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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【IF話】 もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら
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彩戸すと~り~ ・ メイ視点 ③ 私は脇役の “彩戸さん”  メイルート

※メイ視点です。

 大きな大きなお屋敷の、暗く冷たい片隅で。

 私の大切なお坊っちゃまが泣いている。


 どうして? 何があったの? 何で泣いているの?

 どうして隠れているの? どうしてお姉ちゃんに打ち明けてくれないの? お姉ちゃんにも言えない悩みなの?


 頭の中を疑問符がグルグル巡るばっかりで、どうしたら良いのか判断出来ない。

 ここは声をかけるべき? 相談してくれるまで黙って待つべき?


 血が凍ったみたいに身動き一つとれなくなってしまった。


 肝心な時に狼狽えてばかりの私。 

 更に悪いことにお坊っちゃまの独白を盗み聞きまでしてしまったの。


 

 「メイ姉さんなら三五を幸せにしてくれるよね。でも、でも……! 涙が止まらないよ……。好き……好きだよ、大好きだよ……三五……っ、三五ぉぉ……っ!」



 浮かれてた頭にハンマーで思いっっきり殴られた様な衝撃が走った。


 そっか。そうだったのね。


 お坊っちゃまは三五ちゃんに恋をしている。

 でも男の子に生まれてしまったから、その想いを胸に秘めて圧し殺していたのね……。


 私はお坊っちゃまの気持ちがおかしいだとか、間違ってるだとかは全然思わない。

 むしろ今の今まで気付いてあげられなかったことを恥ずかしく思う。

 

 三五ちゃんだって知れば間違いなく同じ気持ちを抱くハズよ。


 お坊っちゃまもね、バレたら三五ちゃんに引かれちゃう、三人の関係がギクシャクしちゃう、とか思ってひた隠しにしているワケじゃないと思うのよ。きっと、ううん、絶対ね。


 誰にもどうしようも出来ない悩みだから。

 打ち明けても私と三五ちゃんを困らせるだけだから。

 だから誰にも見られない所で一人で静かに泣いて、私達の前では何でもない顔をしている。


 お坊っちゃまは強くて優しい子。


 そんなお坊っちゃま……湖宵ちゃんにしてあげられることはきっとそんなには多くない。悔しいけれど。


 考えて考えて出した結論は……。



 せめて高校三年間は好きな人と二人きりの時間を過ごさせてあげたい、ってこと。


 一生忘れられないキラキラな思い出を一つでも多く作って欲しい。

 三五ちゃんのことを好きになって良かったって心から思って欲しいから。後悔だけはして欲しくないから。


 その為に二人の青春を全力でサポートするわよ。


 弟LOVEの “メイお姉ちゃん” としてじゃなく、クールでデキるお手伝いさん “彩戸(さいど)さん” としてね!


 三五ちゃんには少しの間我慢させる形になっちゃうけど許してね。


 でもホラ、よく考えたら私達ってそんじょそこらのカップルなんかより、ずっと仲が良いじゃない?


 そんな私達が付き合っちゃったら、後はキスするかエッチするしかヤることないと思うのよね。(直球)

 一度しかない青春が性春になっちゃうわ。(直球)

 どうせ大人になったら好きなだけヤれるんだから、お坊っちゃまと仲良く爽やかな学生生活を送ってネ♪ (直球)


 

 私は誓うわ。

 二人が高校を卒業するまでは自分の役割をキチンと全うすることを。


 そう、私は脇役。

 三五ちゃんとお坊っちゃまの青春を彩る引き立て役。

 それが私、彩戸 メイよ!



 心がバッチリ決まった私。

 後は頑張るだけ。

 なんだけど、それはそれとして……。


 「彩戸さん、ただいま~! 今日も遊びに来たよ~!」


 「彩戸さんのお料理マジ最ッ高! この世で一番美っ味ぁ~い♪」


 「今日のお仕事はもう終わり? じゃあさ、名前で呼んでも良い? オレ “メイ” って名前、大好きなんだ!」


  三五ちゃんってばさぁぁ……アンタ、好き好きアピール激し過ぎイィィィ!


 自分の気持ちに素直なのは良いケド、ちょっとは自重して!

 おまけにコレで本人に口説いてる自覚が無いってんだからビックリよ。


 甘えんぼワンちゃんかっつ~の。

 あ゛~も゛~。可愛いアピールすんの止めてよね。手ぇ出せないんだから。

 お姉ちゃん困っちゃう。


 

 この前なんかね? 私のお誕生日パーティーがあったんだけどね?


 三五ちゃんったらプレゼントだって言ってフリッフリのエプロンをくれたのよ。


 「コレお姉ちゃんに着ろってこと? 三五ちゃんの趣味なの? ってか、趣味よね?」


 「オレの好みで選んだのは認めます! でもコレ絶対メイお姉さんに似合うと思うんスよ! 普段のキリッと凛々しいパンツルックにカワイイエプロン! マジ最強(グレイテスト)正義(ジャスティス)!」


 力 説 。(親とかも全員居る中で)


 そこまで言われちゃあ、この私も流石に折れるしかないわ。

 恥ずかしいけど着てあげちゃう。

 ついでに三五ちゃんの好きなお団子ヘアにもしてあげちゃおっと。


 「うっわあぁぁぁ! 世界一カッワイィィ~♡♡ 世界一の美女が世界一可愛いとかマジマジ世界一ステキレディだっぜぇぇ♡♡ 異論があるヤツ出てこいよ! オレがブッ飛ばしてやるよ!」


 シュッシュッ! シュッシュッ!


 身体を左右に振って ∞ の軌道を描きながらシャドーボクシングする三五ちゃん。

 

 えぇ~? そんなに気に入っちゃったのぉ~?

 でもこのカッコ、ちょっとあざとくない? 私のキャラじゃなくない?

 たまになら良いけど毎日着るのはちょっと、ねぇ?


 「世の男共は哀れだよ! メイお姉さん(美の女神)を知らずしてアイドルとかに(うつつ)を抜かしてんだから! 4Kだ? VRだ? へっ! オレなんか肉眼かつ超至近距離で至高の美を堪能出来ちゃうんだぜ!」


 私の周りをグルグル回りながらワケわかんないことをのたまう三五ちゃん。


 わかったわよ、うるさいわね!

 毎日着てあげれば良いんでしょ!


 「ヒャッッホ~ウ♡」


 かくして彩戸さん ver . 2 へとアップデートした私。


 それからというもの、三五ちゃんは毎日毎日ニッコニコ。

 大好きなお姉ちゃんと一緒で幸せ! って口程にものを言っている満面の笑みね。


 でもお坊っちゃまの手前だから涼しい顔してあしらっちゃう。


 「ハイハイ、良い子良い子」


 「ハイハイ、遊んであげるからお勉強も忘れちゃダメよ?」


 お姉ちゃんに夢中な三五ちゃんを子供扱いするなんて酷いって?


 だって三五ちゃんが悪いのよ! 何にも知らずにデレデレ甘えてくるから! 可愛さ余って憎さ百倍とは正にこのこと!

 何度押し倒してやろうか、オトナの恋愛教えてやろうか (私も知らんけど) と思ったことか!


 しっかしモテモテお姉ちゃんムーヴ、メッッッッッチャ気持ちイイわねっ! 優越感ハンパないっ! 承認欲求満たされまくっちゃうぅぅぅ~!


 好きな人に好かれまくるのってこんなに充実した気持ちになるのね。

 マジで甘く見てたわ。


 常にモチベーションMAX! 常に美肌! 常に快眠! おしなべて常にコンディション ALL グリーンよっ♪


 でも良いことばかりじゃないのよね。


 「アラアラ、背が伸びたわね。手もお姉ちゃんより大きい♪ ペタペタペタペタ♪ ぎゅ~っ♪」


 「アラアラ、三五ちゃん疲れちゃったの? お姉ちゃんの膝枕においで♪」


 ついつい三五ちゃんを構い過ぎちゃうのよ。

 可愛くて可愛くてつい。


 自分でも抑えが利かなくてスキンシップが過剰になったり、思わせ振りなことを言って振り回したり……。


 これってハタから見れば、熱烈アピールしてくる年下のオトコノコをかわして焦らしてからかってる 『悪女』 以外の何者でもないわよね。


 わ、我ながら最悪ね……お坊っちゃまにもジト目で無言の抗議をされちゃうしぃ。

 三五ちゃん、お坊っちゃま、マジで許して。


 こんな調子で今のままの関係を維持出来るのかしら?

 それも三年間もよ、三年間も!


 表向きはクールなお手伝いさんですよ~、みたいな顔をしといて、実は内心冷や汗ダラダラな私なのだった。

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