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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【IF話】 もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら
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あなざ~彩戸すと~り~ ② 二人に分裂!? お姉さん  アンルート

 さあ、楽しい楽しいカラオケTIMEの始まりだぁ!


 一発目はもちろんこの曲。

 演歌界の征夷大将軍こと坂上雲麿(さかのうえのくもまろ)で 『男一匹屋形船』


 ジャララッラ~ン♪ ジャラララァ♪ ジャ~⬆️ ジャ~⬇️ ジャラララァ~ン♪


 「ああ~♪ 三度の飯より喧嘩好きぃ~♪ 箸にも棒にもかからねぇ~♪ オイラの行く道ぁ、獣ぉ道ぃよぉぉ~♪」


 「まさかまさかの選曲!? で、でもハニーなヴォイスと渋いお歌のギャップが堪りません♪ ステキ♪ キャッキャ♪」


 シャンシャンシャンシャン♪


 おおっ! 両手の鳴り物を振り振り、熱のこもった声援を送ってくれている!

 流石はオレのメイおねえさん♪ 間違えた、今は彩戸(さいど)さんって呼ばなきゃね。

 お手伝いさん志望だけあってサービスイイネ♪ ノリノリで歌いきるぜ~♪


 「(かぶ)いて乗ったぁ屋 ・ 形 ・ 船ぇ~♪ 独りにゃ広ぉかぁったぁ~♪」


 ジャッ♪ ジャララッラッ♪ ルワァァァ~ン♪


 「キャ~ッキャ~ッ♡ 三五さぁ~ん♡」


 パチパチパチパチ!


 OH! スタンディングオベーション! サイコ~の気分だっぜぇ!


 「へっへ~! ありがとぉ~う! さあさあ! 次は彩戸さんの番だよ! 美しい歌声を披露しておくれ!」 (ノリがおかしい)


 「えっ? えっと、え~っと……じゃ、じゃあこの曲を……」



 ワクワク。どんな歌を聴かせてくれるのかな?

 そいつは聴いてのお楽しみだぜ。


 彩戸さんはオレ達を喜ばせるために色々な歌をマスターしてるからな。

 流行りの歌からちょっと懐かしい歌まで、とにかくレパートリーが幅広いんだ。


 ポロロン♪ ポロロロン♪ シャラララ~♪


 「One fine day in spring~♪」


 んな!? よ、洋楽ぅぅ!?

 さっきのセリフをそっくり返すぜ! まさか過ぎる選曲だよ!

 

 てっきり 「魔滅(まめつ)(まめ)」 (大人気アニメ) の主題歌 「炎道(えんどう)」 でも歌ってくれるのかと思っていたら、こんなしっとりとした大人の歌を選ぶとは!


 「Let's go to that hill again~♪」


 しっかも当たり前みたいに歌ってるし! マジでカッコ良いんだけど!

 ジャズってヤツ? 普段聴かないから耳慣れないけど、何か新感覚でグッとくる!


 パチパチパチパチパチパチ!


 「めっちゃ透き通った綺麗な声~! 優しいメロディーラインと合わさって癒しのハーモニーが響き渡って……超 ・ 最 ・ 高~! 心が洗われるぜ~!」


 「いやぁそんなぁ♪ えへへ♪」


 「それに洋楽を歌えるなんてスゴい! オレも彩戸さんみたいに歌えるようになりたい! 英語ちょっと苦手だけど!」


 「大丈夫♪ 英語も歌もお姉さんが教えてあげますよ♪ 三五さんならきっとすぐに上手になります♪」


 「うお~! やる気出てきたぁ~! 頑張るぞ~!」


 

 それにしても今日の彩戸さんには驚かされてばっかりだよ。

 劇的イメチェンを筆頭にさぁ……って、ヤベっ! 忘れてた!


 「オレってば新しい髪型と服の感想を言ってなかったね、遅くなってゴメン! どっちもサイッコ~に似合ってるよ!」


 「ふぇぇぇ!? ど、どうしたんですか急にぃ!?」


 ど~したもこ~したも自分で言ったんじゃん。

 お姉ちゃんがオシャレしてたら全身全霊で誉めるのが弟ってモンよ、って。

 だから全身全霊で誉めまくるぜ! (調教済み)


 「超綺麗! なおかつ超可愛い! しかも超清楚! 魅力三点セットのゴージャスお姉さん! 世界一キラキラしてるよっ!」


 「ひゃっ♡ ひゃあぁぁぁ~ん♡ さ、三五さんったらぁぁん♡、そ、そんないっぱい誉められちゃったら、私、私ぃぃ~っ♡」


 一瞬で真っ赤に染まった顔を両手で隠しながら、身体全体でイヤイヤする彩戸さん。

 いつもの完璧クールなイメージとはかけ離れた姿だ。


 何でそんなに照れてるんだろ? お姉ちゃんっ子のオレが彩戸さんを誉めるなんて当たり前のことじゃん?


 だけどChanceだ。

 そ~れ、ここぞとばかりに彩戸さんのおヒザにダイビ~ング♪ 強制ヒザ枕だっぜ~ぃ♪


 「スリスリ♪ んっん~♪ このスカート、良い生地使ってんじゃ~ん♪ 肌触りイイネ~♪」


 「キャ~♡ キャ~ッ♡ お姉さんのスカートにイタズラしちゃダメぇ~っ♡♡」


 「彩戸さん彩戸さん、ポテト食べさせてよ。お手伝いさん (志望) でしょ! 食べるの手伝って! ほら、あ~ん」


 「ふえぇぇ!? えとえとえと……あ、あ~ん♡」


 あ~ん、パクッ、モグモグ。うん、美味ぁ~い♪

 ワッハッハッハ♪ 極楽極楽ぅ~♪

 まっこと苦しゅうないぜよ~♪


 「三五さんったら、そんなに私のおヒザがお気に入りなんですか? クスクス♪ え~い♪ ナデナデしてあげちゃいます♪」


 ナデナデナデナデ。


 あ~めっちゃ気持ち良い。

 いつもながら愛情たっぷりで大満足♪


 

 うむうむ。いつものお姉さん(メイおねえさん)モードで矢継ぎ早にお世話を焼かれるのもGOODだが、初々しいお手伝いさん(彩戸さん)モードに甘えてお世話を焼いてくれとおねだりするのもまたイイネ。


 ご満悦三五くんは彩戸さんの肩を抱きながらデュエットしたり、マッサージしてもらったりと、そりゃ~もうやりたい放題。

 新米お手伝いさんご奉仕カラオケを思う存分楽しんだのだった。


 てゆ~かカラオケ店を出た今も現在進行形で楽しんでる。


 手を繋いでもらって (しかも恋人繋ぎ) 周りに仲良しアピールしながら帰り途を練り歩いているのだ。


 「も、もう、三五さんったらイタズラっ子ちゃんですね♡」


 ま~たまたそんなこと言っちゃって~、嬉しそうな顔してんじゃ~ん♪

 何でも言うこと聞いてくれるしさぁ。

 そりゃあオレもお調子に乗っちゃうよ。


 

 わざとゆっくり歩いていたら、駅前広場に到着する頃には夕方になっていた。


 「綺麗な夕陽だね~。彩戸さんと一緒だから特にそう感じるよ」


 「さ、三五さん……っ!」


 ご機嫌なもんだから舌の調子も絶好調だぜ。

 ハナからシメまで大満足な休日だったな、うんうん。と頷くオレとは対照的に彩戸さんは何やら難しい顔をしている。


 「あ、あのっ! お願いがあるんですっ! ちょっとこっちへ!」


 何だ何だ? 

 繋いだ手を引っ張られて広場の死角、生け垣と樹木の隙間空間へと連れて来られた。

 ここなら内緒話をしても誰にも聞こえないし誰にも見られない。


 「三五さん可愛過ぎますぅぅ! キッスさせてくださいぃぃ!」


 「? 何でワザワザ聞くの? いつも好きな時にキスしてくるじゃん」


 「う゛え゛ぇぇ~!? そ、そんな、三五さんの唇は! ファーストキッスは既にメイのものなのっ!?」


 「いや、ほっぺにだけど」


 「な、な~んだほっぺですかぁ……ってぇ! それでも悔しいぃ! いつでも好きな時にですって!? メイッ! メイィッ! メイイイイィィィ~ッッ!」


 ヤ、ヤベえ! 何か急に自分の名前を叫び出したぞ!?


 今日の彩戸さん……メイおねえさんはやっぱりおかしい!?


 「三五さぁんっ!」


 「は、はいっ!」


 ガッシィッ!


 ヤベえ! 両手で両肩をガッチリ掴まれた!

 なんて力だ。全く身動きがとれない。

 凄く興奮しているのが伝わってくる。

 受け答えには細心の注意を払わなければなるまい。



 「私がしたいのはいつものよりもっとスッゴいヤツです! 恋人同士がするお口とお口がくっつくヤツです!」


 

 「ええっ!? 恋人同士のキス!?」


 「はいっ! ハァッ! ハァッ!」


 メイおねえさんの爆弾発言!

 瞬時に思考回路が焼き切れそうなくらい高速回転。

 脳内会議の始まりだ。



 恋人のキスをする

 ⬇️

 オレとメイおねえさんが恋人に

 ⬇️

 絶対に一生別れない

 ⬇️

 自動的に婚約者に (家族にも周知)

 ⬇️

 絶対的結婚

 ⬇️

 キス一つで人生が設計されたんだが!? 一生の決断をするにはまだ早くない!? 我まだ小学校卒業したてぞ?

 ⬇️

 だがしかしメイおねえさん以上の女性なんて実際この世におらんくない?

 ⬇️

 そしてキスを拒む理由もまた無い

 ⬇️

 第一にメイおねえさんがこんなに望んでるんだぜ? 鼻息まで荒くしちゃってさぁ

 ⬇️

 男らしくキメなきゃならん場面でしょ、ここは



 チャカチャカチャカ、チ~ン!


 導き出された結論は……。


 「…………ん」


 目を閉じてキス待ち姿勢をとることだった。


 一ミリも男らしくね~! 女子かよ!

 恥ずかしい! クソッ、でもこれがオレの精一杯の勇気だから畜生!

 つ~かオレからしたいって言ったワケじゃね~し!

 年上なんだからリードしてよ! (逆ギレ)


 「あぁっ、ありがとうございますぅぅ♡ い、いただきますぅ♡」


 いただきますはね~だろ、と言いたいところだが実にメイおねえさんらしいノリだ。


 ああ、でも本当にキスしちゃうんだ。


 メイおねえさんがオレの肩を掴む指に力を込める。


 目を閉じていてもメイおねえさんの顔が迫ってくるのがハッキリわかった。


 いよいよ唇と唇がくっつく、というゼロコンマ数秒前。


 「待ちなっさぁぁぁ~いっ!」


 ドギャアッッ!!

 

 「ふぎゃああぁぁぁ!」


 ズボォォッ!!


 メイおねえさんの大声が響いたと思ったら、メイおねえさんが何者かに回し蹴りを喰らわされて生け垣に突っ込んだ!?


 「うおおぉぉ~いっ!? メイおねえさんに何すんだ……って、ええっ!? メイおねえさん!?」


 振り返ってみてビックリ!

 メイおねえさんに蹴りをかました人物もまたメイおねえさんだった!

 メイおねえさんが分裂して二人になったぁぁ!?!?



 「ああっ、三五ちゃん! 悪いお姉さんに連れ回されてキスまでされそうになるなんて……怖かったね、怖かったね!」


 ガバッ! ムギュウゥ!


 回し蹴りお姉さんはオレのことを力一杯抱き締めてくれた。


 クンクン、クンクン。

 あっ! いつものメイおねえさんの匂い! オレの大好きな匂いだ!


 それにこの綺麗なサラツヤの黒髪! バチッとキマったパンツルック!

 いつもの見慣れたクールファッションだ!


 間違い無い! この人こそが本物のメイおねえさんだ!



 「あっれえぇぇ!?!? じゃあこっちのお姉さんは一体誰なんだよぉぉ!?」


 オレってば見知らぬお姉さんと一日中カラオケを楽しんでいたってワケ!?

 こ、怖ぇぇ! 並みの都市伝説の28倍怖ぇぇ!


 怖くなったオレはメイおねえさんにギュ~ッとしがみついた。


 「可哀想に……! よしよし、怖かったね、もう大丈夫だからね」


 メイおねえさんは仔犬ちゃんの様に怯えるオレを右腕でより強く抱きながら、左手の人差し指を生け垣から生えたお尻にビシッ! と突き付けてこう言った。


 「この娘、いいえ、この悪女は彩戸 アン! 私の従姉妹よ!」

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