裏21話 思い出の文化祭⑤ 笑われてナンボの芸の道でアリンス♡ 高二 二学期
欲望がムラムラとたぎる男達にたっぷりチヤホヤされてご満悦のエロ姉ぇ。
「良い汗かいたからシャワー浴びてくるわン♡」とか言って、ちぃちゃんと一緒に帰っていった。嵐を起こすだけ起こして……。全く。
お客さん達を困惑させてしまったが、エロ姉ぇとの一悶着は悪いことばかりではなかった。
オレと湖宵が面白いとお客さんから人気が出て、ぜひ接客して欲しいと引っ張りだこになったのだ。
特にオレなんて見た目のインパクトのせいで浮いていたから、気さくに話しかけてもらえるのは本当に嬉しい。
「高波太夫さ~ん! 注文お願いしまッス!」
「はいは~い。ちょいとお待ちナンシ~」
「こっちは美人ウエイトレスさんにお願い♪」
「はぁい♪ ただいま参りま~す♪」
オレと湖宵は一生懸命働いた。大変だけれども楽しそうに働く湖宵の愛らしい姿を見ていたら、疲れなんて微塵も感じないね!
そろそろオレ達の店番は終わりだし、最後まで気合い入れて頑張ろう!
「よ~し! 演歌メドレーいくでアリンスよぉ!」
「「「高波太夫~!」」」
「キャ~♡ 三五っ♡ ステキ~♡」
テ♪ テテン♪ テ♪ テン♪ テン♪ テ♪ テレレンレン♪ デレレ~ン♪
オレの歌に合わせてお客さんが手拍子をしてくれる。
大変気分良く歌っていると、またもオレと湖宵にとって馴染みが深いお客さんがやって来た。
「三五さんのクラスってと~っても賑やか~♪ まあ! 三五さんがお着物着てお歌を歌ってるぅ! ほらほらメイも見て!」
「へぇ~、どれどれ……ブハァァッ! き、着物って女もんじゃないの! な、何で芸者さんの格好してノド自慢してんのよぉ! お姉ちゃんを笑い死にさせる気ぃ!? アハハハ! ア~ッハハハッ!」
メイお姉さんとアンお姉さんが揃って遊びに来てくれた。
だけどオレは今、歌の途中なので湖宵に応対してもらおう。
「いらっしゃいませぇ~♪ わたし達のクラスへようこそ~♪」
「キャ~♪ 湖宵さん可愛い~♪ ウエイトレスさんの格好似合ってます♪」
「ありがとう♪ アン姉さん♪ ねえねえ、メイ姉さんは何か感想ないの?」
「ハア、ハア。あ~うん、可愛いわよ。でもね! 今更お坊っちゃまが女の子の格好したところでもう全然インパクト無いわけ! 何よあのお笑い大魔王は! 何で芸者の格好してんの!?」
メイお姉さんがほとんど泣き笑いになりながら、オレをビシッと指で差す。
「花魁の高波太夫よ。人気者なの♪」
「あw んw なw 花魁w 居ないってw」
メイお姉さんは文字通り抱腹絶倒している。
オレの方も曲が歌い終わったしお客さん達に挨拶したらお姉さん達の所に行こう。
「ご清聴ありがとうでアリンス。おネエ · おニイ喫茶での一時をごゆっくりお楽しみナンシ♪」
「「「わぁあぁぁ~っ!」」」
パチパチパチパチ!
「三五さん、お歌とってもお上手でした! 花魁さんの格好も凄く格好良くて、何かもうとにかく凄いです!」
「ありがとうでアリンス♪ アンお姉さん♪」
「ヒィ~ッw ヒィ~ッw く、苦しいw」
メイお姉さんはもはや声を出すのも辛そうだ。
落ち着くまでウチのクラスで休憩していってもらおう。
「もうすぐでワチキ達の当番が終わるから、席でくつろいで待っていて欲しいでアリンス。はい、こちらサービスのお紅茶でアリンス」
「ありがとうございます♪ 高波太夫さま♪」
「飲み物飲めないw 噴いちゃうw」
お姉さん達の目があるからオレと湖宵の接客に更に熱が入る。
「太夫~! こっちお願いしま~す!」
「美人ウエイトレス♂さ~ん!」
「「はいは~い♪ ただいま~♪」」
たくさんのお客さんを笑顔にしたオレ達は、惜しまれつつもおネエ · おニイ喫茶の店番を無事にやり終えたのだった。
「大w 人w 気w だったw んw ですw けどぉw おかしいよぉ! 皆おかしいよぉ! アッハハハ!」
まだ笑ってるよこの人。いい加減慣れて欲しいんですけど? これから文化祭を案内したいんだから。
「メイお姉さんってば、笑っていないでそろそろ行くでアリンスよ。ワチキ達は一杯働いてお腹ペコペコでアリンス。何か食べたいでアリンス」
「待って! 着替えないの!? あと、口調も直して欲しいんだけど!」
「ワチキ達はこの格好のままクラスの宣伝をして欲しいって頼まれたでアリンス」
「わたし達、ちょ~人気者だったもんね♪」
「お二人ともすご~い♪」
「この格好のままw 学校の中歩くのw お、花魁道中w アハハハハ!」
笑いが止まらないメイお姉さんの手を引っ張りながらお祭りムードの校内を練り歩く。
「うわ、あの娘可愛い!」
「ウエイトレス? どこのクラスの出し物かな?」
道をすれ違う生徒達が湖宵の格好を見てウワサをしている。その可愛さに皆メロメロになっているみたいだ。
「うっ!?」「あっ!?」「おっ!?」「だっ!?」
そして彼らは湖宵の隣に居るオレを見るなり、皆一様に石化した様に固まる。
「皆三五ちゃん見てビックリしてるw 気持ちw わかるw くふっw くふふふふw アハハ!」
「メイったら、さっきから笑いすぎだからねっ! もう! 三五さん素敵でしょうが!」
周りにドン引きされ、身内からは爆笑される。
されど高波太夫は慌てない。
帯にさしていた扇をババッと広げ、生徒達と学校外のお客さん達に向けて朗々と語りかける。
「二年生の教室にて、ただいまおネエ · おニイ喫茶が開催中でアリンス! 楽しい女装男子、男装女子達がアナタを待っているでアリンスよ!」
「キャ~ッ♡ 高波太夫さま~っ♡」
湖宵が合いの手の様に黄色い声を上げてくれる。
「おネエ · おニイ喫茶? だから女装なのか」
「あの綺麗なウエイトレスさんも男の子なの!?」
「クオリティ高いな。色んな意味で」
「試しに行ってみるか!」
注目を集めてしまうのならば宣伝のチャンスだと考えるべきだ。
オレのおネエっぷりと、心がレディである湖宵のウエイトレス姿はバッチリ決まっている。
生徒達やお客さん達は見事、おネエ · おニイ喫茶に興味を持ってくれたみたいだ。
「お二人はナイスコンビですね♪」
「何でいつもより堂々としてんのw」
歩いているだけで目立つオレ達が他所のクラスの飲食店に入ったらお騒がせしてしまいそうだ。
ここは屋台で食べ物をみつくろってフードスペースで食べよう。
「ワチキはアメリカンドッグが食べたいでアリンス」
「わたしは焼きそばとお好み焼き~♪」
「私は何か変わったものが食べてみたいですね。んっ!? オ、オランダ焼き!? 何コレ、中には何が入っているんだろう。コレ一つ下さい!」
「私、今は本当に腹筋が痛いからスープが良い。優しい味がするヤツ」
思い思いに好きなものを買ったら、フードスペースにあるレジャーテーブルを仲良く囲んでランチタイムにする。
「ん~美味しい♪ ちょっと焦げてる焼きそばと粉っぽいお好み焼きなのにお祭りで食べるとちょ~美味しい♪」
「わかります、湖宵さん♪ オランダ焼きっていうのも、甘い皮の中にハムとマヨソースが入ってて不思議な味ですけどとっても美味しいですよ♪」
湖宵とアンお姉さんが談笑している風景は、美人姉妹って感じでとても絵になる。
見ているだけでほっこりと幸せな気持ちになって心が満たされる。
さて、お次はお腹の方も見たそうか。
ケチャップとマスタードがたっぷりのアメリカンドッグは見ているだけで空きっ腹を刺激する。
ソースが跳ねないように気を付けて一口かじる。うん、美味い!
「あ、あのねw 三五ちゃんw いつもみたいに男らしくガブッと食べてくれない? お姉ちゃん本当、マジで真剣にその格好ツボなのw 耐えられないw」
メイお姉さんはまだオレの姿に慣れないのか。
何かプルプル震えてるし。
笑い顔ながらその訴えは真に迫るものがある。
しかしそうは言っても着物を汚す訳にはいかないからなあ。
そうだ。扇で口元を隠して、食べているところを見えないようにしてはどうだろうか?
「や、止めてw その雅な仕草止めてぇw お、お姉ちゃん、三五ちゃんの言うこと何でも聞くからw だから許してw」
あれ~? 余計にツボに入ったみたいで震えが激しくなったぞ?
「お姉ちゃん! 三五を誘惑しないで!」
「そうよ! メイ! 抜け駆け禁止!」
「誘惑とかじゃなくてw 本気のお願いだからw それにこんな格好した男の人をゆ、誘惑だなんて、プ、ププ~ッ! アハハハハ! 死にゅうぅぅ! お姉ちゃん死んじゃうぅ! アハハ! アッハハハハハ!」
大変苦戦しつつも (メイお姉さんだけ) 何とかランチタイムを終わらせた。
お次はいよいよ皆で文化祭を見て回ろう!