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第9話 繊月 こよいとデート [銀幕狂宴篇]

 前回のあらすじ!

 デートだというのに喫茶店でドカ食いしてしまったオレ達!

 只今食休み中! 以上!


 「はぁ~だいぶ楽になってきました~」

 「オレも~。そろそろ時間だし行こうか?」


 喫茶店を出てから、オレ達は腹ごなしにゆっくり歩いて目的地へと向かう。


 その目的地とは映画館!

 今日のデートのメインイベントは映画鑑賞!


 『スピードマックスマッドワイルド』シリーズの最新作を観に行こうと、前々からこよいと約束していたのだ。


 この映画を簡単にまとめるとヤクザ紛いの走り屋チームがドラッグレースをして競い合い、決着がつかず抗争になってくたばるまで殴り合うというだけの内容だ。


 高級車によるチキンレースや暴走カーチェイスなどといった見所が満載の、オレの様な男子学生におススメの映画と言えよう。


 はい。誰がどう考えてもデートで観に行く様な映画じゃないです。


 他の映画にしようか? とこよいに尋ねたところ、映画の好みは男の子の時から変わってないよ、とのお答えだったのでそのまま観に行く事にしたのだ。


 そうこうしている内に映画館に到着。

 夏休みの映画館は混雑していたが、オレ達は予め前売り券を買っていたお陰でスムーズに入場できた。


 映画館デートといったら暗い中でこっそりイチャイチャするのが定番だが……今日の映画ではちょっとそんな空気にはならないだろうなあ。


 「うっきゃぁ~ッ! わたしの大好きなフィアートがあぁッ! ぶっ飛ばされてお空を飛んでるぅぅ! そして地面に激突ぅぅぅ!」


 こよいの大好きな国民的アニメ映画に出てくるオシャレな車があろうことかパチンコの玉の様に敵チームの陣へと吹っ飛ぶ。

 爆薬がわんさか積まれていたようで敵陣が紅蓮の炎に包まれ、阿鼻叫喚地獄になっている。


 「ああッ! ビートロがッ! シトロエンヌがッ! 事も無げにオシャカにぃッ! もうやめて~ッ!」


S(スピード) M(マックス) M(マッド) W(ワイルド)』シリーズではオシャレで女の子に人気がありそうな車種はロクな目に遭わないのだ。活躍できるのはマッチョかつ大排気量の車種のみ。


 何で自分の好きな車がヒドイ目に遭っているのに毎回観に来るの? と以前に聞いたらこよい曰く、「逆にそれがいい」とのこと。

 乙女心って複雑だなぁ。


 「何ちゅ~大人数で殴り合ってんだよ! 春秋戦国時代かよ!」


 大胆過ぎるカーアクション&スタントシーンもさることながら、人間同士のバトルアクションシーンも見所だ。

 何でもプロの格闘家や本物の軍人が監修しているとかなんとか。


 そんでもってエキストラがハンパ無く、大人数でイモ洗い状態になってケンカしている様はまるで戦争映画だ。

 ジャンル間違っているんじゃないの?

 って、デートで観る映画にこの映画をセレクトしたオレ達が一番間違っているよね。


 ツッコミを入れながらも手に汗握る一時間半があっという間に過ぎていく。

 

 そして感動 (しない) のラストシーン。

 主人公のドンがラスボスのストレングス ・ ジョンと崖の上で対峙しているぞ。


 『Come on! Come on!』

 字幕 : 来いよ! 来いよ!


 『Idiot! Idiot!』

 字幕 : バカヤロウ! バカヤロウ!


 この映画字幕いらないんじゃね?

 

 おおっと。ドンが真っ赤に燃えるエンジンを持ち上げようとしているぞ。

 そんなの根性で持ち上がるようなモンじゃな……。


 『Aaaaaaaaahhhhhhhhh!!!!!!!!』


 ハイ持ち上がるんかーいってね。

 持ち上げたエンジンをジョンの顔面にドーン!

 ジョンは崖下にまっ逆さま。


 『Aaaaaaaaahhhhhhhhh!!!!!!!』


 たった一人残ったドンが勝利の雄叫びを上げる。


 その上空からバラバラバラ! と大きな音が響く。


 警察のヘリだ。

 抗争が収まるのを待って、タイミングを見計らって登場したのだ。


 カメラに向かってニヤッと笑うドン。

 警察による漁夫の利エンドはこの映画のお約束の一つだ。


 続いてスタッフロールに入る……前に監督からのご挨拶。


 『よう、オレの映画は楽しんでくれたかい? この映画のスタントシーンは危険だから絶対に真似するんじゃないぞ。ま、そんな根性があるヤツがそうそう居るとは思えんがな (笑)』


「「「「「ワッハハッハハハハハ!」」」」」


 シリーズ恒例の監督の挨拶に観客一同大笑い。

 ここまでがこのシリーズを観る時のお約束ってヤツだ。

 男連中とする悪ふざけみたいなノリの映画だな、相変わらず。


 オレとこよいは大満足して映画館から出た。


 「すっごく面白かったぁ~。予算ジャブジャブ使いまくりで爽快感あったな~」


 こよいは大はしゃぎをして心からの笑顔を浮かべてくれる。

 

 女の子の心を持って生まれて来たこよいだけれども、小さな頃からオレと一緒に男の子向けの映画や趣味を楽しんでくれている。


 そんなところも大好きだ。


 「めっちゃイカれてて、めっちゃ楽しかったね! 次のシリーズも絶対一緒に観に行こうね」

 「当たり前ですよぅ~そんなの~♪」

 

 映画がお気に召してすっかりご機嫌なこよいがピョ~ンと飛び付く様にオレの手を握ってくれる。


 さあ、映画館を出たら次はどこに行って楽しもうかな?

 せっかく街まで来たんだからこのまま帰るなんて選択肢は無いよね。


 「うわ~外暑いね~。こよい、どこか行きたい場所はある?」

 「えっとですね~。カワイイ雑貨とか売ってるお店とか見てみたいです」


 ふむふむ。確かちょうどこの辺りに女の子向けの雑貨屋さんがあったハズだ。


 暑いので早速出発しようとした、その時。



 向かいの通りに居るオレ達と同い年くらいの少年三人組から、何やらこちらをチラチラと窺う不審な視線を感じた。

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