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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【IF話】 もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら
222/255

あなざ~彩戸すと~り~ ・ アン視点 ⑤ 私の初恋、敗色濃厚過ぎません?  アンルート

※アン視点です。

 「お、お待ちを! どうかお待ちください! 私も三五さんと結婚したいです!」


 勢い任せにババ~ン! と登場した私でしたが、三五さんのご両親に 「いきなり出てきて何言っとんだコイツ」 みたいな目で見られてしまいました。

 え、辛ぁ……予想以上に辛いんですけど……。


 「その女は悪女です! 三五ちゃんを騙して唇を奪おうとした極悪人です!」


 怯んだ隙を見逃さないメイの痛烈な一手!

 ああ! ご両親の私を見る目がより一層冷えっ冷えに!?

 う゛う゛ぅぅ! キツぃぃ! 胸が痛いよぉ!


 「その件はもう許してあげようよ! 未遂だったんだしさ!」


 あああっ! 三五さんが泣き出しそうな私を見かねて助け船を出してくださいましたっ!

 なんて、なぁ~んてお優しいっ!


 けれどもメイはそんな三五さんを甘いと叱ります。

 逆の立場で考えてみて。もしお姉ちゃんが三五ちゃんそっくりの見知らぬ男に騙されたらどうするの? 許せるの? って。


 「そんなのブチ殺……い、いや、まあ、そう簡単に許すワケには~、いかない、ですね、ハイ」


 ブ、ブチ殺……!? ほ、本音が! 隠しきれない本音が漏れちゃってますよ!?

 それでも三五は私のことを色々フォローしてくださいましたが……当然のようにメイにバッサリ論破されちゃいました。

 

 三五さんのお顔がみるみる冷えていくのがわかります。だってご両親と同じお顔してますもの!


 メイおねえさんの言う通りだわ。流石にかばいきれないわ。だってこの人全然反省してないし。

 口には出さずとも目がそう言ってます!



 嫌われた。



 私は、



 三五さんに、



 嫌われた……!



 心臓が凍りつき、血の気が引いていく。

 冷たくなった脳みそが明晰さを取り戻し、皮肉にも私がいかに愚かだったか、罪深いかを的確に分析して厳しい現実を突き付けてくるのです。



 「ご、ごめんなさい三五さん……! 私、自分の気持ちを抑えられなくて、あなたに酷いことを……! も、もう二度としませんっ! こ、心を入れ替えますから許してください……ごめんなさい、ごめんなさいっ!」


 

 零れる涙を拭うことすら忘れて必死に謝罪をします。

 許してください、どうか、どうか、私のことを嫌いにならないで……。


 何度も何度も頭を下げている内に心優しい三五さんはメイに 「許してあげたら?」 という風に目配せをしてくださいました。

 ああ、なんて慈悲深い……!


 「三五ちゃんの優しさに免じて今回だ ・ け! 特別に許してあげるわ!」


 メ、メイィっ! あ、ありがとう、ありがとう! こんな私を許してくれるなんて。約束を破ってしまったことも本当にごめんなさい。申し訳なくて心苦しい。


 本 ・ 当~に反省しています。

 …………………………。

 してはいますが! それはそれとして、それはそれとしてッッ!



 「私も三五さんのお嫁さんに立候補したいです! 何卒! 何卒チャンスを!」



 舌の根も乾かぬうちに欲望塗れのこの発言。


 過去イチ自分で自分にドン引きしたこの瞬間。

 自己矛盾が発生して理性と欲望……内なる私同士のバチバチのバトルが始まります!


 ーー うわぁ……アナタ(欲望)って控えめに言ってガチでカスですね。心を入れ替えるって言ったのは嘘だったんですか? ーー


 先手は理性さん。

 義務教育を終えて一般常識を身に付けた、従来の……三五さんと出逢う前の私ですね。

 自己嫌悪のせいですかね? ケッコ~辛辣に欲望さんを責め苛んでおります。


 ーー アナタ(理性)は正しい。全く正しい。だがッッ! 無力ッッ! キサマ(理性)など我が恋の炎に巻かれて灼け死ねッッ! ーー


 逆ギレフルパワー!?!? 流石は欲望さん! モンキーじみた発狂っぷりですね! ヤバいです!


 ーー ア、アナタ(欲望)ねぇ! (理性)が居なくなったら彩戸(さいど) アンという存在がド~ブツレベルにまで堕ちるのですよ!? バカなこと言ってないで隅っこで体育座りでもしてなさい! ーー


 ーー 黙れッッ! ここで引いたらメイと三五さんの婚約が確定してしまうッ! ならばどんなに無様でも! ここでゴネなきゃ嘘でしょう!? ーー


 悪質クレーマーみたいですね、欲望さん。

 ですがその熱意は本物。ブクブクと肥大化して、たちまち理性さんを (そして語り部(ナレーター)たるこの私をも) 飲み込んでしまいます。


 ーー クッ! エ、エンドルフィンが、の~じるが分泌して、(理性)が……(理性)が消えてゆく! か、身体の主導権が、う、奪われ……! ーー


 パキン。


 フッ、(欲望)の勝ちよッッ! 証明されてしまったわね。(欲望)(エロス)が本物だってことがッッ!


 

 「お嫁さんになりたい? 今のアンタには百年早いのよッ!」



 メイにハッ、と嗤われてカッ! と頭に血が上る。

 だ、誰であろうと許せない! 私の本気の想いを……!


 「笑わせないで。アンタの本気は三五ちゃんとイチャイチャしたい、赤ちゃん産みたいってだけでしょ」


 それの何がおかしいのよ!? 至って当然の心の動きでしょうが!?


 「アンタの想いは! 軽いのよッ!」


 「そ、そんなあっ!?」


 か、軽いの!? 赤ちゃん産みたいって言ってんのに!?

 ちょっと度肝を抜かれて思わず怒りのボルテージが下がっちゃいました。



 「お嫁さんになるってのはねぇ! 高波家の一員になるってことなの! 家族になるってことなのよ!」


 

 ガガガガン!

 

 た、確かにメイの言う通り。私の目は三五さんのことしか映していなかった。


 青天の霹靂に二の句が継げない私に、メイは更に畳み掛けてきます。


 お義父ちゃま、お義母ちゃまと今日から一緒に住める?

 いつか来る将来、笑顔で介護してあげられる?

 心から愛してますって言える?



 「私には覚悟があるッ! アンタには無いっ! 否定出来るもんなら否定してみなさいッ!」



 「グゥゥゥゥゥ~!」


 ガッッックゥゥ~ン!


 気圧され、ひざまづく私。

 

 つ、強い! メイの覚悟、強いッッッ!

 三五さんへの愛は当然。メイは彼を産み、健やかに育んでくださったご両親にも深く深~く感謝をして敬愛しているのですね……。


 勝 て な い 。 少なくとも今はまだ。

 私の恋が火炎ならば、メイの愛はソレを飲み込むマグマ。

 火はマグマには勝てない。それが常識。JAPAN COMICS で読んだことがあります。私は詳しいんです。


 「メイさん! 貴女が、貴女こそが高波家の嫁です!」


 「メイさん以上の女性なんてこの世のどこを探したって居ないぞ」


 ん゛あ゛あ゛あ゛!? 超高評価されてるぅぅ! メイったらお義父さま ・ お義母さまから極限MAXに評価されてるぅぅ!


 いえね!? もちろん理屈の上では納得してますよ!? せざるを得ませんもの! ですが感情面では受け入れられません! てゆ~か何でこんな強い恋のライバルがいるのよぉぉ! チートでしょお!?


 かくなる上はだだっ子のようにフローリングの上に寝転がり、文字通りの悪足掻きを行います!


 「う゛え゛え゛え゛~ん゛! ヤ゛ダ゛ァァァ~!」


 ジタバタジタバタ!


 「そんなこと言われても……」


 「なあ?」


 ご両親から可哀想な子を見るような目で見られてるぅぅ! 尚且つ 「嫁はメイ以外絶対あり得ん」 という鋼の意思も感じるぅぅ!

 こんなの辛いよぉ! 悲しいよぉ!

 赤ちゃん還りしてしまいますぅぅ! オギャバブオギャバブゥゥ~!


 「皆ちゃま~、晩ご飯の用意が出来ましたよ~♪」


 ア゛ッ!? メイったらあざとい! 良いカッコしてポイント稼ぐなんて! ちょっとは手加減してよぉ! こっちは赤ちゃんなのよ!?

 頭にきたのでギャン泣きのボリュームを全開にします! オ゛ギャア゛ァァァ~!!


 

 ……………………………………………………。



 「嫁にしろ」 「断る」 というやり取りが無限に繰り返された後。



 「わかった! じゃあこうしよう! 高波家の嫁を決める権利はメイさんに一任する!」



 クウゥゥッ!

 精一杯交渉 (強弁) しましたが、これが最大限に引き出せる譲歩のようですね……。


 それにしたって三五さんのお嫁さんになる為には既に正妻気取りのメイから許可を得ないといけないって……もうこれ詰んでません!?


 「三五さん! 私、必ずメイを認めさせてみせますから! お嫁さんの座を必ず射止めてみせますからぁぁ!」


 もうヤケクソですよ! 無理ゲーだろうが不可能ミッションだろうが死ぬ気でやったりますよ!


 「アンタねえ! 私の家に居候してるってこと忘れてんじゃないの!? 四六時中監視して嫁の資質を見定めまくってやるんだから!」


 高波家をお暇する時間になってもバチバチやり合う私達。

 でもお義父さまのご厚意でお車で家まで送っていただけることになったので一旦矛を収めます。メチャクチャ失礼ですものね。


 ブロロロロロ~ッ。


 「…………………………」


 お車の中で大人しく座っていると徐々に興奮が冷めていき、快楽物質が(の~)から抜けていくのがわかります。

 ニュートラル状態(モード)に戻るのと比例して押し寄せてくるのは……そうですね、罪悪感と羞恥心ですね。


 「ご、ごめんなちゃいでちた……」


 プルプルプルプル。


 己の罪深さに背筋が凍ります。寒くて死んじゃいそうです。


 「ようやく正気に戻ったのね! 私が跡をつけて犯行(キス)を未然に防いでなきゃアンタ、マジモンの犯罪者よ! 犯罪者! わかってんの!?」


 なんでもメイは私が送ったチャットに違和感を覚えたみたいで、あちこち探してくれたのだとか。

 その過程で私と三五さんがカラオケルームに入っていく姿を目撃。

 これは怪しいぞ、ということで私達の隣の部屋を借りて見張り、お店を出た後も後ろにピ~ッタリ張り付いていてくれたのだとか。


 ごめんね、メイ。せっかくのお休みに変なコトさせてごめんね。


 「だからって今日アンタがしたコトが許されたワケじゃないわよ! しっかりと悔い改めなさい!」



 メイが裁判官のように私の罪状を並び立てていきます。


● 約束をすっぽかしたこと (1(ファン))

● 三五さんを騙したこと (1翻)

● 三五さんにキスを迫ったこと (1翻)

● 公衆の面前でみっともない姿を晒したこと (1翻)

● 欲望を制御しようともしなかったこと (1翻)

● お義父さま ・ お義母さまを困らせたこと (1翻)

● 三五さんの楽しい新生活に不安の影を落としたこと (1翻)

● メイの新生活にも余計な手を煩わせてしまうこと (1翻)


 ううう、ゲームの点数計算みたいにまとめられると凄くわかりやすいです。


 「わ、私ってば三五さんと(東一局)出逢った初日(一本場)から倍満(バイマン)級のやらかしをしてしまったのですね……」


 悪事鬼ヅモ過ぎィィ! コレど~やって挽回したら良いの~!?


 「…………いや、倍満より九蓮宝燈(チューレンポウトウ)が妥当じゃないかな?」


 お、おおお、お義父さまぁぁぁ~っ!?!?

 運転席から超極大の一撃が飛んできたの Death(デス) が!?

 役満(やくまん)!? 私の罪過は役満級だとおっしゃりたいのですか!? それってもう GAME OVER じゃないですか~っ! ヤダ~ッ!


 「なるほど~、三五ちゃん恋しさ故に道を踏み外した。全ての罪状に一貫性がありますものね。さっすがお義父ちゃま♪」


 メイもぉぉ~っ! 将来の義親子みたいに仲良しアピールしないでよ! 見せつけないでよぉ! 泣いちゃうんだからぁぁ~っ!


 「う゛う゛~! ど、どうせ私なんてサゲマンならぬ厄マン女ですよぉ~っ! うぇぇ~んっ!」


 「アンタ、ちょいちょいアブないネタ挟むの止めなさいな」


 「お嬢さん、下品な言葉を使ってはいけないよ」


 

 お義父さまは正論でブン殴ってこそくるものの、とても温和で素敵な方でした。

 別れ際には 「三五に惚れてくれたこと自体は嬉しかったよ」 と優しいお言葉までかけてくださいましたし。


 私もメイみたいに仲良くなりたいなぁ。

 ううん、絶対に仲良くなってみせます! お義母さまとも!


 ……………………………………………………。


 とは言え前途は多難ですけどね……。

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