あなざ~彩戸すと~り~ ・ アン視点 ③ 幸せ物質、過剰摂取! (合法) アンルート
※アン視点です。
キャアアァァ~!?
勢いあまって年下の男の子 (しかも初対面) をナンパしちゃいましたぁぁ~!?
こ、怖がられちゃう!? 嫌われちゃう!?
ど、ど~しよぉ~! 私の考え無しぃぃ~!
バカ! バカァァ~!
「メメメメメメ、メイおねえさぁぁぁ~ん!?!?」
ア、アレ!? メイと間違えられてる?
そ、そっか。三五さんは私が日本に来ているって知らないものね。
ルックスやスタイルがソックリなメイと私の見分けなんてつきませんよね。
…………………………。
んん~? でも私とメイって性格とかファッションセンスとか……いわゆる 「キャラ」 ってヤツが全然違うのになぁ。違和感ありありだと思うんだけどなぁ。
さてはメイったら三五さん達に私のこと全っ然話してくれていませんね。
…………………………。 (イラッ)
「は、はいっ! メ、メイですっ!」
ウ゛ワ゛ァ~!?
私ってばついウッカリ超見え透いた嘘を!?!?
マジでどうしちゃったのぉぉ!?
「何があったんだよ!? 昨日まで普通だったじゃん!? いつものメイおねえさんだったじゃん!?」
「イ、イメチェン! ですっ!」
何故嘘を重ねるの私!?
後で100%バレるのにぃぃ!?
「今日だけは私のこと 「彩戸さん」 ってもらえませんか?」
少しは自重して私!?
「イ ・ ヤ ・ だ ・ よ! 何でそんなによそよそしいんだよ!」
ホラ~、無駄に心配させちゃってるしぃ。
そりゃそうですよ。
ある日突然、親しくしてるお姉さんのキャラが激変してたら不安にもなりますよね。
心なしか三五さんの顔色がみるみる青く……?
三五さんって本当にメイのことが大好きなんで…… 「ごめん! ごめんなさいメイおねえさんっ! もう生意気言わないから許して! 嫌いにならないでよぉぉ~!」
ガッバァァッ! ムッギュウゥ~!
「キャッ♡ キャアアアァァァ~♡ そ、そんなぁぁ~ん♡」
さ、さ、三五さんに抱き着かれぇぇ~!?
てゆか、お胸にお顔を突っ込まれて匂いクンクンされてるしぃぃ~!?
こんなコトされたの生まれて初めてぇぇ~っ♡ 知らないっ♡ 知らないぃぃ~っ♡
おかしなことに嫌な気持ちは全く無い。
それどころか私からも三五さんをぎゅ~ってしちゃう♡
クゥゥゥゥ~ッ♡
ポワポワふわりんな充実感とバチバチじゅわ~な大興奮が W で押し寄せてきまっすぅぅ~♡
ああそうか。そうなんですね。
短い間に何度も何度も思い知らされます。
「お姉さんは三五さんのことがだ~い好きですから」
罪悪感はもちろんあります。
愛されているのはメイであって私ではない。
不毛だとも思うし、バカなことしてるって自覚もあります。
それでも私にメイのなりすましを止めるという選択肢はありません。いえ、そもそもその発想すら沸いてきませんでした。
だってだって、メイの振りをしていると三五さんの好感度がすっごくすっごく凄いんですもの!
ある意味恋人以上!?
身体中の血がサイダーみたいにスパークリングしてシュワシュワドッカ~ン! みたいなヤバさがヤバくて……とにかく凄くヤバヤバです!
ただでさえ筆舌に尽くし難いくらいヤバいのに、なんとなんと! 三五さんから誘われちゃってカラオケデート♡ する流れに!
キャ~キャ~♡ どうしましょ~♡
ドリンクとポテトを注文したら (おごられちゃいました) カラオケTIMEの始まり始まり♪ です♪
三五さんの選曲はまさかの演歌。
ビックリしちゃいましたけどハニーな少年ヴォイスと情緒溢れる歌詞とのギャップが新鮮でググッときちゃいます♪
キャ~ッ♡ サイッッコォォ~♡
鳴り物を両手で振り振り、大盛り上がりの私なのです♪
三五さんが私だけのアイドルになってこ~んなに近くで歌ってくれるなんてぇっ♡
お金取れますよこのLIVE! てゆ~か払いたい!
「次は彩戸さんの番だよ!」
あ、どうしよう。
私、日本の歌全然知りません。流行りの歌も。
私が歌えそうなのは……う~ん、洋楽の、それもオールディーズくらい?
「One fine day in spring~♪」
う~ん、我ながら地味。オマケにフレッシュさにも欠けますねぇ。
メイだったら色んな歌のレパートリーを取り揃えて三五さんを楽しめてあげられちゃうんだろうなぁ……。
「う、うお~! 彩戸さんカッコ良い~! 声も超キレ~!」
ア、アララ~? 思いの外に大好評?
え、えへっ♡ えへへっ♡
「Feel like flowering~♪」
んひゃ~♪ めっちゃ気持ち良い~♪
歌うのってこ~んなに楽しいんだぁ♪
てゆ~か三五さんにチヤホヤしてもらえるのが最高なのぉぉ♪
大人っぽくて素敵、とか英語の歌が歌えるなんてスゴい! とか。
んも~♪ 全力で誉めまくってくれるじゃないですか~♪
今時こんな素直な良い子なんてなかなか居ませんよ。
しかもね、歌だけじゃなくて服装や髪型まで誉めてもらっちゃいました♡ どっちもサイッコ~に似合ってるよ、ですって♡
も~天にも昇る気…… 「超綺麗! なおかつ超可愛い! しかも超清楚!」
うっひぇぇ~!? さ、さ、流石にそれは誉め過ぎですぅぅぅ!? キャパシティ越えで胸が苦しいぃぃ♡ 死にゅうぅぅぅ♡
真っ赤っかなお顔を両手で隠しながらイヤンイヤンってしてたら、三五さんってばスキ有り! とばかりに私のおヒザめがけてヘッドスライディング!
ヒ、ヒ、ヒザ枕して欲しかったのぉぉ~!?!? カ、カ、カッッッワウィィ~♡♡
ドキドキがオーバーフローして心臓が止まっちゃいそう!
だのに三五さんの甘えんぼ攻勢は留まる所を知りません!
ポテトをあ~んってして食べさせて~、一緒にデュエットして~、な~んておねだりしまくってみたり。
スカートの袖を引っ張ったり生地をサワサワしたりして私の気を引こうとしてみたり……。
う゛う゛う゛う゛あ゛あ゛~っ!
設定上では 「メイがお手伝いさんになりきる為にキャラ変してみた」 ってことになってるからぁぁ!
表面上では 「お姉さんのナデナデは気持ち良いですか? 甘えんぼさん♡」 とか 「三五さんったらイタズラっ子ちゃんですね♡」 とかって余裕ぶっちゃってますけどぉぉ!
正直コレもう辛抱堪りまっせぇぇ~ん!
ここまででも既に今までの人生の全幸せを濃縮したドギツイ快楽物質が出てるっていうのに……更に更にダメ押し!
カラオケTIMEが終わって店を出たとたん 「彩戸さんと手を繋いで歩きたいな」 で す っ て え ぇ !
も~ムリィィィ♡ 幸せのバルブが壊れて多幸感ドバドバァ~♡ 併せてドーパミンもドバドバァ~♡
あ゛あ゛……夕焼け空が虹色に見える……。
足元もフワフワして雲の上を歩いているかのよう。
これが天上の幸福なのね。
これ以上の幸せなんて考えられない。
心からそう思う。そう思った、のに。
欲張りにもこんな考えが頭に浮かんでしまったのです。
「三五さんとキスしたいな」
絶 対 に 脳が壊れてりゅうぅぅ! バカになっちゃってりゅうぅぅ!
私の中に残された最後の良心が叫びます。
ダメよ。ダメです。それだけはなりません。完全にマズいです。
そこまでいったら冗談では済まされません。
三五さんを傷付けちゃいます。嫌われちゃいます。
だって。
三五さんが好きなのは私じゃなくてメイなのですよ!
ーー 本当に…… ーー
えっ?
ーー 本当に、そうなのかしら? ーー
あ、当たり前じゃないですかっ。
ーー 三五さんは私のフワフワな髪型もちょっと少女趣味入ってる格好も可愛いよって、似合ってるよって言ってくれたわ。いつもとキャラが違うけどそんな彩戸さんも素敵だねって。つ ま り …… ーー
つ、つまり?
ーー 三五さんはッ! 私のことがッ! 彩戸 アンのことがッ! 好きなのよッッ! ーー
それはストーカーの考え方ですよォォ! お願いだから思いとどまってェェ!
ーー イヤッッ! 私は絶対に三五さんとキスするの! 甘~い甘ぁぁ~いファーストキッスを! メイよりも先に! ーー
ファースト……!? あっあっ。
甘ぁい……あっあっあっ。
メイより先……あっあっあっあっ。
あ っ 。
心の中でパキン、とチャチな音が鳴る。
私の良心は粉々に砕けた。
「お願いがあるんですっ! ちょっとこっちへ!」
私は駅前広場の死角、生け垣の陰、夕日の影が落ちている空間へと三五さんを連れ込んだ。
「三五さん可愛過ぎますぅぅ! キッスさせてくださいぃぃ!」