裏69話 コ-イン☆矢の如し ☆ミ☆ミ☆ミ 高二 三学期
修学旅行が終わってから今日に至るまで、時間が移ろうのがやたら早く感じた。
オレが感じたその無常感に共感して頂きたいので、今までに起きたイベントについてサラサラ~ッと語らせてもらおう。
● 湖宵とお泊まり
修学旅行終了後にメイお姉さんの車で繊月家に向かい、そのまま一泊させてもらった。
「ウフフ♪ いっぱいお土産買ってきてくれてありがと~♪ お礼にお姉ちゃん特製肉じゃが、気合い入れて作ったから食べてね♪ 食後にクリームパルフェもあるわよ♪」
「「OH♪ 肉じゃが♪ パルフェ~♪」」
旅行中に美味しいものを沢山食べてきたけれど、やっぱりメイお姉さんが作る料理が最高だ。
なんたってメイお姉さんはオレ達の好みを完璧に把握しているからね。
肉じゃがには湖宵の好きな椎茸がゴロッと入ってたし、クリームパルフェとやらにはオレの好きな柿の果肉が入っていて超 ・ 超 ・ 超 ・ 美味しかった。
お腹も心も満たされたら眠くなってしまったので、この日はお土産話もそこそこにお風呂に入ってすぐに床に就いた。
翌日は旅の疲れを癒す為の完全休息日。
この日は逆に湖宵がオレの家にお泊まりしに来た。
特筆すべき出来事も起こらず、二人でまったり過ごす。
そのまま何も無く一日が終わると思いきや、夕方にアンお姉さん率いるオレ FC の皆さん達が訪ねてきてくれた。
ちょうど良いや。
お土産を持って帰ってもらおう。
「あああぁぁ~♡ 三五さんが私達の為に買ってきて下さったお土産♡ 恐悦至極ですぅぅ♡」
「しかも直々の手渡し♡」
「しかも三五さまのご実家で♡」
「素敵な宝物が♡ また増えちゃいましたね♡ 会長♪」
「何なのこの子達!? 何でこんなに好感度高いの!? ウチの息子ったら、こよちゃんという人がありながらこんなに女の子引っかけて!」
「それだけじゃないんですよお義母さま! 三五ってば旅先でもQ極TSバスガイドさんにモテちゃって!」
「んまあぁっ!」
「「「「新しいお仲間~♪」」」」
フフフ。更に言えばまだフルメンバーじゃないんだぜ、母さん。
ネコメイド喫茶の名物三人娘もFC会員なのだぁぁ! (若干ヤケ)
彼女達は今日、お仕事があるから来られなかったんだそうな。
あっ! そうだ!
明日の打ち上げを 「CCC」 でやるのはどうかな?
ネコさん達にお土産も渡せるし一石二鳥じゃん。
後で皆に提案してみようっと。
● 修学旅行の打ち上げ
「「「いらっしゃいみゃせ~♪ CCCへようこそ~♪」」」
てなワケで打ち上げ会場のネコメイドCafe ・ CCCへやって来た。
「貴方のお店選びって凄いわね、三五」
「わぁ~、私こんなお店初めて」
「でもちょっと楽しそうですね♪」
小海達は物珍しそうに店内を見渡しているが、特に不満は無さそうで何よりだ。
楽しく打ち上げが出来そうだね。
「あっ♪ そ~にゃのお兄ちゃみゃ♪ 会いたかったの……にゃ♡」
とてとてと駆け寄ってきたそ~にゃちゃんがオレの背中にぴょい~んとジャンプして乗っかり、小さな身体に見合わない物凄い力でぎゅ~っとしがみついてくる。
こうなるともうどうしようもない。
今日一日はずっとそ~にゃちゃんをオンブしていよう。
「ウッキィ~ッ!? メイド喫茶ではキャストと過度なコミニュケーションを取るのは厳禁……そんな不文律すらエロ神は打ち破るのキィィ!? 狂いそうっキィィィ~!」
「ププッ♪ このご主人さみゃ、めっちゃオモロいのみゃ♪ ウキキ~ッて鳴くみゃ♪」
「ほらほら~、バナナでほっぺたペチペチにゃ♪ 食べさして欲しかったらもっと鳴くのにゃっ♪」
「ウッキィ~♡ ウキィ♡ ウキッキキィィ~♡」
「「みゃっはははははは♪」」
初めてのお店で騒ぐ PANSY もPANSYだが、初見のお客をソッコーでイジリ倒すみ~にゃさんとし~にゃさんもヤバい。
「じょ、女子の密度が高いよこの空間!」
「ささ、三五先生! 何かアドヴァイスを!」
「大丈夫だ CT 01 · 02。お店の人は皆優しいから落ち着いて話しな」
「CT01 · 02!? オタク心をくすぐるアダ名にゃ!」
「でも些かクール過ぎるにゃ!」
初めこそ多少面喰らっていたようだが、オレと湖宵の楽しい仲間達はすぐにCCCのゆるゆるにゃんこ空気に順応した。
「ゲーム大会するみゃ~っ! 今日のお題はニャロスペ (NYAROU LEGEND SPECIAL) みゃ! 我こそはと思う者はかかってくると良いみゃっ!」
「フフフ、ニャロスペなら私に任せなさい♪」
「小海さんてそんな昔の格ゲーとかやる人だったの!?」
「オレもやりて~!」
「ウキキキキ~ッ!」
「このお猿ちゃんスゴいにゃ♪ カフェラテにもえもえな女の子を描いてくれるにゃ♪」
「私のにも描いてにゃ~♪」
「ボクもネコメイドさんになっちゃった♪ どう? だいずちゃん、似合う?」
「キャアァ~ッ♡ 湖宵チャンさま、その格好この世の誰よりもお似合いでっすうぅぅぅ♡」
何か一部お客と店員が逆転してんだけど。
あと、オレの背中で微睡んでいるだけのそ~にゃちゃんにお給料は発生するんだろうか?
「ねぇお兄ちゃみゃぁ、お背中ゆらゆらして欲しいの……にゃ♪」
「そ、それじゃあ揺らすよ~、ほ~ら、ゆ~らゆら~」
「ふわぁぁ……揺りかごよりず~っときもちぃの……にゃ♡」
「あらこの子、そ~にゃちゃんっていうの? か~わいい♡ お姉ちゃんのケーキ分けてあげるね♪ はい、あ~ん♪」
「あ~ん……美味しいの……にゃ♪ お姉ちゃみゃ、ありがとなの……にゃ♪」
「可愛い~♪ いい子いい子~♪」
ユイはそ~にゃちゃんをいたくお気に召したようだ。
延々とナデナデしている。
こんなに嬉しそうなユイは初めてだ。
これがそ~にゃちゃん流、ひいてはCCC流のおもてなしなんだね。
奥が深いなあ。
まあでも……。
「生八ツ橋美味しいにゃ~♪ カスタードクリームがシナモンと合うにゃ♪」
「このアメちゃん、コロコロしてて舐め応えあるのにゃ♪ あっ、いらっしゃいみゃせ~♪」
ネコさん達が (勤務中にも関わらず) お土産のお菓子を開けて食べちゃったり……。
「く~く~、すやすや……にゃ」
オレの背中のそ~にゃちゃんが遂におねんねしちゃったりと、ゆるふわハプニングにもアホほど見舞われたけどもね。
それでもゲーム大会の後はカラオケ大会、ネコちゃんディナーショーと、数々のイベントを催して楽しませてくれるのがCCCだ。
そんな素敵なお店で修学旅行の思い出を大いに語り合って更に更に親交を深めあったオレ達なのであった。
「てゆ~か、三五にベッタリ甘えて背中でねんねしてるだけのお仕事とか羨まし過ぎるんですけど! そんならボクもこのお店で働きたい!」
● ジビエ焼き肉パーティー
オレの祖父ちゃんは猟師だ。
オレが喜ぶからと、毎年鹿肉や猪肉を沢山送ってくれる。
だけど小さな問題がここで一つ。
オレの方は確かに大喜びでモリモリ食べているのだが、父さんが年齢のせいかあまり肉々しい料理が受け付けなくなったとか言ってあまり食べてくれなくなったので、最近は消費しきるのに一苦労しているのだ。
そんなワケで狩猟肉に興味津々な放送部部長 · 音無君やPANSY、CT01 · 02を誘って高波家で焼き肉パーティーをする運びとなったのだ。
あ、もちろん湖宵はワザワザ誘うまでもなくデフォルトで参加している。
「ふふふ~♪ 男の子同士の集まりにも堂々と参加出来ちゃうのって、数少ない役得だよね~♪」
女の子の心を持っていながら男の子の身体で日々を送らなければならないやるせなさ。
それが少しでも晴れてささやかな楽しみを見出だせたのなら何よりだ。
「本日はお招きありがとうございます、お母様。こちら、つまらないものですがどうぞ」
こ、好青年過ぎるぞ音無君!
当然の様に手土産持参とは、何てそつの無い男だ!
「あ、あら~♪ 悪いわぁ~♪ だってお祖父ちゃんたら考え無しにい~っぱいお肉を送ってくるから困ってたんだもの♪ だから今日は遠慮なんかしないでお腹いっぱい食べていってね♪」
「はい。お言葉に甘えさせて頂きます」
「あぁ、しくったっキィ! ごちそうになるのに手土産を忘れてくるなんて! 代わりと言ってはなんですがオレらはお手伝いします! なっ、01 · 02!」
「「おうよ!」」
「あらあら♪ 皆さんとっても好青年なのねぇ♪ 三五のお友達とは思えないくらい♪」
ど~ゆ~ことだよ、母さん!
と、小一時間くらい問い詰めたいところだがオレは腹が減った。
今は肉だ肉だぁ!
皆で鉄板を囲んでドンドン肉を焼いていく。
「うわ。狩猟肉って野性味が溢れているんだね、高波クン。赤身がギラギラしているよ」
「猪の脂もスッゲェよ! これ超コッテリなんじゃね~の!?」
「味は保証するからさ。まあ、騙されたと思って食べてみねぇ」
狩猟肉は市販のものより色合いが濃い目でいかにもクドそうで獣臭そうに見える。
しかしウチの祖父ちゃんが丁寧に処理してくれたお肉は臭みやクセを全くと言って良いくらいに感じさせない。
それどころか高タンパク低カロリーで滋養バツグン!
オレの大好物さ!
「んん~! 鹿ロース美味しいね! 身がとても引き締まっているよ。野山を駆け巡っていたからなんだろうね」
「シシ肉の脂サラッサラだぁ! いくらでも食える! いや、飲める!」
「美味いっキィ!」
「バクバク! バクバクバク!」
さっすが食べ盛りの男子高校生!
デッカい肉の塊がみるみる無くなっていくぜ。
気持ちの良い食いっぷりが嬉しいのか、母さんがニコニコ顔で肉をスライスしてドンドンおかわりを作ってくれる。
「三五三五ぉ♪ お肉をレタスで巻き巻きしてみました♪ 食べて食べて~♪」
「おお~! ありがとう、湖宵」
うんうん、野菜もバランス良く食べないとね。
湖宵ってば甲斐甲斐しくて満点花嫁♂さんだなぁ。
「ウギギィ~! 彼女♂持ち羨ましいッギィィ~!」
あらら。湖宵以外の女子を呼ばなかった為かさっきまで珍し~く爽やかで紳士的だったのに。
遂にPANSYが発狂し出した。
「さ · ん · ご♡ 食べさせてあげるねぇ♡ はい、あ~ん♡」
PANSYの反応に気を良くした湖宵がま~、煽ること煽ること。
「ウキキィ!? キイッ! キイィィアァ~ッッ!」
「02! 合わせろ! C · Tィィィ!」
「CROSS · LARIAAAT! 」
ガッシィィィン!
「ウッキィィィィ~ッ!?」
「う~ん、美味しいね。美味しいね」
大騒ぎするPANSY達とマイペースかつ幸せそうにお肉を頬張る音無君。
「あぁ~、やっぱりこの子達って三五のお友達だわね~」
呆れたような、どこかホッとしたような表情でそう言う母さん。
だからそれど~ゆ~意味よ。
色々わちゃわちゃしてたけど楽しかったな。
そしていつもよりも美味しく感じた。
祖父ちゃんがお肉を送ってくれたらまた開催しようかな、焼き肉パーティー!
● そして年を越え、今日という日へ
期末テストを終えたらクリスマス & お正月。
来年は受験を控えているのでお祭りムードはそこそこに。
と、言いつつもちゃっかりクリスマスに街デート、お正月には初詣と、湖宵と二人っきりの時間を満喫させてもらったのはここだけの話だ。
勉強や運動もおろそかにはしなかったので許して欲しい。
何やかんや忙しく過ぎ去っていった日々を振り返ってみると、本当にあっという間だったな~としみじみ思う。
だけどそろそろ前を向く時だ。
何せ今日から三学期が始まるんだから!
高校二年生の最終盤! 千秋楽まで突っ走って行くぜ!




