強盗?そんなの知りません!
実際とは異なる点がいくつかございます。
劇中で登場する地名・人物・店名等は一切実際とは関係ございませんのでご注意ください。
「ピンポーン!」家のチャイムが鳴る。誰かな…と恐る恐る画面を見ると数台の警察車両と数人の警官が待ち構えていた。
最初は、「防犯か何かで来たんだろう。」と思い込んで玄関のドアを何の疑いも無しに開けた。
すると…「こんにちは、警察署の者ですが、おとといの夜、この近くでコンビニ強盗があったのはご存知ですね?それで、事件当日にあなたに似た犯人らしき人物が現場からこちらの方向に逃走したんですよ。それでご存知ないですかね?長いので以下省略」
何のことだか最初は分からなかったが、警官の説明を聞いてるうちに何となくではあるが理解できた。
「え?強盗ですか…?その日は自宅で書類の作成をしていたので外出はしておりませんけど…。」
こう返答すると、隣のやや太った警官が「あなたに似た人を目撃したという証言が複数人とお店の方たちから出ているんですよ?まあ、いいや。とりあえず署に来て。事件のこと詳しく話すから。一応今は重要参考人として聞くからな。」
これがあの「重要参考人」か。だとしても疑われていることに間違いは無いからな…。
あと先ほど聞いた警察からの話をまとめた
事件はおとといの夜、コンビニで発生。
犯人の特徴は身長170センチくらいの痩せ型で私に似ている。顔を隠していた
真犯人はこちらのほうに事件後おそらく徒歩で逃走。
まず、私は犯人ではない。先ほど言ったとおり、当日の夜は家でプレゼンの書類を作っており、かなり遅くまで取り組んでいた。あまり書類作成に集中しすぎ、ふと気づいたら朝になっていた。
西宮東署の取調室
警官「もう一度聞きますね。あなたは事件当日にどこで何をしていましたか?」
高梨「あの日は夜遅くまで自宅で翌週のプレゼンテーション用の書類を作成していました。」
警官「一切、家から出ていないんですか?」
高梨「出てないです。書類作成に試行錯誤してましたから。」
警官「次にあなたの自宅周辺で大きな物音だったり、悲鳴等を聞きましたか?」
高梨「分かりません。書類作成に集中したせいもあり悲鳴等があったかは分かりませんでした。」
警官「ちなみに、そこの事件現場のコンビニには行ったことはありますか?」
高梨「はい。会社からの帰り道、菓子パンと飲み物を買いに寄ります。ただ、事件の時間帯は大体寝てるので行くことはまず無いです。」
警官「そのコンビニの方との面識は?」
高梨「ありますよ。よく田中さんが対応してくれます。たまに世間話をします。」
警官「その日だけ、書類作成で起きていたんですか?」
高梨「はい。本来この時間は寝てます。この日だけ、会社のプレゼンが近かったこともあって徹夜してしまいました。」
警官「なるほど…。ありがとうございました。では今回の聴取は終了です。」
高梨「ありがとうございました。」
警官「とりあえず、帰っていいですよ。何かあったら連絡しますね。」
高梨「分かりました。連絡お待ちしております。」
取調べを担当した福間さんは疑う素振りはぜずに本当に家に居たのか、そのコンビニに立ち寄ったことがあるか、コンビニの店員と面識があるかなどを聞いてきた。
とりあえず強調したのは「家にずっと居た」ことを取り調べで直訴した。
「お、終わったな。特にあれか?凶器とかの話はあったか?」振り返ってみると、訪問時の警官の話と、取調べをした警官の話の中では「凶器」のことについては一切無かった。
凶器なしで、脅迫のみで金銭を奪ったのかすら話が無かった。
「どういう経緯で、犯行に至ったのかですら聞かれてないから分からない。」
池谷はうーんと唸ってから、「とりあえず警察からの連絡があるまでは家に居たほうがいい。むやみに出歩かないほうがいいと思う。余計に怪しまれる可能性があるし。当然コンビニもだ。会社の件はしょうがないが、事情を言って休みを貰うしか無い。」
せっかく徹夜で作ったプレゼンも台無しだな…と落胆したが、こうなっている以上は背に腹は代えられない。
「本当に強盗なんてやってない!!しばらくどうするか考えよう。」
「はい!もしもし社長の岩貞です、あー高梨くん朝からどうした?体調でも悪いのか、何かあったのか?」
いきなり、威勢のいい岩貞社長が出た。
「岩貞社長、いきなりで申し訳ないんですが暫くお休みいただいてもよろしいですか?」
「オーケー。プレゼンの日まで出勤が厳しそうなら早めに書類送ってね。お大事になー。じゃ!」
案外すんなり休みの許可がもらえた。ただ、この件をばれないようにしなければ…。
あれから数日後…
「えー、ただいま入った速報です!」
「先日、西宮町3丁目でありましたコンビニ強盗傷害の事件で男が逮捕されました。逮捕されたのは、東大地村に住む自称・作曲家の甲斐 秀太郎容疑者(29)が強盗と傷害の容疑で逮捕しました。
本日今朝早く再び、別のコンビニ店で強盗をしようとしたところを付近を警戒中の警察官が発見し、逮捕に至りました。
調べに対し、「作曲による金が欲しかった。奪った金で、音楽機材を購入した。」と容疑を認めています。
甲斐容疑者は他にも複数件のコンビニを襲ったことを認め余罪についても警察は調べていくとのことです。
また、今回の事件で無関係の男性を拘束してしまったことをお詫びするとのことです。
「プルルル、プルル・・・はい、高梨です。」
「こんにちは、せいぐう東署の福間です。この度は無関係の高梨さんにご迷惑をおかけし申し訳ございません。」
「今、速報で真犯人の方を逮捕したというのを見ました。とりあえずよかったです。」
「すみません、後日高梨さんのお宅に謝罪しに参りますのでよろしくお願いします。」
2日後
「ピンポーン。こんにちは、せいぐう東警察署の者ですが…」
ついにきたな。
「警察署の方ですかね?」
「はい先日は、高梨さんにご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんでした。お詫び申し上げます。」
一緒に来た警察官も揃って深々と頭を下げた。つられて一緒に頭を下げてしまった。
「すみません…。こんなに大勢で来るんですね。ビックリしました。でも真犯人を逮捕してくれて本当に良かったです。」
「お詫びの品としてなんですが、こちらをお受け取りください。」
複数のお詫びの品を渡されたが、そういうのはよろしくないという理由で断った。
「分かりました。今回は誠に申し訳ありませんでした。」
ようやく、真犯人が無事に逮捕された。暫く会社を休んでいたが、数週間後に会社に復帰すると第一声は「元気になったかー。入院はきつかっただろう。見舞いにいけなくてごめんな…。許してくれ。」
どうやらあまりに長く休んでいたため岩貞社長は「入院」したと勘違いしてしまったらしく「無理はしないでやれ。プレゼンは代わりに俺がやったぞ。」
どうやらプレゼンは社長が代わりにやってくれたようだ。満足そうな顔をしていることからたぶん、成功したんだろうと思われる。
ちゃんと、できたのか不安ではあったが…。
とりあえず、事件は解決したので良かったです。
一部、実際とは異なる点がございました。申し訳ありません。