裏62話 皆で楽しく最後まで ⑥ 変身☆町娘 高二 二学期
アオハルなランチを満喫したオレのクラス一同は全員一人残らず浮き足立っていた。
フワフワ~ッとした心持ちでバスに乗り、座席に座ってからもソワソワ。
うぅ~ん、無性に湖宵とイチャイチャしたい!
それに仲良くなった班の皆ともパ~ッと派手に遊びたい!
イコさぁぁん! こ~んなワガママな欲求を叶えてくれちゃうナイスなスポットを是非是非! 案内してちょ~だい!
「お任せ下さい三五さぁぁん♡ 今から向かうのはソワソワドキドキしちゃってる皆さんにピ~ッタリのスポットですよぉ♪ そ ・ の ・ 名 ・ も ・ 「太秦映画村」 でございま~す♪」
映画村キタ~!
何でも映画とかTVでガチで使われている時代劇のセットが見学出来るのだとか。超興味深い!
「江戸時代の町並みを忠実に再現したオープンセット! 忍者屋敷を初めとする沢山のアトラクション! アニメ ・ 特撮とタイアップしたイベント ・ キャンペーンも充実! 運良く撮影をやっていたらイケメン俳優 ・ キラキラ女優とエンカウント出来ちゃうかも!? そ~んなお楽しみが盛り沢山なハッピーテーマパークなのでぇ~す♪」
「「「おおおお~っ!」」」
凄いぞ! 軽く聞いていた話よりもずっとずっと豪華で面白そうな所じゃないか!
正に今のオレ達にうってつけだ。
よ~し、遊ぶぞ~!
バスから降りたら速やかに受付を済ませ、映画村に入村。
早速オープンセットを見に行く……前に向かうのは時代劇扮装の館。
ここはいわゆる貸衣装屋さんなのだが、そんじょそこらのコスプレ屋とは気合いの入りっぷりが違う。
何せ実際の撮影に使われる衣装すら借りられるんだから。
忍者、お侍、お殿様、お姫様、舞妓さん、町娘……などなどなどなど。
とにかく凄い種類の衣裳から好きなものを選んで専用のスタッフさんに着付けをしてもらう。
するとビックリ、時代劇の役者さんの様な扮装姿に早変わり。
その名もズバリ 「変身体験」 だ。
可愛く、格好良く変身して江戸時代の町並みを歩けばタイムスリップした気分に浸れること請け合いだ。
アオハルランチでテンションがアガ ↑ ↑ ったクラスメイト数名がボクも私も変身した~い♪ とか言って受付に並んでいる。
いつにないノリの良さだ。
中でも特にノリノリなのがウチの班の女性陣。
皆でお揃いの格好に変身出来るなんてサイコ~♪ と満面の笑みで列に並んでいる。
すぐに湖宵達の順番がやってきて希望の衣裳を選ぶ運びになったのだが、その際に特筆すべき嬉しい出来事が起こった。
「あのっ、ボク実はQ極TS女子なんです。女の子のお着物を貸して頂くことは出来ますか?」
「もちろんですよ。Q極TSをご経験されたお客様には専用のお着物をご用意しております」
見たか! 女性用の着物を着せて欲しいと言う男子にこの神対応!
Q極TS手術が普及するまでは考えられなかったことだ。
Q極TS手術が誕生してから今日に至るまで、そりゃあ蜂の巣を突っついた様な大騒ぎになった。
サービス業やレジャー ・ アミューズメント業などの業種にも更衣室 ・ トイレなどを始めとした数多くの難問が降りかかり、変革を余儀無くされた。
そして一流と呼ばれる企業は柔軟かつ思いやりに溢れた神対応をしてイメージアップに成功し、更なる愛され企業になったのだった。
湖宵が楽しく幸せな日々を過ごせているのも、おもてなしの精神を持つ一流の日本企業のおかげだ。
心からの感謝を捧げたい。
「三五~、皆~、お待たせ~♪」
オレがしみじみと物思いにふけっている間に女の子達の着替えが終わったようだ。
さあて、お出迎えといきますか。
「見て見て、三五♪ 仲良し町娘4人組だよ~♪」
「制服の上からお着物着るなんて初めて♪ とっても面白いわ♪」
「私はお着物自体久し振り~♪ 嬉しいな♪」
「ユイちゃんの言う通りです♪ 皆と……特に湖宵チャンさまとお揃いだなんて嬉し過ぎますぅ~♪」
4人娘が変身したのはカラフルなお着物の町娘。
湖宵が鮮やかな桃色で小海が紅色。ユイが金糸雀色でだいずちゃんが薄桃色。
それぞれにとても合ったカラーでイイネ!
何気に着物に合わせてヘアアレンジしているのもGood!
「可愛いじゃん湖宵~! 洋服も良いけどやっぱり和服も似合うね! あっ、いつものお気に入りのバレッタもしてるんだ。バッチリ合っててキュート!」
「そうなの~♡ 三五がプレゼントしてくれた三日月バレッタと合わせてみたの~♡ あぁぁ~♡ 誉めてもらえて幸せ~♡ キクぅ~♡」
う~ん、湖宵の可愛さは世界一だな!
眼福眼福~♪
「小海もユイもだいずちゃんも着物姿良く似合っているね。色もイメージにピッタリだし髪型もキマってるよ」
「ふぇっ!? あ、ありがと、三五…… (この人やっぱり私に気があるんじゃないかしら……) 」
「うふふ♡ ありがと~、さんさん♡」
「ひゃわわわぁっ!? ほ、誉め言葉がストレート過ぎますぅ~!」
小海達の髪にも椿、梅、桃の和風ヘアアクセが飾られていて目を楽しませてくれる。
華やか4人組だね。
「た、高波ぃ! お前マジでよく照れも下心も無しに女子を誉められるよなぁ! 尊敬するわ!」
「本当にな! さすがモテ神と呼ばれるだけのことはあるわ!」
「ウギギギギッギィ~! オレも女の子を誉めたいギィ! でもオレだとキモがられるっギィ! 女の子様に嫌われるのは嫌ッギィィア~!」
何故だか知らんが興奮した男子達に詰め寄られてしまうオレ。
あれ~? オレ、何かやっちゃいました~? またオレ、何かやっちゃいましたぁ~?
「ムフフフ~♪ 三五はSSクラスのイケメンだからね♪ 普段はイケメンオーラをBクラスに抑えてるだけだから! (理由 : 面倒だから) 」
イケメンになろう! っつってね。
あ~、SSクラスのイケメンになりて~。
「あらら? 猿ちゃん達は私のお着物を誉めてくれないの? 寂しいわ。クスクス♪」
シナを作って悪戯っぽく微笑む小海。
自分がからかわれるとキョどるくせに、ま~た童貞をからかって遊んでる。しょうがないなあ。
「そうだね~♪ 男の子達に喜んでもらいたくて頑張ったのにぃ♪ ねえ、まめまめ♪」
「ですよね~♪ 恥ずかしいけど勇気を出したんですよぉ~♪ な~んて♪」
アラッ!? ユイ達も悪ノリに付き合うのかよ!
男子達に色っぽく流し目まで送っちゃってさあ。
小悪魔さんだなぁ。
てゆ~か着物姿で高揚してるからかな?
「う、う、う……!? え、え、えと……。ににに、似合ってる……よ」
「おおお、おう!? かかか、可愛い……ぜ?」
うわあ。CT 01 ・ 02が顔面真っ赤っかの全身ガッチガチになってやがる。
思ってた以上にウブだな、オイ。
「ウキキキキィ~ッ! ウキャ~ッ! ウキャ~ッ! 可愛いキィ~! 綺麗キィ~! 小海ちゃんもユイちゃんもだいずちゃんも、皆み~んな最高ッキィァ~ッ!」
ウワ~ッ! PANSY の野郎、側転で小海達の周りをグルグル回転していやがる! 何という身のこなし!
「うわ~凄い! 忍者だよ!」
「NINJA! NINJA!」
ヤバい! 人が集まってきた!
騒ぎになったら追い出されるやもしれぬ!
「CT01 ・ 02! 猿を確保せよ! ズラかるぞ!」
「「ラジャー!」」
01 ・ 02の息の合ったコンビネーション!
PANSYを左右から圧迫する!
ガシィィ~ン!
「ウギギギギィ~!」
そのまま江戸のオープンセットへGO!
時を越えて過去にトンズラじゃ~!
「あぁ~ん三五、待ってぇ~!」
「三五ってばノリが昭和ね♪」
「そんなこと言ってるウチに置いてかれちゃうよ、こみこみ!」
「そうですよ。お着物じゃあ走れないんですから。待って下さぁ~い!」
おっと、いけねぇいけねぇ。
オレっちとしたことが女子を置いて行くところだったぜ。
オレも知らず知らずのウチに気分が高まってたようだ。
逸る気持ちを抑えつつ、皆で足並み揃えて花のお江戸を散策と洒落こむぜ!