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第8話 繊月 こよいとデート [風雲喫茶篇]

 こよいとの楽しい公園デートの後、オレ達はそれからの3日程は同じ様なお散歩デートを重ねてきた。


 高校生らしからぬデートかもしれないが仕方が無いのだ。


 何せ可愛さの余り周囲の視線をくぎ付けにしてしまうこよいだ。

 その視線に慣れる為に少々時間が掛かった。


 そして本日は満を持して、ティー ↑ ンズが集まる街までデートに出かける事になったのだぁ!


 オレは日課となった早朝ランニングを終え、冷たいシャワーで汗を流した。

 その後にじっっっくりと念入りに時間をかけて、身だしなみを整えた。


 超 ・ 超 ・ 美少女のこよいと一緒に歩くんだから恥ずかしくないようにしないとね!


 それでも約束の時間まで少々間が空いてしまう……が、正直もう待ちきれない。

 早く初恋の女の子に会いたい!

 こよいを迎えに行くため、ウキウキしながら家を飛び出して行ってしまうオレなのであった。


 「おはようございます~♪ 三五さん~♪」


 おお~っ。

 今日のこよいは花柄のキュロットスカートだ!

 スラッと長いしなやかな脚が美しく映えている。


 トップスの半袖サマーニットはオフショルダーになっていて、露になった華奢で白い肩に目を奪われてしまう。


 ベレー帽なんてかぶって活発かつカジュアルな装いに身を包んだこよいは飛びっ切りに可愛くて、健康的な色気が漂っていてクラクラする。


 「こよいィ~ッ! その格好すっごくイイっ! 清楚系もイイけど元気系もちょ~イイ~ッ!」


 「はぁぁぁ~っっ!! さ、三五さんこそぉ~っ! いつもカッコイイですぅ~っ! その髪型もクールですぅぅ~っ!」


 オレの格好なんて何て事はない。

 確かに清潔を心がけて、髪型も整えてはいるがそれだけだ。


 「いやいや! オレなんかよりこよいの方がずっとずっとステキだよっ!」


 「くっはぁぁっ! サンゴしゃんこしょおぉっ! 誰よりもっ! 誰よりもキャッコウィれしゅぅっ!」


 玄関先でバタバタ飛び跳ねながらオレ達は互いを褒め合いまくる。


 「あなた達、本っ当毎日飽きないわねぇ~」

 彩戸(さいど)さん登場!


 もの凄くジト目で見られている。

 褒め合う → テンション上がる → 情熱が迸る、の一連の流れを毎日見せつけられればこうもなるよね。


 しかもオレなんかは恋心を自覚してからは更にヒートアップしているし。


 「ハア……ハア……さ、彩戸さんおはよう」

 「はあ……はあ……こ、これは仕方無いのよ」


 「満身創痍じゃないのよ。こんな所で騒がれたら邪魔よ。早く行きなさい」


 カチカチ! カチカチ!


 彩戸さんが打ち鳴らすのはまさかの火打ち石! 

 塩を撒かれないだけマシだろうか?


 「はぁ、やっと息が整った。それじゃあこよい、行こうか?」

 「は、はいっ。じゃあ三五さん、手を」


 くうぅ! 当然の様に手を繋いで欲しいと小っちゃなお手々を差し伸べてくる甘えん坊なこよいが死ぬっ程カワイイ。


 今すぐこの場で告白してしまいたい。


 って、いかんいかん。

 また彩戸さんに怒られてしまう。

 気持ちを切り替えて今日のデートに臨もう。


 手を繋いでテクテク駅まで歩き、電車に揺られて二つ先の駅へ。

 改札を抜け、オレ達の様な夏休み満喫中の学生達がごった返す街までたどり着いた。


 行き交う人達はすれ違い様に超美少女 ・ こよいのご尊顔にチラチラッと一瞥をくれていく。


 「うぅぅぅ……やっぱりわたし見られてるぅぅ。落ち着かないですぅ……」

 「堂々としていればいいんだよ。カワイイこよいに見とれているだけなんだから」


 他人からの視線に大分慣れたとはいえ、流石にこれだけの人が集まる場所で注目されたら萎縮してしまうよなぁ。

 

 ビクビクしながらオレの陰に隠れるこよいの手を引っ張って、足早にロータリーを抜けてしまおう。

 

 「うぅぅ……きょ、今日、クラスの人と道でバッタリ会ったりしませんよね? 大丈夫ですよね?」


 「それは絶対に大丈夫。……とは言い切れ無いけどさ。もしバッタリ会っても、クラスのヤツらにはこよいが元男の子の湖宵だとは見抜けないよ。それに……」


 オレはこよいと手を繋いだ手を掲げて見せる。


 「オレ達今、誰がどう見てもデート中だからさ。邪魔なんてされたりしないよ」


 八の字眉毛で不安そうにしていたこよいの顔がパァァァ~ッと一瞬で輝く。


 「そ、そうですよねぇぇ♪ わたし達ぃ♪ ど~見ても仲良しデート中ですもんねぇ~♪ 声かけるヤツはヴァカですよね♪」


 ニコニコ上機嫌なこよい。

 と、思ったらお次は何かモジモジし始めた?

 美少女百面相って感じで、見てると心が忙しくなるなあ。


 「こ、恋人同士の振りしたらもっと声掛けられませんよね……もっとそばに寄った方が良かったり? 良くなかったり?」 (チラチラ)


 「う、うん。オレのそばにおいで、こよい」


 「はいぃぃぃ~っ♡ くぅぅぅン♡ 今のセリフヤバいですぅぅっ♡」


 大喜びでぴょ~んと飛び付くように、オレと腕を組んでくれるこよい。


 オレも嬉しくなって身体が弾けてしまいそうだ。


 ああっ! 今すぐ愛の告白をしてしまいたいっ! でもここはガマンだっ!


 気を落ち着けよう……すーはーすーはー。

 よし、デート再開!


 そろそろお昼時なのでここでランチタイムと洒落こもう。


 男の子の湖宵と食事する時はラーメン屋や牛丼屋などの、ガッツリ系のお店でたらふく食いまくるのがセオリーだった。

 

 だけど今日は女の子のこよいとのデート。

 ここは雰囲気重視のオサレな喫茶店に入ろう。


 「あらあらぁ~♪ 落ち着いたイイ雰囲気~♪ デートっぽ~い♪」


 こよいもワクワクしているね。

 店内はアンティーク調のシックな雰囲気の内装で二人きりで落ち着いておしゃべりするのにはもってこいだ。


 ウェイトレスさんに席まで案内してもらったらメニューを開く。

 う~む、何食べようかなあ。


 ガッツリ系は満腹になって動き辛くなったり眠くなったりするからNG。

 カレーみたいな匂いの強いのもNG。


 よーし、決めたぞ。


 「オレは水出しアイスコーヒーと、クラブハウスサンド!」


 「オッシャレ~! じゃぁねぇ、わたしも水出しアイスコーヒーとハニートースト! トッピング全部乗せ!」


 「カ~ワイイね、こよい~! 女子っぽい! 女子っぽいよ!」

  

 「でっしょ~♪ あ、ウェイトレスさ~ん。注文お願いしま~す♪」


 ニコニコ笑顔のこよいが手を挙げてウェイトレスさんを呼ぶ。


 おや? こよいの指の先? いや爪が何だかキラキラ輝いている?


 「水出しアイスコーヒーが二つと、クラブハウスサンドとぉ……」

 

 こよいが注文してくれている間中、オレはジ~ッとこよいのキラキラした爪を見つめていた。


 「ん? どうしたの、三五さん?」


 「こよいの爪、何だか凄くキレイだよね。キラッキラキラッキラしてる」


 「あっちゃ~♪ わかっちゃいますぅ~♪ 女の子のさりげないオシャレわかっちゃいますぅ~♪ あっちゃ~♪ イイ男は目の付け所が違うなぁ♪ 気付かれちゃったかぁ~♪ あっちゃ~♪」


 もンの凄く嬉しそうなこよいchan。いつもの八割増しででニッコニコだぁ。


 「コレはねぇ~♪ ネイルアートっていうんですよぉ~♪ ほらほら、近くで見てみて下さい♪」


 ずずいと差し出されるこよいの手を優しく握って、爪を見せてもらう。

 相変わらずこよいの手は小っちゃくてスベスベだなぁ。って違う違う。


  えーと、どれどれ?


 「キラキラしているのはラメだね? あ、小さな星が描かれているね。キレイだなー」


 ピッカピカに磨かれた爪に輝く沢山のお星さまは可愛らしくもあり、大人っぽくもある。


 うーむ。

 女の子のオシャレってこんなのもあるんだ。

 オレだって爪はちゃんと切っているけどそれだけで、ネイルアートなんて発想は思い付きもしない。


 キレイだな~。ずっと見ていたい手だな~。


 「ウッフッフッフッ♪ クフフフフゥッ♪ 彩戸さんがやってくれたんですよぉぉ~♪ あ~っはっはっはっはっはぁ♪」


 あの人何でも出来るなあ。

 そしてメッチャご機嫌だなぁ、こよい~。


 こんな調子で注文したものが来るまでイチャイチャしていたオレ達なのであった。


 オレはこよいのキレイな爪を眺められてご満悦。

 こよいはたくさん褒められてご満悦だ。


 「ご注文のお品物お持ちしました~」


 「おお~。これがクラブハウスサンドかぁ、ってデッカ!?」


 何だコレ!


 トーストとトーストの間に照り焼きマヨチキン、トマト、レタス、厚切りベーコン、チェダーチーズがみっちみちとはち切れんばかりに挟まれている。

 それを星条旗付きのピックで無理矢理留める男らしさよ。


 何という威容。何というド迫力。

 こんなモン、クラブで食ってるやつ居ねーだろ。

 

 「うわぁぁ! ハニートーストも大きいぃ! 良く考えたら食パン一斤にトッピングをドカドカ盛ってるんですから当然ですよね! 今甘いのこんなに要らないぃ」


 こよいのハニートーストも凄ぇ! パンの上にアイスクリームに生クリーム、フルーツ等がドカ盛りで食いごたえがありそうだ。

 

 昨今の女子はこんなの一人で食ってんのか? この店がおかしいだけ?


 「コレ切り分けて半分こして食べない? こよい」

 「あ、それ嬉しいです。ザックザク切っちゃいましょ~ね」


 食べやすいサイズにカットして、二人がかりで料理をやっつけていく。

 

 うう~ん。

 クラブハウスサンドのチキンとベーコン、味付けがギットギトのコッテコテだぁ。

 お次はハニートーストを食べて口直し……出来ない!

 こいつは(あン)めぇぜぇーッ! 生クリームが何だかもたっとしてて濃厚だぁ!


 「はぐはぐ、はぐはぐ。うぇぇ、お口の中がコッテリしてるぅ。コーヒー飲まなきゃ」


 こよいがかなり頑張ってる! でも男として美少女様に暴飲暴食をさせる訳にはいかないな。


 「うおおおぉぉ! バクバク! ゴクゴク!」

 「あむあむ、ごくごくっ」


 水出しアイスコーヒーの力を借りて何とか完食したオレ達。


 「「お、お腹一杯……」」


 デートだっていうのにガッツリ飯を食いまくってしまった。


 確かにいいお店だと思うよ? 

 安いし、量も多いし。また来るよ、オレ。

 だけど今日に限っては店選びを完全にミステイクした。


 「大丈夫? 歩けそう?」

 「も、もうちょっと休めば何とか」


 これから本日のメインイベントだというのに。

 仕方無い。時間に余裕があることだしもうちょっと休憩していこう。

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