あなざ~彩戸すと~り~ ・ アン視点 ⑨ 罪 ・ アン大暴走! 社会的に死す!? 前編 アンルート
※未来のアン視点です。
罪 ・ アン。
彩戸 アンが常識という障壁を突き破った究極禁忌形態。
一番わかりやすい特徴は三五さん FC 特製ハッピ、ハチマキ、ウチワ、サイリウムを常に身に着けていること。 (お風呂の時以外)
もう一目で常識の無さが伝わってきますよね。
お次は身体運搬能力の高さ。
「うぅっ! は、速いっ!?」
「な、何よこの動きっ!? 以前とはまるで別人じゃないのっ!」
湖宵さんもメイも罪 ・ アンの行く手を阻むことは出来ません。
何しろ勢いが違いますからね。ストッピング ・ ジャブすらも跳ね返してしまいます。
お二人の間をすり抜けたらお目当ての三五さんにダ~イブ!
「ウヒヒヒ~ィィ♡♡」
「ウ゛ッワ゛ァァ~ッ!」
罪 ・ アンの脳内では三五さんと相思相愛ってコトになっとりますからね。
手加減なんて一切せずにハグハグ & ハ~グ!
「大好き大好き大好きィァ~ッ! 私のっ♡ 私の三五っさぁぁぁん♡ 一生涯離さないぃぃ♡」
ギチギチチチチ……! スリスリスリスリ♡
「ギャ~ッ!」
「ンニャロ~! 三五が嫌がってるだろ! HA! NA! SE!」
「なんちゅ~馬鹿力なのぉ!? 私の三五ちゃんが潰れちゃうでしょ~がぁぁ!」
嫁ガードのお二人が力尽くで引っぺがそうとしてきますがビクともしません。
改めて思い返してみると異常な腕力でございますね。罪 ・ アンはどこからこの力をひねり出していたんでしょうか? (まるで他人事)
無敵……にすら思える罪 ・ アンにも弱点が存在します。
「嫌だァァ! 嫌! 嫌! 嫌ァァ! イ~ヤ~だぁぁ! ヤ メ ロ ~ ! 離してくれぇぇ!」
それは想い人からのガチ拒絶。
0距離ですからね。三五さんがマジで怖気に震えて鳥肌を立たせているのがクッキリハッキリ丸見えです。
「アレ、コレって私、本気で嫌がられてる?」
頭の沸いた罪 ・ アンですらその考えを拭いきれず、恐怖に身を竦ませて、たちまち力が萎えてしまいます。
「今よ! パワーを集中!」
「いいですとも!」
「「てりゃ~っ!」」
バッチ~ン!
「ああぁん!」
当然、嫁ガードに弾き飛ばされますわね。
「ハァッ、ハァッ……! このアホォ! ヘンな勘違いすんじゃないわよ! 三五ちゃんがアンタなんかを好きになるワケ、絶対絶対絶~対にナイッッ!!」
「ゼハ~! ゼパァ~! そ、そ~だそ~だ! ってゆ~か自分を省みろ! 人に好かれる要素スーパーゼロゼロ%だろ~が!」
しこたま手こずらされたからでしょ~かねぇ?
嫁ガードがハチャメチャに罵倒してくるんですよ。これが弱った心に効くんです。
罪 ・ アンは 「ぴえぇぇ~ん……」 となり、メイに荷物のように担がれて学校まで強制連行されてしまうのでした。
で ・ す ・ が♡ 私の愛する三五さんは泣いている女の子を放っておくことが出来ないお ・ 方♡
連れ去られる際のわずかな一瞬を縫うようにして欠かさずフォローを入れてくれるので~す♡
「き、嫌いになんかなってないよ」
「元気を出して」
優し~いお言葉をかけてくれたり。
肩をポンポン、頭をナデナデしてくれたり。
極上の笑顔でニッコリしてくれたりもしました。
その度に心が温まり 「あ、三五さんってやっぱり私のこと好きなんだ!」 と思い込みを新たにし、秒で復活を果たしちゃう罪 ・ アンなのでした。
そんなある日のことです。
この時は三五さんのフォローが間に合わず、教室でメソメソ泣いておりました。
「三五さん……三五さん……」
「うるさい! あと三五ちゃんグッズ脱ぎなさい! せめて公共の場では!」
メイの言うこと、いちいちごもっとも。
私のイデタチを見て、クラスメイト全員ドン引き劇場。これでは三五さんの風評を貶める逆広告塔ですものね。
でも一切の常識が通じないのが罪 ・ アン。
三五さんとの繋がりである (と思い込んでいる) 三五さんFCグッズを守る為にぎゅ~っと身を縮こめるのでした。
♪ ~ ♪ ~ ♪ (三五さん専用の着信音)
コレが鳴ったら条件反射でスマホポチポチするのがアンという生き物の習性です。
『泣かないで』
『アンさんが悲しむとオレも悲しいよ』
あぁぁっ♡ お慈悲ぃ♡ お慈悲ぃぃ~っ♡
決っっして! 決して泣いている女の子を放っておきはしない! 必ず救いの手を差し伸べてくださる!
何たるご厚意、何たる慈悲深さ。これこそが三五さんの素晴らしさなんですねぇ♡
「いぃやったぁぁ! キャッホォォ~!」
そしてなんかもう全てを台無しにするかのような咆哮を上げる罪 ・ アン。
「見なさい、メイ! 三五さんは私を嫌ってなんかいなかったわ! キャハハハハッ♡」
テンション爆アガ ⬆️ ⬆️ りになって考え無しにスマホを見せ付ける罪 ・ アン。
だ~か~らぁ、スマホでのやり取りは禁止されてるんですってば。
「ルールを破ったわね、スマホを没収するわ」
ニッコリ笑顔で死刑宣告するメイ。
「イ、イ、イヤァァ! ルールなんて破ってないもん! 私からは連絡してない! 全部、三五さんからしてくれたんだもん!」
「そんな屁理屈は通用しないわ! 男子達! そこの悪女を取り押さえなさい!」
メイの命令によって複数人の男子生徒達に周りを囲まれてしまいます。
「三五さん以外のオトコが私に触れるなッッ! 寄らばハラワタを引き摺り出してコロスッッ!」
「ヤベェよ姐さん! あの女、本気で言ってやがりますぜ!?」
「殺気しか感じね~!?」
「だったらサスマタを使えば良いでしょ! 取ってらっしゃい!」
そう言って掃除道具入れを指差すメイ。
「なんでそんなトコにそんなモン入れてんの!?」
「でも役に立ってる! フシギ!」
「もしかして掃除 “凶器” 入れって……コトォ!?」
リミッターがブッ壊れている罪 ・ アンとはいえ多勢に無勢。
腕、足、上半身、下半身を問わずに襲い来る数多のサスマタに抗うのは物理的に不可能でした。
ガチガチガッチ~ン! ⬅️ サスマタで壁に張り付けにされる音。
「ウグゥゥゥ!」
「フン、手こずらせてくれたわね。ひょいっ、と」
「あ゛あ゛~!」
磔刑に処され、身動き一つ取れない罪 ・ アンから悠々とスマホを奪い取るメイ。
「あらま、三五ちゃんってば、こ~んな大胆な自撮りを送るなんて。けしからんわね、嫁ガードグループに送信♪ っと」
「返せぇぇ! そのお写真はッッ! 私の生きる糧なんだッッッ!」
「やかましいわよ。大人しくしないと三五ちゃんのお写真……全部消すわよ?」
「ヒィィィィッ……!?」
う~ん。今、冷静に考えれば、弟大好きメイお姉ちゃんが三五さんのお写真を消すだなんてあり得ないって、す~ぐわかるんですけどね~。いくらバックアップを取ってるとはいえ。
「や、止めて……それは……それだけは……」
罪 ・ アンには論理的思考など出来ません。
スマホの中に小さな三五さんが棲んでいて、メイに逆らえば消去されてしまう。ほとんどそんな風に考えていたんじゃないでしょうか? (まるで他人事)
泣く泣くスマホを手離すハメになった罪 ・ アン。
しかし追い詰められた彼女はここで逆転の発想をかまします。
文明の利器などに頼っているようでは未熟! 鮮明に思い出すのだ、三五さんのお写真を。いや、等身大の三五さんを!
コロコロ変わる愛らしい表情。
かと思いきやお色気たっぷりにオンナを惑わす妖艶な微笑。
しなやかでありながら力強く、男性的魅力と美しさが見事に調和した惚れ惚れ体躯……♡
その肌の温もり、甘ぁく芳しい香り……♡
ゴポゴポゴポゴポォ……ッ!
爆発燃焼するッッ! 脳の中のドス黒い麻薬がァッッ!
「ん゛あ゛あ゛ぁ……三五さん……♡ 三五さぁぁん……♡ ウフフ♡ ウフウフウフフ……♡」
ウツロな瞳で三五さんの御名を連呼しまくる罪 ・ アン。
「うっわぁぁ……コレはヤベェわ……」
その有り様を見て危機感を募らせちゃったメイ。
これ以降、メイったら 「次の定期テストで学年10位以内に入れ」 とか 「今から彩戸家を隅々までピッカピカにしろ」 とか 「食品衛生責任者の資格を取れ」 とか割りとキツめの試練を課してくるようになったんです。
ですが罪 ・ アンはそれらの試験をパッ、パッ、パッとクリアーしてしまいました。
「ウ、ウソでしょ……!? いとも簡単に!?」
簡単に、ではないのですよ、メイ。
罪 ・ アンにとって三五さんに想いを寄せる一時を奪われるのは死活問題。
故に潜在能力を300%発揮して瞬時に要点を見極め! 最速で身体を動かし! 最短で試験を片付ける!
そうしなければポエムを綴ったり妄想デートしたりする大切な時間が減っちゃう。たったそれだけのことなのです。
「むむむ……私一人の力じゃ手に負えないかも。だったら……」
何を思ったか、メイは罪 ・ アンをお寺さんに連れて行ったりもしました。
「数日間こもって精神修行しろ」 ですって。
ちょうどその時、三五さん達は修学旅行に行っていたので 「暇潰しにはなるかな」 みたいなノリでこれを承諾。
座禅を組んだり、滝に打たれたり、ゴマギョ~? とかって燃え盛る炎のメッチャ近くでお経を唱えてみたり。あと断食とかも。
「コレって何かイミあるんですか?」
「シレっと全部こなしてるんだけどこの娘ォォ!?」
「それでいて煩悩は些かも消えておらぬ……いや、むしろ増しておるじゃとォ!? どうなっとるんじゃぁぁ! ぬぁ~っ! こっちの精神がイカれそうじゃぁぁ!」
メイと和尚さまが大騒ぎしているのが不思議でした。
「三五さんに会えない」
この世にそれ以上の苦しみなんてないのにって。
修行と言うなら三五さんと夕方にバイバイして翌朝におはようを言うまでの全てが修行なのですよ……!
ポエムなどの創作活動は愛と苦しみの叫び。
それによって練磨される (邪悪なる) 精神。
罪 ・ アンの sin 化、ここに極まれり。
悪名は時の流れと共にご近所中に駆け巡り、三年生に進級した現在 「アブないお姉さん」 としてお子様は近寄りもしなくなりました。
ここで朗報!
な、な、なんと三五さんFCに念願の新メンバーが加入!
「会長、三五さまの妄想似顔絵描いてみました! 添削してください!」
「会長、新グッズの進捗なのですが……」
「会長、嫁ガード様はいつになったらスマホを返してくださるのでしょうか……三五さまの御写真が……」
「あ、あの御写真は私には刺激が強過ぎるよっ♡ 思い出しただけで鼻血がっ♡」
年がら年中 ・ 所構わず推しカツをしている罪 ・ アンを見て逆に興味を惹かれたとのこと。
もちろん全員三五さんFCグッズフル装備。ユニフォームですから。
三五さんFCが校内を練り歩けば、生徒達は頭を垂れて道を譲る。
どいつもコイツもブッ飛んでますからね。
もしも三五さんからのご命令があるならば、全リソースをもって遂行する……そんな剛の者揃いでございます。
新生三五さんFCの存在に嫁ガードの警戒レベルは極限MAX。
目を合わせた瞬間に拳が飛んできそうなくらいピリピリと緊迫しています。
罪 ・ アンの野生の勘が告げている……テンパイだ、と。
あと一つ、何かのきっかけがあれば雪崩式に大事件へと発展してしまう……そんな危険な分水嶺。
いいえ、闇の中で来るべき刻に備えて虎視眈々と牙を研ぐ……。
罪 ・ アンはこの時には既に引き返せないラインを越えていたのでしょう……。