裏20話 思い出の文化祭④ ぶぶ漬け食べナンシ♡ 高二 二学期
おネエ · おニイ喫茶に来店するお客さんは、ネコさん達みたいに良いお客さんばかりではない。中にはご迷惑なお客も居る。
「ウフゥン♡ ご機嫌よう、三五きゅん♡ あらン♡ そのコスは花魁ねン♡ 流石ウチの後継者にして我が校のエロの柱♡ わかってるわン♡」
例えばワザとサイズの合ってないパッツンパッツンの制服を着ているお客とか。
てゆ~か周りのお客さんがドン引きするから即刻帰って欲しいのだが。
「コラ~ッ! エロ姉ぇ! 三五はアナタの後なんか継がないから!」
「ウフン♡ そんな事ないわン♡ 三五きゅんは大きくて黒ぉい柱なのよン♡」
「大黒柱って言え! もお! イヤらしい格好したイヤらしい人は出入り禁止!」
湖宵が闘ってる。エロ姉ぇは色んな意味でキケンな相手だ。オレも加勢せねばなるまい。
だがしかし。その前に席へとご案内しなければならない大切なお客様が居る。
「お、お兄様♪ 来ちゃいマシた♪ とても雅なお召し物デスね♪」
「いらっしゃい、ちぃちゃん。お席に案内するでアリンス♪」
「ウフフ♪ 花魁さんのお兄様、立ち居振舞いがとても素敵デス♪」
大切なお客様とはエロ姉ぇの妹のちぃちゃんだ。
ここで朗報! な、な、なんと、ちぃちゃんはあの体育祭を境にエロくなくなったのだ!
更正してエロちぃから普通の女の子 · ちぃちゃんへとクラスチェンジを果たしたのだ!
格好も姉と違ってちゃんとしたサイズの制服を着ているし、髪も三つ編みをサイドに流していて爽やか清楚で文句無し!
そうなると、ちぃちゃんは純粋にオレを慕ってくれる可愛い後輩だ。
大事にして完璧なおもてなしをしなければ。世を儚んで堕天されても困るし。
「さあこちらのお席へどうぞ。ご注文は何になさリンス?」
「クスクス♪ では、ミルクティーとマカロンをお願いしマス♪」
「はい、かしこまリンス~」
オーダーを調理担当の生徒に告げる。
これで湖宵を助けに行けるぞ。
犬猿の仲の湖宵とエロ姉ぇはまだバチバチとやりあっている。
「大体さあ、受験生の癖にそんな変な格好してて良いの!? 変態! 三五の目を汚さないで!」
「フゥン♡ 湖宵ちゅわンも人のこと言えないんじゃないのン? そんなカワユイ格好しちゃってン。女の子の格好してる所を三五きゅんに舐めるように見られて、オンナの悦びを感じちゃってるんでしょォン?」
「言い方ア゛ア゛ァ゛ァ゛! わたしのこの気持ちは純然たる愛情だッ! この歩く猥褻物がッ! 胸の谷間にムカデ突っ込むぞ!」
「蟲なんて挟み潰してあげるわァン♡ パイ圧でねぇぇン♡」
乳をぎうぅぅっと寄せるエロ姉ぇ。
クラス中の男達 (オレと湖宵以外) がソワソワし始め、女性陣の空気が冷える。
「あらン♡ ウエイトレス♂さん達ったら、ウチのおムネが気になるのォン? そんな格好してても男の子だもんねぇン♡ クフフゥン♡ 良いわよォン♡ 動くわン♡ (食指が) ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ……」
エロ姉ぇはクラスの女装男子達を脂分の高いネットリとした視線で上から下まで眺めつつ、高速で舌舐めずりをする。テイスティングだ。
「イヤァァ! 僕を見ないでぇ!」
「ヒィィィ……助けてっ!」
SAN値を一瞬で削られた女装男子達は手で身体を隠したり、男装女子達の背中に隠れたりしている。メンタルが完全に乙女のそれになってしまっている。
う~ん、普通に営業妨害。
息吸って吐いてるだけでも波乱を起こすな、あの女は。
オレはある物をちゃちゃっと手早く用意してからエロ姉ぇの所に向かった。
「まあ、座りナンシ」
「あらン♡ ありがとォン♡」
「え~っ!? 三五ぉ、座らせちゃうのぉ!?」
エロ姉ぇを席に着かせたらテーブルの上にある物をドンと置く。
「ぶぶ漬け、食べナンシ」
テーブルに置かれたのは、ぶぶ漬け。
本来では長居しているお客にぶぶ漬けを勧めて、遠回しに帰るよう促すらしいがオレの場合は違う。
強制的に食べさせて「これを喰ったらさっさと帰れ」と口程に物を言う目で見下ろし続けるのだ。
「あっあっあ~ン♡ 花魁三五きゅんのキンキンに冷えてるその目っ! ゾクゾクしちゃうわァン♡ ご飯が進むゥ~ン♡ パクパクッ! うぅ~ん、エロ美味~♡」
やはり手強い。ここまで塩対応しても悦んでしまうのか……。
ならばぶぶ漬けに七味を振り掛けるのはどうだろうか? パッパッパッとね。
「ンっ!? 何だか身体が火照ってきたわァン♡ 汗ばむわン♡ フゥゥゥン♡」
エロ姉ぇが熱っぽく溜め息を吐くと彼女の制服のボタンが自動的にプチンプチンと外れ、前がはだけて胸の谷間が露出する。
どんな原理だ。サイコキネシスかよ。
「何で三五にあんなに冷たくされても平気なの? わたしだったら絶対吐いちゃってるのに……。凄いメンタルの強さ……」
エロ姉ぇをあれ程までに嫌ってる湖宵ですら感心しちゃってるし。
こうなったらエロ姉ぇは放っておいて、妹のちぃちゃんだけをたっぷり構ってあげる作戦で行こう。
「ちぃちゃん、ワチキ達のお店は楽しんでくれてるでアリンスか?」
「ハイ。とっても楽しいデス。でもごめんなさい。お姉様がご迷惑をお掛けして……」
「気にしないで。それよりワチキが作ったミニパンケーキはいかがでアリンス? お紅茶のお代わりもどうぞ♪ サービスでアリンスよ♪」
「わぁ~♪ このミニパンケーキ、可愛くて美味しそう♪ お兄様はお料理がお上手なんデスね♪」
オレからのサービスを、ちぃちゃんは手を叩いて喜んでくれた。
流石は湖宵監修の元、女の子ウケを狙って開発したミニパンケーキ。
カラフルチョコペンで(^o^)顔とか、♡ · ☆などのマークが描いてあって見た目が楽しく、ホイップやジャムなどのバリエーション豊かなトッピングで味にも自信がある逸品なのだ。
「食べるのもったいないデス♪ でも我慢出来ないから一つ食べちゃいマス♪ パクッ♪ ん~美味しい♪ お兄様、ありがとうございマス♪」
「ちぃちゃんはと~っても良い子でアリンスね。よしよし」
「はわわわ! あ、頭撫でられちゃいマシた♡」
おっ? ウエイトレス♂のスカートにちょっかいを掛けていたエロ姉ぇが、イタズラを止めてこっちをジッと見ているぞ?
どうやら相手にされないのが一番堪えると見た。
しめしめ。この調子で放置してやろう。
「チィ~ッス! エロ神……いや、高波太夫を指名したいんスけど!」
童貞チンパンジーがクラスに帰ってきた。
でも何故? コイツの当番は午後からだから今は自由時間のハズなんだけど? 後、指名って何? ウチはそんなシステムやってないんだけど?
「何で戻ってきたでアリンス? いつものツレはどうしたでアリンスか?」
「オレ、高波太夫の……花魁の接客がどうしても気になって、一人で戻ってきちまいました! なんで今はただのお客さんッス!」
何やコイツ。友達を置いてきてまでオレに相手をして欲しいって? 湖宵や男装女子にじゃなく?
訳がわからねえ……が、しかし。コイツの相手をしてやれば当然エロ姉ぇに構う事は出来なくなる。構ってくれる相手が居なければ、ヤツは見た目がエロいだけの女に過ぎん。
「ではお客様~♪ こちらのお席にどうぞでアリンスゥ~♪」
「はっ、はっ、はいっ!」
何で緊張してんだよ。ガチガチじゃね~か。
「ボウヤ、こういうお店は初めて? ほ~ら、力を抜きナンシ♪」
もみもみもみもみ。肩を揉んでやる。
「おっおっおっおおォォ~♡ 無理ですぅぅ♡ 僕もうビンビンですぅぅっ♡」
「お通しのゆで卵 (イクラ乗せ) 食べナンシ♪ はい、あ~ん♪」
「あ、あああ、あ~ん、ぱくっ。んんん~っ!? うんめぇぇ~っ! 未だかつて無い程美味ぇ~っ! おほほほ~っ♡」
「ハイ湖宵! ここでチンパンさんを冷たい目で見下して!」
「任せて三五ぉ……。三五はわたしのなんだから……。あんなに馴れ馴れしくするなんて、絶対に許せない……! このお猿さんめぇぇ……っ!」
お日様カラーの可愛いウエイトレス衣装を着た湖宵が、氷点下ブッチギリの冷たい視線で童貞チンパンを睨み付ける。
オレがもしこんな目で湖宵に睨まれたら胃の中の物をリバースしてしまうだろうが、チンパンはエロ姉ぇと同類なので恐らく悦ぶだろう。
「んほぉぉ~っ♡ 美人ウエイトレスのツン接客と花魁のデレ接客が合わさる事で、体温が下がったり上がったりして気持ちイイ~ッ♡ おほぉっ♡ コレマジで超すげぇぇぇ~っ♡」
狙い通り。でも何かムカつく。
「う……う……う……」
ん? 何だこの声?
「うわあああぁ~んっ! ひどいよひどいよっ! ウチのことを無視しないでよおおぉぉぉぉぉ~っ! うわぁぁぁん! わぁぁぁん!」
えええええええ~~~っっっ!!?? 強メンタルのエロ姉ぇが幼子みたいに大泣きしてる!?
「いけませんお兄様! お姉様のメンタル硬度は普段はタイヤのゴム並みなのデスが意中の男性に相手をしてもらえなくなると、たちまち豆腐並みになってしまうのデス!」
どんな素材だよそりゃあ!
困り果てて湖宵にアイコンタクトを送ってみると、「何とかして!」とのお答えが帰ってくる。
何とかってアンタ……。と、とりあえず声を掛けてみるか。
「エ、エロ姉ぇ?」
「うぇぇんっ。さ、三五きゅんの意地悪ゥン」
おお。声を掛けただけで大分泣き声が治まった。
本当に構ってちゃんだな。
この次はどうしよう。あ、そうだ。
「エロ姉ぇ、なわとび跳んで欲しいでアリンス」
「なわとびですってぇぇン!? 三五きゅんったら乳揺れをご所望なのねぇン!? 任せてぇぇンッ♡ 魅せてアゲルわァァン♡」
コロッとご機嫌が直ったエロ姉ぇはオレから手渡されたなわとびを使ってピョンピョン飛び跳ねる。
すると、ジャンプに合わせてGカップのバストが揺れまくる。
「ウキキィィ~ッ♡ キッキィ~ッ♡」
「童貞チンパンさん、もっと近くで見ナンシ。他の男子も! お客さん達も! こっち来て! 今だけのチャンスでアリンスよぉ~っ!」
「「「「ウオオォォ~ッ♡」」」」
「ウキキ~ッ♡ ブブーッ! (鼻血噴射)」
「あははン♡ ウフフフン♡ はぁァァ~ん♡」
男性ギャラリーを集めて囲ってやると、エロ姉ぇの顔はパアァァ~ッと輝いて満面の笑みとなった。これで一安心だ。
しかしオレの態度は良くなかったな。一人前の男のものではなかった。
女の子との接し方をもっと考えなければ。
「ゴメンね、エロ姉ぇ」
「イイのよン♡ キャッ♡ キャッ♡」
オレもまだまだ修行が足りない。
もっともっと成長して、湖宵が自慢したくなる様な良い男にならないとね。