彩戸すと~り~ ① 憧れのお姉さん メイルート
※もしもQ極TSカプセルが誕生しなかったら。
※もしも彩戸 メイがメインヒロインだったら。
そんなもしもの世界線のお話です。
やあ! オレの名前は高波 三五!
極々一般的な高校二年生さ!
何よりも一番好きなのは幼馴染みの家に遊びに行くこと。
オレの幼馴染みはオールマイティーに何でも出来る完璧王子様系美少年だけど、それを全く鼻にかけない上に面白くてとっても良いヤツなんだぜ。好きさ! 大好きさ!
「湖宵~、今日も遊びに来ちゃったぜ!」
「いらっしゃい三五~♪ ホームシアターで映画観よ~よ♪」
そのホームシアターとやらはなんと湖宵の自室に備え付けられているんだぜ。
湖宵のお家 ・ 繊月家は地元の名士で、お手伝いさんまでいるちょ~セレブな家なのだ。
え? 湖宵の家がお金持ちだから入り浸っているんだろって?
おいお~い、三五さんを見くびってもらっちゃあ困るぜぇ?
オレのお目当てはセレブなお家じゃなく、そこに住む湖宵……と、そこで働くお手伝いさんさ!
「あら三五ちゃん、いらっしゃい♪ ゆっくりしていってね♪」
「メ、メイお姉さぁ~ん! おっ邪魔してま~す!」
こちらがいつもオレを優しく出迎えてくれる世界一美人なお手伝いさんこと、彩戸 メイお姉さん。
ああっ! 今日も本当に美しい!
キリッとした目元がクール!
濡れ羽色のストレートロングヘアをお団子でまとめてるのがオトナっぽくてイイネ!
オレとあまり変わらないくらいに背が高くって、スーパーモデルや女優なんかメじゃないくらいに均整のとれたプロポーションは正に生ける芸術! 女神降臨!
「それなのにフリフリレースのエプロンなんてしちゃってるギャップがサイコォォ~♡ 超絶たまらないぜぇぇ♡」
「いやいや、コレはアンタが私のお誕生日にプレゼントしてくれたヤツでしょ~が」
そうでぇぇす! 犯人はオレでぇぇす!
メイお姉さんは実用性を重視する性格だから、お仕事の時も機能的でビシッとした飾らない服装をしているのだ。
でもさぁ、もしもさぁ、その上に可愛いエプロンなんか着けてたらさぁ! 超ヤバヤバたまんねぇ~♡ って思って魔が差して買っちゃったんだよね。衝動的に。お小遣い貯めて。(計画的犯行じゃね~か)
贈った後に多分シュミじゃないよな~って反省したんだけど、なんと愛用してくれちゃってんの! メイお姉さんってば! ホントちょ~優しいよね!
オレと湖宵はメイお姉さんと昔っから家族ぐるみの付き合いをしていて、ずっとずっと可愛がってもらってきたのだぁ!
「オレってば最高の幸せ者さ! メイお姉さんに優しくしてもらえて!」
「あのね~、三五ちゃん。お姉ちゃん、今仕事中だから。 「メイお姉さん」 じゃなくて 「彩戸さん」 って呼びなさいな」
「うえぇぇ~!? そんなの嫌だよぉぉ! 名前で呼びたいよぉぉ!」
「ダ~メ♪ ケジメは大事よ。お仕事が終わるまで我慢なさい♪ お姉ちゃんとの約束よ♪」
つ~か自分も自分のこと 「お姉ちゃん」 って言ってんじゃん!? ど~ゆ~こと!? なんかおかしくねぇ!? ケジメついてなくねぇ!?
「んもぉぉ! 二人でイチャイチャイチャイチャしてないでよぉ! ボクも混ぜろぉぉ! んあぁぁ~っ!」
いけねぇ! 構ってチャンの湖宵がグズりだした!
「ゴメンて湖宵! ホ、ホラ、映画観るんだよね! 湖宵の好きなの観ようね! ねっ!」
「うううぅん! うううぅん!」
「アッハハハ♪ それじゃ三五ちゃん、ごゆっくり~♪ 後で美味しい手作りおやつを持ってってあげるからね~♪」
アハハじゃないよメ、彩戸さぁん! こんな状態の湖宵を放って……って、手作りおやつとな!?
「やったぜぇ! メイお姉さんの手作りぃぃ! 大好物だっぜぇぇ! ホラホラ湖宵! ヘソ曲げてる場合じゃないぜ! よ~しよしよしよし!」
「ううぅん! うう~ん!」
気合いを入れて湖宵を宥めること約十分。
仲直りしたオレ達はふっかふかソファーに並んで座る。
湖宵´s choice 映画鑑賞会の始まりだ。
今日観るタイトルは『ビューティ ・ ブロンド』
ジャンルはラブコメディ。
簡単にまとめるとフランスに住む大学生の青年がキャンパスのマドンナにアホみたいにアプローチしまくる、という内容だ。
「う~ん。この映画、三五には退屈じゃない? 変えようか?」
「そんな事ないよ? 面白いから続き観ようよ」
確かにこの映画はオシャレ~な少女マンガみたいなテイストがあって、一般男子学生向きではないかもね。
でもホームシアターで観る映画は超ド迫力で、統一感のある美しいフランスの街並みをただ眺めているだけでも心が躍る。身も蓋もないことを言うようだけど。
内容自体もマジで面白い。
主人公がゴージャスなブロンド美人のヒロインを前にすると舞い上がってワタワタしちゃうところとかが特に。
ヒロインの何気ない一言に一喜一憂しちゃう姿にはミョ~にシンパシーを感じちゃうんだよな。何でだろう?
結構真剣に映画にのめり込むこと数十分。
「お坊っちゃま~、三五ちゃ~ん、おやつよ~」
「「イエ~イ♪ 待ってました~♪」」
遂にやって来ましたおやつTIME! しかも彩戸さんの手作り♪ 楽しみ過ぎるぅぅ♪
「今日はねぇ、シンプルにクッキーを焼いてみました♪」
「「へ~……って、こ、これはぁぁ~っ!??」」
目の前のソファーテーブルに置かれたクッキー皿を見て、オレと湖宵はビックリ仰天!
いや、確かにメニューそのものはシンプルさ。
だが、クッキー一つ一つに施されたデコレーションが尋常じゃねぇ!
「カワイイ~ッ♪ 絵が描いてある~っ♪ これ三五じゃあ~ん♪」
「湖宵のもあるよ! それにメイお、彩戸さんのも! デフォルメされててもCooool & Beautyyyy♪」
そう! これらのクッキーにはオレ、湖宵、彩戸さんの二頭身チビキャライラストがカラフルアイシングでペイントされているのだっ!
更にその上にアラザン、スプリンクル、キャンディ-などでキラキラ加工!
「「ちょ~豪華! 凄い凄い!」」
パシャパシャ! パシャパシャ!
オレと湖宵は大喜びでスマホ片手に色々な角度からスペシャルチビキャラクッキーを激写! 激写!
表情やポーズが微妙に違うイラストを一つ一つ愛でながらワイワイ大盛り上がり。
さあて、一頻り目で楽しんだところで一つ…………食べられるかぁぁ~っ! もったいなさ過ぎるぅ~っ! クオリティが高過ぎんだよぉぉぉ~っ!
特にチビメイクッキーは畏れ多過ぎてムリ! 二頭身と言えど至高の美の化身だから!
かと言ってチビ湖宵クッキーもねぇ~。
なんかドヤ顔してたり小動物みたいにプルプル震えてたりと、可愛らしさがここぞとばかりに強調されているんだよね。
彩戸さん目線の湖宵だからかな。湖宵愛がめっちゃ伝わってきて食べちゃうのが申し訳ない。
じゃあ消去法でチビ三五クッキーか。
彩戸さんがクッキーにオレの絵を描いてくれたってシチュはもの凄く心トキメクものがあるが、この中ではまだしも食べやすい部類だ。まだしもね。
「てなワケで一つ……」
「ダメっ! チビ三五クッキーは全部ボクの!」
うおぉぉ~い! 湖宵ィィ! それじゃあもう一つたりとも食えねぇだろうがよ! 折角のおやつTIMEなのによォォ!
「三五ちゃんはチビお姉ちゃんクッキーを食べなさいな♪ ホラ、お口あ~んして♪」
うっわあぁぁ! メイお姉さんにあ~んしてもらえるぅぅ!? 予想外のラッキィィ~ッ♡
しかし! チビメイクッキーに歯を立てることなどオレには出来ね~っ!
オ、オ、オレはどうすれば良いんだぁ~っ!?