あなざ~彩戸すと~り~ ・ アン視点 ⑩ 罪 ・ アン大暴走! 社会的に死す!? 後編 アンルート
未来のアン視点です。
「「嫁ガァード! † 絶対正義処刑鎌 † !!」」
ズバシュズバシュゥゥ~!
「キャアァァ! 三五さぁぁ~ん!」
いつもの日課。
嫁ガードと取っ組み合いになり、最後に罪 ・ アンがキメ技で吹っ飛ばされる。
ですがいつもと違う点が一つ。
「ハァ……ハァ……へへ! 今日も三五に指一本触れさせなかったぞ! やったね! メイねえさんっ!」
「ええ……そうね、湖宵ちゃん。そのハズ……よね?」
そう、ここ数日間、罪 ・ アンは三五さんにお触り出来ていない。
これはおかしいです。
確かに嫁ガードは強大なる壁ですが、罪 ・ アンとて最終 sin 化を遂げて更なるパワーアップを果たしています。
それなのに何故、三五さんに触れもしない? その答えは……。
「フ~ッ! フ~ッ! ス、ストレス溜まるぅぅ! ワザと負けるなんてぇぇ! で、でも耐えるのよ、私……いざという時の為に……! お触りしたいけどぉぉ、ガマンガマン……う゛う゛う゛~!」
罪 ・ アンは野生の勘でいざという時が必ず来ると確信していたのです。
だから嫁ガードの油断を誘う為にワザと負けを演じてみせた……それも長々と格闘して体力を奪った上で!
オマケにお触り断ちすることで欲望のパワーを最大限に高めていたのです!
三五さんとの仲を深める為? いいえっ! 超自己中心的な欲望を三五さんにぶつける為に! 罪 ・ アンはここまでのことをしたのです! サイテ~です! 頭狂ってますよ!
「へへ~ん♪ 大勝利♪ 嫁ガードに歯向かうなんてムダムダ♪」
「おかしい……簡単過ぎる……あっけなさ過ぎる……」
恐ろしいことに罪 ・ アンの勘は的中してしまいました。
ある日突然、牙を研いでいる獣の前に千載一遇のチャンスが落ちてきたのです。ポロッ、と。あまりにもアッサリと。
運命のその日、罪 ・ アンはお茶でも飲もうとリビングへ向かっておりました。
トン、トン、トン。
階段を下りてリビングのドアに手を掛けようとしたところ……。
「ほ~ん、そ~なんだ~」
テキト~でいかにも覇気の無さそうな声 (失礼) ……メイママの声が聞こえてきました。
どうやら電話でお話中のようです。
「それじゃ~今日、明日は三五ちゃん一人でお留守番なのね~」
ピ タ リ 。
罪 ・ アンの活動が静止。尖らせた全神経を耳へ集中。本気の盗み聞きです。サイッッテ~。
メイママのお電話の相手はお義母……三五さんのお母さま。
話をまとめると、三五さんのお祖母さまがギックリ腰になってしまったので、泊まり掛けでお見舞いに行くとのこと。
折しも三五さんのお父さまも出張中でご不在……三五さんは今現在から少なくても明日の夜までは高波家に一人きり……!
話を聞き終わった瞬間、罪 ・ アンは玄関へ向かい、すぐに外に飛び出……さずにスニーカーを引っ掴み、息を潜め声を殺し……まるで忍者のように静か~に自分の部屋へと戻って行きました。
そして室内でスニーカーを履き、窓を開け放ったのです!
そうです! この女、普通に玄関から出たら物音でメイに気付かれるかもしれないと思って、窓から塀へと飛び移って外に出るつもりです!
メイを出し抜く為とはいえ、こ~んな非常識なマネまでするとは!
「夜 這 い て え …… !」
邪悪なる目的を果たすべく、悪魔が羽根を広げた、その瞬間!
「姉山靠!」
ズ ド ン ッ !
姉山靠。
それは姉による鉄山靠。
飛び込みジャンプの体勢でこんなモノをブチかまされては防御なんて不可能です。
ドガンッ!
コロコロ~ッ。
部屋の壁にしたたかに身体を打ち付け、ベッドの上に転がる罪 ・ アン。
「痛たたた……って、グエェェ~ッ!?」
矢継ぎ早の連続攻撃!
メイの裸締めが極まります!
ギリギリギリギリ……ッ!
「な……んで……!? か、んぺき……に、オと、を……こロして、たの……に!?」
「だからよ! アンタの様子がおかしかったからね、ず~っと注意して見張ってたのよっ!」
罪 ・ アンが機を窺っていたのと同時に、メイも最悪の事態に備えていた。
なんという深く尊い姉の愛。
大いなる愛は物理的な圧力となって私の首を締め付けます。
「ウ゛キ゛ィィ~ッ! サ゛、サ゛ン゛コ゛サ゛ァァ~ン゛!」
「気絶なさいっ! この色欲魔猿めっ!」
「キ゛ィ~ッ! キ゛ィィ~ッ!」
野生パワーでもがく罪 ・ アンですが全くの無駄。完璧に極まった裸締めから逃れる術などありはしません。
ギ ・ チ ・ チ ・ チ ・ チ ・ チィ……!
「サ゛……ン゛……コ゛……サ゛……ン゛……」
罪 ・ アンの意識は次第に遠のき、やがてブラックアウトしました。
あ、読者の皆様は気軽にマネをしてはなりませんよ。
愛する人が犯罪者に狙われている……それ程の緊急事態でもない限りは、ね。
………………………………………………………………。
「…………………………はっ!」
罪 ・ アンの目が覚めた頃には、部屋の窓から夕陽が射し込んでいました。
「くぅぅ、諦めませんよ、私は今からでも……って、何コレッ!?」
ベッドに横たわる自分の身体を見てビックリ。
なんと罪 ・ アンは関節という関節をビニール紐でキツ~く縛られ、更にその上を養生テープでガッチガチに固められ……一生身動きがとれない状態にされていたのです!
「メイったらぁ! 何もここまですることないじゃないのっ! た、助けて~! だ、誰かぁ~! メイママ~! ちょっと来てくださぁ~い!」
シ~ン。
応答がありません。
恐らくメイママはお昼寝中ですね。
あのお方、昔から娘が家事をやりたがるもんだから、おサボり癖がついて自堕落さんになってしまわれたのですねぇ。困ったものです。
「てかホント困るぅぅ! このままじゃ……って、メイは!? メイはどこに!? ま、まさか……!?」
まさかも何も、三五さんのお世話をしに行ったに決まってるじゃないの。
「メイめ、三五さんの所に……! ま、まさか、お泊まりする気じゃ!? お、おのれぇぇ! 私をこんな風にして自分だけ抜け駆けするなんてぇ……!」
心が汚れきってますねぇ。
「ウ゛キ゛ィ~ッ! 私も゛! 私も゛ぉ! 三五さんと一夜を! ラブラブな一夜を゛ぉぉっ!!」
ギッ! ギッ! ギッ! ギチチ! ギチチチィ!
欲望の声を上げながら縛めを解こうともがく罪 ・ アン。お猿さんの知能実験みたいですネ。
…………………………。
メチャクチャに悪足掻きしまくって、日が暮れる頃にようやっと片腕が自由になりました。
「ハァ……ハァ……! やったぁ! コレで……」
夜が更ける前には拘束が解けるだろう。
三五さんに夜這いをかけるには、正に BEST TIMING!
邪悪な考えと笑みを浮かべた瞬間、ガチャッ! と部屋のドアが開かれました。
「フンッ、良いザマね」
「メ、メイィッ! コレ解き……えっ!? そ、その匂いはッッ!?」
常に極限状態の罪 ・ アンは嗅覚がバグっておりまして、三五さんの匂いならどんなに微かなものでも嗅ぎとれるのです。
罪 ・ アンを見下ろすメイから漂う馥郁たる香り。それは正に……。
「ア、アナタまさかお風呂上がり? なのに三五さんの匂いがこんなに濃ゆく……!? ま、まさか!?」
「そのまさかよぉ! 三五ちゃんと裸のお付き合い♡ をシッポリさせてもらったわぁ♡ ム ・ フ ・ フ♡ もうアンタの入り込む余地なんかないわね~♡」
ズガガガガガガンッッ!!
「ン゛キ゛ャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
この時が来るのは初めからわかりきっていました。
メイに喧嘩を売っても勝てるワケがない。
だけど、だけどもし、自分が三五さんのハジメテのお相手を務めさせていただけたなら……?
三五さんの思い出に未来永劫刻まれる。
そうすることで、ようやく自分は嫁ガードと並び立つ存在になれる。
そんな卑しい算段がご破算になった罪 ・ アンはとてつもないショックを受けてしまいます。
「う゛っう゛っう゛~……そ、そんなぁぁ~」
「や~いざぁ~こ♡ アンタみたいな、負け犬ちゃんはスマホの中の三五ちゃんでガマンしときなさい。じゃ~ね」
メイは没収中だったスマホを枕元にポイッと投げて、悠々と去って行きました。
勝者の余裕、ですね。
「うっうっう、三五さん、三五さぁぁん……グスン、グスン」
もはや拘束を破って三五さんの元へ飛んでいく気力が萎えた罪 ・ アン。
メイの言いつけ通りに大人しく三五さんのお写真を眺めて自分を慰めます。
もうこのまま眠ってしまおうか……そう思った刹那。
♪ ~ ♪ ~ ♪ (三五さん専用着信音)
パブロフの犬のようにシュババッ! とアプリ展開。
届けられたメッセージは……。
「逢いたい」
いや、そんなコトある?
何かの間違いでは?
奇跡?
何者かの陰謀?
もしや三五さん、何かお悩みでも?
脳内では色々な思惑が錯綜しています。が。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~っっ!!!」
バリバリバリバリィィ!!
脳からの電気信号よりも強烈な本能が! 身体を突き動かすのですっ!
金剛力を発揮して一発でビニール紐と養生テープを引き千切り、バ~ン! と窓を開け放って跳躍、塀を蹴ってアスファルトにシュタッと着地。 (この間わずか10秒)
駆ける、駆ける、駆ける!
急いでいるからこそ自らの足で疾駆する!
てゆ~か今のイデタチでは乗り物になんか乗れませんからね。
「うううぁぁ~っ!」
乱れる髪、血走る瞳、あっちゃこっちゃにビラビラまとわりつくビニール紐と養生テープ。
まるで妖怪です。
こんなのに闇夜で出くわしたら……。
「き゛ゃあ゛~っ! 出たぁ~っ!」
悲鳴が上がりますよね~。ごめんなさいね、通行人の皆様。
これはまた悪いウワサが立っちゃいますね。それとも都市伝説化?
とか言ってる間に高波家の前に着いちゃいました。
「ハア……! ハア……! ハア……!」
ゴクリ……バックン! バックン! バッグン!
こんなにも激しく心臓が鼓動したことが、かつてあったでしょうか? ドキドキし過ぎで痛いくらいで、いっそ爆発しちゃいそうでした。
ガチャ……。
玄関のドアが……開いた。
「カ、カギカカッテナイ! ハァ、ハァ! ブ、ブヨ~ジン! カ、カギカケナキャ!」
ガチャガチャッ。
いや、アンタが言うことですかい。
トン、トン、トン……。
階段を昇りきると、すぐ目の前に三五さんの部屋のドア。
こんなに誰の邪魔が入らないのも初めて。
震える手でドアを開けると……そこには夢にまで見た三五さんの御姿が!
下ろしたてのパジャマに身を包んで、髪の一本から足の爪先に至るまでピッカピカに磨かれて、すっっっごい甘ぁぁい匂いがして……。
う~ん、ぶっちゃけ、今思い返しても誘われてたのかな? OKだったのかな? って勘違いしちゃいそうに……って、ダメダメ! それは悪の思考です!
「フ゛ウ゛ウ゛ウ゛~! フ゛ウ゛ウ゛ウ゛ゥゥ~!」
罪 ・ アンは本物の悪なので、即座に襲いかかるかと思いきや……。
「ケ、ケ、ケ、警告ゥゥゥ!」
三五さんに最後通告をします。
自分ではもう自制が利かないから、止めるなら殴って止めてくれ、と。
ちょっとオドロキ。まだ良心が残っていたなんて。
ですがその最後の一欠片も……。
チュッ。
キ、キス! ファーストキス! それも三五さんの方から!?!?
あ゛~! もう、消し飛びましたァァ! 最後の良心がコッパミジンですぅぅ! 素粒子一粒足りとも残っておりませぇぇん!
「痛くしないって約束してくれたら……好きにして良いから」
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
そ、そんな貴方ッ! あ゛~! いけません! いけませんよ、そんな可愛く振る舞ったらァァ!
「ウ、ウ、ウオォォォォ~ッッ!!」
ホラこうなってしまいます!
極上霜降り肉を鼻面に叩き付けられた獣!
それが今の罪 ・ アンなのですから!
「がお~っ!!」
ああ~っ! つ、遂にいたいけな美少年が魔女の毒牙に!
そ、それから、それから罪 ・ アンは……。い、いいえっ! 卑怯なごまかしはもう致しません!
私! この私、彩戸 アンは三五さんに対して欲望の限りを尽くしました!
詳しくは言えませんが、とにかく思い付く限りのイヤらしい行いを片っ端から犯りまくりました! 一晩中!
ええ、最中は世界の全てを手中に収めたかのような気分でしたよ。正しく天上の至福でした。
こ、この一時が永遠に、ずぅぅ~っと続いて欲しくって、はしたなく何度もおねだりしちゃったりして……。正直、山賊の方がまだ慎み深いと思います!
積年の想いを吐き出しきって眠りにつき……次に目が覚めた時には、まるで魔法が解けたみたいに正気と良識を取り戻していました。
「あ、あ、あの、三五さん……」
シャワーを浴びて身嗜みを整えた三五さんが私の脱ぎ散らかした衣服を投げてよこしてビシッ! とドアを指差します。
うぅぅ、シャワーを浴びてこい、話はそれからだ、と仰りたいのですね。
仰せのままにお風呂場をお借りしましたが……。いっくらお湯で流そうともゴシゴシ磨こうとも、一向に綺麗になる気が致しません!
だって、だって、私はっ! 身も心も汚れきった…………犯 罪 者 なのですよぉぉぉ~っ!?!?