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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【IF話】 もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら
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あなざ~彩戸すと~り~ ⑦ の~じるドパドパお姉さん  アンルート

 一年。一年か。

 短いようで長いよね。


 それだけの間を一緒に過ごしていても、オレにはアンさんという人が未だによくわからない。

 まあ親交を深めるどころか、ちょっかいかけられてるだけだしね。


 

 メイおねえさんと一緒の家で暮らしているアンさん。

 家ではどんな風に過ごしているんだろう?


 「アンちゃん? あのコなら花嫁修行させているわよ」


 「あのアンさんが花嫁修行ね~、上手くいってんの?」


 「それがね~、超順調なのよ。初めは洗濯機の使い方も知らないお嬢様ちゃんだったクセに、今や一端(いっぱし)の家事戦士よ。だから教えるのにも熱が入っちゃって」


 「マジで!? 超意外!?」


 しかも家では良い師弟関係が築けちゃってんの!? 外ではあんなにバチバチなのに!?


 「あのコ、家では悪女じゃないしね。元々物静かな方だし」


 「物静かぁ!? あの暴走超特急(ハッスルエキスプレス)がぁ!?」


 「暴走すんのは三五ちゃんの前でだけよ。いつもはちょっと天然っていうか、ポヤポヤフワフワ~ってカンジで逆に心配しちゃうくらいなの。真ん中っちゅ~モンが無いのかしらね、あのコには」


 ポヤポヤフワフワ!? オレの前だと常にグイグイドンドンなのに!?

 オレも一度見てみて~! が、そりゃ叶わぬ願いか。こっそり動画でも撮っといてくれないかなぁ、メイおねえさん。



 しっかし聞けば聞くほどにアンさんへの謎が深まっていく。

 中でも一番わからないのが……。



 「ねえアンさん! どうしてオレのことがそんなに好きなの!? オレ、何かした!? オレ、何かやっちゃいました!?」



 気になって気になって仕方がないので、嫁ガードとのバトルに割り込んでアンさんに直接聞いてみた。


 「「「ドッ! wwwwwwwwww」」」


 仲良くウケてる! 一秒前までバチバチだったクセに!


 「三五ww 無自覚魅了チートくんwww」


 「可愛さ余って溢れてんだっつ~のww 煽りかっつ~のwww」


 「それでも憎めないんですよね~ww やれやれ、罪作りな三五さん♡」


 煽りとかじゃね~! マジメな疑問なんだって!

 だって客観的に見たらオレなんて全然フツ~のヤツじゃん。

 いや、卑下してるワケでも何でもなく。

 湖宵みたいに美形でもなければ、成績優秀でも運動神経バツグンでもないんだから。


 最近はメイおねえさんに勉強を見てもらったり、湖宵に運動を付き合ってもらったりしているけど、目に見える形で努力が身を結ぶにはまだまだ時間がかかるだろう。

 現にオレは学校の女子達から湖宵のオマケとしてしか認識されていないしね。


 「女子達、マジギルティだよね。三五を軽んじるヤツとなんか仲良くしてやんないから!」


 「弟と妹はどちらも至高の存在♡ 愛してる♡ 優劣を付けるだなんてバカげてるわ♡」


 「まあ君らがオレのこと大好きなのは理解出来る。オレだってスペックとか関係無く二人のことが大好きだもの」


 「「だよね~♡」」


 だけどアンさん、アナタだきゃ~別だ。

 

 一目惚れだって話だけどさぁ、どうしてそんなにオレのことをずっとずっとずぅぅ~っと好きでい続けられんの!? 一年間ですぜ!? 一年間!

 暴走超特急の燃料は一体どこからきてんの!?


 「フッ、ならば語って聞かせましょう。あれは何年前のことでしょうか……そう、私が海外で暮らしていた頃、小さな小さな頃のお話です」


 そんなトコから話し始めんの!? 

 ちょっと待ってて。今、お茶とお菓子を用意するから。

 腰を据えてジックリ聞かねば。



 「ある夏休み、メイ達一家がはるばる私の家まで遊びに来たんです。その時、メイったら私に会うなり 「可愛い弟達が出来たの! 私、お姉ちゃんになったの!」 って自慢してきたんです」


 「そんなこともあったわよね~。三五ちゃんと湖宵ちゃんに初めて会った年よね。二人と離れ離れになるのが嫌で、私だけ日本に残る! ってダダこねたっけ。懐かしいわね」


 「フフッ♪ 折角の海外旅行なのにね」


 小っちゃなメイおねえさんは小っちゃなアンさんにオレ達のことを自慢気に語りまくったんだって。

 可愛らしい姿が目に浮かぶようだね。ちょっとホッコリ。


 「私は可愛い弟ちゃんのお話を聞いたり、お写真を見せてもらうのが大好きでした。次にメイが来るのはいつかな? 今年かな? 来年はどうかな? 楽しみで楽しみで大型連休の度にソワソワしちゃってました」


 確かそのウチにオレのことが気になり出したって話だったよね。

 でもどうしてオレなんだろう?

 ハイスペック王子様の湖宵を選ぶのがフツ~じゃない?

 まあ実は湖宵の中身はお姫様だったんだけど。そんなの話や写真じゃ見破れるハズないよね? う~ん、謎だ。



 「私、気が付いたんです。未だ見ぬ三五さんに想いを馳せると、心が暖かくなって身体中が安心感に包まれる……そう、セロトニンが分泌してるってことに」



 ハイ? 何だって? せろと?


 「そうなると三五さんのことが気になって気になって……ぶっちゃけ私、三五さんに一目逢いたいから日本の高校に通うことに決めました!」


 「「「知ってた」」」



 「街歩きしてる時に思いがけず三五さんを見かけて……心臓がドキ~ン! って跳ねたんです! 興奮で息が弾んで幸せな気持ちがジュワワ~ッて溢れてきて……! そう! ドーパミンが分泌したんですっ!」



 ど、ど~ぱ!? 何ソレ!?


 「居ても立っても居られなくなった私は気付いたらメイとの約束をブッチして三五さんの前に飛び出していたんです! 大それたことをしてしまった……戸惑う心とは裏腹に脳はドーパミンをドパドパ分泌させて身体を突き動かすのです! 更なる FEVER を求めてっ!」


 ど~ぱがどぱどぱ!?


 

 「悪い子な私はメイにやっつけられてオシオキされて……たくさんの試練を課されました。必ずや三五さんのお嫁さんになってみせる。そんな決意と共に湧いたのが……そう! アドレナリンですっ!」



 あどれな!? ど~ぱとは違うの!?


 

 「アドレナリンによって覚醒を果たした私! 試練を一つ、また一つとクリアーする毎に喜びのエンドルフィンも分泌されます!」



 また何か知らん別のヤツが分泌されとる!? 怖~い!


 「この前私、試練を頑張ったご褒美に三五さんのお弁当を作らせてもらいましたよね? 三五さん、美味しかったよって言って微笑んでくれましたよね? あの時に分泌していたのが……?」


 「ど~ぱ!? あん時ど~ぱがどぱどぱだったの!?」


 「Yeees(いえ~す)♡ ドーパがドッパドパ♡ 天にも昇る快感で~す♡」


 ど~ぱ怖ぇぇ!

 そう言えばアンさんってオレと居ると、よくトロットロに蕩けたポヤ顔になるよなぁ。

 アレがど~ぱ顔なんだ! 怖~い! 怖~い!


 「もちろん時には凹んだり落ち込んだりすることもありますよ? でもそんな時に分泌するのがお馴染みのセロトニンです。精神を安定させてくれます」


 「お馴染みの」 じゃね~よ!



 「ってゆ~かアンタ、脳内麻薬(の~じる)で三五ちゃんを語ってんじゃないわよっ!」


 ビシバシ~ン!


 「キャイ~ン!」


 「アル中が酒を断てないメカニズムみたいなノリで三五を語るな~っ!」


 バシバシ~ン!


 「キャイキャイ~ン!」


 キラ~ン☆


 アンさんは星になった。



 しかし困った。本当に困った。

 アンさんの話を聞いたら余計にわからなくなっちまったぞ。


 アンさんの抱いている気持ちが恋なら、オレには全く理解が及ばない感情だ。

 だってオレ、ど~ぱがどぱどぱしたことなんてね~し。


 わからね~想いに応えるなんて不可能だよな。


 仮にメイおねえさんとの婚約が無かったとして、アンさんと恋人になれるか? と問われたら 「いや~、キツいっスわ~……」 というのがオレの偽らざる本音だ。


 かと言って強く拒絶して突っぱねることもまた、オレには出来そうもない。


 アンさんは困った人だけどバイタリティーに富んだ凄い根性の持ち主で尊敬に値する。

 良いところや見習いたいところだっていっぱいあるのだ。


 オレとしては素顔のアンさんをもっと知りたいし、普通に親しくしたい。

 うん、絶対無理だな。

 オレと接するとど~ぱとか(得体の)その他色んな(知れない)モンが分泌しまくってトロ顔ポヤ顔になるんだもんな。

 素顔なんて夢のまた夢よ。



 困惑だ。もはや困惑するしかない。


 恋とは、そしてど~ぱとは一体……?

 どうしてど~ぱは沸いてくるのかしら?……って、待てよ?


 聞いた話をよくよく思い返してみると、 「何故」 アンさんがど~ぱを分泌しちゃうのか? その肝心要の部分が不明のままじゃん!


 オレを一目見てビビッときてドパ~ッ! と出たとしか……。


 えぇ~? 何ソレ怖ぁ~。恋ってそんなものなの? 怖ぁぁ~。 (ドドン引き)



 ま、まあワケわからん理屈で出たものなら、ある日突然引っ込んでもおかしくないよな。

 ど~ぱが出なくなればきっと恋も冷めるだろう。


 だってオレってば極々普通の男の子だもの。

 アンさんに相応しい男性がきっと他に居るハズさ。



 アンさんの心がオレから離れるのを待とう。



 そう結論を出したオレだったが、何故か心がスッキリせずモヤモヤとした気持ちを抱えることとなってしまった。


 それでもオレはアンさんの想いには応えてあげられない。

 だからこの選択は間違っていない。


 自分に言い聞かせて心に蓋をしたこの日の夜。

 

 オレは夢を見た。

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