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第13話 高波 三五  勢い余るの巻

 「うぇ、うぇぇ~んっ! ヤダぁぁっ! 三五さんとお別れするのヤぁダぁ~っ!」


 こよいが、こよいがオレと離れたくないと言って泣き出してしまった! 何という事だろう!


 オレにしがみ付いてイヤイヤと首を振るこよいの姿に胸が締め付けられる。


 「ほ~ら、お嬢ちゃま。三五ちゃんが困ってるから離れて……離れ……は、離れない! まるでネオジム磁石!」


 彩戸(さいど)さんがオレからこよいを引っぺがそうとするも、こよいはビクともしない。

 絶対離れるものかという意思を感じる。


 もしかしてオレがなかなか告白しないから、こよいは不安に思っているのかな?


 オレだって今すぐにでもこよいに告白をしたい。

 でもまだ、オレの溢れる気持ちを伝える為の言葉が見つかっていないんだ。


 オレがこよいに伝えたい事はたくさんある。


 幼馴染みの男友達だった湖宵と過ごした時間はオレにとって宝物だという事。


 そんな湖宵から女の子として生きていきたいと告白された時、オレは驚いたけれどずっと味方でいて側で支え続けていきたいと決意した事。


 女の子になったこよいに心の底から惚れぬいて恋をしてしまったという事……。


 まだまだたくさん湧いてくる想いを伝えきれないうちには、恋人にはなれない。


 我慢だ、ここは我慢だ、高波 三五ぉっ!

 必死にすがり付いてくるこよいを優しく説得して、離してもらわなくては。

 というかマジで力が強い! この細身の一体どこにこんな力が!


 「こよい、今日は一杯遊んだでしょう? 三五ちゃんを離してあげて?」


 「お母さまぁぁぁ~……無理ぃぃぃ……寂しいのぉぉぉぉ」


 「あらあらぁ、困った子ねぇ」


 泰然自若とした落ち着きを取り戻したお義母さんがこよいを説得してくれる。

 甘えっ仔犬になった息子 (元) にも動じなくなったお義母さんだったが、こよいを引き離す事はかなわない。

 ここはやはりオレが頑張るしか!


 力一杯抱き締め返したい気持ちをグッと抑えて、こよいの背中を優しくあやす様に撫でる。


 「大丈夫だよ。ちゃんと明日も会いにくるから。毎日デートしよう? こよい」


 「ぐすんっぐすっ。うぅっ、でも、次会えるのに一二時間くらいあるうぅ~っ! そんなの、そんなの寂しいよぉ……!」


 「好……」って危ねぇ。

 今うっかり告白しかけたぞ。


 「だ、だイ丈夫。ネ、ネる前には電話もスるから。こよいが眠くなるまでお話ししよう?」


 「お、お話し……うぅ、ぐすん。さ、さんゴさんが、お話ししてくれるなら……ぐすんっ」


 このカワイイ娘、本当に元男? いや、心はずっと女の子だったんだな。

 愛くるしすぎて脳味噌が沸騰シテきたゼェェェェェーーーー!!!!


 「こよい、夜にお話しするときは、お月様を見上げてごらん? オレもその下に居て、同じお月様を見上げているから……」


 「は、はいっ! わたし、わたしお月様をちゃんと見上げますっ!」


 「ブッフォォ! ち、ちょっとぉ三五ちゃんww 何言ってんのよww んもぉ~、バカぁっw アハハハw 思いっきり吹き出しちゃったじゃないのww ヨダレでちゃったww アッハハハハハハハハハwww」


 オレのトチ狂った発言に大爆笑する彩戸さん。

 理性がぶっ飛んじまって、オレも自分で自分が何言ってるかわかんないんだよ。


 「あら~良く撮れてる。コレ将来、結婚式のスライドショーとかで使えないかしら?」

 『こよい、夜にお話しする時は……』


 お母さん!? いや、お義母さん!? いつの間にかスマホで撮られていた!?


 「奥ちゃまww 笑わせないでww 死にそうww」

 「あら、メイちゃんダメよ笑っちゃ。ホラ、情感がこもってるわよこのセリフ」

 『オレもその下に居て……』

 「wwww」


 外野はもう放っておこう。(諦観)


 「でもでも、お話しだけじゃ三五さん成分が足りない! です! ぎゅぅ~ってハグして下さい!」


 「ええ~っ! ……あっあぁっ! ハグする! ハグするから泣かないでっ!」


 涙目のこよいには勝てない……! 何でも言う事を聞いてしまうオレ。

 あれだけ御託を並べといてなんだが、今のこよいに 「告白しろ」 と言われたら即座に告白してしまうだろう。


 こよいに望まれるまま、力強く抱き締める。


 こよいの細くて柔らかい身体の感触がダイレクトに伝わってきて胸が苦しい。


 こよいの熱い体温と胸の鼓動が嬉しすぎて、狂おしくて、どうにかなってしまいそうだ。


 「ああ……三五さん。すっごくドキドキしてくれてるぅ……あぁ~っ! さ、さンごさぁん!」


 むっぎゅううぅと抱き締めてくるこよい。


 ああ、今オレは誰よりも彼女の近くに居る。


 幸せが泉の様にこんこんと湧いてくる。

 間違いなく今が今までの人生の中で一番幸せだ。

 それだというのに、それだけではもう足りない。


 オレは、オレは、自分に眠っている深い熱望に気付いてしまった。


 強く強く抱き締めあって、ほとんど0に近いオレとこよいの距離。


 愛の告白をして、キスをして。


 オレとこよいの距離を完全なる0にしてしまいたい。


 グツグツ、グラグラと、熱い気持ちがオレの心臓から噴き出して体内を巡る!


 「こよい! オレ告白するから! 夏祭りで! 花火の下で! こよいに愛の告白をするカラぁ~ッ!!」


 「!!! はイィィィ! お待ちしておりましゅううぅぅぅ ↑ ↑ ↑ ~~っっ!!」


 あああ~っ! 

 期せずして告白の予告をしてしまったぁ~っ!

 これでもう後には引けねぇ~っ!

 アガったテンションまかせにこよいを抱き締め、高速で頭を撫でまくる。


 「ええええ~? 今言った事が、そのまま愛の告白じゃないの」

 「? 何で夏祭りまで待つ必要があるのかしら?」


 彩戸さん! お義母さん! 邪魔しないでっ! 言ってる事は正しいけれども!



 「くふぅン♡ さ、三五さんっ! わたシィ! 告白っ絶対お受けしますねぇっ! はいってお返事しますネェ!」


 おっお~っ! こ、これは嬉しいぃぃ~っ! 

 こよいの気持ちは分かっていたし、ほぼ100%告白成功するとは思っていた。


 しかし、ここで本人からのお墨付き!

 告白成功率100%が約束された!

 

 「八百長じゃないの」


 外野はさておき。

 泣いていたこよいの瞳が今はキラキラと喜びで輝いているので一安心だ。 


 「あ、あのね? 後、わたし、告白の後に目、つむりますから! んん~っ♡ て。んん~っ♡ てしまスから、後は流れでヨロシクお願いシマス!」


 「う、うん! 告白して、少し間が空いてからの、んん~♡ デスネ! バッチリ了解シマシタ!」


 何たる嬉しき提案! これは俄然気合いが入ってきたぞ!


 「密約が交わされている(インサイダー取引)!?」


 決戦は夏祭り。


 初恋の少女、こよいにオレの想いを伝えてみせる!







 「「だからもう伝わっているんじゃないの?」」

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