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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【IF話】 もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら
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あなざ~彩戸すと~り~ ③ ヒロインなのにざまぁされるお姉さん  アンルート

 「メイおねえさんの従姉妹!? ……って、確か今は海外に住んでるって言ってなかった!? いつ日本に!?」


 「むぐぐぐぐぐ~っ!」

 ジタバタジタバタ!


 いやいやいや、それ以前に何故自分をメイおねえさんだと偽ってオレとカラオケデートを?

 何故キスを迫ってきたんだ?

 何故今、生け垣に頭から突っ込んでジタバタもがいている? ……そりゃあメイおねえさんに蹴りを喰らったからだ。その他のことは一切わから~ん!


 「アンちゃん……いいえ、悪女 ・ アンは日本の高校に進学する為に私の家に居候することになったのよ。三五ちゃん達を驚かせようと思って黙ってたけどね」


 そう言えばメイおねえさん、お楽しみのサプライズがあるって言ってたもんね。


 「そんで私が親切にも不慣れな日本の街を案内してやろうと思ったら……! この女、突然チャットで 『ごめ~ん、待ち合わせ場所がよくわかんなかったから適当に見て回るネ☆』 とかって約束ブッチしたのよっ!」


 メイおねえさんは生け垣から生えたお尻 (靴の跡がクッキリ) をバチン! と引っ叩いた。


 「きゃあん!」


 「挙げ句の果てには私の大事な三五ちゃんをナンパですってぇ!? マジで万死に値するわ!」


 「むぐぐぐぅ! ん~っ! プハァッ! ふええぇぇ~ん、髪が葉っぱまみれですぅ~」


 「媚び売ってんじゃないわよアンタ! 脳天唐竹割りにするわよ!」


 従姉妹のアン、さん? の奇行に基本穏やかクールなメイおねえさんがメチャメチャブチギレてる。


 「て ・ ゆぅ~かぁ! 三五ちゃんも気付きなさいよね! 成りすましの偽物なんかより、私の方が百倍美人でしょ~が! 愛が足りないわよ、お姉ちゃんに対する愛がぁぁ!」


 ヤベえ! 怒りの矛先がこっちにまで向いてきた!


 「い、異議あり! メイおねえさん(クラス)の美女が世界に二人も居るなんてあり得ないと思ったんだよ! オレは悪くないと思います!」


 「「アラァ~♡♡」」


 この二人ソックリ過ぎるんだってマジでぇ!

 改めて見比べてみよう。


 仁王立ちでギラリと見下ろすメイおねえさん。

 お姉さん座りで涙目ウルウル上目遣いのアンさん。


 うん、雰囲気やファッションこそ正反対だけども、目鼻立ちやスタイルなんかは瓜二つと言って良いくらい似ている。

 双子ならまだしも従姉妹がこんなに似ているだなんて思わんでしょフツ~。騙されて当然だって。



 「更にダメ押しなんだけどさあ、オレがアンさんをメイおねえさんと間違えた理由がもう一つあるんだよ……!」


 うう、怖い。白状するとその理由はちょっと直視したくないくらいには怖い。ハッキリ言ってビビってる。


 でもメイおねえさんの暖かい腕に抱かれてるウチに勇気がポカポカ湧いてきた。


 キッ! と目に力を入れてアンさんと向き合う。


 「この人、絶対にオレのこと大好きだよね!? イタズラとかからかう為とかじゃなくて、純粋にオレとデートしたいから嘘吐いたんでしょ、絶対!」


 「はいぃぃっ♡ そうなんでっすぅぅ♡ 私のことい~っぱいわかってくださってるんですネ♡ 三五さぁぁんっ♡」


 い~や、一ミリもわかんね~よ!


 だってさあ! だってさあ! メイおねえさんがオレのこと大好きだってのはスゲ~よくわかるじゃん? 小っちゃな頃から仲良くしてきたんだからさあ!


 本当の姉以上に信頼しているし、本当の弟以上に可愛がられているんだよ。

 そんなオレがそんなメイおねえさんと間違うくらいに好感度高いってヤバくねえ!? ワケわかんなくねえ!?


 「海外で暮らしていたメイおねえさんの従姉妹」

 たったそれだけのパーソナルデータしか持ってないんだぞこっちは!

 そんな相手に好かれまくるのがこんなにも恐ろしいとは……! 悪意持って絡まれた方がマシなレベル!


 メイおねえさんっ! オレを抱いてっ! 壊れるくらい強くぅぅ!


 むぎゅうぅぅ~っ!


 「アララ、大丈夫よ~三五ちゃん♪ お姉ちゃんが守ってあげるからね~♪ よ~ちよち♪」


 「あ゛あ゛ぁぁん! 離れてっ! 離れてよぉぉ! メイィィ!」


 「黙りなさい! このストカス (ストーカー + カスの意) 女っ!」


 「ストカスじゃないもんっ! 私は! 私は…………そう、私は羨ましかったの。可愛い弟ちゃん達に愛されているメイのことが、ずっとずっと」


 ええっ!? 何か急に遠い目で語りだしたんだけど!? 怖ぁっ!


 「メイが私の家に遊びに来る度にたくさん弟ちゃん達のお話をしてくれて、スマホでお写真を見せてくれて……いつしか私は三五さんのことが気になるようになっていったんです」


 「ちなみに画像のデータは渡してないし、未来永劫渡すつもりもないから。安心してね」


 「日本の高校に通うことになって、メイの家に居候することになって。メイは日を改めて三五さん達を紹介してくれるって言ってくれたけれど、その前に街でたまたま三五さんを見かけて……!!」


 アンさんの瞳がクワァッ! と見開かれる。



 「その瞬間ビビビ~ッ! てきたんです! これは運命の出逢いだってっ!! 私は一目惚れをしたんですっ!」


 

 勢いよく立ち上がったアンさんは両腕を振り回しながら主張する。

 なんて力強さだ。髪に付いていた葉っぱが全部弾き飛ばされちゃってるぞ。


 「現実には物語と違って筋書きなんて用意されていない! だから私は行動したんです! 三五さんとイチャイチャラブラブする為にッッ!」


 「だからって約束破ったり人を騙したりして良いワケないでしょうが!」


 「私だってホントはそんなことしたくなかった……! でも自分では歯止めが効かなかったの! だって走り出した恋はッッ! 誰にも止められないからッッ!」


 「それがストカスだって言ってんのよ! 低劣ナンパ女!」


 「三五さんっ! 好きですっ! 愛してますっ! 永遠に一緒に居たいですっ! 私と一緒のお墓に入りましょう!?」


 「嫌 だ ッ ッ ! !」 (断固たる決意表明)


 てか言い方ァァ! 「うん」 って言わせる気あんのかよ!?

 もうホントヤダこの人!


 前言撤回するよ! この人とメイおねえさんを間違えるだなんてバカだった! 気付かないオレが悪かった!

 だってメイおねえさんはオレに恋愛感情なんて抱いたりしないもの!

 もっと優しく大きな愛でひ弱なオレを包んでくれるもの!



 「三五ちゃんをアンタなんかに渡すもんですか! 三五ちゃんと結婚するのはこの私よっ!」


 

 「何ですってぇぇ!?」


 「アレ!? 恋愛感情抱いてんのかよ!? オレのこと弟だって思ってんじゃないの!?」


 「あ、私って弟が恋愛対象になるタイプのお姉ちゃんだから」


 「初耳ィィ! + 寝耳に水ゥゥ!」


 「そ~んなこと言っちゃってぇ、三五ちゃんだって別にイヤじゃないクセに♪ だってお姉ちゃんと結婚したら絶対毎日幸せでしょ?」


 「まあ、うん。そりゃ~そうだよね」


 オレにはまだ恋愛ってモンがよくわかんないけど。

 てゆ~か今回の件でより一層わかんなくなったけど。

 それでもメイおねえさんの言う通りなのは間違い無いと思う。



 「んふふふふ♡ じゃあ今日からお姉ちゃんと三五ちゃんは婚約者同士ね♡ 婚約のキスしましょ♡ ん~ちゅっ♡」


 

 右頬に熱~いキッスの感触。


 

 「ん゛ぎゃあ゛あ゛ぁぁ~っ! ワ゛タ゛シ゛の゛メ゛の゛マ゛エ゛でぇぇぇ~ッ! ヨ゛ク゛モ゛! ヨ゛ク゛モ゛ォォ~ッッ!」


 

 アンさんの両目からブワァァ~ッ! と涙が溢れる!

 夕陽に照らされてるから血涙みて~だ!

 怖いってばよ! 身の危険すら感じるってばよ!


 「ん ・ ふ ・ ふ♪ 効いてる効いてる♪ さあトドメよ、三五ちゃん! お姉ちゃんにもキッスして!」


 トドメってアンタ。相変わらず容赦無ぇな。

 自分と同じ顔してる人に対してよくそこまで苛烈になれるもんだ。


 「早く♪ 早く♪ キ~ス♪ キ~ス♪」


 う~ん、正直な話をすると中学生にもなってお姉ちゃんとキスするのって気恥ずかしいな~ってちょっと思ってたりしなかったりして……。


 「ミ゛ギィィィ! ミ゛ギュィィ~! 三五サ゛ァァン……!」

 ギチギチギチ! (歯ぎしり)


 ……たんだけど、うん! 今そんな気持ち吹っ飛んだわ!


 現時点ではアンさんと恋愛するのはおろか、普通に仲良くするのもちょっと厳しいものがある。

 周りが見えなくなってしまっているアンさんにオレの意思をキチンと伝えなくては。


 アンさんに対する抑止力になってくれ……!



 切実な願いを込めながら、オレはメイおねえさんのほっぺにキスをした。



 「ぴぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~っ! ソ゛ン゛ナ゛! ソ゛ン゛ナ゛ァァァ! う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! わ゛あ゛あ゛ぁぁ~っっ!!!」


 世界の終わりかってくらいにショックを受けて泣き崩れるアンさん。


 「ア~ッハッハッハッハァ♪ メイお姉ちゃんの勝っちぃ~♪ 悪女 ・ アンざまぁ! ざっまぁぁ! ざぁこ♪ ざぁ~こ♪ アッハハハハハ♪」


 高笑いしながら死体蹴りするメイおねえさん。

 実はさっきからチラホラ人が集まってきてて、コソコソウワサ話とかもされてるんだけども。全く意にも介してない。

 やっぱりメイおねえさんは強い。強過ぎる。


 

 「さあ三五ちゃん、お姉ちゃんがお家まで送っていってあげる♪ ついでにご両親に婚約のご挨拶も済ませましょ♪」


 「う、うん」


 泣いてる女の人を放っぽらかして帰るのは抵抗があるけど……オレが側に居たらアンさんをいたずらに刺激してしまうだけだろう。

 ここは素直に従うのが吉だ。


 「う゛ぅぅ……婚約なんて……させるワケにはぁ……う゛ぅぅっ!」



 メイおねえさんに手を引っ張られながらバスターミナルへ。

 タイミング良くバスが来たので流れるように乗車。

 後部座席に二人並んで座り、間もなくバスは発車した。


 「いや~、大変な休日だったなぁ~……って、ええ~っ!?」


 何気無く後ろを振り返るとそこには……な、なんと!


 「ぴいいいぃぃぃ~っ!」


 アンさんが全力号泣 & 全力疾走でバスを追い掛けてきているではないか!

 しかもクッソ速ぇぇ! あの人ロングスカートなのに!


 「へ~、意外と根性あるじゃない。どこまでついてこれるか高みの見物といこうじゃない。フラペチーノでも味わいながら、ネ♪ ハイコレ三五ちゃんの分」


 「あ、ありがとう」


 いつの間にこんな物買ってたんだ。

 あ、でも甘くて美味しい。

 疲れた心に染み渡るぜ。


 更にメイおねえさんってばスマホを優雅に操作して音楽まで楽しみ始めた。

 え? 何? オレも聴いてみろって?

 イヤホンを半分こしてもらうと、とある有名な曲が流れてきた。


 『道化師のギャロップ(運動会のかけっこの曲)


 ヤメテあげてよ! 必死で走ってるアンさんがバカみたいじゃん!

 流石に可哀想になってきたわ!

 

 恋に狂ったアンさんも怖いが、本気で怒ったメイおねえさんはもっと怖い。


 オレは決してメイおねえさんには逆らわない。一生敵に回すものか!

 改めて固~く心に誓ったのであった。

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