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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【IF話】 もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら
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あなざ~彩戸すと~り~ ⑫ 悪堕ちギラギラお姉さん ➡️ スッキリお姉さん  アンルート

 「オレ、アンさんと真正面から向き合うよ。いっぱい話をしてアンさんのこと、もっともっと知りたいんだ!」


 「まあ今のヨッキュ~フマンなアンちゃんには話なんか通じないけどね。まず初めに貴方は彼女の最も醜い部分をまざまざと見せつけられることでしょう」


 人が爽やかな決意をした横で終末予言みて~なこと言われたんだけど!


 「オレとしてはさぁ! お茶したりデート行ったり~みたいに手順踏んでいきたいんだけど! そんな未来はやって来ないの!? オレは襲われるしかないの!?」


 「諦めなさい。三五ちゃんが襲われる確率は500%よ」


 「一晩に五回襲われるってこと!?」 (超速理解)


 「ちょっとでも嫌なら関わるのは止めときなさい。一生モンの心的外傷(トラウマ)になるわよ」


 うううう。マジか。

 オレだって男だし嫌ってワケじゃないんだけど……ハジメテに夢とか憧れとか持っちゃってるお年頃だし……。

 果たしてアンさんの現実的ムラムラを受け止められるのだろうか?


 ……って、ええ~い! グダグダ悩むのはもうたくさんだっつの! ヤメヤメ! 男は度胸だ! 男らしくアンさんの全てを受け止めてやるぜ!



 オレの気持ちが変わらないと知ったメイおねえさんがお膳立てをしてくれることになった。


 晩ご飯も作ってくれて 「私が帰って一時間したらアンちゃんのスマホにメッセージを送りなさい。あのコ、ビュビュ~ン! ってカッ飛んで来るから。そんじゃね」 とのこと。



 そしてオレは今、スマホの前に正座したまま微動だに出来ないでいる。


 10、9、8、7、6、5秒前。4、3、2、1……ああっ! つ、遂に約束の一時間が経ってしまったぞ!


 震える手でラウィッター(トークアプリ)を起動、アンさんにメッセージを送る。


 

 『逢いたい』



 キ、キャ~ッ! キャ~ッ! 送っちゃった送っちゃった!

 どうしようどうしよう! もう取り返しがつかないよぉぉ~!


 髪型やパジャマの乱れを無限に気にしたり、延々とベッドメイキングしまくったり。


 ソワソワソワソワ。


 一ミリも男らしくないけど致し方無い。

 期待 (1) と不安 (9) が押し寄せてきて心臓が爆発しそうなんだもんよ。



 そして遂に、遂にその時が訪れるのだった。



 ガチャァ……。


 チャ、チャイムがなってないのに玄関が開きやがった!


 ビクゥゥッ!


 ガチャガチャッ!


 ああっ! 玄関が施錠された!


 ビクビクゥゥ!


 トン、トン、トン、トン、トン……。


 ああぁ! か、階段を上ってくる音が!

 徐々にオレの部屋に近付いてくる!


 こ、怖ぇぇぇ! いや、自分で呼んどいてなんだけどメッチャ怖ぇよ! ほとんどホラーだよ!


 バッタ~ン!


 「わあ~っ!」


 ビクビクビク~ン!


 自室のドアが乱暴に開け放たれる!

 そこに立っていたのはもちろん……。


 

 「ふぅぅ~っ! ふ~っ! ふ~っ!」



 乱れ髪をフリフリ、目を血走らせ荒い息を吐く。

 腕や脚の所々に派手な色の養生テープが巻き付いていて悪モン怪人(ヴィラン)みて~なルックスだ。



 (逮捕される) 可能性の(ビースト)

 ムラムラギリギリお姉さん ・ 彩戸(さいど) アン、堂々のエントリーだ!!



 高波 三五さんよォ! ホントにこの人のことを異性として意識してんの!? 正気!? (危機感による自問自答)


 「ケ、ケ、ケ、警告ゥ! 警告ゥゥゥ!」


 うわぁ、何か叫びだしたんだけど。


 「イ、イ、今カラ! ワタシハ! 常軌ヲ逸脱シマス! チ、力尽クデ止メテクダサイッ! ト、止メラレルモノナラ……!」

 ニヤァァ……(暗黒微笑)


 何やコイツ。

 オレぁ今からコレと男女の関係になるんかい。

 う゛~ん、決心にヒビが入りそうだぜ。まるでガラス細工みたいにさぁ。


 一つだけハッキリしているのはロマンチックな初体験には絶対にならないってこと。


 それならば、と思ったオレは一歩前に出る。


 「ウゥ!?」


 意表を突かれたアンさんのビックリ顔に自分の顔を寄せる。



 そしてチュ、と唇と唇を軽く触れ合わせた。



 フフフ、アンさんとのファーストキスを思い出に残るくらいに甘~くしてやったぜ。


 「うはぅ!? えひぅぅぅ!?」


 アンさんのお顔が真っ赤に染まって、身体がガチガチに強ばった。

 ここだ。ここでビシッ! と一言キメてやる。

 仔羊ちゃんみたいに黙って食べられちゃうなんてカッコ悪い。男らしくないからな!



 「痛くしないって約束してくれたら……好きにして良いから」 ⬅️ 手を後ろに組みつつ視線をそらしながらモジモジ。


 

 だあぁぁぁ! 乙女ムーヴが自動的に!


 「ウ、ウ、ウオオォォォ~~ッッ!!」


 アンさんのノドが震えて女性のものとは思えん魂の叫び(ソウルシャウト)が! 言葉通りの雄叫びだぁ。

 立場がアベコベだよ。

 オレが女子に、アンさんが男性に生まれる世界線もあったんじゃないかな、なんて現実逃避をしてみたり。


 「がお~っ!!」


 がお~じゃないんだよ、とツッコむ間もなく体当たりを喰らってベッドに押し倒された。


 「三五サン……♡♡ ンチュ♡ ンチュ♡ ンッチュウゥゥ~~ッッ♡♡」


 顔中メッチャクチャにキスされまくってそして……。


 後はご想像通りの展開に。


 いや、しかしその凄まじさはオレのちっぽけな想像を遥かに越えていた。


 一晩中オンナの情念 ・ 執念 ・ 欲望 ・ その他もろもろ雨あられをぶっつけられて……何と言うか、価値観が変わってしまったわ。

 具体的には恋愛とかロマンスといったものに対する最終幻想ファイナルファンタジーが粉々に砕け散った。

 これが大人の階段を上るということか……。




 チュンチュン。チュンチュン。チチチ……。


 暴風雨の一夜が明けた。



 台風一過でスッキリサワヤカ~☆ と、いきたいところだが身体中の筋肉がバッキバキでミシミシいってて痛ぇし、汗やらでベタベタして気持ち悪い。


 アンさんは精も根も尽き果てたようで死体みたいにグッタリしている。


 オレだけ先にシャワー浴びてきちゃおうかな。

 アンさんにタオルケットをかけてあげたら部屋を出る。

 階段を下りて浴室へ。


 熱~いシャワーを浴びてまっさらな下着と衣服に着替えたら、ようやく人心地がついた。



 「さ、三五さん、お、おはようございます、あのあの、私……」


 部屋に戻るとアンさんが起きていた。

 でも話しは後。

 彼女の脱ぎ散らかした衣類をグイッと押し付けて、まずはシャワーを浴びてきてもらう。

 全てはそれからだ。


 「ひゃわわわわ~っ! し、失礼しまぁぁ~す!」


 パタパタパタパタ。




 三十分後。



 ちょちょいと片付けた自室にて、オレとアンさんは正座で向かい合っていた。



 「三五さん、この度は……誠に申し訳ございませんでした……っ!」


 

 床に額をピッタリくっつけながらのガチ謝罪をされてしまった。


 更にオレが何かを言う前に、彼女は恭しい手つきでスマホを差し出してくるのだった。

 画面には数字が刻まれている。


 『110』


 「さあ、どうぞご通報を。自首なんて卑怯なマネは致しませんわ。私、しっかりとお勤めを果たして参ります!」


 覚悟ガンギマり過ぎィィ!

 この人、女子少年院にブチこまれるのも折り込み済みで事に臨んだのか!?


 「ダメだって! 受験すんのか就職すんのか知らないけどメチャクチャ不利になるって! お先真っ暗だって!」


 「そんなの関係ありません! 私のしたことは決して許されない……許されてはならないのです!」


 「いやいや、他ならぬ被害者(オレ)自身が許すって……」


 「あぁっ! 私ったら失念していました! 三五さんもご自分の手で私に罰を与えたいですよね! さあ、どうぞ! 思う存分、殴るなり蹴るなり! 一切抵抗致しませんので!」


 両目を閉じ両手を広げるウェルカムポーズのアンさん。


 殴れるワケね~だろ! などと言っても馬耳東風。

 罪悪感でかたくなになっているから、いつもとは違う方向性で話が通じない。



 言葉が届かないなら……抱き締めるしかね~な。



 ギュウゥゥッ。


 「ひゃわわわぁっ!?」


 「アンさんは悪くないよ。昨夜はオレがアンさんを呼んだんだから」


 「で、でも私は……んむぅっ!?」


 わからず屋の唇をキスで塞ぐ。


 「はわわわっ!? はわわわわわっ!?」


 「何度でも言うよ。アンさんは悪くない」


 「わ、悪いですよぅ♡ だってだって性犯罪……あむぅぅっ♡」


 まだ言うか。だったら何度でもキスしてやる。

 クックック。ケッコ~意志が強いようだがコイツには逆らえまい。

 トドメだ。

 キメ台詞もくれてやろう。イケボでなぁぁ!



 「……昨夜のことはオレも興味があったから、アンさんとしてみたかったから……言わせないでよこんなこと……ばか」 (ショタボ)



 オレのこの乙女ムーヴはマジで何なん!?

 後で死にたくなる程恥ずかしいから超嫌なんだが!?


 「きゅうぅぅ~んっ♡ カ、カワイイィ~ッ♡」


 クッ……! だかメンタルを犠牲にした甲斐あってアンさんの心を解きほぐせたから良しとするか。



 「オレはアンさんとちゃんと話がしたいんだよ。アンさんのことがもっと知りたい。だって思い返してみると、長い間一緒に居たのにすれ違ってばっかりだったじゃん、オレ達」


 さっきも言ったけどオレはアンさんが進学するのか就職するのかすら知らない。

 そのクセしてキスの味とか、それ以上のアレコレとかまだ知らんでも良いことはバッチリ。

 心が通う前に身体が通っちゃったよ。 (下ネタ)

 絶対おかしいって。是正しなければ。



 「ゆ、許されるのなら、私も。三五さんのこと、いっぱい知りたいです。好きなこと、嫌いなこと、どんな些細なことでも、何でも……う、うぅっ! は、初めからそうやって仲良くなっておけば……私、私は……うわぁぁんっ!」



 「大丈夫、大丈夫だよ。オレ達初めからやり直せるから。仲良くしよう。ね?」


 「ごめんなさいぃ! ごめんなさぁぁ~いっ!」


 泣き出してしまったアンさんの背中を撫でながらゆっくり待つ。

 落ち着くまでゆっくり、ゆっくりと。



 「ううぅぅ、泣いちゃってごめんなさい。昨夜のことも、その前のことも、何もかも。ううう、謝っても謝り足りません……」


 「いいよ! 全部まるっと許しちゃうよ! それよりメイおねえさんが用意してくれたご飯を一緒に食べようよ。大分遅くなっちゃったけどさ」


 「そ、そうですね。せめて準備は私にお任せください」


 花嫁修業やってるだけあって、アンさんはパパパ~ッと食事の準備をしてくれた。

 

 さあ、いよいよやって来ました、念願のおしゃべりTIME!


 オレ達は食事を楽しみながら、お互いのことをゆっくり語り合った。


 趣味は何か、とか休みの日にはどんなことして過ごすの、とか。

 他愛もない会話だけれども、心がポカポカ暖まる穏やかな一時。

 欲望ギラギラ悪女モードだとこうはいかない。


 オレは実に二年振りに素のアンさんと再会したのだった。

 いや、もしかしたら初めて本当のアンさんに出逢ったのかもしれない。


 その麗しい仕草、その愛らしい微笑み。

 

 しみじみと実感する。



 ああ、オレはアンさんのことが、好きだ。

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