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第15話 繊月 こよい 初手 ・ 型抜き

 余裕を持って、お昼過ぎにこよい邸に到着。


 「うわぁぁぁぁ! す、すすすステキィィーッ! 三五さんの浴衣姿ぁぁっ! 男らしくてイイーッ♡」


 そう言って褒めてくれるこよいも可憐で上品な浴衣姿。


 白地に藍色を基調にした藤の花柄で大人っぽくて美しい。


 帯の方は対照的にグラデーションがかった茜色が明るい印象の兵児帯だ。

 ふわふわの、まるでお花が咲いているかの様な結び方をされており愛くるしくてたまらない。


 髪にはオレがプレゼントした三日月型のバレッタが大事そうに留められており嬉しくなる。


 「キレイでカワイイ! 正にこよいの為の浴衣~って感じだよ! 帯がヒラヒラしてて天女様みたい!」


 「いいでしょ~♪ これ金魚ちゃん結び? みたいな結び方なんですよ~♪ 華やかでしょう? 凄いでしょう?」


 「お嬢ちゃま、ソレあんまり触っちゃダメよ~。折角キレイに結んだんだから」


 おお、彩戸(さいど)さんがこよいの着付けをしてくれたのか。Good job!


 ああもう、本当に反則だよ。こんなに綺麗なのに誰よりも可愛らしいなんて。

 プロレスラーが武装してリングに上がる様なモンじゃん。(最悪比喩)


 「ああ、こよいみたいな女の子の事をお姫様っていうんだろうなぁ……」


 深~いため息と共に実感のこもったセリフが口から出る。また一つ世界の謎が解けてしまった。


 「きゃああぁ~っ! お姫さまってぇ~! 三五さんがわたしの事をお姫さまってぇぇ~! ねぇさいどさぁぁぁぁんっ!」


 「痛い! 痛い! お嬢ちゃま叩かないで!」


 テンションアゲ ↑ アゲ ↑ になったこよいがバッシンバッシン彩戸さんの背中を叩く。

 ハシャぐこよいもカワイイ。


 リボンの鼻緒のカラコロ下駄も手に持っている巾着も、何もかもがカワイイ。


 そもそもこよいは何を着ても可愛くて、いつだって服の持つ魅力を120%引き出してしまう。

 

 キュートな衣装を着れば、愛らしく。

 落ち着いた和装を身に纏えば、お淑やかに。


 衣装によって千差万別の魅力を見せてくれるこよいとの逢瀬は、いつだって新鮮な驚きとときめきに満ちている。


 「気を付けてね、お嬢ちゃま。三五ちゃん、お嬢ちゃまの事よろしくね」


 「子供じゃないから平気よっ」


 「任せて下さい、彩戸さん」


 彩戸さんに見送られ、いざ決戦の夏祭りへ!


 などと意気込んではみたものの。

 実は未だ、こよいに告白する為の言葉が全然見つかっていなかったりする。


 こよいへの想いが溢れに溢れ、考えれば考える程に新しく伝えたい言葉(気持ち)が浮かんできてしまうのだ。

 言葉の厳選をするどころか、逆に増えてしまっては仕方が無い。


 気持ちを全て伝えようとすれば数時間くらい延々とスピーチせざるを得ない。

 夏祭りが終わっちゃうよ。


 ああ、オレの特別な気持ちを伝える為の言葉は一体どこに!?

 こんなんで今日は大丈夫かなぁ!?

 緊張してきたわー!


 うわあぁー! 

 今日オレ一世一代の愛の告白をするんだなぁー!

 実感湧いてきたぁー!


 「さ、三五さん、どうしたの? 足止まってる……ますよ?」


 こよいも緊張してきている様だ。


 今更だが告白するなんて予告をしてしまったのは、良かったのか悪かったのか?


 こよいの方からもOKするという返答予告を頂戴しているが逆にそれが引っ込みをつかなくさせ、絶対に失敗出来ないというプレッシャーをオレとこよいの双方に与えている。


 でもせっかくの夏祭りなのにソワソワと緊張したまま花火の時間まで過ごすのはいかがなものか?


 よし! ここは気を取り直して、こよいと楽しく遊んで夏祭りを満喫しよう!

 もちろん告白のセリフを考えるのも忘れずに!


 会場が近づくにつれ祭り囃子が聞こえてくる。

 うーん、ワクワクしてくるなあ。テンション上げて行こう!


 さぁ~やって参りました。毎年恒例の地元 ・ 夏祭り会場。


 ゲームや食べ物の露店がズラ~ッと並び、パフォーマーによる手品、大道芸、ミニライブなんかが楽しめるブースもある。


 夜には盆踊りもあるのを忘れちゃいけない。


 熱すぎるイベントだぁ! ド派手に楽しむぜぇ!


 「よーし、こよい! パーッと遊ぼうか! まずは何がしたい?」


 「えっ? えーっと、えーっとぉぉ、型抜き!」

 

 「全然パーッとしてないけどイイネ! 行こう!」

 

 加えてド派手でもないけれども、でもイイのだ。

 だってこよいは型抜きが大好きだから。


 型抜きというのはラムネの様なデンプン質の四角くて平べったい “型抜き菓子” というお菓子を使ったゲームだ。

 型抜き菓子には色々な絵が描かれていて、その絵に沿って型抜き菓子をつまようじ等でキレイに切り抜く事が出来れば賞品がもらえるのだ。


 こよいは毎年チャレンジして毎年賞品をGETしている。


 「ジジイー! 来たぜー! 型抜き二回頼まぁ!」

 「……あいよ」


 無愛想な型抜き屋のジジイが数種類の絵柄が描かれた型抜き菓子を用意してくれる。


 ジジイはその中の一つ 「不死鳥(フェニックス)」 の型抜き菓子をオレに寄越して……って待て。


 「ジジイ! それ難易度高くね!? 選ばせてよ!」


 「オメェさんはもう子供じゃあンめェ。そいつは大人用よ」


 「くうぅ! だ、だが賞品は魅力的……こ、この挑戦受けたぁ!」


 不死鳥(フェニックス)の賞品は祭り限定で使える2000円分の金券。


 絶対GETしてジジイをギャフンと言わせてやる!


 「ふ、不死鳥(フェニックス)は難しそう。うう~ん、わたしにできるかなぁ?」

 

 「お嬢ちゃんはこれなんてどうだい?」


 「ウサギの親子……うーん、曲線が多くて難しそうだけど面白そう! これにします!」


 意外! ジジイ女の子に優しい!


 オレ達二人の挑戦が始まった。

 ここでサクッとクリアーして賞品をGET。

 軍資金(お小遣い)を増やすというのが例年の流れなのだが果たして……?


 …………………………。


 「ジジイー! コレ難しすぎるーっ!」

 「気合いで何とかしねェ」


 不死鳥(フェニックス)は無いだろジジイ! 翼の部分が細々しているし、ほぼほぼ曲線じゃねーかコレ!


 「ジジイー! コレさ、ペロペロして溶かしちゃダメか!?」

 「……いいけどよ。女連れの男のやる事か?」


 大丈夫。型抜き中のこよいは凄く集中しているから。


 「………………」 カリカリカリカリ。



 10分後。


 「ジジイー! 出来たぞー!」

 「……ダメだな。ホラ見ねェ。羽根が二つ三つ無くなっちまってらあな」


 ジジイー! 

 原画を見せてミスを指摘してくるぅ~! ジジイ!

 べらんめェ口調のクセに細かすぎるぞジジイ!


 「……出来たぁ~! ウサギさん、キレイに型抜き出来ました!」


 「おっ、こいつはお見事だ。はいよ、賞品の1000円チケットだ。お祭り楽しんでおいで」


 「ありがとう! おじいちゃん!」


 ううーん、もの凄く釈然としない。


 でもまあ、こよいがニコニコ笑顔で楽しそうだから良し!


 次行こう、次!

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