裏71話 (エロい) 三年生を送る会 高二 三学期
Q極TSして華やかな美少女に変身☆した恋さんはたちまちクラスの人気者に。
「湖宵っチ♪ 小海っチ達にカラオケ誘ってもらっちゃったの♪ 湖宵っチも一緒に行こうヨンヨン♪」
「うん♪ 今日は女の子だけで楽しんじゃおう♪」
恋さんは同じQ極TS女子である湖宵と一瞬で意気投合した上、小海、ユイ、だいずちゃんとも秒で打ち解けて新生仲良しグループを結成。
湖宵も身近に同じ境遇の仲間が出来て毎日楽しそう。
「(ちょっと待っててね♪ 遊びに行く前に三五にお休みのキスをしてあげなきゃ♪)」
「(送り迎えもさせてあげたら? 頼りにされると男の子は喜ぶのヨンヨン♪)」
「(あら~♪ いいかも~♪)」
どうやらオレには内緒の赤裸々☆恋愛トークも楽しんでいるみたいだしね。
歳上の男性とお付き合いしている恋さんの話からはとても刺激を受けているとのこと。
更にスパイス☆ガール恋さんは湖宵にだけじゃなく、オレやクラスの皆の日常にもピリリとした刺激を加えて味わい深いものへと変えてくれた。
お陰で日々が過ぎ行くのが早いこと早いこと。
あっという間に三学期が終わってしまった。
本日は三年生を送る会。
まず講堂にて一 ・ 二年生が卒業を明日に控える三年生に祝辞を述べ花束を贈呈し、歌やダンスなどのパフォーマンスを行い賑々しく送別する。
その後は各自解散して、それぞれお世話になった先輩達に自由に挨拶をして回れる時間が設けられている。
オレと湖宵も二年生からの途中入部とはいえ陸上部の先輩達には大変お世話になった。
でも実は先輩達を送る会って部活中に既にもうやっちゃってるんだよね。
春休みにも部室に顔出すわ~とも言っていたから、今日でお別れってワケでもないし。
だもんで今日のところは……。
「「先輩、ご卒業おめでとうございま~す」」
「「「「お~、高波、繊月、ありがとな~」」」」
まあこんな感じの軽~いやり取りで終わりますわな。
そう、お世話になった先輩達への挨拶はこれでね……。
これにて本日の日程はすべて終了、お疲れ様~と言って帰宅したいところだが、まだだ。
お世話になっていない先輩への挨拶がまだ終わっていない。
いやいや、お世話になっていないのなら挨拶する必要は無いだろって?
おっしゃる通りなんだが、そう言い切って無視して帰るには余りにも個人的に関わり過ぎている先輩が若干一名いる。
当校 (が誇らない) エロさNo.1生徒 ・ エロ姉ぇパイセンだ。
重ねて言うが、オレはエロ姉ぇには正しい意味でも夜のアレ的な意味でも一回もお世話にはなっていない。
だからと言ってこんな晴れの日に挨拶も無しに別れる、なんていうのは非人情にも程があるってもんだ。
むしろここであえてキッチリ挨拶をして綺麗にお別れをすることで、後で思い返した時に 「そう言えばあんな面白い先輩がいたね」 ってな具合に良い思い出に変わるかもしれない。
早速、湖宵と一緒にエロ姉ぇに会いに行こう。
どこに居るかな~? あ、中庭だ!
中庭でエロ姉ぇがちぃちゃんとお話している。
何だかいつもと違って落ち着いた雰囲気だ。
違和感があるな……あぁ! 制服だ! 珍しいことに制服がちゃんと長袖で、しかも着崩してもいないからだ!
だからちゃんとして見えるんだ!
はっはぁ~、いよいよ卒業ともなると流石のエロ姉ぇも神妙になるんだねぇ。
中庭に居る他の生徒達も明るく話しているけれど、どこか寂しげだし……うん! この空気、この流れならあのエロ姉ぇにすらキチンとクールに卒業のお祝いを言えそうだ。
「あらン? 三五きゅん、湖宵ちゅわン。ウチに会いに来てくれたのねン」
「先輩、この度はご卒業おめで……」
ジャガジャガドゥイ~ン♪ ドゥワ♪ ドゥワ♪ ドゥワ♪ ドゥワ♪
突然、ちぃちゃんのスマホからこの場にそぐわないBGMが!
ちょっとちょっと! 何で今このタイミングでそんなハードな曲を流してんのさ!
「Whoooopeeee!」
突然、エロ姉ぇが叫び声を上げてクロスさせた両手を天に掲げ出した!
するとエロ姉ぇの制服が縫い目に沿ってピピッと裂けてパラパラッと解体されて、地面にパサパサッと落ちて積み重なっていくではないか!
この女、ま~た制服を改造していやがったな!
制服が脱げたエロ姉ぇはたちまち下着姿に……はならずに紫のビキニ水着姿になっていた。
つってもコレ、セーフにはならないだろ! 完ッ璧にアウトだろ!
だってココ中庭だよ! 衆人環視の真っ只中だよ! おまけに祝いの場でもあるんだよ!
「AHHAAAAN♡」
ドゥン♪ ドゥドゥ ・ ドゥドゥンッ♪
凍りついた周囲を置き去りにし、エロ姉ぇはBGMに合わせて腰を左右に振り始める。
クネクネクネクネ。
ズンチキ♪ ズンチキ♪ ズンチキ♪ ズンチキ♪
「Fu♪ Fu♪ Fu♪ Fu♪ Foo♪」
曲調が変わると今度はリンボーダンスの要領で上体を大きく反らしながら徐々に開脚しつつ、ズッ、ズッ、ズッ、ズッとこちらに向かって迫ってくる。
そして上半身が地面と平行になったタイミングでBridge。
そこからクリンと反転して腕立て伏せの体勢に移行する。
タン ・ タン ・ タタ~ン♪ タララ~ラララ~ン♪ ウワァ~オ♡ (SE)
曲調が更に変わり尻をフリフリ突き上げる形で地面から上昇 ⬆ してくるエロ姉ぇ。
「Fuuuuun♡ Oh……Yheaaaah……♡」
滑らかな動きで立ち上がって、その流れのまま尻を振りだす。
タララン♪ タララ~ラ♪ チキチキドゥン♪ ズン! ズン! ズンズン! ズゥゥン!
「wow♪ wow wow♪ wow wow wow wow♪」
緩 → 急にシフトチェンジするリズムに合わせて、エロ姉ぇのお尻がダンサブルに弾ける。
このプリケツは正にLocomotionだ。
ズッチ♪ ズッチ♪ ズッチ♪ ズッチ♪
「Oh♪ Aaahn♪ Yeah yeaah♪」
お次は木の葉が舞い散る様に螺旋を描きながら身体を下降 ⬇️ させていく。
地面にペタンと手をつき女豹のポーズに。
緩~く握った拳を顔の横にやって、招き猫みたいに上下に振った後に唇をペロッと舐めて一言。
「ニャオォ~ン♪」
五月蝿いわ阿呆。
その後もエロ姉ぇのダンスは続く。
Hカップのバストやキュキュッと括れたウエスト、ボリューミーで弾力のあるヒップをこれでもかとばかりに強調し、見せ付けてくるのだ。
オレは……オレは。金縛りにかかってしまって、瞬きをすることさえ許されないままにソレを見続けることしか出来なかった。
何故か? 目の前の光景があんまりにもワケがわからねぇからだよ!
高波 三五という存在の全能力をフル稼働して何とかかんとか理解しようと必死で努めているんだ!
「動く」 という機能をシャットダウンして 「考える」 ことのみに全身全霊を傾けた。
それでも尚。それでも尚! 一ミリも理解出来ねぇ!
何なの? 何の目的があるの? 何でオレは家族でも恋人でもない女の水着姿を延々と見せ付けられなければならないの? 痴女なの? 露出抂なの? その割には決意に満ちた表情をしているけど、今どんな気持ちなの? 乳バルンバルン揺れてっけど、ソレ痛くないの? 明日卒業式でしょ? こんなことしてて良いの? てゆ~かこの学び舎とも今日でお別れなんでしょ? 過ぎ去りし日々を懐かしんだりしないの? その様な一般的な感傷とは無縁の存在なの? 普段何を考えて生きているの? 今の自分の姿に疑問を抱かないの? 後ろに立っているちぃちゃんも同様だよ? 何で君は姉を止めるどころか万全のバックアップをしているの? さっきからスマホをポチポチして曲を変えたり音量を調節したりしちゃってるけど、何? DJなの? DJちぃちゃん IN DA HOUSE なの?
理解するどころか疑問符が後から後から沸いて出てきて止め処がない。
まるでスコールだ。前が見えないよ。
オレに出来るのは心を無にして、ただ雨に打たれるだけ……。
「ハァンッ、ハァンッ、ハァァァンッ……」
おや。いつの間にやらダンスが終わっていたみたいだ。
エロ姉ぇは地面に足を崩して座り込んでいる。
振り乱れた髪の毛が汗ばんだ肌にピッタリくっついちゃっているぞ。
どれだけ踊っていたんだろうね? (無関心)
「何でっ……! 何でなのぉンッ……!」
「へ?」
「何でなのよぉぉォォ~ン! うわぁぁァァ~ン!」
何か泣き出しちゃったんだけど、感想が出てこね~わ。
完全なる 「無」 だわ。
「何で三五きゅんはウチのダンスを見て興奮しないのよォォォ~ン!??」
こ う ふ ん ?
ああ、興奮させたかったの?
あのエロアホダンスを見せてオレを?
うわ~、ようやく一つだけ理解出来た。
ちょっと嬉しい。人間らしい感情が戻ってきた。
うんうん、なるほどね。
だから際どい水着を着て際どいダンスを踊っていたんだね。
そうすることでオレをドキドキさせて、つまり興奮させたかったんだ~。そっか~。
「するワケねぇだろこのタコ! 男っつ~生きモンをバカにするんじゃねぇ!」
こんな異次元シチュでハッスルする男がこの世に存在するワケないだろ! いい加減にしろ!
「そんなことないわぁン! 周りをよ~く見てごらんなさィン!」
周りだぁ~? 周りなんか見渡してもオレと同じように無の表情になった湖宵や女子生徒しか……あれ? 男子は?
男子生徒はどこ行った?
「「「「うぅ♡ う~ん♡」」」」
はっ! じ、地面!
鼻血を垂らしながら 「く」 の字に折れ曲がった姿勢で地面にブッ倒れていやがった!
前屈みになり過ぎて立っていられなくなったのか!
うわぁ~バカだぁ~。男ってバカだぁ~。
「ウキィィィィ♡ ウキイィィィィィィ♡」
はっ! て、天!
天から PANSY の声が!
木に登ったんだ! 前屈みになった状態で!
「キィィ~ッ♡ キィィィィィ♡」
興奮のあまり木から木に飛び移ったり、枝を両手で掴んでバッサバッサと揺さぶって木の葉を落としたりしている。
危ねえだろうがよ。
でも今はアイツに構ってやれるような精神的余裕は無い。
放っとこう。
「わぁぁァン! わぁぁァン!」
「あ、あの~、だいじょぶ? エロ姉ぇ?」
ワンワン泣き喚くエロ姉ぇを見るに見かねた湖宵が優しく声をかけた。
「や、止めてよォン! ライバルからの慰めなんてェン! 余計惨めになるじゃないン!」
ライバルて。
違うよ? 湖宵はアンタとは住んでる次元が違うよ?
エロ姉ぇが中心点oだと仮定した場合、xyzのどの座標軸の延長線上をどれだけ捜したとしても、そこに湖宵は居ないよ?
「つ~か、何でオレをドキドキさせたかったの? 何も良いこと無いだろ、別に」
「勝ちたかったのよぉォン! ウチのオンナの魅力を見せ付けてェン! 男ゴコロを奮いたたせてェン! 一夜で良いから貴方とラブラブしたかったのぉォン!」
相変わらずロクでもない企みだな。
「勝ちたいとかさぁ……」
「何よォン! それじゃあ、もしもQ極TSしたこよいちゅわンがウチと同じ水着着てエッチぃダンス踊ってたらって想像してみてよォン!」
「ななななな、何イィィィィッ!? バババババ、バカ言えぇぇっ♡ こここここ、こよいが♡ こよいがそんな不埒なマネするもんかぁぁっ♡」
だがもしも♡ もしもだってぇぇ♡
こよいが、オレの大好きなこよいが♡
あの夏に着ていたよりもずっと際どいこ~んなビキニを着たらだってぇぇ♡
こんな紫色のビキニだよ!? あの時は清楚な純白だったから何とか理性を保てたものの……こんな大人っぽい色のビキニなんか着たらこよいの美肌の艶かしさが際立っちゃうじゃん!
しかも、しかもただ立っているだけでも脳髄が焼き切れそうな程ヤバいのに、あまつさえセクシーダンスをご披露だとぉ!?
スレンダーで美術品の様な肢体が艶かしくクネクネ乱れ、真っ白な肌が薄桃色に染まって汗ばんで……♡
激しいリズムに乗ったバストが弾けてプルプル形を変えて……♡
てゆ~か目の前でお尻をあんなにフリフリされるのはマジのマジでヤッバぁぁ♡ 吹き出る鼻血の推進力で宇宙空間に飛んでっちゃう~っ♡ ボンボヤージュゥゥ♡ (自分で言うのか)
アッ! アッ! ヤバい! 興奮し過ぎて……!
ダメだあぁぁぁ!
「ア~ッ! アッアァァ~ッ!」
ムクムクムクッ!
「アアアァァァ~ンッ!? 三五きゅんのチンボラソ火山 (アンデス山脈) がぁぁ~ンッッ!?」
大興奮するオレの醜態を見てガックリと打ちひしがれるエロ姉ぇ。
「ウ゛ギャア゛ア゛ァァ~ッ!」
「イ゛ヤ゛ア゛ア゛ァァ~ッ!」
「エロ魔神様の御宝刀がお猛りにぃぃ~っ!」
「お゛が゛あ゛ざ あ゛あ゛~んッ!」
「ユ゛ル゛シ゛テ゛ク゛タ゛サ゛イ゛ィィィ!」
ズダダダダダダダダダダダ~~ッッ!
中庭に居た一般女子生徒達が我先にと一目散に逃げ出した。
この蜘蛛の子を散らすかの如き逃げっぷりよ。
どんだけ畏れられてるんだ、オレは。
別に何もしね~よ! ……などと前屈みになりながら言ったところで、我ながら説得力が無いな。
「もおぉぉっ♡ 三五ったらぁ♡ ボクはそんなはしたない子じゃないからぁっ♡ バカバカバカァ♡」
ビシビシバシバシズババシバシバシ!
痛い痛い! 身体中を平手でメチャクチャ叩かれてる!
ゴメンなさい湖宵っ! 許して下さい!
でも何でそんなに嬉しそうに笑ってんの!?
「ウワアァァ~ンッ! 負けたぁァ~ンッ! オンナの魅力でぇェンッ! 生まれて初めて完膚なきまでに負けたのぉぉォ~ンッ! ワアアァァァ~ンッ!」
「お、お姉様っ!」
ちぃちゃんが地面に座ってエロ姉ぇを抱き締める。
土でスカートが汚れることなんて気にもとめずに。
「ひっく、グスグス、い、いつからかわかんないけど、ウ、ウチ、三五きゅんをずっと目で追うようになって、いつでも構って欲しくって……」
涙で濡れた瞳でキッとオレの瞳を真っ直ぐ射貫き、彼女は言った。
「好きなのン! ウチは、ウチは三五きゅんが好きなのぉォン! なのに、なのに負けちゃった……ワァン! ウワアァ~ンッ!」
オレのことが好き。
その言葉を聞いて初めて胸に苦みのようなモノが走った。
だけどこのオレが彼女にしてあげられることは何も無い。
いや、むしろ何もせず、何も言わずにこの場を立ち去るべきだ。
オレが好きなのは湖宵であってエロ姉ぇではないと既に態度で表明している訳だから。その上で優しい言葉なんかかけようものなら生殺しになってしまう。
そう、わかっているのだが……。
それでも、それでもオレには彼女に送りたい言葉が一つあった。
湖宵に負けたと言って泣く彼女にたった一つだけ。
間違っているんじゃないか? 自分が楽になりたいだけのただの偽善なんじゃないか? 彼女の心を長く占有してしまうことになるんじゃないか?
少しの間躊躇ったが、やっぱりどうしても言わずにはいられなかった。
「エロ姉ぇ、オレはエロ姉ぇや他の人と比べて一番だから湖宵を選んだんじゃないよ。ただ湖宵が好きになったから、だから湖宵が一番になったんだよ」
「ひっ、ひっく、さ、さんごきゅぅぅ~ンッ! う、う、うわぁァ~ンッ!」
きっとエロ姉ぇにも彼女を一番に想ってくれる人が現れる。
どうかその人と幸せになって欲しい。
心からそう願って言葉を送らせてもらった。
「お姉様、頑張りマシたね。ホ~ラ、よしよ~し」
これ以上は本当に蛇足だ。
ちぃちゃんに無言で会釈して湖宵と二人、足早にこの場から去る。
後は姉思いのちぃちゃんに任せておけば、きっと大丈夫だ。
恋愛は勝ち負けじゃない。
お互いを好き合い、お互いのことを一番に想い合う。
それは時に勝ち負けよりもシンプルに、時に勝ち負けよりも複雑怪奇に千変万化する。
人と人が想い合い結ばれることは決して凡庸なことじゃない。
奇跡のように尊い出来事なのだから。
「ねえ、三五。ボクのことを好きになってくれてありがとう」
二人きりの静かな帰り道。
湖宵はポツリとそう溢した。
「こちらこそ。オレのことを好きになってくれてありがとう、湖宵」
噛み締めるようにそう応えた。
湖宵との絆はオレの何より大切な宝物。
その為に今日、エロ姉ぇを傷つけもした。
だからこそ、オレはその分もっともっと湖宵に相応しい男になって、湖宵を大切にしていかなくてはならない。
オレは改めて固く固く誓ったのだった。