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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【IF話】 もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら
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あなざ~彩戸すと~り~ ・ アン視点 ⑪ 許されてしまった罪……でも罰ゲームはちゃんとありました  アンルート

※アン視点です。

 洗面所の鏡に死にそうな顔の女が映っています。私です。


 正気を取り戻した瞬間に凄まじい罪悪感に襲われて、本っ気で死にたくなりました。


 どうして狂ったままでいられなかったの……。


 いいえっ! ダメよ、自分の罪から目を背けては! 償いをしなければなりません!


 かくなる上は腹をかっ捌いて……いえ、それもダメです。

 一晩中情を交わしたオンナに目の前でそんなコトをされてみなさい。一生モンの心的外傷(トラウマ)を植え付けられてしまいますよ。


 三五さんにとって忘れられない女になってしまったこの私には、おいそれと死を選ぶことも、あまつさえ自らを傷付けることすらも許されはしないのです。


 だ、だったらどうすれば……。

 そうだ! 刑務所! 刑務所があるじゃないですか! あ、女子少年院でしたっけ?

 どっちでも良いです! 今すぐ服役しなきゃ!


 もちろんそれくらいで私の罪が全て精算出来るだなんて思ってもいません。

 しかし三五さん直々にご通報(110番)していただくことで少しでも溜飲を下げてもらえるのなら……。

 私も自分の犯した過ちにトコトン向き合えるし一挙両得です!


 身嗜みの最終チェックを済ませたら、直ぐに三五さんにご提案しましょう。


 

 「ダメだって! 受験すんのか就職すんのか知らないけどメチャクチャ不利になるって!」



 110番を入力してコールボタンを押すだけのスマホを差し出す私を押し(とど)め、三五さんはそう仰るのです……!


 あ、あまりにも! あまりにもお優し過ぎますよ……!

 ですが今回ばかりはそのお情け、世の為人の為になりませぬ。

 

 私のしでかしたコトは歴とした犯罪なのです。悪は絶っっっ対に法の下に裁かれなければいけません!


 ハッ! もしや法ではなく、三五さん御自らが直々に成敗なさりたいと!? な~るほどぉ!


 「さあ、どうぞ! 思う存分、殴るなり蹴るなり! 一切抵抗致しませんので!」


 両手を広げて全てを受け入れる構えを取り、目を(つむ)る。

 遠慮は要りませんよ、思っっきりボッコボコにしちゃってください!


 ちょっぴりドキドキしながら待っていると……。


 ギュウゥゥッ。


 ひゃわわわぁっ!? ハ、ハグゥゥ!? 抱き締められちゃってるんですかっ!? な、なんで!? 制裁は!?



 「アンさんは悪くないよ。昨夜はオレがアンさんを呼んだんだから」


 

 いやいやいや、悪くないワケないでしょ~!?

 抗議しようと口を開いたら……。


 「んむぅっ!?」


 キ、キ、キッスぅ!? キッスで唇を塞がれちゃいましたぁぁ♡


 「何度でも言うよ。アンさんは悪くない」


 そ、そんなぁぁ♡ ま、待ってぇぇ♡ ダメぇこんなのぉぉ♡


 悪い子な私がこんなに良い思いをしてしまっては、道理が引っ込んでしまいます。


 どうしても承服しかねるので物申そうと頑張るのですが、その度に……。


 むちゅっ♡ むちゅっ♡


 あぁ~っ♡ キスでわからされてしまいますぅ♡ 男らしさにトキメキまっすぅぅ~♡



 「……昨夜のことはオレも興味があったから、アンさんとしてみたかったから……言わせないでよこんなこと……ばか」



 きゅうぅぅ~んっ♡ カワイィィ~ッ♡ テレテレモジモジ三五さん、お顔を真っ赤っかにしちゃって、ちょ~カ~ワイイ~♡

 カッコイイとカワイイの波状モーションとか反則でっすぅ♡


 何でも言うこと聞いちゃいた~い♡ のは! 山々なの! です! がぁぁ!


 な、何で優しくするのぉ?

 どうしてそんな、私なんかをかばうみたいな……叱らないんですか? 懲らしめないんですか?


 もしかして……本当に私と仲良くなりたいって思ってくれているんですか?


 メイの従姉妹だからとかじゃなくて、一人の女の子として気になるって……? 今でも?



 「オレはアンさんとちゃんと話がしたいんだよ。アンさんのことがもっと知りたい」


 

 三五さんの真っ直ぐな瞳。

 真っ直ぐな気持ちが伝わってきます。


 あ あ あ あ 、 私は、私はなんてバカなことをしでかしてしまったのだろう。


 何度も何度もそう思いましたが、この時の罪悪感は今までのそれとは比較にもなりません。骨の髄まで痛感しました。


 いくら一目惚れしたからって、どうして暴走した私……!

 狂おしい衝動に身を(ゆだ)ねるのが気持ち良いから?

 だからって本当に狂っちゃったらニンゲンお終い(廃業)じゃないですかっ!


 欲望ギラギラおバカ面の色恋ド~ブツ……私の中の最も醜い部分をよりにもよって、最愛の男性の前にず~~~っと晒し続けてたなんてぇぇぇ~!?!? く、く、黒歴史です!


 ああ、申し訳ない、恥ずかしい、心苦しい、いたたまれない。


 たくさんの 「ごめんなさい」 がたくさんの涙と一緒に止めどなく溢れます。


 三五さんは 「許すよ」 「大丈夫だからね」 って言って背中を撫でてくださいますが……正直、心が痛かったです。

 優しくされるのが、愛されるのが、こんなに辛くて苦しいなんて……。


 でもね、よくよく考えれば、ボコボコに殴られてスッキリして楽になりたいなんてのは、私の自己満足でしかありません。


 許されること。素の自分で三五さんと向き合うこと。

 それらを三五さんがお望みならば、痛みを押し殺し、恥を忍んで仰せのままに致しましょう。


 心が決まったら涙も引っ込みました。



 「ううぅぅ、泣いちゃってごめんなさい。昨夜のことも、その前のことも、何もかも。ううう、謝っても謝り足りません……」


 「いいよ! 全部まるっと許しちゃうよ! それよりメイおねえさんが用意してくれたご飯を一緒に食べようよ。大分遅くなっちゃったけどさ」


 メ、メイ……ごめんね、私なんかが貴女の愛情がたっぷり詰まったご飯を食べちゃうなんて。

 で、でも三五さんのお言葉だからっ! ホントにゴメン! 後で謝りに行くから! 


 せめて食事の準備は私がやらせていただいて……そして、おしゃべりを交えながらのお食事タイムが始まります。


 お互いの好き嫌いや趣味について、進路や将来の夢について。

 年またぎの濃密な自己紹介トークが弾みに弾みました。


 三五さんのことを知れるのも嬉しいけれど、三五さんに私のことを知ってもらえるのも同じくらいに嬉しい。


 あ゛。三五さんってロクに自己紹介すらされてない女に貞操を奪われてしまった……?

 死 に た い 。

 でも生きる。貴方が望んでくれたから。



 あ゛あ゛ぁ、それにしてもこの罪悪感たるや、いかんともしがたい程へヴィーです。お腹の奥までズンときます。


 あっ、そうです! 嫁ガード! 嫁ガードのお二人に会いに行きましょう!

 彼女達は大切な大切な三五さんを手籠めにした私をギッタギタにしてやりたいと思ってるに違いありません!


 さあ、どうぞ! お気の済むまでボコしてくださいっ!



 「ダメよ、三五ちゃんが悲しむから」


 「ど、どうして、メイっ!? 私のことを恨んでいるんでしょう!?」


 「そんなモノ、三五ちゃんの幸せの前には二の次よ。アンタが三五ちゃんの一番になる可能性が1%でもあるのなら、私はアンタを傷付けられない」


 メ、メイ……。

 いつもながらこの(ヒト)の愛には敬服させられてしまいます。

 同い歳だとはとても思えない……もしや人の形を借りた女神さま?


 「フ゛ウ゛ゥゥ~ッ! ク゛ウ゛ゥゥ~ッ!」


 こ、湖宵さんっ!

 愛らしい顔立ちが鬼の形相に歪むくらいに! 私を睨んでおられます!

 そうです、これが普通の反応ですよねっ!


 さあ、我慢は身体に毒ですよ! 煮るなり焼くなりお好きにしてください!


 湖宵さんは拳を振り上げ…………ずに、ご自分の部屋の隅っこをビシッ! と指差します。

 そこにあるのは大っきなクマちゃん? のぬいぐるみ?


 「実演シロ……」


 「ふぇ?」


 「昨夜、三五ニ()ッタコト! アノ ヌイグルミデ実演シロッ! 再現シロォォ~ッ!」


 「素直にブン殴ってくださいませんかねぇ!?」


 冗談……じゃない!?!? 本気で仰っておられます!?


 「そうね、私達は詳細を知っておかなければならないわ。記録にも残して戒めにするのよ」


 スマホを構えるメイ! 録画までするつもり!?


 「ま、待ってください、そ、そんなの……」


 「ウルッサァァイ! 口答エスンナァァァ!」


 「アンタ煮るなり焼くなりっつったでしょ~よ!? 吐いたツバ飲まさないわよ! ホントに反省してんの!?」


 二人共、目が怖ぁ~い!

 「再現するまで永遠に解放しないぞ」 、と口ほどに物を言ってますぅ!


 うっうっう……こうなれば()るしかありません。


 その場で下着姿になってクマちゃんに抱き着きます。


 「三五さん、三五さぁん」 と甘い声を出しながらクマちゃんをペロペロちゅっちゅしたりムギュムギュ~ってしたり、上に乗って腰をクネクネさせたりヘコヘコさせたり……。

 

 マジで何してんの、私。

 狂った時の過ちをシラフでやらされると、罪深さがより一層際立ちますね……。

 改めて何てことをしでかしてしまったの、私……。


 オマケにこんな不様を恋のライバル達に見下ろされるなんて。(そして録画されるなんて)

 これ以上の屈辱がこの世にありましょうか?


 「な!? たった一晩でそんなコトまでっ!? 何てコトを覚えさせてしまったのっ!」


 「ギィィィ~ッ! よくも三五にっ! ボクの三五にぃぃぃ! この女郎(メロ)ォォォ~ッ!!」


 その恋のライバル達も血涙を流さんばかりに激昂してますし。ガチで誰一人得してません。


 「「このヘンタイ! ドスケベ! 色情狂! ケダモノ! 痴女! 魔女! ゴ ・ ウ ・ カ ・ ン ・ マ~ッッ!!!」」


 「ぴえぇぇ~ん! びえぇぇ~っ!」


 ヘコヘコヘコヘコ。


 荒れ狂う負の感情の坩堝。ここが地獄の一丁目。


 唯一の救いは地獄と化したのが、敷地の広い繊月(せんげつ)家だったことでしょうかね。

 こんなハチャメチャな乱痴気騒ぎがご近所に知れ渡らなくて良かった。今更ですけど。




 「よ、ようやく終わった……」


 容量にして2 GB(ギガバイト) にも及ぶ過ち再現動画を撮り終えた私はヘトヘトのフラフラです。


 ですが一刻も早く謝罪しなければならない相手はまだいます。


 三五さん F(ファン)C(クラブ) のメンバー達。


 抜け駆けは万死に値する裏切りですもの。

 疲れたから日を改めて、なんて甘えは許されません。


 緊急会議を開催すべく、直ちにメンバー全員を召集します。



 「さ、三五さまを性的に襲ったぁぁ!?」

 「しかもヒトバンジュ~!?」

 「会長ぉぉ! アンタって人はぁぁ!」

 「待って……鼻血が……鼻血が……」


 「言い訳はしません! どんな責めも受け入れます! さあご覧あれ! これが私が犯した過ちですっ!」


 FCメンバーにスマホを突き付けます。

 ピッピッ。

 過ち再現ムービーSTART!


 『ア~ン、三五サァ~ン……シクシクシク』


 「「「「ブブブブ~ッ!」」」」


 あああ!? FCメンバーが全員鼻血を噴き出して後方に倒れてしまいました!?


 三五さんは一ミリも映っていないのに何故……って、そうか! 彼女達は私の話と小っちゃな白黒写真だけで三五さんを好きになっちゃうくらい想像力が豊かなのでした!


 まざまざと思い浮かべてしまったのですね! 世にも淫靡な光景をぉぉ~!


 彼女達はその後、起き上がっては気絶してを繰り返し、とてもじゃないですが言葉を交わせる程のコンディションには回復しませんでした。


 それどころか私と顔を合わせると動悸が止まらなくなるとかで、数日たった今でもキチンと謝罪が出来ておりません。


 本当にごめんなさいね。この埋め合わせは必ずさせてもらいますからね。

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