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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【裏話】湖宵とホモる (ド直球) 高校生活
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裏49話 皆で修学旅行~! ⑦ ! 私情暴走バスガイド! 高二 二学期

 縁結びと聞けばいてもたってもいられなくなる気持ちは男子よりも女子の方が遥かに強いらしい。


 一刻も早くお参りがしたい! と駆け出しそうな勢いの女子達を見て冷静になった男子一同は 「まあまあ、そんなに急がずに。そこの茶屋で門前おやつのみたらし団子でもどうだい?」 と勧めるのだった。


 「あむあむあむあむ! ゴクゴク……ぷはぁっ! さぁ三五! お参りしに行こう!」


 湖宵さぁ、再三言うようだけどオレ達の縁は既に結ばれているんだが? ……と、いう言葉を黙って飲み込む。

 口に出すとメチャクチャ怒られるから。


 残っていたみたらし団子をパクッとやって熱いほうじ茶で流し込む。

 ふう。素直に女性陣にお付き合いするとしますか。


 女子達は脇目も振らずに下鴨神社の 「相生社(あいおいのやしろ)」 へと進んでいく。

 

 着いたら早速いそいそと絵馬を描いて奉納し、熱心にお参りに勤しんでいる。


 ちなみに相生社のお参りには特別な作法がある。

 お社にお参りした後は “連理の賢木” の御生曳(みあれびき)の綱を二回引っ張る必要があるのだ。


 「三五、三五♡ 一緒に引っ張ろう♡」


 「オッケー、湖宵」


 大衆の面前で恋のおまじないムーヴをするのは些か気恥ずかしいが、湖宵が大いに喜んでくれるからオレも二つ返事でチャレンジしちゃった。


 満足そうなお日様笑顔を浮かべたと思いきや、すぐに顔をキリッと引き締める湖宵。


 「さあ、三五! 次は河合神社に行くよ! 皆もついて来て!」


 オレの手を取り、早く早くと急かしてくる。

 叶えたい願いが沢山あるんだね。欲張りさんだなあ、湖宵。


 参道の糺の森も全体が赤く紅葉していてとても見頃だったのだが、我々はお構いなしにサッサカサ~と通り過ぎてゆく。

 

 そうして下鴨神社の摂社 · 河合神社までやって来た。


 「美麗祈願だぁぁ~っ! 行っくよぉ~っ!」


 「「「お~っ♡ きゃっほ~♡」」」

 

 女子達のテンションをMAXにさせる美麗祈願とは?

 まず鏡絵馬という手鏡の形をした絵馬をもらってくる。

 表にはのっぺりしたすっぴんの女の人の顔が描かれており、まずそのお顔にクレヨンなどで可愛くお化粧をしてあげる。

 そして最後に裏面にお願い事を書いて奉納する……という流れの、何ともバラエティに富んだ祈願なのだ。


 ウチの女子達なんてお小遣いで買った自前のメイク道具まで使ってキャッキャッ言い合いながら鏡絵馬にメイクをしている。

 凄く楽しそうだがそれ以上に熱心だ。


 それにしても不思議だ。

 湖宵は当然として、八重津さん達も凄く美人なのにワザワザ美麗祈願なんてする必要があるのかなあ?

 

 ただでさえ湖宵は日に日に綺麗になっていっているのにご利益パワーでもっと麗しくなったりなんかしたら、オレはもう辛抱堪らんよ。

 てゆ~かQ極TSして女の子の姿に戻った暁には美麗さがオーバーフローするんじゃないか? 下手すれば死んでしまうかもしれんぞ、オレぁ。


 「三五ったらわかってないな~♪ 綺麗になりたいって思うのは女の子の本能なんだよぉ~♪」


 バシバシバシバシ!

 湖宵に背中を叩かれる。


 「それにしても男子には悪い事しちゃったわね。付き合わせちゃって」

 「そんな事無いッキィ! 女の子が綺麗になるのは男の喜びっキィィ!」

 「あら~♪ イケメンなセリフ♪ 嬉しいわ♪」

 「ウキッ!? ウッキィィィ~ッ♡」

 「この発狂っぷりも慣れたらご愛敬ですよね。ホ~ラ、お猿ちゃ~ん。バナナ味の八つ橋ですよぉ~」

 「ウッキィィィィィ♡ 嬉しいキィ♡ ありがとっキィィィァァァァ~ッ♡」

 「おお、 PANSY(パンジー) が女子と普通に会話しとるぞ」

 「胸熱やな。これが修学旅行効果か」


 ホクホク顔の女子達はPANSYの奇態すら笑って受け流してくれる。

 こんなに喜んでもらえたなら付き合った甲斐もあったってなもんよ。


 皆で和気あいあいと楽しんで、バスに帰る頃にはすっかり日が落ちていた。

 座席のシートに深く腰かけると地味~に疲れが押し寄せてくる。

 そろそろホテルに帰りたいかも。



 「さあ、次でラスト! 本日最後のイベントは昨日に引き続いてのライトアップ紅葉鑑賞第二弾! 「永観堂」 へ向かいま~す♪ ここはですね~、別名 “もみじの永観堂” と呼ばれる程の京都屈指の超 · 超 · ベスト紅葉狩りスポットなんですよぉ♪ 見なきゃ絶対損!」


 イコさん、さっきも同じようなこと言ってなかった?

 どんだけ屈指のスポットがあるんだ……と、言いたいところだがその別名が気に入った。

 ワザワザ頭に “もみじの” と付けるくらいなんだからよっぽどスゴいスポットなんだろう。


 座席シートに沈んだ身体をえいや、と起こしてバスから降りる。

 そのままダラダラと歩いていくワケだが……何だろう。

 もの凄く雰囲気が良い参道だ。

 道沿いに設置されたライトが紅葉を美しく照らしていてとても見事。

 気分が良くなり自然と歩調が力強いものになっていく。


 そして、遂に境内へと辿り着いたオレ達は感嘆の声を上げる。


 「これは凄い!」

 「わ~キレ~イ♪」

 「360度キラキラの紅葉に囲まれてる!」


 この三日間、東洋の美と多彩なシチュエーションで調和する紅葉たちを見てきたが、それでもこの絶景には驚かされてしまった。


 境内を守護するかのように囲む紅葉の木の数は三千本。

 その中から光に照らされ浮かび上がる多宝塔のシルエット。

 これは正に幻想の風景だ。


 「うっうう~……ひっくひっく」

 「だいずちゃん!? 何で泣いてるの!?」

 「だってぇ~……ひっく、湖宵チャンさまと一緒にこんなに素敵な景色が見られるなんて、ぐすぐす、まるで夢みたいでぇ~!」

 「まめまめ、感受性が高杉晋作なんですけど~w」

 「ユイ、お黙りなさい。折角の風情が台無しよ」

 「こみこみw 辛辣杉w 私も泣きそうデスw」

 「な、泣かないで、だいずちゃん。よしよ~し。ユイちゃんもね。よしよし」

 「こ、湖宵チャンさまのナデナデ……! これまた感涙ものですぅぅ!」

 「こよこよ優しい♪ ありがとう♪」


 昨日はオレと一緒にウットリと紅葉を眺めていた湖宵だったが、今日は気心の知れた女友達と一緒にワイワイ楽しく眺めている。

 この光景はいつまでも色褪せない思い出として湖宵の心に残るに違いない。


 もっと紅葉を見上げていたいところだが、後から後からやって来る人の流れに押し出されてこの場から離れざるを得なくなってしまった。

 くっそ~! また絶対に来るぞ! もみじの永観堂~!


 後ろ髪を引かれるような思いでバスに戻るオレ達なのであった。


 

 「皆さんお帰りなさ~い♪ これにて本日の観光はおしまい♪ ホテルに戻りま~す♪ そ、それでですねぇ~、い、今からカラオケなどはいかがでしょう? ねっ、三五さん、一緒に歌いましょ? ねっねっ?」


 私情フルスロットルやな、このバスガイドさん。


 チラッと湖宵の方を伺うとノータイムでコクコクと首を縦に振ってくれる。

 何だかんだ言っても同じ境遇のQ極TS女子に優しいね、湖宵。


 「良いですよ、歌いましょうか」


 「キャァァ~ッ♡ わ、私も演歌沢山知ってるんですよっ! 「晩夏の恋時雨」 とか 「夫婦さかずき」 とかっ!」


 イイネ~! 気が合うね~!

 湖宵から許可も得たところで、自慢のノドを披露しちゃいますか!


 「お前の~酌でぇ~注ぐなぁらばぁ~♪ 雨水さえも大吟醸~♪」


 「良いこと聞いたわぁ~♪ 酒代ぃ浮かぁ~せぇぇましょう~♪」


 「オイ言ってみただけだぁ~♪」


 「アラ言ってみただけなのねぇ~♪」


 「「嗚呼ぁぁ~酒とつまみとぉ~♪ 夫婦さかぁ~ずきぃぃ~♪」」


 オレはイコさんの肩なんか抱いちゃってノリノリで歌う。

 調子に乗りすぎだって?

 イコさんもオレに身体を預けて小っちゃい子みたいなニコニコ顔で歌っているから良いのさ。


 「ムッキイィ~! 次はボクと歌うんだかんね、三五ぉ~!」

 「湖宵チャンさま、湖宵チャンさまっ♪ その次は私と歌って下さい♪」


 こうして修学旅行三日目のバスツアーは楽しく賑やかな歌と共に終わりを告げたのだった。

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