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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
生徒会の野良アプリ対策開発
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挫折を知ると人は折れやすくなる

 綾は多分挫折を知らない。


 小さい頃から何でも出来て誰よりも上手くなった。


 普通、何でもできる小器用なやつは、すぐにできるからつまらなくなって飽きるものだ。しかし、綾は上手くなってもやめないのだ。自分よりうまいやつを探してそいつをやっつけるまで練習する。


 地味な練習が楽しいらしく勝てなくても弱音を吐いたことはない。勝てないなら練習あるのみだとばかりに練習する時間を増やす。


 一時期なんて寝る時間を削ってテニスに明け暮れていた。


 流石に怪我するからやめさせたが、綾は不満げだった。


「俺はテニスなんて才能が必要なスポーツはやらない」


「じゃあ、何をするの?」


「聞いて驚くなよ? 俺は今、ゲームを作っている!」


「え?」


 ちょっと信じられないという顔をしている。


「しかも趣味じゃないぞ。まだアルバイトではあるがちゃんと市場に売り出される商品だ」


 ふふふ。エロさえ抜いてしまえば、これほど凄いと思えることはない。エロが入ると途端に犯罪チックになってしまうのは、俺がまだ未成年だからだ。


「凄いじゃない。兄貴、しばらく離れている間に変わったね……」


 ん? なんか含みのある言い方だな。


「綾も変わったじゃないか。テニス凄い上手くなったいたぞ」


「へへ。そう見えるなら良かった」


 急に元気がなくなったな。


「テニスさ、もう勝てないんだ……」


「そんなん、今までもあったじゃないか」


 勝てないぐらいで諦めるような性格していなかったと思うが。


「勝てないだけじゃなくて、差が広がる一方なんだ。同じ年齢の奴で、差が開いていく一方の奴なんて居なかったから……」


 なるほど。綾もこちら側の人間になったということか。挫折を知ったのだ。世の中どうにもならないことがあることを知ったのだ。


 めでたいではないか。


「じゃあ、とりあえず、テニスはするな。下手とテニスしても上手くはならん」


「でも、テニス好きなんだよ。やめたくないんだ」


 高度な悩みだな。世界レベルの腕を持ち、勝てないやつがいるから挫折し、お遊びのためのテニスを続けたいとな。


「大丈夫だ。綾。人間は大きな差があるように見えても、本当は些細な違いしかない」


 胸が大きいとか小さいとか、本当に些細な問題だ。両方胸なんだ。おっぱいなんだ。だから、それぞれのおっぱいの良さを競えばいい。


「いいか、綾は世の中に勝てないものがあったらどうする?」


「どうにもならないよ」


「いや、誰にでも出来ることがある」


「なに?」


「待つんだよ。相手が弱るまで。成長し続ける人間なんていない。どこかで成長が止まり衰え始める。極論すればそいつが死ぬまで待てば勝ちだ」


 綾に笑顔が戻り始める。


「本当に極端だな」


「そりゃ勝てない奴に対抗するんだから正面から戦うのはバカのすることだ。人間は勝てなければ道具を使う。罠を使う。壁を作る。そうやって、どんな驚異にも勝ってきたのだ」


「ふふふ。元気付けてくれてありがとう」


「綾は自分が出来ることを信じすぎているんだ。もっと疑い深くなって、自分ができることとできないことを知れ。そうすれば自分を最大限に活用できる戦術が見つかるはずだ」


 だから、フランスへ戻って日本へ帰ってくるな。とまでは続けられなかった。


「やっぱり兄貴は頭いいなあ」


 フランス行ったら綾が筋肉バカになっただけじゃないのか?


「まあ、そういう人生の哲学はすべてエロゲから学んだんだがな!」


「マジかぁ。私もエロゲしようかなあ」


「じゃあ、初心者におすすめの泣きゲーをやらしてやろう。存分に心の射精をするがよい」


「うん。じゃあ、今日から家に戻るな!」


 そこまで来て俺は初めて自分の失策に、気がついたのだった。


 ヤバい。妹が家にいる状況で、妹もののエロゲなど出来ないではないか。


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