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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【IF話】 もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら
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あなざ~彩戸すと~り~ ⑩ お姉さん爆発寸前!  アンルート

 オレとアンさんが隠れて行っていた秘密のラウィッター(トークアプリ)は白日の下に晒されて封印。


 嫁ガードは絶対にオレにアンさんを近付けるものかと気炎を上げて更にパーフェクトな防護壁となった。


 その結果、オレがアンさんをからかうのは物理的に不可能になってしまったのだった。


 いや 「なってしまった」 じゃないよ!

 これで良いんだ。そう自分を納得させる。


 それでも酷くつまらないと感じている自分が居るのも否定しきれないワケで……。

 ああ、オレってヤツは。



 「三五ちゃん、もう絶対に悪女 ・ アンをからかっちゃダメよ! あのコ、ムラムラがギリギリだから! ヤバいわよ!」



 「ムラムラがギリギリ!?」


 メイおねえさん曰く。

 通常の花嫁修行と並行して座禅を組ませたり水垢離をやらせたりといった精神修行も課したのだが、全く効果が無いとのこと。


 「三五さん……三五さん……」


 虚ろな瞳でオレの名を呟いたり、妄想絵日記やポエムなどを綴りまくっているのだとか。

 わかりやすいまでの禁断症状!


 「今の悪女 ・ アンは絶対の絶対の(ぜぇ)(ったい)に刺激しちゃダメ! 襲われるわよっ!」


 「お、襲われるの? オレ、男なのに?」


 「そんなチャチな一般論は今すぐ捨てなさい! 相手は理性がトんだビースト! アンタは狙われた獲物! そんな初体験、最悪でしょ~が!」


 「う、うん。全くもってメイおねえさんの仰る通りで」


 心の底から同意する。の ・ だ ・ が!

 アンさんに狙われてると思うと胸がドキドキドキドキ! うるせ~!

 オレってヤツは! オレってヤツはぁぁ~!

 この際一ぺん痛い目見ちまえってんだ!




 「う゛あ゛ぁぁ~! 三五さんっ! 三五さぁぁん!」


 「三五の貞操はっ!」


 「お姉ちゃん達が守ぉぉ~るっ!」


 バチバチバッチ~ン!


 毎日毎日オレを巡って正と邪、二つの愛が激しく衝突する。


 「あああぁぁ~ん!」


 ズシャアァァッ!


 今日も正義が勝った。まあ二人がかりだしね。


 「あ゛き゛ら゛め゛ま゛せ゛ん゛っ! 私は三五さんのお嫁さんにっ! な゛る゛ん゛で゛す゛う゛ぅ!」


 うわぁ、ちょ~怖い。凄いスリル。 (クソみたいな感想)


 それにしてもアンさんってそんなにオレが欲しいんだ。

 そう思ったら自然と口角が上がってクスクスと笑い声を立ててしまう。


 そんな自分がホント嫌。

 キショいんだよ! どっちが悪女かわかりゃしね~!


 「う゛う゛う゛う゛~! う゛う゛う゛う゛う゛~!」


 アンさんがオレを見るこの目。

 マジでヤバい。鬼気迫るものがある。


 ギラギラと脂ぎった瞳に見つめられるとドキドキが止まらない。

 恐怖しているから? スリルを楽しんでいるから?

 それとも……?


 感情の糸がグッチャグチャに絡まりあっていて、自分の本心が自分でもわからない。



 そんなある日。


 父さんが出張に行き、母さんが腰を痛めてしまったお祖母ちゃんの家に泊まりがけでお見舞いに行くことになった。


 「三五、悪いんだけど留守番お願いね」


 「大丈夫大丈夫。戸締まりと火元の確認はキチンとするから。ご飯もちゃんとしたもの食べるよ」


 「アンタもシッカリしてきたわね。これなら心配要らないか。後よろしくね」


 母さんが出かけて行った。



 これで今日と明日の二日間、この家に居るのはオレ一人きりだ。



 フウウゥゥゥゥ~~。

 ……………………………………………………。



 このシチュエーションは ヤ バ い ッ ッ ! !



 今のオレは鳥籠の中の小鳥ちゃん。

 お腹を空かせたアンさん狼がどうするか? そんなのワカリキッテル!


 (お・そ) ・ わ ・ れ ・ るぅぅぅ~っ!


 ええい落ち着け! 落ち着いて冷静にシミュレートするのだ、三五よ。


 もしアンさんが鉄壁の嫁ガードを振り切って我が家に凸してきたら?


 戸締まりはバッチリだけども、家の前で騒がれたりなんかしたら鍵を開けざるを得ないよな。ご近所さんに通報されるかもしれんし。


 家の中でアンさんと二人きりになったら?


 言わずもがな。当然襲われますわな。


 恐らく、中途半端な抵抗は意味を成さないだろう。


 欲望に身を焦がすアンさんを止められるのは純粋なるパワー、暴力のみ。


 オレに女性をブン殴れと? 無茶言うな。

 しかもあの人、メイおねえさんと同じ顔してるんだぞ。無理無理無理!


 導き出される結論は……。


 アンさんがオレん()に凸する確率 ・ 45%!

 その際、オレに一切の為す術無し! 美味しく頂かれてしまうぅぅ!


 ドキドキドキドキ! バクバクバクバク!

 ウワ~! ウワァァァ~! ヤベえ! ヤッベぇぇぇ!


 嫁ガードが、特に一緒の家で暮らしているメイおねえさんがそう易々と出し抜かれるとは思えない。


 けれども予感がする。

 

 起こるべきことが遂に起こる。

 何もかもが決着する。


 そんな確信めいた予感が!


 ひぃぃ~! どうしようどうしよう!?


 今やるべきは……そうだシャワー! シャワー浴びないと!

 新しいパジャマも下ろして、部屋も片付けてベッドメイクも綺麗に……。


 え? 何をウキウキしとんねんって?

 違うって! 期待してるワケじゃないって!


 家に一人で居る時に超スーパー台風が直撃したら誰だってウワ~! ヤベ~! ドキドキする~♪ ってなるだろ!?


 オレにとってはちょうどそんな心境……って、そんなこと言ってるバヤイじゃね~!

 浴室へダ~ッシュ! 急げや急げ~っ!

 


 シャアァ~ッ! シャアアァァァ~ッ!


 熱いお湯で身体を流して入念に磨き上げる。


 ゴシゴシゴシ! ゴシゴシゴシゴシ!


 身体を洗うのに没頭するオレ。


 あまりにも夢中になっていたものだから、突然背後のドアが


 ガチャッ!


 と開いて死ぬほど驚いた。


 ビク~ンッ! とリアルに一mくらい飛び上がってズテ~ンッ! とズッコケてしまう。


 

 「(さ・ん) ・ 五さん♡ 来ちゃいました♡」


 

 声のする方に振り向くと、そこにはバスタオル姿のアンさんが!


 「ウワアアァァァァァ~~ッッ!?!?!?」


 ゾワワワワワワッ!

 バックン! バックン! バックン!


 全身総毛立ち、心臓がかつてない程ドラミング!


 この人マジか! マジかこの人ォォ!

 まさかまさかとは思っていたけどホントに来やがったよ!


 に、逃げなきゃ……ああっ! ソープの泡でツルツル滑って立てない! それどころか怖くて身体が金縛りに……!?


 イヤ! イヤ! イヤァァ! (乙女化)


 お、お、襲われ…………!?


 ない?


 ま、まさか!


 「メメメ、メイおねえさぁぁ~ん!? 何やってんのさぁぁぁ!?」


 「あ、わかってくれた? 愛の力ね~♪」


 「わからいでか! アンさんなら獲物を前にニヤニヤ舌なめずりなんかしね~よ! 即ガブ~ッ! だよ!」


 「アッハハ♪ それもそっか♪」


 付け加えるならバスタオルなんかイチイチ巻いたりもしね~。全裸で凸ってくるに決まってる! (真理)



 「フゥゥ~。でもホントにメイおねえさんで良かった~……って良くねぇぇ~! 嫁入り前の娘が何しとんね~ん!」


 「フッ、な~におバカなこと言ってんの! 私の嫁入り先はここよ、ここ! 嫁入り先のお風呂使って何か文句あんの!?」


 「えええぇぇぇ~?」


 オレがおかしいの?

 いや、でも確かに文句は別に無いような?

 いやいや、でも何かがもの(すご~)く引っかかるような……?


 「さぁさ♡ お姉ちゃんと一緒にシャワーの続きしましょ♡ あ~、こ~ゆ~の久し振り♡ 嬉し~♡」


 「ちょちょちょちょぉ~っ!? ま、ま、待ってよぉぉぉ~っ!?」


 だが待ってと言って待ってくれるメイおねえさんじゃない。

 

 身体を隅々まで洗われちゃって、お背中まで流させられちゃった。



 「は~サッパリした♪ 気持ち良かったわね~♪」


 グウの音も出ないくらいガッツリ裸の付き合いをした後なのに、いつもの調子のメイおねえさん。


 「あの~、アンさんは今どうしてるの?」


 「悪女なら荷作りヒモで縛っといたわ。更に養生テープでグルグル巻きにしといたから自力での脱出は不可能よ」


 「そ、そっか。相変わらず容赦無いね」


 どうやらオレが危惧していた事態にはならないみたいだ。

 

 ホッと安心。ちょっとガッカリ。

 はぁ~……呆れるぜ、全く。

 心のどこかで期待してたのかよ、オレってヤツは。


 だけどもうおしまいだ。

 こんな自分とは今日でお別れしよう。


 「メイおねえさん、オレもうアンさんをからかうの止めるよ」


 「アラどうして? 別に良いんじゃないの? メ~ワクこうむってんだから」


 「い、いやメイおねえさんだって嫌でしょ? 婚約者ってことになってるオレが他の女の人をからかってニヤニヤしてたらさぁ」


 自分で口にした事実にハッとする。

 そうじゃん! そう言やそうじゃん!

 オレの今までの態度ってメイおねえさんにメッチャ失礼じゃね!?



 メイおねえさんは世界一の美貌の持ち主 (少なくともオレが知ってる限りは) で、優しくて家庭的で内面も綺麗なパーフェクト美女だ。

 小さな頃から面倒を見てもらっているオレが言うんだから間違いない。

 しかも義両親と同居 & 介護も余裕でOKしてくれるという。


 控えめに言って愛の女神の化身だ。


 やれ婚姻率 ・ 離婚率の低下やら何やらと世知辛いこの世の中でメイおねえさんに巡り会えたことは奇跡。


 こんな素晴らしい女性がオレ如きを選んでくださるってぇのに、他の女にちょっかいかけてキャッキャキャッキャしてんじゃね~ぞ! 高波 三五!



 これはもう、決まった。決まってしまったな。



 「メイおねえさん、今までごめんなさい! オレ、メイおねえさんに相応しい男に生まれ変わるよ!」


 「ん~? それってお姉ちゃんとガチで結婚してくれるってこと?」


 「も、もちろん! こんなオレで良ければ喜んでっ!」


 「アンちゃんをフッちゃうの? ポイポイポ~イって捨てちゃうの? それで良いの?」


 「……! っ、も、も、もちろんさっ!」


 ズキンッ! と胸が痛んだ……と同時に過去イチ腹が立った。

 もおぉぉ! ホンットマジでぇぇぇ!


 今確信した! この感情、マジでクソだわ!

 こんな気持ちに左右されてたら人生ダメになる!

 抗うぞ! オレは徹底的に抗うぞっ!



 「んふふふふ♡ お姉ちゃん嬉しい♡ こっちおいで♡」



 「わっ! わっ!」


 ガバッ! ムギュゥゥゥ~!


 力一杯抱き締められて、オレのおでこやほっぺにチュ、チュ、とキスの雨が降った。


 こ、この流れはもしかしてファーストキスまでいくヤツ!?

 ど、どうしよう、心の準備が!?


 慌てふためくオレの耳元にメイおねえさんが囁く。



 「それじゃ既成事実、作っちゃいましょっか♡ 婚前交渉しましょ♡」

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