@4 自分自身を知ろう。
難しい……。
「はる兄ぃ、このあとどうするの?」
「ん、ちょっと本屋で参考書見に行こうと思ってるけど?」
「そうなんだ。」
「瑠璃はどうすんだ?」
「友達と約束してて、13時に駅前で待ち合わせ。夕方には帰る予定だよ。」
「そっか、遅くなるならおばさんとこに連絡しておけよ。」
「うん、分かった。」
俺たちは携帯を持っていない。持つことも出来るのだろうが、お金が掛かるからだ。
だから、何かあれば大家のおばさんに伝言を頼んでいる。
「それじゃ、先に行くから戸締まり頼むな。」
「うん、分かった。行ってらっしゃい!」
さて、本屋で参考書は言い訳だ。実際に必要なのは確かだけど、買う程の余裕は余りない。
ってことで、まずは近くにある自然公園に向かう。
あそこは、ゆっくりするのにちょうどいいからだ。
自然公園に入り、人気のないベンチに座る。
「まずは、己を知ることからだな。」
《ステータス》
ピコンッ!
名前 神沢悠翔
年齢 16歳
種族 人間神
その他 全設定済み。
相変わらず神だよな。
そもそも人間神ってなんだ?
ピッ!
【人間神】
人と神の間の存在で亜神に属する。
18歳以降不老だが寿命があり1000年程。
なるほど、何となく分かった。
さて、これからどうしたものか。
ラノベを参考にするなら、現実世界で成り上がるとか異世界に行き来しながら異世界に異文化革命を起こさせるとか……面白そうではあるけどね。
まぁ、人間神となっても、中身は人間のままだから、これといって変わることないよな。
まずは、今後この世界で過ごせなくなった時の事を考えてみるか。
って言っても、異世界に行くしかないよな。一応異世界転移で帰ってこれるし……。
そう言えば異世界転移の特性を知らないな。
ピッ!
【異世界転移】
最高位高次元世界と最高位低次元世界を転移できるスキル。
同調された次元世界しか転移出来ない。
転移場所は知っている場所しか出来ない。
なるほど魔法じゃなくてスキルなのか。
要は異世界転移して1日過ごして地球に戻ったら1日経っていると思えばいいのか。
同調と言うくらいだから、宇宙や空気、重量や生物多様性なども似たような世界としか転移出来ないってことだろうな。
物は試しで一度向こうの世界に行ってみるか。
遅くならなきゃ大丈夫だよな。
いざ!……異世界転移!
サワサワサワ……
公園の景色から一瞬で草原の景色へと変わる。
転移して来た場所は、最初に訪れた草原だった。
上を見ると太陽が1つ昇っていた。
前の時はバイト帰りで夜だったから間違いはないかな。
とりあえずどこに向かえばいいだろ……そうだ!マップ機能とかあるかな?
<異世界地図を使用します。>
突然頭の中に流暢な女性の声が聞こえ、頭の中にグー○ルマップのようなものが浮かんできた。
先程の声はシステム音声みたいなものだろうか?
<はい、その通りです。>
うお⁉︎ 返事をしたぞ?もしかして会話できる?
<はい。可能です。>
出来るんだ…それで君は何?
<私はサポートナビゲートシステムです。>
あー、ラノベでよくある「ナビちゃん」とか「システム君」とか言われてるのと同じ感じかな?
<そのように理解していただいて構いません。>
そっか、それなら名前付けないとね。
んー、女性の声だから『エイリス』でどうかな?
<了解しました。これより私の呼称名を『エイリス』とします。主、名前を頂きありがとうございます。>
名前があった方が呼びやすいからね。それで、その『主』って言うのやめない?
<では、『マスター』とお呼びしましょう。>
うん、それでいいよ。ところで、此処ってどこなの?
<はい、現在地は【終焉の草原】です。>
終焉って…いきなり変なところにきたな…。
<【終焉の草原】は半径2キロの円形の草原で周りは森に囲まれています。その周囲の森を【終焉の森】といいます。>
そうなんだ、頭の中のマップを縮小させると草原がの周りは深い森になっているようで、見様によっては森の中にぽっかり十円ハゲが出来たみたいになっている。更に縮小すると東の方に街があるようだ。
街の名は【マクナステル】というらしい。
まずはその街に向かうことにした。
とは言え、マップで見るとかなり遠くに思うんだけど…どれくらい遠いんだろう?
<現在地から【マクナステル】までは直線距離で約3500キロです。>
はぁ⁉︎3500キロ⁉︎確かにかなり縮小はしたさ。ずっと森の表示しかされないもんだから、どんどん縮小してやっと街の表示が出たと思ったら3500キロって…確か北海道から沖縄までがそれくらいの距離だったはずだ。
街に着くまでに何ヶ月掛かるんだよ。
ってかさ、なんかいい方法はないの?
<方法はあります…が、主はまだこの世界に来たばかりですので、まずはこの周辺で戦闘経験を積んでいただいた方が宜しいかと思われます。魔法やスキルは全て使用できますが、何事も経験の差というものが出てくる事もありますので…。>
そういや俺って戦闘とかした事無いんだよな。平和な日本で育ったんだから当たり前だけど…。
<はい、それにこの世界でも貨幣経済で動いていますので、貨幣を得る為にも現在の時点では魔物の素材等を売り貨幣を得るのが最善です。>
あー、そういう事か…って魔物いるの?そもそもこの世界ってどんなとこ?
<はい、魔物は存在します。この世界は【ガイアース】と呼ばれる世界で、ステータスがあり魔法やスキルなどが存在する世界です。時代背景は地球の中世ヨーロッパに近いでしょう。文明文化的にも似ています。種族は人族・獣人族・妖精人族・魔人族・龍人族がいます。その他にもドラゴンや精霊、妖精も存在します。因みにこの星の大きさは地球と同じ大きさで重力や空気等も変わりはありません。>
まんまファンタジーだな。わかった。エイリスありがとう。とりあえずは戦闘経験を積めばいいんだよね?
<はい、それでは今よりこの世界と互換性を持たせる為アップデートを行います。アップデート開始……。>
え…?
アイリスは、突然アップデートを開始した。
悠翔は意識を失い草原の真ん中で倒れた。
<…………トを…了しました。>
………知らない青空だ。
いやだってね、天井無いんだもん…。外で倒れたら起きても外なんだから仕方ないじゃん。
って俺は誰に言い訳しているんだよ…。
<マスター、アップデートが無事完了しました。これによりマスターの身体はこの世界に適応しました。ステータスを確認して下さい。>
うん、なんかアップデートしたらしい。とりあえず見れば解るか? 《ステータス》
ピコンッ!
名前 神沢悠翔
年齢 16歳 (年齢固定)
種族 神族
能力 オール∞
魔法 全魔法
スキル オールスキル使用可
おお!少し変化してる。内容あまり変わってないけど…。
とりあえず説明もらえるかな?
<はい、ご説明致します。マスターの名前及び年齢は変わりません。種族は、人間神から神族になりました。人間神は亜神に分類され完全な神ではありませんでした。ですのでアップデートにより神族へと進化させました。これにより、現在の姿のまま不老不死になりました。
能力は通常[体力・魔力・筋力・敏速・器用・知力・魔攻・魔防]とありますが、マスターは全て∞です。
魔法の属性は[火・水・土・木・金・光・闇・無]の8属性となりますが、マスターの場合更に龍魔法・精霊魔法・神聖魔法・創造魔法も含めた全魔法が使用可能です。因みに雷や氷魔法等は複合魔法になり、生活魔法は無属性です。
スキルは、パッシブ・アクティブ全て使用可能ですが現在殆どのスキルがオフとなっております。全てをオンにしますと相互作用で悪い影響も出る可能性がありますので、必要に応じてオンにする事をお勧めします。>
うん、もう完全に神様だね。なんかここまで来たら気持ちも晴れ晴れするよ。
それで、戦闘経験を積むんだったよね?どうすればいいの?
<はい、この【終焉の草原】は聖域のような場所になっており魔物は入ってきません。
ですのでそのまま東に向かって歩いて進めば、自然と魔物と遭遇し戦闘経験を積む事が出来ます。>
わかった。あとは戦闘に向いたスキルが必要だと思うんだけど…エイリスに任せてもいい?
<はい。では、必要なスキルをオンにします。>
エイリスがスキルを発動させたのだろう。マップには赤い点が沢山表示され、気配なども感じるようになった。
また、この草原には神聖な気が満ちている事も解る様になった。
<スキルのオンと共に必要な知識も全てインストールしました。>
うん。エイリスありがとう。
まずは、戦闘をするんだから武器が必要か。武器と言えば刀だよな。日本人の憧れ武器。
早速、創造魔法で【クリエイション】と【異世界ショップ】を創る。
魔法【クリエイション】
魔力を使用して物を創り出す。ただし、生命体は創れない。
魔法【異世界ショップ】
魔力を使用し、あらゆる物を購入する。物は地球・異世界を問わない。
地球産の物を異世界に取り寄せる場合、一部魔道具化されて購入する。
【クリエイション】を使い、地球で見た日本刀に俺のイメージを合わせて創造する。
目の前が輝き出し、その光が徐々に刀の形へと変わっていく。
光が収まるとそこには、漆黒の鞘に納められた刀が出来上がった。
出来上がった刀を鑑定してみる。
神器【神刀・アメナカカミ】
神が創りし刀。どんなものでも切り裂き、一切の血や汚れも付かない。
刃こぼれや壊れる事もなく、創造者以外が使う事は出来ない。(鞘から抜けない。切ることが出来ない。)
うん、いいのが出来たぞ。
あ、そういえば時間とか分かる?
<はい、では時間を表示します。>
地球:13:24
異世界:13:25
マップの右上に時間が表示された。どうやら地球より1分くらい早いようだ。
今は昼過ぎか、流石にお腹が空いてきたな。
一度向こうに戻るか。
読んでくださり、ありがとうございます。