彩戸すと~り~ ⑮ 魔改造した三五さんを見せびらかすお姉さん メイルート
ある日の学校。
「あのさぁ、湖宵」
「ん~? 何、三五?」
ヒソヒソ、ヒソヒソ。
「三五さん、今日もカッコイイ♡」
「ね~、メチャ大人っぽいよね~♡ 近寄ると甘~い香りがしてぇ♡ クラクラしちゃう♡」
「どんな香水使ってんのかな? 髪型もいつ見てもキマってるし、オシャレに対する意識高過ぎん?」
「アダルトだよね~……ってかさぁ、な~んかエッチぃよねぇ~♡」
「「「「キャ~ッ♡♡」」」」
ヒソヒソヒソ、ヒソヒソ♡
「何かオレ、モテてね? 何で?」
「そりゃそうでしょ! メイ姉さんに四六時中魔改造されて、ちょ~ぜつ完璧なワイルド系イケメン♡ になっちゃったんだからさぁ!」
「え~? オレ、そんな変わっちゃいましたぁ? 言うて、それほどでもなくない?」
「クソ煽り乙! 運動も出来て成績もボク (学年トップクラス常連) と変わんないくらいUPしたクセに! おまけに家事までこなしちゃうときた! そんなん女の子達が憧れないワケないでしょ! キ~ッ!」
モチベMAXで修行の日々を送るウチに、オレは 「おねえちゃんがかんがえたさいきょ~のおとうと」 にクラスチェンジしていたみたいだ。
「今ではファンクラブまで出来ちゃって、学校中の女の子達の人気をボクと仲良く半分こ! どうせなら独り占めしちゃえば良かったのにさ! フンだ!」
あらら。焼きもち妬いちゃった。
いや~、しかしいつの間にか湖宵と双璧をなしていたとはね。オレってばやるじゃん。
……と、言いたいところだがオレはメイのチート級バフを積んで一生懸命頑張ってやっと互角なんだ。
あとこの娘達は知らないからね。オレがヒモだってことをさ。 (自虐の暗黒微笑)
それを思うと湖宵の魅力はやっぱり凄まじい。本物だよ。
「オレが女の子だったら湖宵一択だけどね。この学校、カワイイ系はウケが悪いのかな?」
「ハイハイ! 出ましたよちょ~イケメンゼリフ! オトナの魅力でボクなんかメロメロですよと!」
真っ赤な顔でそっぽを向かれてしまった。
機嫌を直してもらうべく優しく頭をナデナデしてみる。
「「「「キャ~ッ♡ リアルBLよぉ~っ♡」」」」
尊い! 尊い! と外野が大盛り上がり。
「ムゥ~ッ! 三五なんてこの娘達に手ぇ出しまくっちゃえば良いんだ! メイ姉さんから浮気許可下りてるんでしょ!?」
ザワワワワッ!
どよめきが走り、クラスメイト達の視線がオレに一点集中!
何てこと言うんだよ! 湖宵ぃ!
「何ソレエッッッロ♡」
「ひゃあぁっ、さ、三五さんってどんな人とお付き合いしてるのぉ!?」
「ちょ、ちょっと怖い……でも、オトナの世界にキョ~ミ津々♡」
「わ、私、ガチでOKでぇぇす♡ お、お、男の人のこと、教えてくださぁぁいっ♡」
ズラァ~ッ。
一列に並んでんじゃね~!
だ~か~ら~さぁ! 知らないんだって、この娘達はさぁ。
恋人同士の秘密のアレってちょ~激烈にすっっっごいんだぜ?
遊びでヤるようなことじゃね~よ。
そもそも論であ~んなコトやこ~んなコトなんかサれちゃったらピ~ピ~泣いちゃうんじゃね~の? こんなお尻の小っちゃなコ達はさぁ。ええ~?
ジロジロジロジロ。
「あっあ~ッ♡ み、見られてるぅ♡ 上から下まで舐め回すように見られてるゥゥ~ッ♡」
「き、きっと私達、頭の中でハダカにされてるんだワッ♡」
「恥ずかしいぃぃ~ッ♡」
「イヤアァァァァン♡ あっ♡ ……パタリ♡」
「三五のエッチエッチエッチ~ッ!」
ホラ見ろ、全然ダメじゃん。
少~しエッチな目で見てやっただけでパタパタ倒れちゃってるし。
どうやって浮気すりゃ良いんだよってんだ。
「三五きゅんっ♡ ウチはダメじゃないわン♡ 年中無休でOKよ~ンッッ♡」
「誰なんだよテメ~は! 地平線の彼方へキエロ!」
「エロモテ大明神さま……! どうか、どうか秘訣を! モテの秘訣を教えてくださいっキイィ~ィィゥェァ~ッ!!」
「オ、オレも! オレも知りたいッス!」
「視線でオンナをオトすエロオーラ! 是非とも我が物に! 何とぞご教授を!」
「三五さん!」 「三五さんっ!」
「すがり付くな童貞チンパンジー! あとクラスメイトなのにオレをさん付けで呼ぶのヤメロ!」
弟子入り志望の男子共に群がられるオレ! 崇め奉られ過ぎて逆に友達いなくなってる!
「ああ~ん、もう! メイ姉さんはまだ!? このままだとお昼ご飯抜きになっちゃうんですけど!?」
実は今は昼休み。
何故か今日はメイがお弁当を作ってくれなかった。
その代わりにもっと凄いランチをお届けするから、と言われて待っているところなのだ。
ガラララ~ッ!
お、ウワサをすれば……。
「三五ちゃま、お坊っちゃま、お待たせ♪ お姉ちゃんイーツのご到着よ♪」
右手にクロッシュをかぶせたトレイを持ったメイが華麗に登場。
いや、今はエプロン姿だから彩戸さんって呼ばなきゃね。
「遅~い! お腹ペコペコだよ!」
「まあまあ、湖宵。わざわざ届けに来てくれたんだから。ありがとう、彩戸さん。何を作ってきてくれたの?」
「フフ~ン♪ 見てのお楽しみ♪ それではご開帳~♪ パカッとな♪」
メイが机にトレイを置いてクロッシュを取った。
「本格マルゲリータピッツァで~す♪」
「「うわ~! ピザだぁ~!」」
学校のお昼休みに熱々のピザが食べられるとかマジィ!? 凄いサプライズだ!
「メイってば絶対この前のお弁当サプライズに対抗してるでしょ! ホンット負けず嫌いだなぁ!」
「フッフッフ♪ お姉ちゃんの勝~ち♪ でもダメよ、三五ちゃま。お仕事中にメイ♡ だなんて。公私のメリハリはつけなきゃね」
「メリハリついてる人のセリフじゃなくない!? なにさ! いつの間にか三五のこと、三五ちゃま♡ なんて呼んじゃってさぁ! ムキ~ッ!」
ワイワイ賑やかランチタイムとシャレ込むオレ達。
そんなオレ達三人の周りをグル~ッと取り囲むクラスメイト達。
何か注目されているぞ。何で? 昼ご飯食べなくていいの?
モグモグ。
「こ、この人がウワサの 「メイお姉さん」 なのか!」
「メッチャ美人! メッチャスタイル良い!」
「ウ゛ギ~ッ! 羨ましいギイ゛ィ~ッ!」
「モデルさんみた~い♪」
「フリフリエプロン可愛いっ♪ 三五さんのシュミなのねっ!」
「じ、自分好みに染めちゃってるんだ、こんな綺麗なお姉さんを」
「オトナな女性とオトナな関係だなんて! もしかして、こ、こ、今夜も……!?」
「「「「キャ~ッ♡ なんかもう、なんかもうキャアアァ~ッ♡♡」」」」
君達、生々しい話するの止めてくれない? 今、メシ食ってるんだからさぁ。モグモグモグ。
「この状況を意にも介さずピザ食ってるよこの人……」
「これが大人の余裕?」
「なんて美味そうなピザなんだ……」
「チーズがのび~ってしてる!」
「私も食べたい……ゴクリ」
「三五ちゃまってば人気者ね♪ ……ンフフフ♪」
彩戸さんの含み笑い。
何か嫌な予感が……と思った次の瞬間、彩戸さんはババッとエプロンを脱いだ。
唐突にお仕事モード終了!? メイって呼ぶチャンス! 見逃すワケにはいかないぜ~♪ などと、喜んでいたのも束の間。
「見なさい、小娘ちゃん達♪ 何もかもお姉ちゃん好みにカスタマイズされた三五ちゃま♪ その輝きをねっ!」
「えっ!? そ、それってお姉さまが三五さんを育てたと、そういうことですか!?」
「逆光源氏計画!?」
「そうよ! 三五ちゃまはな~んでも言うこと聞いてくれるし、お姉ちゃんの買ってあげたお洋服も全部大事に着てくれるの♪ 羨ましいでしょ♪」
「え~っ!? 何でもってぇ!?」
「羨ましいぃぃ!」
「三五さん、大人のお姉さんに貢がれてんの!?」
ヤベェな。雲行きが怪しくなってきた。
呑気にピザ食ってる場合じゃない。そう思って立ち上がったところ、メイにぎゅっと抱き締められた。
「小娘ちゃん達♪ 三五ちゃまに可愛がってもらいたかったらガンガン誘惑しちゃいなさ~い♡ お姉ちゃんが許します!」
「「「「キャアアァ~ッ♡ はいっ♡ わかりました、お姉さまぁぁ~っ♡」」」」
平和な学園生活に大波乱を呼ぶ爆弾発言!
なんちゅ~許可を出してんだ!
「待て~い! オレが愛するのはメイと湖宵のみ! 誘惑なんぞ無駄無駄無駄だァ!」
「「「「キャ~ッ♡」」」」
「ボ、ボクも入ってんのぉ!?」
「ンッフフ♪ 無理しちゃって♪ イイのよ、いくら浮気しても怒んないから♪」
「オレが浮気なんかするワケないだろ!」
「あれ!? でもボクのことも愛してるんだよね!?」
メイめ、わかってて女子達を煽ったな!
そのニヤニヤ笑いが何よりの証拠だよ!
お仕置きだ! オレからもぎゅ~っと強く抱き締め返してやるっ!
「アッハ♪ 三五ちゃまってば皆に見せつけたいの? カ~ワイイ♪」
「「「「キャアァ~ッッ♡」」」」
恋人になろうがお嫁さんになろうがお構いなしにオレをからかいまくるメイ。
それにしたって 「浮気して良い」 は無いだろ!
今に見てろよ。一生愛して尽くして純愛を貫いてやるからなっ!
「ねえちょっと三五! ボクもついでに抱っこされてるんですけど! こ、これって浮気とは違うの!? ンアァァ~ッ♡ 頭がおかしくなるゥ~ッ♡♡」