裏40話 ドキ♡修 ! ④ ! 朝チュンから始まる修学旅行二日目 高二 二学期
PiPiPi~♪ PiPiPiPi~♪
ベッド脇のナイトテーブルに置いたスマホが鳴っている。
オレは左手をシュバッと伸ばしてスマホを掴み、目覚まし機能を解除した。
時刻は5時30分。
朝食までにはかなり時間に余裕がある。
間違えていつも起きている時間に目覚ましをセットしていたみたいだ。
うっかりうっかり。
湖宵を起こしてしまったかな?
「……………………」 (ぐったり)
大丈夫だ。
オレの腕枕で眠っている湖宵は身じろぎ一つしていない。
もの凄く深い眠りに落ちているみたいだ。
昨日オレはベッドに入ったら割りとすぐに寝入ったが、湖宵はそうじゃないみたいだ。
オレの腕枕で寝る為にベッドに潜り込むかどうか相当悩んだと見える。
「…………………………うふふ♡ さんごぉ♡」
結局、誘惑には抗えなかったみたいだね、湖宵♪
わかるわかる♪ オレも逆の立場ならそうなるって♪
でもオレとしては湖宵と恋人として、夫婦として、もっと大っぴらに振る舞いたいと思っているのだが、湖宵的には少なからず葛藤があるみたいだ。甘えんぼのクセに。
男の子のボクに耽溺しないでって前に言ってたもんね。
でもオレは湖宵だからラブラブしたいんだけどなあ。
さて、湖宵はもう少し寝かせておいてあげようかな。
オレはその間にシャワーでも浴びてこよう。
……………………………………。
「ん、んん~……? 三五ぉ……?」
「あ、おはよう。湖宵」
シャワーを浴び終わり制服に着替えている時に、湖宵がモソモソと起きてきた。
「キ、キャ~ッ♡ は、裸ぁ♡ ご、ごめんなさ~い!」
と、思ったらもう一度ベッドに潜った!
えぇ~?
確かにオレは今上半身にワイシャツを引っかけてるだけのだらしない格好だけどさあ。
下はちゃんとズボン履いてるよ?
なのにオレ達の間柄で今更そんなリアクションしちゃう?
「だってさぁ! ホテルに泊まって腕枕してもらって、朝起きたら三五がセクシーな格好でおはようって……。これって朝チュンじゃん!? 乙女的ドリームシチュエーションじゃん!?」
朝から元気だな~、湖宵。
それにしても朝チュンか。
湖宵の持ってるマンガにも今みたいなシチュが出てきたっけ。
確かモーニングコーヒーを渡してあげてお決まりのセリフを言うんだ。
コーヒーはインスタントのやつで良いか。紙コップのヤツ。
コポコポ~ッとポットでお湯を入れてっと。
それでセリフが……。
「昨夜は可愛かったよ、湖宵 (オレは寝てたけど)」
「くっっっはアアァァァ~んっっ!」
湖宵がベッドから床へと崩れ落ちた!?
「ちょっとぉぉ! 少しは自重してよぉぉ! 昨日も三五の腕枕でドキドキし過ぎて気ィ失っちゃったんですけど!? 朝から鼻血出そう!」
ムキ~ッ! と喚きだす湖宵の頭を撫で撫でしてあげちゃう。
大人しくなるまで優しく優しく何度も何度も。
「んっ♡ んっ♡ ん~♡ ……ふぅぅ♡ はぁっ、んもおぉ~バカァ~♡」
力が抜けてコテンとしなだれ掛かってくる湖宵がとても可愛らしい。
「フフフ。オレ、誰よりも可愛い湖宵チャンと修学旅行でラブラブな思い出を作りたいな♪」
頭を撫で撫でしながら遠回しに 「絶対に自重などするものか」 という熱い意思を伝える。
すると諦めたのか、呆れたのか、ジト~ッとした目で睨めつけられてしまった。
「もぉぉ……ボクもシャワー浴びて、朝の準備してくるから。の、覗いたりしちゃダメだかんね!」
「もうすぐ朝食だからお早めにね~」
フラフラ~ッとした足取りで脱衣場に向かっていった湖宵だったが、熱いシャワーを浴びたらスッキリしたようで、キチンと身だしなみを整えてから上がってきた。
う~ん、可愛い。
オレと同じ男子の制服だし、髪型も爽やかなナチュラルショートヘアなんだけども、魂が女の子だからだろうか? そこはかとなく可愛い。
「ホ、ホラ行こう! 三五っ!」
「うん! 修学旅行二日目、張り切って行こう!」
連れ立って昨日もお世話になった宴会場 ・ 有明の間へ向かう。
他の生徒達もゾロゾロ集まってきて、いざ朝食のお時間と相成った。
今日の朝食は和食!
ピンピンに粒が立った白米。
カボチャ、タマネギ、油揚げ、お麩、などなどの具沢山のおみおつけ。
皮はパリッ! 身はジューシー! な秋鯖の塩焼き。
そして白瓜の奈良漬だぁ!
「いただきま~す! ん~! 鯖が美味え! 鯖がとても美味え!」
「お味噌汁に入ってるカボチャ、ホクホクしててんま~♪」
「パリパリ。やっぱり奈良漬はご飯が進むなあ。パリパリパリ」
「パリパリ。こ~んな食べごたえのある白瓜をパリパリしまくってたら、酔っぱらっちゃいそうだね。パリパリパリ」
朝っぱらから二回もご飯をおかわりしてしまった。
だけどこれで英気をバッチリ養うことが出来た。
よ~し今日も歩きまくるぞ~!
一晩お世話になったホテルの皆さんにお礼を言って、我々は新たな旅に出発した。
本日一発目の観光スポットはズバリ! 興福寺!
有名な五重塔や国宝館の阿修羅像、千手観音菩薩像は是非ともおさえておきたい見所だ。
日本文化の歴史に触れる事は知的好奇心を大いに刺激してくれる。…………ん、だ、け、どぉ~! それ以上に刺激されるのは、なんと言っても恋人達のラブラブムード!
だってここ、興福寺も紅葉の名スポットだからね!
昨日は湖宵の気が散っていたからムードも何も無かったが、今日こそは奈良公園紅葉リベンジ&歴史と自然の調和 ・ オリエンタルマジックスポット探訪の併せ技で見事、湖宵とのラブラブデートを成し遂げて見せる!
「こ、湖宵チャン! ちょっとこっち来て!」
「お話を!」
「聞かせて欲しいの!」
「うわわわわぁ!?」
ああ! 湖宵が同じ班の女子達に連れて行かれてしまった!
「ウキイ~ッ! エ、エロ神~! 昨夜、繊月と何してたっキ~ッ!? ウキィ~ッ! どうキ~ッ!? キニナルキイィィ~ッ!」
「気持ちはわかるが落ち着け!」
「麻酔打つぞ! 股間に!」
そしてオレも同じ班の男子に絡まれた。
メンツはお馴染みの童貞チンパンジーと、ツレの1号2号……う~ん、言い辛いのでこれからは C T 01 ・ 02と呼称しよう。その三名にオレを加えた計四名がウチの班の男子メンバーだ。
しっかしコイツら、ま~だオレと湖宵のことを気にしてんのか。
折角の修学旅行をもっと楽しめよな……と眉間にシワを寄せるもハタ、と思い直した。
オレと湖宵だけで旅行に来ているワケじゃないんだ。
少なくとも今日 ・ 明日中は班の皆と一緒に過ごすんだから、邪険にせずに歩み寄った方が良いだろう。
「あ~、まあ、昨日は普通に一緒に寝て腕枕してあげただけだよ」
「ウキキキキ~ッ!?」
「いやいや、腕枕って!?」
「それ “フツー” じゃね~だろ!?」
ざわめく三匹。
だけどオレ達が昨夜はそれ以上のことをしてないとわかると、徐々に興奮が冷めてきたみたいだ。
「ウキキ。そ、そうッスよね~。女の子になった繊月がいくら可愛くても今は男ッスもんね! イチャイチャとかするワケないッスよね!」
「ムッ。今の湖宵だって魅力的だろ! ってか露天風呂でキスしちゃったし!」
「ウッキィィィ~ッ!?」
「「そう言えばこの人、教室でもキスしてた~っ!?」」
あ。しまった。
燻りかけた焚き火にガソリンブッ掛ける様なこと言ってしまった。
「ウキキィ! ウッキィィィ! ナンデ!? オンナノコの繊月に惚れるのはワカル! イチャイチャするのもワカル! でも男に戻ってもイチャイチャするのはナンデ!? エロ神が理解デキナイ~ッ!? OH MY GOD!」
チンパンの信仰心が揺らいでいる!?
「チンパン落ち着けし! そもそもお前らがそこまで気にすることじゃ無いだろ!」
「いや、気になるって! だってQ極TS女子とそこまでガチで恋愛してるのって、オレが知る限りでは高波くらいだし!」
「しかも相手が男に戻っても変わらずイチャイチャしてるんだもんな。そのエロに対する貪欲さ、マジで神レヴェルだわ」
おおっと。
CT01 ・ 02にまで詰め寄られてしまった。
致し方無し。
人の恋路に嘴を突っ込む事の不毛さを、とくと説いてやるとするか。