裏39話 ドキ♡修 ! ③ ! お風呂の後はご飯。ご飯の後は……? 高二 二学期
「ふあああぁぁぁ~……♡」
お風呂上がり。
パジャマ代わりのジャージに着替えた湖宵はベッドに腰掛けて、ポケーっと放心していた。
湖宵にとっては混浴で寄り添い合いながら入浴したり、キスしちゃったりとドキドキイベント盛り沢山だったからね。そりゃオーバーヒートするよね。(他人事ムーブ)
しばらくそのまま休ませてあげたいが、もうすぐ晩ご飯の時間なのでそうも言っていられない。
「湖宵、ご飯の時間だよ。皆の所へ行くよ。立てる? ホラ、オレに掴まって」
「ひゃ、ひゃいぃ……♡」
フラフラのこよいを半ば抱き抱えるようにして部屋から出た。
えっちらおっちら移動して 「有明の間」 という名の宴会場へ着いた。
大広間は畳敷きになっており、沢山の長机がズラ~ッと並べられていた。
その長机に載っている本日のメニューは~……?
ジャジャン! なんとお鍋!
「うお~っ! 豪華じゃ~ん♪」
それだけじゃなく、修学旅行には打ってつけのメニューだと言える。
同じ釜の飯ならぬ、同じ鍋のメシを食えば生徒達の親睦も深まるってぇ寸法だ。
中身は何鍋なのかな?
ちょっと失敬して覗いてみよう。
うわ! スープが真っ白! シチューみたいな洋風鍋?
えっ? 何? 飛鳥鍋っていうの?
へえ~、聞いたことの無いお鍋だ。
何でもリアルに飛鳥時代……約千三百年前から伝わっている、奈良の郷土料理だそうだ。
鶏ガラスープに牛乳を入れてお味噌などで味付けした出汁に、鶏肉や野菜がこれでもかという程入っているヘルシー & クリーミーなお鍋なんだとか。
うわ~! 美 ・ 味 ・ そ ・ う~!
テンションアガ ↑ ↑ ってきたわ~!
どんな味するのかなあ!? ちょっと想像つかないわ!
楽しみだぁ! なっ! 皆もそう思うよな!?
「見ろよ。繊月のあの蕩けた表情」
「完全に事後デスナ」
「あの二人一緒に風呂に入ったんだよな」
「やっぱり……イチャイチャしたのかな?」
「しゅ、修学旅行でぇ!?」
「も、妄想が捗るぅ~♪」
「リアルBLご馳走さま♪ お腹一杯でご飯食べらんないかも♪」
「やはり高波はエロテロリスト……女子はこっちに集まって食べましょう! 彼に近付くと赤ちゃんデキチャウワ!」
うん。コイツら、食卓じゃなくてオレの隣でぽやや~んとしている湖宵に目が釘付けだ。
まあね? 確かにね? オレ達は二人きりでイチャイチャしながらお風呂に入りましたよ?
裸のお付き合いをしましたよ?
その結果、湖宵がメロメロ状態になりましたよ?
でもそれがお前らに関係ありますか?
いくら湖宵が人気者だからってさ。
折角の修学旅行 ・ 折角の飛鳥鍋。
それらを味わわずにウワサ話に興じているのはドウカトオモウケドネ!? (開き直り)
まあいいや。いつもの事だし。
湖宵と一緒に大人しく席に着こう。
先生から一言二言の挨拶をもらい、満を持していただきますの大合唱!
うお~っ! 食うぞ~っ!
まず気になるのは真っ白なお出汁のお味。
どれどれ? ……んっ!? シチューっぽい見かけとは裏腹に、お味噌とか醤油とかの和風な風味が強い!
それでいてまろやかでコクがあって、新しいような懐かしいような味わい。
食べた事の無い物を食べるのっていかにもな旅の醍醐味だよね!
アスパラとか白菜とかジャガイモとか、野菜がゴロッと入っていて美味い!
鶏もも肉やつくねも、旨味が濃いのに全く臭みを感じない上品なお味。
飛鳥鍋サイコ~!
「すっげ~美味しい! 湖宵も食べてごらんよ」
「ふわわわわわん……♡」
ダメだ。まだアッチの世界に行ってる!
ああ~、どうしよう。
飛鳥鍋に出会えた感動を共有したいのに!
「ホ、ホ~ラ、湖宵の大好きな椎茸だよ~? ア~ンして、くれたりはしない、かな?」
苦し紛れに湖宵の口許に椎茸をつまんだお箸を近付けてみる。
「ふわわ……くんくん。ア~ン、パクッ。んん~♪ ふわんま~♪」
おっお~っ! 凄い! 本当に食べてくれた!
よ~し、次はレンゲですくったお出汁を味わってもらおうか。
「コクコク。まろんま~♪」
その次はお味が染みた野菜達。
紅葉の形に飾り切りされてある人参を最初に食べてもらおう。可愛いから。
「パクパク。シャキシャキ。しみんま~♪」
そしていよいよ鶏肉。
熱いから、よ~くフーフーして食べさせてあげないとね。
フーフー。はい、ア~ン。
「ア~ン……ほふほふ♪ んんんまぁぁ♪」
何でも、飛鳥鍋には具材を溶き卵につけて食べるすき焼き風の食べ方があるそうな。
それも湖宵に試してもらわないとね♪
「ま~たイチャイチャしてる」
「所構わずやな」
「で、でもすっごく甲斐甲斐しくお世話してる?」
「い、意外……あんなに優しくしてくれるんだ」
「エッチなだけじゃないのね」
「だ、だからって簡単に警戒を解いたりしないんだからねっ!」
ええい。またヒソヒソしてるし。
いいからお前らも食べな。
美味しいから。
湖宵に食べさせながら、オレもお鍋をいっぱい食べた。
ついでに白飯も奈良漬けでたらふく食べた。
お腹いっぱい! 大満足!
「ふわわ……はっ! あ、あれ!? 皆、ご飯食べ終わってる!? いつの間に!? あれ? でも何だかボクもお腹いっぱい……? それにすっごく美味しいものを食べたような気もするような? あれぇ~?」
皆が食事を終えた頃に湖宵が正気に戻った。
シメのうどんまで平らげておきながら記憶が曖昧なのか……。
可哀想なことをしてしまったなあ。
明日から、お風呂に入る時はなるべく普通に入るように心掛けよう。
しばらく宴会場で食休みした後。
先生から今日は疲れを残さずに早めに休むように、という旨のお話があり、それを合図に解散する流れとなった。
「オレ達も部屋に戻ろう。お腹いっぱいになったら眠くなってきちゃったよ」
「う、うん、三五! ちゃ~んと休まなきゃね! ア、アハハハ!」
宴会場 ・ 有明の間を後にするオレ達を見て、他の生徒達はやっぱりヒソヒソ話をする。
ハイハイ。いつものいつもの。
エレベーターから降りて誰も居ない廊下に出たら、すかさず湖宵の手を取ってきゅっと繋ぐ。
ピクンッと肩を揺らせて顔を赤くする湖宵が可愛い。
「今日一緒のベッドで寝ようね、湖宵」
「だから建前上ボク達は友達だって言ってんでしょ!? 三五ってばぁぁ! レギュレーション違反でしょソレェェ!? 誘惑しないで!? 必死に我慢してんだからぁぁ!」
自分で建前だって言っちゃってるじゃん、湖宵。
有名無実と化した建前なんて放っておいてスペシャルな夜を過ごそうよ。
まあ湖宵にとってはちょいとドキドキし過ぎるかもしれないけどね。 (ゲス顔)
「でもこの前だって一緒に寝たじゃん。別に問題ないでしょ。名目上は男の子同士なんだし」
「一緒に寝たんじゃなくて、ボクが寝た後ベッドに引きずり込んだんでしょぉ!? 起きた時心臓止まるくらいビックリしたんだからね! 嬉しかったけどぉ! こ、今回はさぁ、う、う゛う゛~、さ、さすがにぃ、同じベッドで寝るのは……うぎぎ……や、止めない?」
もの凄く葛藤しているなあ。
でも一緒に寝たいという気持ちはあるみたいだからもう一押ししてみよう。
「腕枕してあげるから」
「う、腕枕ぁ!? してもらうの夢だったのぉ♡ 絶対してもらいたい~っ♡ あっあっあ~っ! でも寝られるかなぁぁ!? 逆に永眠するかも!? で、でも、乙女の憧れ、腕枕ぁぁ! あ゛あ゛~!」
「よし、じゃあこうしよう。オレが一人でベッドに入って寝るから、湖宵は気が向いたらベッドに潜り込んでオレの腕を勝手に枕にして良いってことで」
「えっえ~っ!? ど、どうしよどうしよ~っ!? 悩むぅぅ~っ! こ、心の準備が出来てないのにぃ♡ う、うぁ~♡ 修学旅行で腕枕ぁぁ~っ♡」
フッフッフ。夜は長いよ。
たっぷり考えてね、湖宵♪