裏80話 モテモテおじやタイム からの 三五育成計画立案! 高三 二学期
コンコン、カチャッ。
「三五~、おじや出来たわよ~」
おおっと。ちょうどオレ達が落ち着いた頃合いで母さんとアンお姉さん、イコお姉さんが部屋に入ってきた。
どうにもタイミングが良すぎる。
もしかしてドアの前で聞き耳を立ててた?
「あんだけ大騒ぎしてたら嫌でも話が耳に入ってくるっつ~の!」
「ア、アハハ。ごめんなさい。入るに入れなくて」
「し、失礼しました。ちなみに紫夜はお店に、みりは家事をしに家に帰りましたよ」
そっか~、泣きながら思いの丈をブチ撒けてたのを聞かれちゃってたか~。
まあ、ここに居る人達はもう全員身内みたいなモンだから別に良いか。
今はそれよりもおじやだよ、おじや!
仲直りして安心したら急にお腹空いてきたわ~。
「食べさせてあげるね、三五ちゃま♪ フ~フ~。はい、あ~ん♡」
「あ~ん、パクッ。モグモグモグ……んん~♪ うっまぁぁ~♪」
フワフワ卵たっぷりの優しい味が very good♪
染みるわ~。コレよ、コレ。オレの身体はコレを求めてたんだよ。
メイお姉さんのフ~フ~温度調節も完璧♪
もっともっと! もっとちょうだい!
「メイおねぇちゃんズルい! 次はボクの番! フ~フ~フ~♡ はい、あぁ~ん♡」
おっ、次は湖宵が食べさせてくれるのか。
「あ~ん。モグモグ。んまいね~♪ ありがと湖宵、嬉しかったよ」
満足の笑みを浮かべれば湖宵もニッコリ。
でも今度はアンお姉さんとイコお姉さんがやきもき顔に。
「あぁぁんっ! わ、私にも三五さんにあ~んさせて下さい! フゥ~♡ フゥ~♡ フゥゥゥゥ♡ はい、あ~ん♡」
「あ~ん。んまいんまい。アンお姉さんありがとう」
「三五さん三五さん♡ このイコのも♡ 三五さん専用バスガイド (!?) たる、このイコのもお召し上がり下さいませ♡ フ~♡ フ~♡ フ~♡ フゥゥ♡ はい、あ~ん♡」
「あ~ん。うん、うまい。イコお姉さんありがとう」
いやあ、皆に優しくしてもらえて嬉しいね。
「あぁ♡ 私がフ~フ~したおじやを三五さんがあんなに嬉しそうに♡ 幸せ~♡」
「ですね、会長♡ もうサイコ~の一言に尽きますね♡」
「むぅぅ……ねぇ、三五! 三五は誰にあ~んしてもらったおじやが一番美味しかった!? もちろんボクだよねっ? ねっ?」
「ん? そりゃメイお姉さん一択でしょ」
「「えぇ~!? 何でぇ~!?」」
「ちょっとぉぉ! ボク、お嫁さんなんですけどぉぉ!?」
だって君ら、フ~フ~し過ぎなんですわ。
贅沢を言わせてもらうとするなれば。
「ウフフフ♡ 三五ちゃまってば違いがわかってるぅ♪ 好き好きっ♡ 残りはぜ~んぶお姉ちゃんが食べさせてあげる♪ フ~フ~♡ あ~ん♡」
「あ~ん。ん~、やっぱうんまぁ~♪」
「「「ああぁ~ん!」」」
「ウチの子ヤバいわ。こ~んな美人さん達にチヤホヤされてんのに平然とし過ぎでしょ……」
モグモグ。だからオレにとっては皆、もう身内なんだって。ゴックン。
いやあ、美味しかった。
大好きな湖宵やメイお姉さん達に食べさせてもらえたしゴージャスハッピーなおじやタイムだったね。
ふわぁ~。お腹いっぱいになったら眠くなってきた。
このまま目を閉じたらきっと良い眠りに就けそう……。
トトトトトッ!
……だと思ったけどそうはいかなそうだ。
デジャブを感じるこの展開はおそらく……。
バタンッ!
「おにぃちゃみゃ~っ!」
「コラ~ッ! そ~にゃっ!」
「待ちなさぁ~い!」
やっぱりね。かしまし妹トリオのお目覚めだ。
ピョイ~ンと飛び付いてくるそ~にゃちゃんを両手でキャッチして湖宵にパス。
「そ~にゃちゃん、ダメだよ~。お風邪が伝染っちゃうからね。はい、ぎゅう~っ」
「あぁん、お嬢ちゃみゃ離して……にゃっ!」
小っちゃいそ~にゃちゃんは湖宵の抱っこから逃げられずにジタバタしている。
「お、お兄ちゃんごめんなさい」
「私達、看病するどころか寝ちゃって……」
シュ~ンとして今にも泣いちゃいそうなマリたんとカナミん。
でもオレが手を優しく握ってあげるとパァァ~ッと花が咲いたような笑顔を見せてくれる。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんはマリたんとカナミんが来てくれたお陰でとっても元気が出たからね」
「「お、お兄ちゃんっ♡」」
「ウチの子本当ヤバい! FC メンバー全員のツボ完全攻略して手玉に取ってる!」
人聞き悪いこと言わないで欲しいな、母さん。
オレは皆さんがお見舞いに来てくれたことを本当に感謝しているんだから。
もちろん心配させてしまったことも心の底から反省している。
もう二度と同じ過ちを繰り返さない。
その為にお見舞いに来てくれた皆にお願いしたいことがある。
「ねえ、皆。オレさ、誰もが認める王子様になりたかったんだ。湖宵と、皆と一緒に居ても恥ずかしくないように。だから今回みたいに迷走しちゃったんだ」
「さ、三五……」
「いや。なりたかった、じゃない。今でも絶対になりたいんだ。その気持ちは少しも揺らいでない」
「三五ちゃま……」
「「三五さん……」」
一人でやり抜かなければならないと意固地になったから、オレは間違った。
そう、つまり導き出される結論は……!
「皆の理想の王子様になるには……皆にオレをカスタマイズしてもらえば良い! だからどんな風に変わって欲しいかご要望を挙げてよ!」
「「「「「「んんん?」」」」」」
「うん。わかったの……にゃっ。」
あれ? そ~にゃちゃんだけは快く同意してくれたけど、他の皆は首を傾げちゃってるぞ?
「この子はま~たおかしなこと言って。完全にいつもの調子に戻ったわね」
母さん、おかしなこととは失礼な! 真剣に考えて出した結論なのに!
「じゃ、じゃあランニングとかお勉強とかする時は必ずボクと一緒にすること! また三五が迷っちゃったらメッ! ってするからね」
さっすが湖宵、以心伝心。そうそう、オレが言いたいのはそういうことよ。
そんな感じで方針とか決めていってよ!
オレ、言われた通りに頑張るから!
「つまり私達の手で好きに三五ちゃまを育成しろってワケね。ふ~ん、面白そうじゃない♪ ワイルド & セクシィ路線なんてど~お?」
「もう、メイったら! 三五さんはおもちゃじゃないのよ! こ、ここはフォーマルな装いがお似合いの紳士路線にするべきよ♡ マナー完璧 ・ エレガントな立ち居振舞いの三五さん♡ しゅてきぃぃ~♡」
「ボイストレーニングをするべきです! 三五さん、とっても良いお声ですから! あぁ♡ またカラオケをご一緒した~い♡」
「ど~ぶつさん撫で撫でスキルを極めて欲しいの……にゃ。いっぱいのど~ぶつさんと仲良しのおにぃちゃみゃ……好きっ♡ にゃっ♡」
「お兄ちゃんは既に至高の存在だよっ♡ で、でも欲を言わせてもらえば、も、もっと攻めたグッズも作らせて欲しい……かな~って♡」
「え、絵のモデルもお願いっ♡ お受験が終わってからで良いからぁ♡」
う~ん、貴重なご意見がポンポン出てくるね。
具体案も一杯で参考になるなあ。目からウロコって感じ。
♪~♪~♪~♪
ん? スマホにメッセージがきた。
『ヘアスタイルのセットは私にお任せ下さいね♡ 紫夜』
『お花が似合う男の人って素敵ですよね♡ みり』
この場に居ないお二人からもご要望が!
何という抜け目の無さ!
そしてFCの情報共有能力の高さが凄い!
「三五ちゃまにエッチぃフレグランスやアクセつけたい♪」
「スーツ着てもらいたい♡」
「甘~く囁かれたぁい♡」
「身体中を撫で回してほし~の……にゃっ♡」
「「もう一回スリスリして欲し~い♡」」
三五さん王子化計画は踊る踊る。
てゆ~か今度はお姉さん達の方が迷走してない?
「ちょっとぉぉぉ~! もはやただの欲望じゃんっ! 三五はこのボク……わ ・ た ・ し! の為に頑張ってくれるんだからね!」
「意義あり! お姉ちゃんの為よ!」
「そ~にゃの為なのっ! にゃっ!」
「「「「FCの皆の為♡ かと♡」」」」
「ムッキ~ッ! こ~なったら勝負だ! 全員まとめてやっつけてやるぅぅ!」
お冠の湖宵には悪いけど、皆がオレの為にワイワイ意見を出し合う光景を見ているとニコニコしてしまう。
オレの焦りはつまるところ自信の無さから、現時点の自分を好きになれない ・ 肯定出来ないということから端を発している。
でも今のオレをこよなく愛してくれる人達がこんなに居てくれたんだ。感動で胸が熱い。
皆が居ればオレはもう大丈夫!
「皆さんありがとう! 今出たご要望は一つ残らず片っ端から応えさせて頂きますんで!」
「「「「「「キャ~♡」」」」」」
「騙されないで、三五! 私欲混じりの案はちゃんと弾いて!」
「ハイハイ、三五はそろそろお休みの時間よ」
おっと。もちろん母さんの言うこともキチンと聞くよ。
「ハ~イ。それじゃあお休みなさ~い」
ベッドに肩まで潜るとまぶたがトロ~ンと落ちてくる。
あぁ~急に強烈な眠気が。
これもうグッスリ眠っちゃうヤツだ……ふわぁぁ~。
「三五ちゃま、お休み」
「「「「「お大事に♡」」」」」
皆の気配が遠ざかっていく。
部屋が途端に静まり、オレの意識も深い深い眠りに落ちて……。
「さ ・ ん ・ ご♪」
おや。ほとんど寝てるオレの耳元に湖宵の囁き声が届いた。
「お休みなさい……ちゅっ♡」
ほっぺたに嬉しい感触が。
湖宵ってばお姉さん達を出し抜いてお休みのキスをしに戻ってきてくれたんだ。
お陰で幸せな眠りに就けそう。
ありがとう、湖宵。
目が覚めて元気になったら。湖宵の為に頑張るからね。