキちゃったらお互い離れられませんよねっ♡」
ん゛ ・ も゛~!
あれっっほどまでに後悔に後悔を重ねまくったというのにぃぃ!
ま~た頭オカシイこと言ってるぅぅ!
私というオンナはぁぁ! 本当にぃぃ!
二度と逆らうまいと誓っていた嫁ガードのお二人ともフツ~にわちゃわちゃバトルしちゃったし。
信っじらんない! 私のバカ!
「さあ来なさい、三五ちゃん! お姉ちゃんがた~っぷり可愛がってあげるわっ!」
「ア゛~ッ! ア、アンおねえさ~んっ!」
三五さん、今夜は私のことなど忘れて存分にお楽しみください!
私はその様を妄想し!
胸の痛みをジックリ噛み締め猛省し!
真人間に近付く為に頑張る所存でございます!