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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【IF話】 もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら
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あなざ~彩戸すと~り~ ⑪ 身勝手なオレとお姉さん  アンルート

 「それじゃ、既成事実作っちゃいましょっか♡ 婚前交渉しましょ♡」



 メッチャクチャ明け透け & ドストレートなお言葉。

 冗談めかした物言いだが、本気だ。

 メイおねえさんは本気で言っている!


 「き、既成事実ぅぅ!? そ、それならもうあるじゃん! さっき一緒にシャワー浴びたじゃん!」


 「あ~んなモンは姉弟のスキンシップの延長線上でしょ。ハチャメチャに生温いわっ!」


 「どえぇぇ!?」


 「悪女 ・ アンを諦めさせるには生半可な既成事実じゃダメよ! 地獄に叩き堕とすつもりでヤらないと!」


 そ、それはそうかもしれないけど……ううう、やっぱダメだ!

 ブンブンブンブン!

 首を左右に振りまくる。


 「オ、オレには、オレにはまだ早いって!」


 「わかるわかる。三五ちゃん、まだ中学生だもんね。ちょっとハードル高いわよね。でも気合いよ! ヤッてヤるって気合いがあればなんとかなるわ!」


 メイおねえさんの言う通り、オレは腰が引けている。ビビッてる。それは否定しない。

 でもそれより先に立つのは迷いと申し訳無さだ。


 「アンさんに未練 (?) タラタラなオレがメイおねえさんの初めてのお相手!? 無礼失礼 W(ダブル) 千万! 故に言語道断! 自分で自分が許せなくなる! よって無理!」


 「そんなの気にしなくって良いのよ。ムフフフ♡ だってねぇ……えいっ♡」


 ガバッ! ムギュッ! バフ~ン!


 「うわっぷ!?」


 急に抱き寄せられたもんで、顔がメイおねえさんの豊かなお胸様に思いっきり(うず)まってしまった。

 慌てて抜け出そうとするも、凄い力でガッチリムッチリロックされて微動だに出来ない。この細腕のどこにそんな力が!?


 

 「お姉ちゃんとた~っぷりイチャラブキメたら、頭ん中す~ぐお姉ちゃん一色になっちゃうんだから♡ 悪女のことなんかキレイサッパリ忘れさせてあげるわよ♡」



 「うううぅ!? で、でもっ!」


 「それにね? 三五ちゃんには受験勉強があるでしょ? 私も立派なお手伝いさんになる為に、運転免許とか諸々の資格とかコンプリートしときたいのよね。そ~なると一緒に居られる時間が大分減るじゃないのよ! キ~ッ!」


 プンプンしたかと思いきや、打って変わって瞳をウルウルさせるメイおねえさん。


 「お姉ちゃん、とっても寂しいっ。三五ちゃんは? 三五ちゃんだってお姉ちゃんともっと一緒に居たいよね?」


 「も、もちろんだよ! オレだってメイおねえさんとの時間が減って寂しいよ!」


 「でっしょ~? 量が足りない、ならば質で補うべき。ちょ~濃ゆ~い密着しまく~りなラブラブTIMEが必要不可欠なワケ。だからお姉ちゃんとイイコトし ・ ま ・ しょ♡」


 明朗快活 ・ 理路整然を地で行く竹を割った様な誘惑だ。

 頭にパッカ~ンと響いて心がグラグラ揺さぶられる。


 メイおねえさんと一夜を共にする(既成事実を作る)


 道徳的なアレコレに目を瞑れば確かにそれがベストな選択肢だ。


 オレを愛してくれて、オレの家族にも愛されているメイおねえさんとガッツリズブズブに結ばれれば三方良しで何もかもが丸く収まる。


 アンさんだって長い間ジワジワ真綿で首を絞められるより、いっそ一思いにバッサリ斬られた方がダメージが少なくなるに違いない。


 ましてや彼女も高校三年生、一生を左右する重要な時期なんだ。

 これ以上オレなんかのことで思い悩んで、大切な時間を無駄にして欲しくない。


 それが良い。というかそれしか無い。

 わかっているのに。それなのに。


 

 アンさんとの思い出が頭の中を走馬灯の様に駆け巡って決断を鈍らせる。



 まあ大半はロクな思い出じゃなかったけどさ。


 それでもオレのことを大好きだと全身全霊で伝えてくれるのは正直、自慢したいくらい嬉しかった。


 初恋オーバーヒートでテンションがヤベえアンさんが時折見せる穏やかな表情と微笑み。

 悔しいけれど何度も見惚れてしまった。ギャップ萌えってヤツだろうか。


 一番印象深いのは初めて会った日のデート。

 オレはアンさんをメイおねえさんと見間違い、アンさんもまたメイおねえさんに成りすましてはいたけれど、あれはとても楽しい一時だった。


 今思い返せば二人は全然似ていなかったな。

 優しいのは共通しているけれど、控えめでフワフワ甘々な雰囲気で……可愛らしい。

 きっとあれが素のアンさんなんだろうな。


 そんな彼女の残影がこびりついて、どうしても頭から離れてくれない。

 メイおねえさんの胸の谷間に挟まってるこの頭からよぉぉ!


 つくづくサイアク。

 つくづくオロカ。

 つくづく痛感する。

 この感情はなんて、なんって……!


 

 「三五ちゃんはアンちゃんのことが好きなのね?」


 

 「ち、違う! 違うよ!」


 そんなワケがない。違うハズだ。違うと思いたい。どうか違っててくれ。


 「アンちゃんを構えなくなるから私と既成事実を作るのが嫌なんでしょ? それって好きってことなんじゃないの?」


 グサッ! グサァァ!


 言葉の刃が痛いっ!

 つ~か改めて指摘されるとオレマジ最悪だな! ホントつくづくさ!


 「こんな気持ちが 「好き」 !? おかしいって! こんな、こんな身勝手な気持ちが 「好き」 って気持ちなワケない!」


 「何言ってんのよ、アンちゃんを見てみなさいな。身勝手が服着て歩いてるみたいなモンでしょ~が」


 グサッ! グサッ! グッサァァ!



 「押さえられない身勝手な気持ちを恋と呼ぶなら、アンタの気持ちは間違い無く恋よ。アンちゃんのに比べればまだまだ可愛いモンだけど」


 

 「グッッハァァァ~ッッ!!」


 ズガガガン! ガガガガン! ガ~ンガ~ン!


 人生最大最響のインパクト(お言葉)!


 オ、オレの気持ちがアンさんと同じ、恋?

 オレは大事な人や物事を二の次にしてアンさんに夢中になってる?

 暴走してる?

 恋に狂っている?


 だとしたら……!



 「恋なんて! カレーの味の!! ウンコだろ!!!」



 「プププププ~ッww 突ww 然ww のww 五w 七w 五www」


 「前言撤回! メイおねえさん! オレを抱いてっ! 壊れるくらい激しくっ! あの女のことなんて忘れさせてっ!」


 何故か爆笑し始めたメイおねえさんに必死で懇願するオレ。


 「乙www 女www かwww っちゅ~のwww アンタバカじゃないのwww こんな時に笑かすんじゃないわよwww も、もうダメww プハハハハハッwww ア~ッハハハハハハハハwwwww」


 あ゛~、もうダメだ。

 一度ツボに入っちゃうとしばらくは笑いっぱなしになるんだよな。

 落ち着くまで待つしかない。

 罪悪感に苛まれながら……。




 「あ~笑った笑ったww 恋がカレー味のウンコですって? プププww それなら私はさしずめウンコ味のカレーってトコかしら? www  失w 礼w しちゃ~ ⬆️ うwww」


 「ち、違うよ!メイおねえさんはカレー味のカレーだよ! オレがウンコにタカるハエ野郎なだけだよっ!」


 ホントそれよ。心底そう思う。

 こんな自分が大嫌いだ。


 でもメイおねえさんは自己嫌悪するオレに若干呆れながらも、愛情をたっぷり湛える瞳で見つめてくれるんだ。


 「自分のことそんな風に言うもんじゃないわよ。それにアンちゃんを好きになったのも悪いことばっかりじゃないでしょ?」


 「えええ!? どこがっ!?」


 「前とは見違えるくらい成長したじゃない。湖宵ちゃんが自慢しまくるくらい人気者になって、背も伸びてプロポーションもバッチリ。お勉強もバリバリやってるから、ぶっちゃけ受験とかケッコ~余裕あるでしょ?」


 「ああ。まあ、それはそうだけど」


 確かにオレは変わったけども。

 (よこしま)な気持ちで身に着けたモンだから一ミリも誇れやしない。


 「アンちゃんもね。前に言ったでしょ? 家事なんてやったこともないお嬢様が一人前になったって」


 「前から気になってたんだけどさ、どうしてメイおねえさんはアンさんに家事を教えたの?」



 「試したかったから。知ってる? 家事ってね、愛情がなきゃ上達しないのよ。美味しいものを食べてもらいたい。綺麗な服を着て、埃一つ落ちてない清潔な家に住んでもらいたい。そんなの愛でしょ。アンちゃんの愛は本物よ」



 意外だった。アンさんの頑張りはちゃんとメイおねえさんに認められていたんだ。

 てっきり根性を叩き直す為だけにやらせていたのかと。



 「だから、ね。そんなにアンちゃんが気になるんならお試しで付き合ってみるのもアリなんじゃない?」



 「んなっ!?」


 どうして!? どうしてメイおねえさんはいっつもオレばっかり! こんなワガママなオレなんかを!


 「おねえさんはっ! メイおねえさんはそれで良いのっ!?」


 「三五ちゃんが私のことを選んでくれたら、もちろん凄く嬉しいわよ。一番のオンナが私だったらね」


 「う……っ」


 言葉が詰まるのが辛い。恥ずかしい。

 メイおねえさんには何もかも見透かされてる。


 「自分の気持ちがハッキリしない? ならトコトン悩みなさいな。一番の幸せを掴んでみせてよ」


 「それがアンさんと結ばれることでも? 心から祝福してくれるの?」


 「もちろんよ。私は三五ちゃんのお姉ちゃんだもの。弟の幸せが私の幸せ。性分と言い換えても良いかしら」


 瞳には強い意志が宿り、背筋はいつでもピシッと伸びている。

 憧れの女性、オレが大好きなメイおねえさん。

 その目映い強さ、美しさに嫉妬してしまう。



 「オレもメイおねえさんみたいに大事な人を大事にしたいのに。振り回したくなんかないのに……」


 

 悔しいけれどオレにはどう頑張ってもそれが出来ない。


 「自分の気持ちをごまかしたって苦しいだけよ。私と湖宵ちゃんの前ではいつでも素直でいなさい」


 「湖宵にもガッカリされたくないんだよ。もしオレがアンさんとくっついたらきっと悲しむよ」


 「任せといて。その時はお姉ちゃんが湖宵ちゃんを慰めるから。ついでにその流れで結婚まで持ち込んじゃうわ (笑)」


 「ハアァァ~ッ!? メイおねえさんが湖宵と結婚!? なに持ち込んどんねん! 何でそ~ ⬆️ なるのっ ⬇️ !?」


 「あのコは心が女の子なんだから、お姉ちゃんと一緒になった方がまだマシってもんでしょ。そんで姉妹仲良く三五ちゃんを推してくってワケ。悪くないプランでしょ♪」


 この人浮世離れし過ぎィィ!

 マジで天から舞い降りた女神なんじゃなかろうか。



 「私と湖宵ちゃんは三五ちゃんのことが大好き。何があっても、どんな関係に変わってもずっと一緒よ。そうでしょ?」


 

 「メイおねえさん……うん、うん、そうだね。ハ、ハハ、アハハッ!」


 自分でも理由がわからない笑いと涙(感情)がワ~ッと溢れてきた。


 衝動のままにメイおねえさんの身体をむぎゅぅぅ~っ! と抱き締める。

 暖かい体温に包まれていると次第に落ち着いてくる。

 しばらくの間そうさせてもらっていたら心がスッキリした。


 

 オレがアンさんと今後どうなりたいか?

 その答えはまだ不明瞭なままだ。

 けれどもモヤモヤしたり自己嫌悪に陥ったりするのはもう止めだ。

 答えを見つけよう。


 その為にはアンさんのことをもっともっと知らないとな!


 久し振りに前向きな気持ちになれた。

 とても晴れ晴れとした良い気分だ。

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