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第17話 高波 三五  やらかしBOY

 面白い露店を探して、あちこち歩いて回るオレとこよい。


 ん? 何だこの立て看板? 『昔の遊び対決』?


 そこは露店というよりは小さなスペースを使ったミニイベント会場だった。


 ベーゴマや普通の大きいコマ。メンコにカルタ。おはじき、お手玉etc.

 古き良き時代から連綿と受け継がれてきた遊びを体験できる楽しそうなコーナーだ。


 「昔の遊びでオヤジと勝負! 勝てばソフトドリンク無料チケットプレゼント!」


 おっ! 賞品も出るのか。これはやるしかないね。


 「よーし、オレはベーゴマで勝負だ!」

 「きゃ~三五さんガンバッテ!」


 こよいの応援で元気100倍! ハリきってGO!


 フフン、オレ、ベーゴマ得意なんだよね。

まずヒモに結び目をキレイに付けて丁寧にベーゴマに巻いていく。ベーゴマを地面に対して平行に構えれば準備完了。


 バトルフィールドは布を張ったポリバケツだ。

 簡素にも程があるが、この布のたわみがベーゴマの動きを見ごたえ良くしてくれる。


 オレは台の上にベーゴマをポイッと放って、シュッとヒモを引く。

 するとベーゴマは台の上に一回ポインと跳ねた後、キュルルルンと元気に回転してくれる。


 どーよ。上手いモンでしょう?


 「フンッ!」


 オレの一拍後くらいにオヤジが力強くベーゴマをShoot!


 何と! オヤジのベーゴマはまるで大蛇の様にフィールド上を力強く這う!

 

 やがてオレのベーゴマにエグい角度で激突ぅ!

 オヤジのベーゴマに下からカチ上げられたオレのベーゴマは、いとも簡単にぽーんと台の外に弾き出されてしまった!


 「フン……」


 その程度か。

 みたいなツラで見てくるよね~! オヤジィ~!


 「くっそ~っ! もう一回! もう一回勝負だ!」

 「よかろう、お相手致す」


 頭に血が昇ったオレはオヤジにリベンジマッチを挑む。

 この単純すぎる性格がオレのホンットウに悪い所なんだよなぁ……。


 高波 三五くん? あなた、もの凄っっく大切なこと、忘れてやしませんか?


 「あはははは……」


 乾いた笑いを浮かべるしかないこよい。


 そりゃあそうだよ! デートの相方がベーゴマに夢中になってんだから! 呆れるしかないよ!

 怒ってくれてもいいのに、こよいは優しいから気を遣ってオレの事をそっとしておいてくれる。

 

 あああ、本当にオレってヤツは。


 「困った彼氏さんね。放っておいてオバちゃんとおはじきで遊びましょう?」


 「か、彼氏さん……♡ は、はいっ。わたし、消しゴムおはじき得意なんですっ。負けませんよっ」


 こよいを放ったらかしにしてしまっていたオレの代わりにオバちゃんが、いや、オバ様がこよいに声を掛けて下さっていた。

 ううう、(かたじけ)ない。誠に忝ない。


 「わぁ、キレイなガラスのおはじき♪ スイカの絵が描かれてる♪ こっちには金魚ちゃん♪」

 「見ているだけでも楽しいでしょう? お嬢さんはいくつ取れるかしら?」


 女性陣は和気あいあいと、楽しく雅におはじき遊びに興じている。


 「うおおっ! オヤジさんのベーゴマ強力過ぎ! どうやったらそんなパワフルに回せるんだ!?」

 「フッ、オレのベーゴマにはちと手が加えられているのさ」


 一方、オヤジさんにコテンパンに負かされまくったオレはすっかりオヤジさんに憧れて、教えを乞うていた。

 オレはベーゴマの投げる時のコツや、ベーゴマのカスタマイズ方法を目を輝かせながら聞いていた。


 そして、ベーゴマをヤスリでゴリゴリ削っていた時にやっと正気に戻ったのだ。

 

 オレの大バカヤロオォ~ッ! 

 今デート中だろうがアァ~ッ! 大事な大事なこよいの事を、放っぽらかしてんじゃねェェーーッ!

 ってゆ~か、人生を賭けた告白をしようって大一番を目の前にしときながら、普通に遊び呆けてんじゃねェ~ッ!


 「あら三五さん、見て見て。キレイなおはじきを分けていただいちゃったの……」

 「ごめんなさいっ! こよいっ!」


 オレは腰を90度折って頭を下げ、こよいに全力で謝罪する。


 「ど、どうしたの、三五さん?」

 「デート中だというのに、ベーゴマに現をぬかしてました! 大バカなオレをお好きな方法で裁いて下さい!」


 自分で言っといて何だが、救い様の無さすぎる罪状だ。

 最低でもビンタ十発の刑か、こよいの怒りによってはベーゴマで指の骨を粉砕の刑だな。

 こよい裁判長様からの御沙汰をオレは頭を下げたままの姿勢で待つ。


 「あ、頭を上げてっ。ね? ね? ほら、わたしもおはじきしたり、お手玉したりして遊んでたから。ね? だから気にしないで?」


 や、優しすぎる。10割悪いオレを一言も責めないとは。天使みたいな慈愛の精神だ。

 でもオレはこんなに優しい女の子を、ないがしろにしてしまったんだ……。


 ううう、申し訳が無さすぎて居たたまれない。

 いっそのこと、バカなオレを思い切り引っぱたいて欲しい。


 こよいに愛想を尽かされたらどうしよう。

 どうかオレの事を嫌いにならないで。

 こよいいぃぃ~っ!


 その時のオレは切羽詰まった、相当おかしな顔をしていたんだろう。


 オレの顔を見たこよいが 「くすっ」 と笑った。


 その表情はいかにも仕方が無いなぁ~と言いたげな、呆れと優しさが一緒になった顔だった。

 それでいて、何故かそこはかとなく嬉しそう?


 こよいはニッコリと微笑みつつオレの鼻に指をチョンと当てて、パチッとウインクを一つした。


 「これからはわたしの事を見つめてくれなきゃ、ダ ・ メ ・ だ ・ ゾ☆」


 ウワァァァ~ッ! カワイイィィ~ッ! だゾ☆ って! だゾ☆ ってこよい~!


 んああぁ~! そのセリフは一体何のつもりなのさ、こよいいぃ~っ! 女神? それとも妖精(フェアリィ)?


 愛くるしすぎるぅ~っ! ときめきMAXなんですけどぉ~っ! 


 「ソフトドリンクチケット二枚GETしましたよ♪ そろそろ何か食べませんか?」


 うわぁぁ。こよいってば、オレの為に二回もオバちゃんとの勝負に勝ったんだ。

 オレなんかボロ負けの上、勝負に夢中になってたっていうのに……。


 「ううう、ごめんね、こよい。せめて食べ物はオレに奢らせてね?」


 お詫びの印にこよい姫様に誠心誠意、真心を込めてご奉仕しよう。

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